ありふれた職業の召喚(ガチャ)士で世界最弱   作:ヴィヴィオ

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ユーリ

 

 

 私の名前はユーリ・エーベルヴァイン。お兄ちゃんを助けるためにトータスという異世界に自ら召喚されました。様々な並行世界に存在する全ての私を統合し、永遠結晶エグザミアの力を使ってお兄ちゃんが行った召喚へ干渉し、この世界の管理者を誤魔化して一番弱くて非力なINNOCENTの私をメインとして、私達の分体と呼べるべき存在を送り込む事に成功しました。

 その為にアバターやデバイス、紫天の書などを持ってこれなかったのが痛いです。でも、管理者の目をかいくぐるには仕方がありませんでした。ですので管理者に見付かったり、見逃されている内に力を蓄えるか、取り戻せばいいのです。幸い、知識には自信があります。

 

 そもそもINNOCENTの私は飛び級で教育課程を終えて留学生として日本にやってきました。ホームステイ先のグランツ研究所で学校には通わずに研究の手伝いをしていました。そこで普段は研究所の受付やグランツ博士の助手をしています。

 グランツ博士が開発した体感型のシミュレーションゲーム、ブレイブデュエルを置いているショップ間の交流をとりもったり、イベントを企画して運営するなど自分なりのやり方でブレイブデュエルの発展を頑張りました。ですが、やはり私や親友のディアーチェ達だけでは限界があり、身体が弱い事も合わさって苦労していました。そんな時に助けてくれたのがブレイブデュエルをしに来たお兄ちゃんです。

 私が担当してプレイヤー、デュエリスト登録を行い、アバターの作成などをお手伝いしました。その縁からよくブレイブデュエルについて相談していただき、仲良くなってお手伝いや一緒にイベントの企画や運営なんかもしました。

 非力な私では達成できない事がいくつもあり、力仕事は全部任せる事になってしまいましたし、おんぶして運んでもらった事もあります。

 気がついたら、グランツ研究所に所属してくれているデュエリストの中でも上位ランカーの一人になっていました。私とお兄ちゃんのアバターカードを合わせて行うユニゾンなどして、他のショップ主催のイベント攻略とかも凄く楽しかったです。互いに自分のカードをいっぱい持っているのは少し恥ずかしかったですけれど。

 

 これが普通の世界で子供として生活していた私の全てです。ですが、並行世界の私はまた別です。

 

 一つの並行世界で私は闇の書の奥深くに封印されていた無限の力を持つ永遠結晶エグザミアを核とするシステム、アンブレイカブル・ダーク(システムU-D)を内包しています。

 ですから、争いごとを好まない私は自身の復活を望んでいませんでした。

 私の封印が解除されればエグザミアのあまりの出力で暴走してしまい、周りに破壊と混沌を巻き起こして最後には自壊してしまうといった望まぬ事態を引き起こす事が分かりきっていました。

 ですから、改造された夜天の書、闇の書の中で紫天の書と共に暗い暗い何も無い場所でずっと一人で過ごしていました。

 そんなある時、闇の書の防衛プログラムが暴走し、主人であるはやてさんもろとも世界を破壊しようとしました。それをなのはさん達が防ぐ過程で闇の書の防衛プログラムを分離させました。その時に暴走する原因の一部となっていた紫天の書と私は放りだされてその世界を彷徨います。

 紫天の書に搭載されている防衛プログラム、マテリアル達が起動し、闇の書が暴走した時に取り込んでいたデータからディアーチェ、シュテル、レヴィを作成し、なんやかんやあって私を蘇らせました。当然、暴走した私をなのはさん達と協力して止めてくれました。

 こちらの世界だとお兄ちゃんが応援してくれました。これはもう一つの世界と同じですね。

 そちらでは惑星エルトリアに夜天の書と共に転送され、海底で眠っていた所をエルトリア再生委員会のイリスが見つけ、覚醒させられました。

 こちらは暴走せずに委員会に引き取られてイリスと共に私の持つエグザミアの力で惑星環境の改善事業に従事し、とても平穏な時を過ごせました。

 この時に弱っていた所を助けた3匹の子猫が後にマテリアルの素体として、ディアーチェ達になりましたが……その後は……色々と大変でした。詳しくは思いだしたくもありません。

 ですが、最終的には皆で仲良くなってエルトリアの復興をさせました。こちらの世界では復興を直接的にお兄ちゃんがお手伝いしてくれました。

 このように私は認識しています。例えこれらの記憶が作られたものだとしても、私にとっては実際に経験し、お兄ちゃんと共有した事実にかわりはありません。

 ですから、本当は私が存在しておらず、召喚される過程で参照されたデータから記憶が作られたとしても問題はありません。

 実際に出会っていなくても、お兄ちゃんが私の為に沢山の時間や労力、お金を使って一緒に行動してくれた事は事実ですから。それに愛してもらえていることは契約によるパスから温かな気持ちが伝わってくるのでわかります。

 だから、私はお兄ちゃんのユーリ・エーベルヴァインとして全力で支えてお手伝いします。それに異世界の技術を勉強し、様々な事を経験するのはちょっと楽しみです。

 

「ユーリ、どうした? 具合でも悪いのか? 少し休むか?」

「はい! 鈴は具合が悪いです! 休ませて!」

 

 鈴さんは余裕が大分ないようで、私に構ってくる事はありません。そもそも鈴さんの行為は……いえ、別に今はいいですね。今は必要のない事に思考を割くのは無駄になります。

 

「却下だ。谷口はノルマを終えてからな」

「そうだよ。後二時間以内に八個のバッテリーを作らないといけないんだから、休むのはそれが終わってからだよ」

「ひぃ~!」

「はい、鈴ちゃん。頑張って」

 

 心配そうに聞いてくるお兄ちゃんと周りの状況に苦笑いしながら、大丈夫だと答えます。するとお兄ちゃんはスマホで私の体調をステータスという形でしっかりと確認しました。

 

「信じてくれないんですか?」

「ユーリはたまに溜め込んで無理をするからな。例えば──」

「あう」

 

 実際に体験したイベントの事を言われてはどうしようもないので、私は大人しく受け入れます。そんな私をお兄ちゃんは頭を撫でてくれました。気持ち良くていいのですが、眠りそうになるので止めて欲しいです。

 いえ、やっぱりこのままがいいです。ですから、すぐに作業を再開します。タブレットを分解し、構造を把握。それから私の知識と合わせて設計し、理論をハジメさんに説明して新しいタブレットを作成します。

 その作成したタブレットを使って次の設計図と理論をわかりやすく説明し、投影型のディスプレイを作り出してもらいます。これがあるとないとでは作業効率が全然違いますからね。

 

「沙条、どう考えてもユーリと南雲がチートなんだが……」

「だよな。量子コンピュータの小型化ってマジかよ」

「あの、ユーリちゃん、要求されているバッテリーの大きさが小さすぎるから、無理だよ?」

「では、もう少し大きくしましょう。最悪、魔力は自前の物を使えばいいですからね」

 

 ハジメさんに伝えて部品一つ一つを大きくしていきます。

 

「白崎と清水は出来たバッテリーを届けて魔力を入れるように伝えてきてくれ」

「わかった」

「うん。ついでに何か飲み物とかとってくるね」

「頼む」

 

 二人が出て行ったので四人で作業です。お兄ちゃんは鈴さんが張った結界を箱で閉じ込めて魔力を吸収させて溜め込でいきます。魔力爆弾としても使うために箱型にしてありますよ。

 魔力がどれだけ溜まっているかをわかりやすくするためにメモリも刻んであります。魔力にはそれぞれの色があるので分かりやすいです。なくても着色すればいいだけです。

 

「ねえ、鈴は思うんだけど、この部屋だけ数世代……数世紀、時代を飛ばしてない?」

「飛ばしているな」

「発達した科学は魔法と変わらないって本当なんだね」

「そもそもユーリの世界は魔法と科学が融合している……いや、今はINNOCENTの方が強いから純粋な科学技術か」

「どちらにしろ、凄いよ魔科学!」

「だな」

 

 ハジメさんがお願いした部品を錬成してくれたので、組み立てていきます。大型で旧型の物ですが、デスクトップ型量子コンピュータと投影ディスプレイの完成です。

 

「あ、そうだ。そういえば槍ってどうするの?」

 

 作業を終えたハジメさんが身体を動かして伸びをしながらお兄ちゃんに聞きました。

 

「槍?」

「疾風の槍だったかな。SRで出た奴」

「忘れてた。誰も使わんだろ」

「クラスの人なら、誰かは使うんじゃない?」

「嫌、ここで手伝ってくれている奴以外には渡すつもりはないな」

「そうなんだね……」

「あの、その疾風の槍ってどんなのなんですか?」

 

 私、それについて聞いていません。

 

「ユーリちゃんは知らないんだ」

「はい」

「鈴もわからないよ。どんなの?」

「えっと、移動速度が上昇して、魔力の続く限り延々と風を操るって奴だよ」

 

 移動速度が上昇して風を操る……あ、これは使えますね。

 

「……ちょっとバッテリーの仕様を変更して機材を追加しますね」

「「「え”」」」

 

 直に設計図を投影ディスプレイを操作して書き上げていきます。

 

「ノルマが間に合わないぃぃぃぃ!」

「あはははは」

「この修羅場中に仕様変更……稀によくあるけど、地獄だ……」

「……無、理だ……」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 二時間後。工房の中を半分ほど占領する大きな黒い箱ができました。大型の量子コンピュータではありますが、他にも色々と使える代物です。

 

「では、お兄ちゃん。ここに槍を突き刺してください」

「わかった」

 

 お兄ちゃんが黒い箱の側面にあるスリットに槍を突き刺します。ハジメさんが安全の為に槍をしっかりとロックしていきます。こちらにある投影ディスプレイにシステムがちゃんと動いている事を確認しました。

 

「鈴さん、そこのスイッチを押してみてください」

「鈴がいいの?」

「はい。どうぞ」

「やった! じゃあ、スイッチオーン!」

「どんなとんでもが飛び出すんだ……?」

「さあな」

「とんでもだよ」

「ユーリちゃんは凄いね」

 

 清水さん、ハジメさん、白崎さんが喋っている中、スイッチが押されて魔力が流された槍は固有能力を発動させて周りに風を発生させます。発生させた風は中にあるフィンつきのギアを回転させ、そのギアが次のギアを回転させ、運動エネルギーを生み出していきます。

 生み出された運動エネルギーは量子コンピュータを動かす動力として使用します。当然、普通に風だけでは足りませんが移動速度上昇をギアに適応させ、風も魔力によって速度が上がっていきます。生み出した運動エネルギーを今度は魔力に変換させれば問題ありません。私は闇の書として様々な知識や技術、記憶を収集してきました。それらもしっかりと私の血肉となっています。

 

「工作機器を使った手作業は終わりです。動力の時代と行きましょう」

「マジか」

「あははは……」

「凄いね。でも、これって……」

「あの、鈴は解放されるの?」

「魔法を付与する技術はちゃんと知っています。すでに鈴さんの結界に関しては沢山の解析対象があったので、問題なく終わっています」

「やった、休みだ!」

「良かったね」

「ふむ。三時間の休息を認めよう」

「待って! 三時間! 鈴死ぬよ! お願い、なんでもするから寝かせて!」

「「「なんでもだと!」」」

「南雲君?」

「お兄ちゃん?」

「「なんでもありません」」

 

 香織さんと二人でとめます。でも、すぐに清水さんを二人が見出しました。清水さんは視線を逸らします。

 

「あ、ハジメさん、コンベアの作成などが必要です。それと充電したバッテリーの切り替えなどに人手も要ります」

「オッケー、やろうか」

「手伝うぞ、ハジメ」

「よろしく」

「俺も手伝う。だから、デバイスを作れないか?」

「私のとお兄ちゃんのが優先です。その後はハジメさんで鈴さん。白崎さんなので、その次でいいならいいですよ。順番に作ります」

「わかった。インテリジェンスデバイスは……」

「流石に無理です。今は素材と機械が足りませんし、ストレージデバイスが限界ですね。それも自分に合った魔法でないと効率が悪いです」

「じゃあ、闇魔法で何か頼む」

「わかりました」

 

 闇魔法ですか。ディアーチェやはやてが使う重力やジャガーノートとか、ラグナロクブレイカーとかですか? アレはまず現状では無理ですね。魔力が足りません。

 

「そのストレージデバイスって何?」

「私も知らないよ~」

「ストレージデバイスは待機形態と稼働状態があります。稼働状態はだいたいが武器ですね。主な役割は魔法を搭載して、発動や魔力の操作をサポートしてくれるものです」

「便利アイテムだと思えばいい」

「ざっくりだね」

「……コンピュータを搭載した武器だ。呪文の詠唱とかを肩代わりしてくれる」

「なにそれ凄く便利じゃん! 欲しい!」

「くれるって言ってるぞ」

「やった! ユーリちゃん大好き!」

「ところで、鈴ちゃん。このままだと休憩時間が三時間だけだけど……」

「あっ、朝まで寝させて!」

「残念だったな。もう朝だ」

「朝帰りになっちゃったよ、かおりん……」

「何時もの事だよ?」

「そうだった」

「明後日にオルクス大迷宮でしたか」

「そうだな。というか、明日だな」

 

 これはストレージデバイスを急いで用意しないといけませんね。

 

「あ、私と鈴さんはペンダントでいいですよね。お兄ちゃんが買ってくれた奴です」

「ああ、アレだね。うん、いいよ」

「ハジメさんと香織さんはどうしますか?」

「僕は……」

「私と南雲君はこれでお願い。前に互いで買って交換したの」

 

 香織さんが嬉しそうに十字架のペンダントを差し出してきました。ハジメさんのはネクタイピンかな。

 

「選んだのか?」

「う、うん……記念になるから、アクセサリーが欲しいって……それで……」

「なるほど」

「わかりました。どちらもデバイスに加工しますね。一部、宝石を埋め込みますがいいですか?」

「うん」

「鈴もいいよ」

「清水はどうする?」

「待機状態が腕輪で、稼働状態は短剣がいい」

「できるか?」

「大丈夫です。ハジメさん、手伝ってください」

「ああ、わかってる」

 

 寝る時間を考えると日付が変わる前には寝たいですね。頑張りましょう! 

 

 

 

 

 




一応、ユーリについてあらましを書きましたが、詳しくは映画やゲームをどうぞ。なお、INNOCENTは漫画しかしりません(ぁ
ユーリは自分の存在がどんなものかをちゃんと認識しています。好感度が高いと優先してくれます。低いと事実を知ったら暴走する危険もあります。どれだけ愛を注いだかによります。
なお、ユーリがエグザミアを使って割り込んでこなければ……FGOのシェイクスピアになったもよう(ダイス)
香織は髪飾りにしようと思ったけれど、原作の服だと首につけている奴をハジメのプレゼントにしたらいいと思いましたので、被るけどペンダントにしました。
ペンダントって束縛とかの意味合いがあるんですよね(ぁ

次回はオルクス大迷宮です。


つまり、絶望の時間が近付いています。頑張れハジメ君! ユエ×ハジメを達成するためにお前は絶対に落とす!(断固たる決意
ただし、多少はイージーモード? ドンナーがデバイスになってますからね!

結論。ユーリの知識チートがやばい。記憶や知識とかもちゃんと統合されているので、闇の書と共に渡り歩いた情報はある。すくなくとも映画版の技術は絶対に持っています。それを十全に使いこなせるだろうINNOCENTユーリの能力。うん、どう考えてもNじゃないね! FGOでいう昔は外れサーヴァントとなっていた諸葛孔明先生が初期から覚醒して超当たりサーヴァントになっていた
ようなもんだ。

清水君ヒロインアンケート 人になるます

  • 波の鳥 フ
  • 謳の鳥 コ
  • 空の鼠 ク
  • 深海のナニカ レ

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