「何故ですか!? 救助部隊が出せないってどういうことなんですか!」
「落ち着いてください。何も助けに行かないとは言っていないのです、勇者様」
「そうだ。我が娘が連れて行かれたのだぞ」
俺の言葉に腕がない教皇イシュタルさんと国王のエリヒドさん。俺は彼等にすぐに皆を助けるために人を集めるように頼み込んだ。だが、彼等から帰ってきた言葉は否定だった。
「私としても今すぐ助けだしたいのだ」
「相手は帝国に所属しているんですよね?」
「当然、帝国には照会した。だが、帰ってきた返答はそんな者は帝国には存在しないということだ」
「なんっ!? 失礼。それではまるで……」
「ええ、沙条真名率いる者達は帝国の所属ではありません。彼等に確認したところ、彼等が所有していた帝国の品物は行方不明になった部隊が持っていたものでした。おそらく……」
「殺して奪ったというのか!?」
まさか、沙条がそこまで落ちているとは……
「でしょうな。奴等は邪悪な存在ですから……おそらく、リリアーナ姫も八重樫様も悲惨な目にあっているでしょう」
「くっ……なら尚更、助けにいかなきゃならないだろう!」
「ですが、その兵力が存在しないのだ。どこかの誰かのお陰でですな!」
貴族の言葉に歯ぎしりをしたくなる。確かに俺がやらかしたせいだ。だが、あれが間違いだったとは思わない。沙条から彼女達を救うためだからだ。いや、皆を賭けたことについては間違いだ。だからこそ、俺には皆を救う義務がある。
「勇者様が責任を取ってお助けに行っていただければよろしいかと……」
「おお、それは良い考えだな」
「ふむ。だが……」
「いえ、それで構いません」
「そうか。勇者様がそういうのであれば……志願兵を募ることを認めよう。費用は少ないが出す。これでどうか、リリアーナを救い出してくれ」
「ありがとうございます」
俺はすぐにメルド団長に話をしに行き、騎士の人達に共に助けに行ってくれることを頼んだ。
それから少しして呼び出され、期待してメルドさんの部屋へと赴いた。
「すまない。俺も行きたいのだが、無理だ。王国の守護を疎かにはできない」
「では、他の騎士の人達と……」
「いや、騎士は誰も出せない」
「どういうことですか!?」
メルド団長との間にある机を思わず叩きながら叫ぶ。
「陛下から許可されたのは志願制だ。誰も志願しなかった」
「リリアーナや雫達を見捨てるというのですか!?」
「違う。私だって助け出したい。だが……いや、なんでもない」
「メルド団長?」
「他の者達はどうなのだ?」
「皆は……」
残っていた男子の皆にも言ってみたが、誰一人として一緒に来てくれなかった。来てくれそうな龍之介は現在、治療中でそもそも意識が回復していない。
「そうか……志願してくれる者もいないのであれば仕方が無い。依頼という形で冒険者に頼んでみるのはどうだ?」
「冒険者ですか?」
「そうだ。彼等なら報酬を支払ってくれればあるいは……」
「わかりました。そちらに頼んでみます」
「すまない」
メルド団長に言われた通り、俺はギルドに向かってそこで依頼を出すことにした。
ギルドに向かう途中、街の様子が今までとは違って変だった。ギルドに入って依頼をしていると、扉の方から150㎝前後の少女と子供が入ってくるのが目に入った。
彼女は綺麗な金色の髪の毛を腰の下ぐらいまである髪の毛を二つに分けて結んでいる。そんな彼女の隣に子供がいるので、俺と同じようにギルドに何かを依頼しているようだ。
「依頼内容はリリアーナ姫様達の救出ですね。報酬は……この額ですか?」
「国からもらったのがこの額になる」
「それでしたら受ける方はおられないかと……」
「なんでですか!?」
「先の戦いの規模から計算した、相手の実力と報酬の値段がかみ合っていないのです。それに……」
「それに?」
「いえ、なんでもありません。報酬の増額はどうしますか……?」
「支援金がそれしかないから、それでお願いします。資金ができたら増額は可能ですか?」
「はい。それは可能です」
「では、それでお願いします。出発は三日後なので正門に朝、集合でお願いします」
「かしこまりました」
これで大丈夫だろう。必ず助けてやるからな、リリアーナ、雫……
三日後。どれだけ待っても誰も来てくれない。やはり、受付の人が言っていたように、あの報酬では無理だったのだろう。彼女達を助けるためなのだから、少ない報酬でも受けてくれてもいいと思うが……
「よお、天之河」
「その声は檜山か!」
彼がきたことに喜びながら振り返ると、彼の他にもローブを着た女性や騎士の人達がいた。
「彼等も来てくれるのか!」
「勘違いすんな。俺達はお前とは別口だ」
「なにを言っているんだ?」
「はっ、わからねぇのかよ? お前は見限られたんだよ。そりゃそうだろ。誰も仲間を賭けの対象にして取られるような奴と一緒に行きたいと思うかよ?」
「っ!? そ、それは……」
「だから、お前が頼んでも誰も来なかったが、俺が頼んだら別だった。それにお前は神官や騎士達が大量に死んだ原因でもある。家族が死ぬ原因を作った奴と一緒にいたいか? 後ろから刺されるのがおちだぜ」
「俺は彼女達を救うために……」
「はっ! それで仲間を取られてちゃわけねえぜ! まあ、安心しろよ。俺が雫もあいつ等も助け出して、俺の女にしてやるからよ。お前は精々、刺されないように気を付けてひっそりと生きるんだな!」
そう言って檜山は俺の隣を通って街の外へと出ていこうとする。それを呼び止めた。
「ふざけるな! 彼女達は……」
「俺のもんだ。教皇様のお墨付きだ。それにお前はもう勇者じゃない」
「俺は勇者だ!」
「いいや、エヒト様からの神託があったそうだ。天之河を勇者として認めないってな。異端審問も検討されたらしいが、それは魔族や雫達を取り戻す戦いのために見送られたそうだぜ。おい、アレを渡してやれよ」
「これが教皇様と王より発行された命令書だ」
彼等からは憎悪の籠った瞳で見詰められながら、渡された巻物を開いて確認すると、確かに俺から勇者としての権限を剥奪することが書かれており、リリアーナ達を救出するためと魔族を滅ぼすために異端者には認定されていないことが書かれていた。ただし、どちらもなさないと異端者と認定して処刑するとも書かれている。書かれていた内容に思わず崩れ落ちる。
「もうお前は終わりだよ。精々、一人で頑張るんだな」
檜山は俺の肩を叩いて仲間達と外に出ていった。しばらくそうしていると、頭に衝撃がきた。頭に当たった物を確認すると、それは石だ。
「お前のせいで姉ちゃんがっ!!」
「駄目ですよ。やめてください」
「でも、コイツのせいで優しかった姉ちゃんが……」
視線を上げてみると、いつの間にかギルドで見た子供と少女が居た。子供の方はボロボロの服を着ているが、少女の方は紺色の帽子に同色のマント。服装は白いシャツと同色のスカート。黒いベルトをつけていて、腰の後ろには装飾のあしらわれたショートソードが装備されている。そして、何より彼女の手に握られている彼女の身長と同じくらいの杖が見える。
「……姉……?」
「そうだ! お前のせいで俺の姉ちゃんは奴隷にされて連れていかれたんだ! 姉ちゃんを返してくれよ!」
「この子の姉は神官見習いとして先の戦いに従軍していたそうです。その後、姉は帰ってきていないとのことです。また、戻ってこれた人の証言から、連れていかれた一人だと判明しました」
「それは……」
「だから、ギルドに依頼しようとしたけれど、この人以外、聞いてくれなくて……」
「君は……この子の依頼を受けたのか?」
「はい。私にも彼等に接触する目的がありますから、そのついでです」
「そうか……」
「それで貴方はどうするのですか?」
「俺は……」
彼女が子供の肩に手を置きながら聞いてきた。子供は俺を憎悪の籠ったような表情でにらみつけてきて、彼女が止めていなければ殴りかかってきているだろう。
「相手の話を聞かずに信じたい事だけを信じて多数の犠牲を生み出した貴方はどうしますか?
ここで諦めて妥協し、大人しく過ごすのもいいと思います。聞いた限り、貴方の実力であれば食うに困る事はありません。
ですが、今一度立ち上がり、救いが必要かどうかはわかりませんので、話を聞きに行くというのならお手伝いしましょう。彼と彼女達に会い、互いの主張をしっかりと伝え合うのです。互いに生きているのですから、話し合いは可能でしょう」
「だが……沙条は雫達を奴隷にしたんだ!」
「話し合いの結果次第でしょう。奴隷から解放してくれるかもしれません。私は少なくともこの子の姉を助けに向かいます。交渉し、金銭やそれなりの代価で引き渡してくれるならばそれもよしです。決裂した場合は……まあ、その時に考えましょう」
「……」
「いいですか、コミュニケーションは大切です。ええ、とても大切です。相手を尊重し、相手の事を理解してしっかりと考えましょう。そこから交渉して互いに妥協点を探し合います。そこまでして相容れないならば戦うしかありません。命を賭けて互いの主張をするのです」
「だが、沙条は間違っている……」
「頭ごなしに決めつけてはいけません。ですから、言葉の節々に散りばめられた情報を見逃し、利用されるのです。その結果が、今の貴方であり、その改造された身体です」
「っ!?」
彼女の言葉に俺の目の前に居る存在が恐ろしくなる。即座に剣の柄に手をやるが、彼女は反応していない。ただ、綺麗な翡翠のようなエメラルドグリーンの瞳で俺を見詰めるだけだ。
「何故、それを知っているか? でしょうか? 答えは簡単です。私の目は特別なので貴方の身体がどういう状態か観ただけです」
「なあ、本当にコイツの力を借りるのか?」
「ふっふっふ、私は魔術師です。それも支援に特化しているので前衛が居ないと非常に弱いです。ですから、私を守ってくれる騎士が必要なのです」
「え、でも……旅慣れてるって……」
「相手が相手ですからね。流石に神様クラスを相手にするのは無理です。それにこう考えたらいいのです。この人のせいで姉が捕まったのですから、この人を利用して助けるのだ……って、彼も言っています」
「誰だよ?」
「ん~私の保護者? 師匠? まあ、覗き趣味のろくでなしです」
「それって……」
「まあ、私はいいのです。それでどうするのですか? 私は貴方さえよければ力を貸しても構いません。もちろん、条件として私の言う事には従ってもらいます。勇者様はこの世界の常識に乏しいようですからね」
「それは……」
「また騙されて私まで奴隷にされたくはありませんから」
「ぐっ……」
子供の方を見てから、彼女を見る。彼女は俺に手を差し出してきた。
「貴方は生きているのですから、まだ間に合う。私達と違って貴方達は生きています。だから、私と一緒にやり直してはみませんか?」
「そう、だな……」
どちらにしろ、力が居る。俺が雫達を助けるために。彼女に協力してもらおう。そう思って、彼女の手を取る。彼女は引き起こしてくれようとしたが、そこまでの力はないのか、必死に引っ張っているので、自分から立ち上がる。
「非力すぎるだろ……」
「仕方がありません。私には聖剣もありませんしね」
「俺も無い」
「いいえ、貴方は使えますよ」
「そうなのか?」
「方法は後で教えます。今は出発しましょう」
「わかった。だが、その前に名前を教えてくれ」
「そうですね……私の名前は……アルター・キャストリア。アルと呼んでください」
「わかった。俺は光輝でいい」
「わかりました光輝。では、行きましょう。貴方は私が導いてさしあげます」
「頼む……」
彼女、アルと共に雫やリリアーナ達を連れていった沙条達を探す旅を始める。その間に彼女から色々な事を教わっていくことになった。
名前はアナグラム。丸わかりかもしれませんが、マーリンからの派遣です。ご自身は邪神達の相手で大変ですから仕方がありません。さあ、アーサー救出部隊、出撃だ!
名前 アルター・キャストリア
クラス 魔術師
身長 154cm
体重 42kg
性別 女性
出典 Fate/Grand Order
地域 潮騒のティンタジェル
属性 中立・善・星
好きなもの チョコレート
嫌いなもの 虫料理、アルビオンの竜
本名を名乗らないのは対策しているけれど、光輝君を通して愛歌様にバレる可能性があるので、気付かせないようにしています。愛歌様はアーサーに集中しているから仕方がありませんね。