ありふれた職業の召喚(ガチャ)士で世界最弱   作:ヴィヴィオ

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ネコネの式神バージョンが諭吉一枚を生贄にして召喚されましたので初投稿です。


とある魔術師の受難

 

 

「起きなさい。早く起きないと大変な事になるのだけれどね?」

「っ!?」

 

 知らない女性の声が聞こえて慌てて目を開く。するとこちらを覗き込んでいる青みのかかった銀髪の女性が居た。彼は俺が目覚めた事に気付くと、少し離れる。

 

「俺はいったい……ここは……どこですか?」

「ふむ。ここは何処かと聞かれたら、現実と夢、世界の狭間と答えよう。まあ、それは置いておいて、今はこちらでお茶をしながら話をしようじゃないか。天之河光輝君」

 

 起き上がりながら周りを確認すると、地面には花が咲き乱れ、暖かな陽射しが差し込む場所だった。少し離れた場所には塔が見え、その手前に白色の丸い机と椅子が用意されているようだ。

 

「俺は急いで戻らないといけないんだ! はやく戻らないと雫やリリアーナ達が奴隷にされてしまう!」

「ああ、それならもう手遅れだよ」

「なんだと!?」

「君が気絶させられてからすぐに女性陣は奴隷にされ、自らついていく事を選んだ男性陣はアビゲイル・ウィリアムズによって転移されていった。もう彼女達は間違いなく手遅れだね」

「なら急いで助けないと!」

「君には無理だ」

「できる! 俺は勇者だから必ず助けられる!」

「そう言って何人を犠牲にしてきたのかな?」

「っ!?」

「今回の件は全て君が招いたことだよ」

「それはっ!」

「彼、沙条真名が悪いと? いいや、彼は最初から君の相手をする気なんてなかった。あのまま放置していれば何事もなかったさ。うん、騎士と神官、数十人が死ぬ事もなかったし、女性陣が奴隷にされることもなかった。全て君の責任だ。最初の遊びで止めておくべきだったね」

「だがっ!」

「君の正義感からしたら、いや日本からしたら奴隷は悪だね。確かにそれはそうだ。だけど、あの世界では奴隷という存在は認められている。君達が居た世界でも過去にあっただろう? それと同じ時代だと思えばいい。君の理想に現実が追いついていないんだ。それに君は否定するばかりで代わりの案を用意していない。それなら誰も納得しない。同じ内容で名前だけが違う別のシステムが用意されるだけだよ」

 

 反論しようとして声が出なかった。だから、睨み付けると、彼女はやれやれと言った仕草をした。

 

「まあ、座りたまえ。どうせここは君にとっては夢の世界だ。現実に戻ったところで朝に目覚めるだけさ」

「本当にそう、なのか?」

「ああ、そうだとも。何せ夢魔の私が言うんだから間違いない」

「夢魔……夢を見せる魔物か!」

「妖精だよ。私は半分だけどね。ああ、君をどうこうするつもりはないよ。ここに招いたのはアーサーに頼まれたからだ。私は彼に少し負い目があってね。本来は干渉せずに見て楽しむだけだったのだが、友に頼まれたら仕方がない」

「アーサー?」

「おや、知らないのかい? アーサー・ペンドラゴン。騎士王とも呼ばれる者で、植え付けられた君の理想の存在だ」

「馬鹿なっ! アーサー・ペンドラゴンは創作のはずだ!」

 

 アーサー王の伝説。それなら俺も確かに知っている。かなり有名な話だ。用意された椅子に座りながら話を聞く。

 

「君達の世界ではそうだったね。だが、私達の世界では史実だ。異世界があるのだから、平行世界があってもおかしくないだろう?」

「それは……」

「まあ、本来は交わるはずがなかったんだが、エヒトが君達を召喚して道を作り出し、沙条真名が鍵を使って扉を開いてしまった。門だけなら問題はまだなかったのだが、彼等がこんな娯楽を見のがすはずがない」

「何を言っているんだ?」

「ああ、この話は君にとってはどうでもいい事だったね。話を戻そう。私はアーサーから君を助けるように依頼された。このままでは君は死ぬ」

「そんなわけ……」

「戦争に参加しているんだから死ぬよ。それとも勇者だから死なないとでも思っていたのかい? 沙条真名が、キングプロテア達を使って君を殺さなかったのは彼にとって君が生きている事がメリットだったからだ」

「メリット?」

「ああ、そうだ。自分が生贄にされないために君を捧げようとしているんだ」

「なんだとっ! そんな事は許されていいはずがないだろ!」

「君からとってはそうだが、彼からしたらそうじゃない。人は身内を除けば自分の事を優先するからね。君は彼に嫌われているのだから、自分が助かるために捧げるのを止める理由はないだろう。それとも嫌われてないとでも思っていたのかい?」

 

 そんなはずはない。と、言おうとしたが、確かに逆恨みされている可能性もある。俺は沙条や南雲の事を思って何度も注意してきたのだから。

 

「わかった。それで止める方法は?」

「正直に言えば現状ではないね。君と彼とでは実力差がありすぎる。それに君の身体は既に改造されてしまっている。それを元に戻すのは私でも不可能だ」

「待ってくれ。俺の身体が既に改造されている?」

「ああ、そうだ。君の身体はアーサーの身体へと作り変えられている途中だ。魔術についてはわからないだろうから、簡単に言うと、君の身体の部分をアーサーの身体と置き換えていっていると思ってくれ」

「そんな……」

「だからこそ、君はアレだけ強くなれたんだ。心当たりがあるだろう?」

「いや、有り得ない! 女神様がそんな事をするなんて!」

「女神か、言い得て妙……いや、彼女は女神ではない。女神を作り上げようとはしていたがね。どちらにしろ、その彼女、沙条愛歌が黒幕だ」

「沙条愛歌……沙条真名と関係があるのか?」

「あるだろうね。平行世界の同位体か、はたまた名前が似ていただけか。それでも縁は紡がれるだろう。名前というのは我々の世界では重要だからね。どちらにせよ、君は限界突破をしたり、聖剣を投影したりして力を使っていくとどんどんアーサーへと変化していく。そして最後には君がアーサーの魂に押し潰されて死に、新たにアーサー・ペンドラゴンが再誕する。これが沙条愛歌の計画だ。その敵として沙条真名が立ちはだかったといえるね。うん。君の性格まで計算して考えられた彼等の計画だよ。信じられないと思うから、少しアーサーの記憶を見せてあげよう(王の話をするとしよう)。既に君の中へとインストールされた物を呼び起こして鮮明にするだけだから問題はないよ」

 

 青年が俺の額に杖をあててくると、直に意識が飛んで夢を見た。そこはブリテンで、俺はアーサー・ペンドラゴンの横で彼の経験を見ていく。

 そして、彼が死んでからサーヴァントとして召喚され、沙条愛歌と共に聖杯戦争に参加する。そこで彼女は地獄を作り出した。数十人を超える少女を生贄にしてアーサーの願いを叶えようとしたのだ。その事を知ったアーサーが彼女の胸を貫いて殺した。

 次の記憶は彼女が聖杯にとりついて甦り、ビーストと呼ばれる獣を生み出そうとしていた時だった。妹すらも犠牲にしてアーサーを手に入れようとする彼女は狂っている。

 

「はい、お帰り。どうだったかな? 今、君に力を貸している女神とやらは彼女だ。彼女の目的はあくまでもアーサー。君なんてアーサーの身体を作るための付属品でしかない」

「ふざけるなっ!」

「至って真面目だとも。それほど彼女は狂っている。だからこそ、沙条真名は君に押し付けようとしている。うん、私でもそうするよ。だが、アーサーは流石に君の事を不憫に思っていて、私にお願いしてきた。どうか、彼女の計画を潰してくれとね。そこで私は考えた。もう身体はどうしようもない。なら、発想の転換だ。君の身体をアーサーに作り変え、精神だけを君になるように守ればいいとね。その為には色々としないことがあるが、まあアーサーも協力してくれるから大丈夫さ。何せ私はキングメーカーと呼ばれるからね。にわかな彼女よりも実績はある。実力は及ばないがね」

「及ばないのか……」

「彼女は文字通りの全知全能ではあるからね。出し抜くのは非常に難しい。まあ、不可能ではないから安心したまえ。全ては君の努力次第だ。それとこの話を受ける受けないも、信じる信じないも君の自由だ。私は君が断るなら干渉しない。ただ見守るだけだ」

「少し、考えさせてもらっていいですか?」

「いいだろう。時間はそう残されていない。彼女に気付かれたらどうしようもないからね」

「全知全能なのに気付かないんですか?」

「君は道端を急ぎで移動している時に蟻を気にするのかな? 答えはしないだろう。彼女はアーサーとの幸せなに日常を思い描いて妄想にでも浸っているだろう。このままいけば彼女の計画は成功し、アーサーは再誕して……彼にまた殺される事になるのだろう」

「え、意味ないんじゃ……」

「それを理解できていないのだよ。いや、理解していても認められない。何せ彼女が惚れたのは正義の騎士王、アーサー・ペンドラゴンだ。彼女の様な悪逆非道の存在を許す? 否。その時点で彼女にとっての理想の王子様(アーサー・ペンドラゴン)ではなくなるだろう」

 

 つまり、絶対に報われない恋というわけか。妥協するか諦めるかしない限り幸せにはなれない。

 

「彼女を助ける事はできるんですか?」

「ふむ。彼女の心がどうなるかだね。まあ、普通は有り得ないが……今は正直わからないね。色んな存在が介入してきているから」

「そうなんですか……」

 

 話していると、突然地震が起きた。周りを慌てて見ると空に裂目が現れている。

 

「おやおや、招かれざる客が来たようだ。話はここまでとしよう。君が何時でもアーサーの記憶を覗けるようにはしておいた。しっかりと彼の記憶を見ながら君に足りない物を勉強するといい。それが君の助かる道でもある」

「ありがとうございま──」

 

 お礼を言っている最中に後ろに引っ張られていくような感じがしていき、俺はこの世界から元の世界へと戻れた。起き上がると、直にメイドさん達が他の人を呼んできてくれる。やってきたメルド団長に話を聞くと、リリアーナや雫達は奴隷にされて連れ去られたようだ。

 

「彼女達を、皆を救出しに行かないといけません」

「だが、それは……」

「わかっています。相手の戦力が巨大だということも。ですが、俺の責任です。なんとしても助け出してみせます!」

「わかった。だが、まずは身体を癒して力をつける事からだ」

「はい!」

 

 身体が治るまでアーサー王の記憶でしっかりと勉強しよう。まだ胡散臭い彼を信じるかはわからないが、それでも勉強になるのは事実だから。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

「やれやれ、まさか永遠に閉ざされたこの場所に無理矢理来るなんてね」

 

 空間が避けてやってきたのは緑色に近いような黒髪の青年だ。彼は明らかに私よりも強く、存在の規模が違う。正真正銘の主神クラスの神である。

 

「やあやあ、初めまして。マーリン殿。少しお邪魔させてもらうよ」

「邪魔するなら帰ってくれないかな?」

「では帰ろう。要件が済んだらね」

「……要件とは何かな?」

「ああ、ここでかの世界を観察させてくれるだけでいい。かの世界に私の同胞であり、弟子が居てね」

「その繋がりを辿ってきたのか」

「その通りだとも。既に閉じていた世界の門は沙条真名と鍵の巫女、アビゲイル・ウィリアムズによって開かれた。我々は自由を得た。そうだろう、観測者よ」

「その通りだ。()()は観測されてしまった。その上で平行世界の運用がなされた。もはや世界と世界を切り離していた門は開いている」

 

 だからこそ、私も干渉できるわけだ。ここは私の(Fate)世界ではなく、違う世界である。だからこそ、私という存在は存在しない。生きて出られない私もここでなら出ていける。むしろ、無理矢理にでもぶち壊されたのだから今ならここからだって普通に出られるだろう。やらないが。抑止力案件だ。仕事をして欲しい。

 

「山の翁に来て欲しいが、彼でも貴方は殺せないかもしれないね」

「私を殺したければマリィを連れてくるといい。私は彼女の腕の中で死にたい」

「変態か」

「否定はせんよ。それよりお茶をもらおうか」

「図々しいなぁ!」

 

 椅子に座った異界の神にお茶を出す。

 

「ああ、もっと数がいるはずだ」

「……ここは集会場じゃないぞ!」

 

 言葉を発すると同時に門が出現し、扉が開くと可愛らしい声が聞こえてくる。

 

「夢の世界でもあるなら、私のテリトリーよ」

 

 門から現れたのはアビゲイル・ウィリアムズ。その後ろからは名状しがたき神々が入ってくる。

 

「これでいいかしら、お父様、叔父様」

「OAU)R#)UHTOF」

「=#U)EKMFD? LS#」

「ええ、それじゃあ帰るわね」

「連れて帰ってくれないかなぁ!」

「ごめんなさい。これからマスターとお楽しみなの。マスターに私の水着をいっぱい褒めて可愛がってもらうのだから、ごめんなさいね」

 

 そう言って彼女は本当に帰る準備をしていく。残されるのはヤバイ神々だけだ。

 

「こらそこ燃やさない! 喧嘩しない!」

「初めましてヨ……おっと、あくまでも本体ではないのでその名前は駄目と。なるほど、私もそうだ。だが、こちらは名乗らせてもらおう。私はメルクリウス。よろしくお願いする。貴方達には感謝しているのだよ。お蔭で私も面白い場所が見つかった」

「T#EKFPKGPERI」

「全ては計画通りに進んだと。まあ、そうだろうね」

「あら、もうやっているみたいね。お邪魔するわ、マーリン」

「お前の仕業か! 沙条愛歌!」

 

 次に転移してきたのは金髪の幼い少女。姿だけを見れば可愛らしいが、中身と力がドロドロの臭い奴だ。

 

「アーサーを手に入れるためだもの。アビー、ありがとう」

「こちらこそ、マスターと再会できたわ。でも、マスターに手を出したら……殺すわ」

「それはこちらのセリフよ? 私のアーサーに手を出したら……殺す」

 

 二人の少女は入れ違いになって移動していく。本当になんでここにしたのかな? 

 

「さて、我等の計画通り沙条真名は永劫破壊(エイヴィヒカイト)により創造位階へと至る事ができた」

「そして私がタイミングでアビゲイル・ウィリアムズをクトゥルフ神話勢が送り込んで、門と鍵が揃った」

「こうして平行世界は観測され、私の狭間へとやってきたわけだ! 退屈な神々の遊戯ってわけか!」

「その通りよ。私はアーサーさえ手に入ればいいのだけれど、どうしても普通の方法じゃ無理だとわかっているの。だから、劇薬を投入する事にしたわ」

「君なら確かに平行世界の運用なんてお手の物だろうし、繋ぎを取るのは可能か。全て仕組まれていたという事だね」

「総てが既知の世界へともたらされた一つの波紋。ああ、とてもとても楽しみだ。さあ、楽しい舞台を皆で楽しもうじゃないか」

「良かろう。神となった人か、人から神へと至る者か、それとも別の者か。今だ見ぬ未知であればよい」

 

 何時の間にかメルクリウスと名乗った神の隣に金髪の奴まで現れていた。もう本当に止めてくれないかなぁ! 

 

 

 

 

 




沙条愛歌の暗躍
1召喚されてから即座に根源へアクセスして情報を引っこ抜く。
2平行世界の運用による召喚を利用した別世界へのアクセス。ルサルカが召喚された事により、神座世界へと接続完了。メルクリウスとご相談。
 Fate世界でヨグ=ソトース等と接触して、アビーの派遣要請。この時、アラヤによって想定外のアストルフォ・セイバーを送り込まれる。
3ゆっくりまったり、メルクリウスから提供された情報を基礎として聖杯を作成。マリィ(人型で行動するギロチンの聖遺物)がいいと散々言われたので美遊を聖杯に加工する。
4趣味と実益を兼ねてアーサーを作る準備をする。また、常に召喚は狙っていく。
5創造位階へと至れば計画通りアビーを召喚して門と鍵を揃え、平行世界を観測させて実体化させる。(通路を作り出す)
6どちらでもいいので精神をクトゥルフ神話勢にぶっ壊してもらってアーサーを入れて完成。例えアーサーに襲われても異世界の知識と技術を手に入れた愛歌様を殺すのは容易くないので何度も復活ぐらい平気でしてくる。つまり、ゾンビアタックしてアーサーを捕獲して監禁ルートへ。(臭くないからね!)

以上、沙条愛歌の暗躍模様でした。そう、すべては愛歌様のお陰! 例えこの世界が神々の娯楽盤になって崩壊しようが、愛歌様のお陰なのです! さすまな!
そしてマーリンの胃は死ぬ。だって、うたわれるものの神様だってくるかもね!

メルクリウスとか、久しぶりすぎて話し方忘れてるけど多分大丈夫ですよね? ぶっちゃけるとマーリンと同じく胡散臭くて面倒な人です。

舞台裏に神様達が見てるというだけです。気にしなくていいよ。ご都合主義的に召喚されていた愛歌様チャンスの裏にはこんな計画があったよ的なものなだけです。うん、利子をつけて回収されているだけですね。何の問題もありません。
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