ありふれた職業の召喚(ガチャ)士で世界最弱   作:ヴィヴィオ

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もしも助けられなかったら、優花もこうなっていました(ぁ


相川昇

 

 

 帰還してから歓迎の宴を開いてもらい、俺達はそれぞれ個室をあてがわれて眠りについた。起きてから和服を着た世話役の女性に連れていかれた先で食事を取る。そこにやってきた沙条は少しやつれて見えた。逆に谷口達はツヤツヤしている感じだ。

 食事を終えればこれからの予定を教えてくれた。俺達は男女に別れて行動するようで、女子は子供達の面倒をみることなり、俺達は怪我人の面倒をみる。

 そんなわけで沙条に案内された施設はTVで見た野戦病院のような場所だった。そこには無数のベッドが並べられていて、女の子達が寝ていたり、壁によりかかって地面に座り込んでいたり、虚ろな瞳で遠くを見ていたりしている。

 

「おい、これって……」

「ああ……」

「酷いな……」

 

 どの子も首輪をしていて半透明な薄いワンピースのような物を着ているが、身体の何処かが存在していない。近くに居た髪の毛が長く綺麗な金色の髪の毛をした女の子を見れば、小さな女の子を抱きしめながらベッドに座っている。彼女達の耳は長く、その特徴から森人族(エルフ)だと思うが耳は真ん中くらいで切り落とされ、幼い妹であろう子は両手両足に片目がない。姉の方は両足がなく、両手は無事だ。どちらの子も顔が丹精に整っていて綺麗だ。八重樫や白崎達に引けを取っていない。

 この子達はかなり酷いようだが、それでもやはり一部はない。直視していると、視線に気付いたのかこちらを見詰めてきた。すると妹を動かして身体を見せるようにしてきた。彼女達の服はかなり薄いので胸など見えてはいけないような部分まで見えたので慌てて目線を逸らす。気になって視線をちらりと見せると泣きながら震えている。

 

「どういうこと? え? 俺が悪いの? いや、悪いんだろうけどさ……」

「気にするな。お前達三人はここに居る子達の内で好きな子を選んで世話してやってくれ」

「おい、沙条。この子達は……」

「彼女達は人間に幼い頃から育てられてきた子達や激しい調教で壊れた子達だ。奴隷としての生き方しか知らないから、普通の生活もできない。そもそも身体の一部がないのだから扱いがさらに大変だ。普通の服も拒否されるし、傷だけはなんと治療したが、それ以外は無理だった。新しい主人を用意するしかない」

「それなら亜人の人達に……いや、無理か」

「玉井の言う通り、人種を主人にする事しか拒否された。同じ亜人でも彼女達にとっては完全に別の生命に見えたり、憎悪を向けるように教育されたりしている。お前が亜人だから悪いってな」

「洗脳教育か。恐ろしいな」

「そんなわけで好みの子を選んで面倒を見てくれ。性的な事はしても構わないが、責任だけは取るように。地球に戻る時は連れていくか、お前達がこちらに残るかは好きに選んでくれ。一応、戸籍とかはどうにかして用意してやるし生活費も持たせる」

「できるのか?」

「できると思うぞ。政府と交渉してこっちで錬成した物を渡せばなんとかなるだろう」

 

 まあ、確かに色々とやばい物とかあるよな。最悪、金塊や宝石とか貰えればいいだけだし大丈夫だろう。

 

「もちろん、行き来できるなら普通にどちらで生活しても構わないよ。こちらとしては責任さえとってくれるなら好きにしてくれ。ちなみに彼女達にとってそういうことは普通の事だと教え込まれているから、向こうから求めてくる」

「つまり、生殺しになると」

「うわぁ」

「辛いだろうな」

「ちなみに子供ができたら逃がさないからそのつもりでな」

「何人面倒を見ればいいんだ?」

「最低二人から三人だな。面倒を見れるなら何人でもいい。ただ相性もあるだろうから、一週間ぐらいは一緒に生活して見極めてもいいぞ」

「面倒みれるならって働くって事だよな?」

「そうだ。相川だったらレベルを上げて彼女達と一緒にバイク屋をやるのとかも手だぞ」

「そんな事ができるのか!」

「錬成魔法は誰でも使う事は使えるし、生成魔法を覚えたら可能だ。まあ、レベル上げをしないといけないが、護衛をつければ問題ない。それと借金という扱いになるが、彼女達の手足もしっかりと用意する」

「そっちで費用を全部用意してくれないのか?」

「主人から与えられた物以外は拒否される。無理矢理渡してもいいが、こっちの方が好感度を稼げるから親しくなりやすい」

「なるほど、確かに」

「でも高いんだろ?」

「ピンキリだな。だが、今ならなんと戦闘にも耐えられる高性能義体がレベル上げのブートキャンプとセットでなんとたったの一千万でご提供します!」

「「「たけぇ!」」」

「それがそうでもないんだよな。装備って結構ヤバイ奴だから。レベル上げに使うダンジョンの素材を回収して売りにだせば軽く元手は帰ってくるぞ」

 

 話を聞いていくと、珍しい鉱石とかがゴロゴロしているらしい。特に俺の場合は戦闘できるようになったら、自分達でバイクの素材を取ってきて、それでバイクを作れば一台数百万から数千万で売る事は可能なようだ。それに生成魔法だったか。それを俺が覚えられなくても選んだ子が使えればいいわけだし、稼ぐ方法は色々と用意してくれるらしい。

 

「俺達は稼ぐ方法をどうするかだよな?」

「玉井の場合は曲刀師なんだから戦闘だってできるだろ。素材回収をメインにするのもいいと思うぞ」

「確かにそれもいいかも。仁村は土術師だから畑仕事とかいいかもな」

「愛ちゃん先生がいるだろ」

「それなら土木工事をしてくれるだけでもありがたい。地ならししたり、トンネルを掘ったりできるしな」

「それなら稼げるか。というか、沙条が全員の面倒を見ればいいんじゃないか?」

「無理だな。バランスや人数から考えるとな」

「ああ、確かにそうか」

 

 王様としたら種族間のバランスを考えないといけないよな。それに沙条の場合だと召喚で増やす可能性もあるだろうし、選ばれた子と選ばれなかった子の差が激しくなる。谷口達がそれを許すかどうかもわからないし、無理はないだろう。

 

「それじゃあ後は任せる。俺はこれから書類仕事をしてオシュトルに報告書を上げてくる」

「王様なのにそんな事をしているのか」

「むしろ、トップだからだな。アルテナとルサルカを少ししたら来させるから、彼女達に従ってくれ」

「おっけー」

「わかった」

「頑張れよ~」

 

 沙条を見送ってから、俺達は話し合ってそれぞれ別れる事にした。地球では全然彼女とか出来なかったが、今がチャンスだろう。色々と大変な事はあるだろうけどサポートもしてくれるみたいだし。

 室内を回って女の子達を見て回る。どの女の子達も薄着で露出が多いので目のやり場に困るが、そういう目的もあるのでじっくりと観察もできるがやはり恥ずかしいのもある。沙条の言葉通りなら最後まで責任を取って面倒を見ないといけないので気に入った子じゃないと辛いだろう。とりあえず容姿で判断して話をして決めよう。容姿と声が違う問題も大きいだろうし。

 

 

 室内を見て回った結果、やっぱり気になるのは最初に目が合った森人族の姉妹であろう子達だ。彼女達に近付いていくと、あちらもこちらに気付いたようで俺の方を翡翠のような綺麗な瞳で見詰めてくる。幼い子の方は片方は存在しておらず、穴になっている痛々しい姿だ。

 

「ちょっといいか?」

「はい。どうぞお好きなように私達をお使いください」

「目だって穴として使えます……私達で気持ち良くなってください……」

「えっと……」

「どんな物でも食べます。舐めて綺麗にします。ですから、どうかお願いします。なんでもしますから、妹とは最後まで一緒に居させてください……」

 

 姉の方は妹を強く抱きしめ、妹の方も身体を完全に預けている。離される事に恐怖しているのか、身体を震わせている。

 

「だ、大丈夫だ。引き離したりしないから」

「ありがとうございます。でしたら、姉妹でお楽しみください」

 

 服を捲り上げて肌を完全に露出させて見せてくる彼女に思わずそのまま見てしまう。彼女の胸は掌サイズで、少し溢れるぐらいだ。妹の方は微かに膨らんでいる程度だが、年齢的に問題ないのだと思う。姉は十代の後半に入ったばかりで、妹は少し下だろう。どちらも肌の色や髪の毛の色艶はいい。

 

「いや、少し話をしたいだけなんだ。君達の世話をするかどうかって……」

「新しいご主人様になってくれるのですね。わかりました。私達で答えれる事なら……」

「なんでも答え、ます……だから、ご主人様になってください……」

 

 彼女達から話を聞いていくと、本当に酷い生活をしていた。親は商人に奴隷として売られてきて、そこで繁殖させられて生まれてきた彼女達は奴隷としての教育を施されて資産家などに売却されたのだと思う。話を聞く限りでは毎日拷問のような事をされてきたらしい。妹の方は重くて使いずらいという事で手足を落とされた。姉の方は手足の無くなった妹の世話をしながら、生きるために両足を自ら願って切り落としたようだ。落とされた手足がどうなったかは言いたくもない。

 

「私達は人間様に使って楽しく気持ち良くなっていただく肉人形なんです。それこそが私達の幸せであり、エヒト様に与えられた役目です」

「来世では人間にしてくれるんです。だからどんなに辛くても痛くても我慢して……」

 

 妹の方が身体を震わせながらそう言ってきた。話を聞く関係で姉の隣に座り、膝の上に妹の方を座らせている。だからダイレクトに彼女の震えが伝わってくる。本人はなんとも思っていないみたいだが、身体にはしっかりと恐怖が刻み込まれているのかもしれない。姉の方も妹の言葉に頷きながら俺の手を胸に挟んできたりする。彼女達にとって性的な事や役に立つ事こそが存在意義となっているのだろう。

 

「神様は私達を見守ってくださっています。ですから、どのような苦しい事にも自ら望んで試練を乗り越えないといけません。不浄なる亜人の価値はそれだけなのです」

 

 違う。二人は確実に騙されている。沙条や南雲から聞いた話と彼女達の言葉から考えても間違いないだろう。いや、間違っていてもこんなことをしていい理由にはならない。ここはしっかりと言わないといけないはずだ。

 

「それは間違ってる。二人は騙されているんだ! エヒトは……」

「止めてください! 私達は間違っていません! 絶対に、絶対にです!」

「違う。間違っている!」

「止めてっ! 好きに犯していいからお姉様を虐めないでっ!」

「いや、俺は……」

 

 妹ちゃんの声に姉の方を見ると、彼女は涙を流しながらブツブツと小さな言葉を呟いている。

 

「ありえません。そんなことあってはならないんです……だって、そうじゃないとあの子や皆が死んでいったのは……」

 

 繁殖までさせられているのなら、姉妹が彼女達だけではないんだろう。それに同じような境遇の友達のような人も居たのかもしれない。今、一緒にいないということはそういう事なんだろう。本当に理性や倫理が飛んでいる宗教が怖い物なんだとわかる。もしかしたら、園部もこうなっていたのかもしれない。沙条達についてきて正解だ。俺達は本当に運が良かった。この子達は運が悪かった。だけど、そんなのはこれからは関係ない。運がいいとか悪いとか、そんなのは結果からだ。戦いから逃げた俺だけども、震えながら一生懸命に互いを助けようとしている彼女達を幸せにできなくても、普通に過ごせるようにしてあげたいと思う。その為に俺も鬼畜外道になろう。

 

「わかった。今はそれでいい。それで二人は奴隷なんだよな?」

「そうだよ。だから新しいご主人様の好きにしていいの」

「はい。私達はご主人様に売られました。新しいご主人様だと思った方と話したら、違うとの事でここで待機するよう言われました。新しいご主人様が品定めに来るのでしっかりとその方に気にいられるようにしないとどうなるかわからないとも……」

「そうなのか?」

「怖い。凄く怖い人でした」

「亜人は野蛮で凶暴な邪悪なる者達です。私達も新しいご主人様が出来ないと処分されて食べられるんです……」

「そんな事はない。ここは亜人達も人も対等に暮らせる国だって言ってたし、大丈夫だ」

「そんな国がこの世界にあるはずが……」

「まあ、そこは自分達の目で見て、過ごして判断するといいんじゃないか? 今は新しいご主人様に俺がなるって事だけを覚えてくれたらいい」

「わかりました。妹も一緒でいいでしょうか?」

「一緒がいいです。なんでも言う事をききますから、お願い、します」

「もちろん、二人共一緒だ」

 

 そう言うと二人はホッとしたのか、可愛らしい微笑みを浮かべた。そんな二人には悪いと思うが、最初は奴隷として扱わせてもらう。多分、その方が一番手っ取り早い。

 そう思っていると、扉が開いて森人族と人族の女の子が入ってきた。森人族の子は銀色の髪の毛をした綺麗な大人の女性で、人族の女性の方は赤い色の髪の毛をした綺麗で小悪魔なような感じの少女だ。

 

「時間になりました。お三人様方、お選びになった子達をこちらに連れてきてくださいませ」

「えっと、運ぶのはどうしたらいいんですか?」

「そんなのお姫様抱っこに決まってるじゃない。女の子の憧れよ? あ、ちなみに自力で運んできなさいよ。それぐらいできないと彼女達を自分の物にする最低限の資格もないからね」

 

 玉井の言葉にルサルカと名乗ったはずの少女はそう言った。隣のおそらくアルテナであろう女性は否定をしないので事実なのだろう。アルテナの方は子供の姿しか見えていなかったけれど、一応大人の姿になるとは聞いていたので間違いないはずだ。どちらも沙条のお嫁さんで確実に俺達よりも格段に強いのはわかる。特にルサルカはあの化け物のような強さを持っていた清水のほっぽちゃんとも戦えていたし。

 

「運ばないといけないみたいだが、いいか?」

「はい。恐れ多いのですが、ご主人様がそれでいいのならよろしくお願いいたします。ただ……」

「お姉ちゃんと一緒がいいです」

「……わかった。頑張ってみる。ところで二人の名前を教えてくれないか? 俺は相川昇。名前が昇で苗字が相川だ」

「苗字があられるのでしたら、貴族の方なのですね。私達に名前はありません。ご主人様から頂いた名前が私達の新しい名前となります」

「ご主人様の好きにつけてください。どんな物でもいいです」

 

 彼女達にとって名前すら主人の所有物なのか。名前なんてすぐに思いつかない。前のを参考にしたらいいか? 

 

「前はなんて呼ばれてたんだ?」

「私は肉人形でした」

「べ……」

「いやいい。聞かなかったことにする。前の事は完全に忘れてこれからは俺が与える名前でいてくれ」

「「はい」」

 

 どちらも女の子につけるには最悪な名前だ。正直、思いつかないが必死に考えるしかない。最後まで面倒を見るし数十年は一緒に居る事になるんだろうし、変な名前はつけられない。それにこんな美少女二人を妻にできるチャンスでもある。ただバイクが好きな俺なんかじゃ絶対にお近付きどころか、友達にすらなれないような存在だ。地球だったらアイドルで十分にトップを立てるような子達だし、チャンスは逃せない。

 

「ティリエルとミュリエルでどうかな? 二人を呼ぶときはリエルで統一もできるし、姉妹なんだから名前も共通事項があった方がいいと思うんだけど……」

「ティリエル……」

「ミュリエル……」

「嫌なら別の物を考えるけど……」

「いえ、ありがとうございます。ご主人様から頂いたティリエルという名前、大切にいたします」

「私もミュリエルの名前、嬉しいです……ありがとうございます……ご主人様」

 

 二人共、嬉しそうに笑顔を見せてくれたので、良かったと思う。

 

「じゃあ、ミュリエル、ティリエル、一緒に運ぶからな」

「「はい」」

 

 あえて最初なのでリエルと呼ばずにそれぞれの名前を呼んで、姉のティリエルの上に妹のミュリエルを乗せる。ミュリエルはティリエルに抱きしめてもらって固定し、俺はティリエルの太股に手を回してお尻を掴む。太股だけだと肘から先が無いので滑り落ちるかもしれないからだ。もう片方の手は背中に回して脇を掴む。彼女のお尻の感触が伝わってきて嬉し恥ずかしの状況だが、やるしかない。

 

「ん……」

 

 俺がお尻を触っても拒否する事はなく、されるがままだ。なので彼女達を持ち上げるのだが、軽く持ち上げられた。俺の筋力がこの世界に来てレベルアップした事で強化されているのもあるが、彼女達がろくに食べられていなくて軽いのもあるだろう。

 ルサルカとアルテナの二人の場所に移動すると、玉井が狐獣人の銀髪に一部黒が混じっている美少女を一人連れてきていた。彼女は耳と尻尾が無残にも切り落とされていた。

 

「相川は二人なのか」

「まあな。二人は姉妹だし、離すのは可哀想だろ」

「確かにな」

「で、そっちは一人か」

「俺なんかだと一人の面倒も見切れないかもしれないからな」

「後から追加しても全然構わないし、いいんじゃないかしら?」

「最初から複数人を選ぶよりも、好感が持てますね」

「ありがとうございます」

 

 俺は持たれないか。まあ、別にいいけどな。

 

「ひぃーひぃー」

 

 声が聞こえてそちらを見ると、仁村が片手に一人ずつ、正面と背後に一人ずつ抱き着かせ、頭に小さい子を乗せてやってきた。五人とか、頑張りすぎだと思う。所々土魔法で足場を作ってやってる辺りは流石だと思う。

 

「えっと、一人、二人、五人ですね」

「うん、ガッツはあるわね。いいんじゃない?」

「ちゃんと娶ってくれるなら問題はありませんが……」

「それは私達がどうこう言う問題じゃないしね。助けて立ち直る面倒は見てあげるし、彼女達が知らない世界を教えてあげる。でも、そこからどうするかは彼等と彼女達次第よ」

「そうですね。さて、全員揃ったようなので契約を始めます」

「契約、ですか?」

「そうよ。安心していいわ。なんの問題もないただの意思表明だから」

 

 ルサルカが両手をパンパンと叩くと地面に巨大な赤い魔法陣が現れた。何が書かれているかわからないが、その上でクルクルと踊りながら詠唱を行っていく。

 

「では、今からする私の質問に答えてください」

「「「はい」」」

「貴方達はその子達を最後まで面倒を見て、共に幸せになるための努力を惜しまない事を誓いますか?」

「「「はい」」」

「貴女達は自らの主様となる彼等に尽くし、支えて共に幸せになる事を誓いますか?」

「「「「「誓います」」」」」

「わかりました。ここに誓いがなった事を王の名代としてアルテナ・ハイビストが認めました。皆様の未来に祝福があらん事を……」

 

 魔法陣が光り輝き、俺達と彼女達の中から白い光みたいなのが出て交換されていく。それが身体の中に入ってくると温かい感じがして、より彼女達を近くで感じられる。その感じを気持ち良く思っていると左手薬指に指輪が現れる。不思議に思って二人を見ると、二人の左手薬指にも指輪が現れていた。

 

「はい契約終了。基本的にクーリングオフはないからそのつもりでね」

「では、頑張って共に幸せを掴んでください。心の底から願っております」

「ちなみに本当に大事にしないと死ぬからね」

「「「え?」」」

「今使った術式はエンゲージリング。生命を共有する魔法なの。彼女達が死ねば貴方達も死ぬし、その逆もしかり。じゃ、頑張ってね~」

「ちょっ!?」

「おいまっ」

 

 ルサルカはあっさりと帰っていった。隣に残ったアルテナが説明してくれたが、事実のようだ。しかも抜けない呪いのアイテムだ。

 

「彼女達の側からは選べないのですから、それ相応のリスクを負うのは当然かと存じます。ですが、私共も鬼ではありません。ですので、一週間。共に過ごしてどうしても合わない。一緒に生活するのも苦しいとなれば契約を解除します。その場合、男性側にペナルティは借金が残る程度で他はございません。女性側には重い副作用が出ますがお気になさらないでください」

「それってどうなるんだ?」

「相川様のご質問にお答えするならば、最悪死にます。というのも彼女達は見ての通り、身体の一部が欠損しております。その分だけ生命力はかなり弱まっております。互いの命を共有したのは死なせないための処置でもあるのですが、解除となると相応の負担がのしかかります。生き残るかは五分五分かそれ以上に危ないと思います」

 

 説明された理由は納得できるものだった。確かに何時死んでもおかしくない子もいる。仁村は特にそういう子達を選んでいる。

 

「それと欠損部の治療にも体力が必要ですので、足りない分を補ってもらう意味もあります。ですので、一週間だけは我慢するよう、せつにお願い申し上げます」

 

 俺達は反論する事はできなかった。ユーリちゃん達の技術力なら助けられるのではないかと思うし、ブラフの可能性もある。だが、ティリエルとミュリエル、リエルの二人との会話を思いだしたのだが、この子達をこの国に解き放つのはかなり危険があるのではないかという事だ。エヒトを信仰しているのは間違いない。だったら、連中の良いように手駒として使われる可能性も十分にある。そのリスクを犯すぐらいなら……それこそ殺してしまった方がいいのかもしれない。そうしないためにこういう手段を取ったのかもしれない。だが、逆に言えば……ここまで譲歩して彼女達の事をどうにかしようとしたのが裏目に出たり、無理だと判断したりされると待っているのは殺されるということだ。少なくともルサルカは殺る。そういう感じがする。

 

「勘がいい奴は長生きできないわよ?」

「「「っ!?」」」

 

 慌てて飛び退るとリエル達もビクッとなった。気が付いたら後ろにルサルカが居たのだ。

 

「持ってきてくれましたか?」

「ええ。はい、車椅子、これで彼女達を指定の部屋まで運びなさい。あ、もちろん自室に連れ込んでもなんの問題もないからね。世話の仕方は冊子を見るか、他の女性に聞きなさい。手伝いはしないけれど教えてはくれるわ」

「案内はわたくしがします。こちらへどうぞ」

 

 アルテナの案内に従って移動していく。二人は不安そうだが、きっと大丈夫だ。俺がなんとかしてみせる。

 

 

 




彼女達は全員治療されますし、死ぬ事はありません。ちゃんと順番に助けられます。
相川達は沙条達にも清水にも、教会連中にも恐怖している感じです。つまり、弱っているところにハニートラップを仕掛けているのです。本人達にそのつもりはなくても亜人が相手なのでこの国から離れる事はできません。
本当の調略とは相手に気付かせず、自ら望んで行った結果、雁字搦めになっていて味方するしかないという状況に持ち込む事であると思います。
ルサルカと恵里ならこんなふうに考えていてもおかしくないと思います。

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