自己犠牲野郎の行く末は   作:ヒキこもりたい

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まだ原作キャラは出てきません。
次の次の次くらいかも
話の大まかな構成は出来てるのに細かいところが詰められなくて書けない……
文才が欲しい……


第二話:崩壊

 

 

「良生」

 

 荷車に野菜などを積み込み終えたところで声をかけられて振り返ると、父さんが布団から起き上がってこちらに微笑みかけていた。

 

「ゲホッゴホッ、すまんな良生。まさか風邪をひいてしまうとは……」

「いいから寝ててよ。いつも父さんと一緒に行ってるんだからやり方とかも覚えてるし、その状態でついてきて向こうで倒れられたら大変になるだけだから」

 

 あれから四年、特に不幸なことは起こらずにいつも通りに過ごしていた。

 変わったことと言えば、いつも父さんが野菜を街に仕入れに行くのに俺が手伝いについて行くようになって、それに寂しく思ったのか美代が前よりもくっついてくるようになった。

 今日も野菜を仕入れに行こうとしたのだが、残念ながら父さんが風邪をひいてしまい俺一人で行くことになってしまった。

 

「わかった。だが無理はするなよ」

「父さんじゃないんだから。自分の限界はわかってるよ」

「あなたも良生も無理して溜めこんで限界を超えて倒れてから自覚するその癖、本当に直した方がいいと思うわ……」

「あはは……これはもう染みついちゃってるから」

「なるべくどうにかした方がいいと思うんだけどね……まぁそれはそれとしていってらっしゃい。帰りに晃さんのとこでお父さんの薬買ってきてちょうだいね」

「行ってらっしゃいお兄ちゃん!気をつけてね!早く帰ってきてよ!」

「行ってきます。薬ね、了解。美代、父さんの事頼むなー」

 

 そう言って俺は家の前に置いてあった荷車を引いて街に向かって出発した。隣町までは山を二つほど超えていかないといけない。いくら今まで鍛えていたといってもかなり重い荷車を引きながら山道を登るのは相当に時間がかかってしまうので、目的の町に着くころには既に太陽がてっぺん近くまで昇ってしまっている。ただでさえ今は冬で日が暮れるのが早いのにのんびりしていたら帰るときには暗くなってしまう。

 まず始めに仕入れに行くのは町の入り口に店を構える田口さんの所だ。

 

「おっちゃーん!ごめん時間かかった!これ今回仕入れる分ね!」

「おう毎度ありがとうな!ほい、今回のお代だ。ん?親父さんどうしたんだ?」

「今回風邪ひいちゃってさ、今家で療養中。早く次の店に行かないといけないからまたねー!」

「わかった。親父さんにもよろしく言っといてくれ!」

 

 そんな風に色々な人と言葉を交わしながら四軒ほどの店に野菜を運んで行って、最後に仕入れに行くのは来たところの反対側に位置する三田さんが経営する食事処だ。

 

「三田さーん!野菜ここに置いとくねー」

「あら、良生くん!いつもありがとうね。そうだ。お昼ご飯まだかしら?まだだったら食べて行きなさいな」

「え、いいんですか?ありがとうございます。いただきます!」

 

 三田さんはたまにこうやって近所の子たちにも賄いを食べさせている。来るときにそういう場面に出くわすことが何回かあって俺もたまにいただくことがあった。本人曰く、子供たちが料理を食べて幸せそうな顔をしてくれるのが嬉しいんだとか。それが高じて一年ほど前についに食事処を開くことになったらしい。

 そうして色んな店に野菜を仕入れに行って少し遅くなったお昼を頂いた後、町の中心近くにある診療所を訪ねた。

 

「晃さーん、今大丈夫?」

「あぁ良生くんか、どうしたんだい?」

「父さんが風邪ひいちゃってさ、その薬買いたいんだけど」

 

 晃さんというのはこの町で医者として診療所を開いている男性だ。村の人たちも何か病気になったら晃さんを頼ってここに足を運んでいる。数年前に酷い頭痛に襲われたときに運ばれたのもここだった。

 

「この季節は風邪とかが流行りやすいからねぇ、良生くんも気をつけなよ。はい薬。あ、それと昔みたいに頭痛が起きたりはしてないかい?」

「はーい。頭痛とかはあれから全く起きてないから大丈夫だよ、晃さんありがとうね」

「どういたしまして。そうだ、一応良生くんにもこれを渡しておくよ」

 

 そう言って晃さんが机から取り出したのは独特の匂いがするお守りだった。

 

「何これ?なんかいい匂いするけど。花の匂い?」

「これは藤の花のお守りだそうだよ。この間旅人がウチに来てね、これを持っていると厄除けができると言っていたんだ。何個かもらったから良生くんにもね」

「じゃあ、お言葉に甘えて。ありがと晃さん、また何かあったり薬が切れたら来るね」

「今から帰ったら夜にならないかい?今日は泊まっていったらどうだい?」

 

 問診票などを片付けながらそう提案してくれる。提案自体はかなり嬉しい。だけど美代に言われたからな。

 

「お気持ちはありがたいんですけど、妹に早く帰ってきてって言われたんで早く帰ってやらないと」

「そうかい。最近は日が暮れるのも早くなってるから気をつけて家に帰るんだよ」

「はーい。またね晃さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────!」

 

 二つ目の山を登っている最中、ふと何かの音が遠くから聞こえてきた。もしかしたら腹を空かした動物たちが餌を求めて山から下りてきているのかもしれない。もしそうなら急いで村の人たちに伝えて対処しないといけない。

 そう思い耳を澄ませてみると先程よりも鮮明にその音が聞こえ、その音の正体が何なのか、そしてどこから聞こえてきたのかが否が応でも理解できてしまった。

 

「村の方から悲鳴……!?クソ、何が起きてんだよ!?」

 

 急いで村に戻らなければならない、そう思い荷車を捨てて全速力で村に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 村に着くとそこは────地獄だった。

 

 噎せ返る程の血の匂い。

 胴体と別れて転がっている岡さんの首。体の一部分が欠けている村の人たち。酷いものだと下半身がなくなっている人もいた。

 皆の顔は一様にして恐怖に引き攣った表情で、どれほど恐ろしいことが目の前で起きたのかが簡単に想像できてしまう。

 今まで楽しく話していた隣人が何だったのかもわからぬ肉塊になってそこかしこに散らばっており、初めて見る死体に全身から冷や汗が噴き出るのを感じ、気持ちが悪くなるほどの血の匂いの濃さに吐き気を催し、体が勝手に震えだした。

 

「父さん、母さん、美代……!」

 

 俺は胃からあがってくるものを無理やり抑え込み、まだ、誰か生き残っているかもしれないという一縷の望みにかけて家に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「父さん!母さん!美代!」

 

 全速力で家まで走り戸を開けた先には、物言わぬ骸となってしまった父さんと母さんが辺りに血を流しながら地面に倒れていた。

 そしてその傍には父さんの体からむしり取ったであろう腕を食らいながら笑っている人型の何かがいた。

 また、喉元までせり上がっていたソレを押さえ込み、何かに問いかける。

 

「これは、この村の人たちを、俺の両親を殺したのはお前か……?」

「あ?こいつらの事か?だったらそうだぜ。俺が殺してやった!コイツらも馬鹿なもんだよなぁ。逃げようともせずに俺を倒そうと組み付いてきやがったからな。つい悲鳴を聞く前に殺しちまった」

 

 ───────。っ落ち着け。冷静に、頭を冷やさないと殺される。今感情的になって特攻しても返り討ちにあうだけだ。

 いつの間にか胸の前でキツく握りしめていた拳を深呼吸をしながら解く。見た限り家の中には父さんと母さんの死体だけ。美代の体は見当たらない。ということは父さんたちがどこかに逃がしてくれたか、もしくは隠してくれているかのどちらかの可能性がまだあるはず。今は、それに賭けるしか……!

 

「さーてさてさて、お前はどんな悲鳴を聞かせてくれるのかなぁ?」

「お前ごときに聞かせる悲鳴なんか、ねぇっ!テメェはそこら辺でくたばってろ!」

「うおぉ!?あっぶねぇってこりゃあ藤の花か厄介なモン持ちやがってって待ちやがれテメェッ!」

 

 ニヤニヤとした気持ち悪いにやけ面に向かって、晃さんから貰った藤の花のお守りを投げつける。こんなことなら二個くらい貰っておくべきだった。

 そうしてあいつが怯んでいる隙に入口の近くに転がっていた斧を拾って家を飛び出す。あいつが美代を見つけられていないならまだ生きている俺を殺そうと躍起になるはずだ。

 

「ケケッ、追いかけっこかァ?いいぜ、お前が動けなくなるまで付き合ってやるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから……多分三十分以上は追い掛け回されてると思う。逃げるのに必死で時間なんてとっくに分からなくなっている。でもまだ生きているのはあいつが未だに遊びながら俺を追いかけているからだ。いつあいつの気が変わるかは分からねぇけどまだ生きるのを諦める気はさらさら無い。

 あいつは俺を捕まえられる距離でもわざと鋭く伸びた爪で体を引っ掻くようにして傷を負わせるだけに留めて俺を甚振って楽しんでいやがる。それをなんとか木を盾にして躱したりしながら走っていく。全部は避けられないけど余計な傷を負うことは極力避けないと感染症なんかに罹ったりしたら治療法がなかった場合生き延びたとしても詰む。

 そうしていると流石に面倒くさく思ったのかこちらに向かって真っ直ぐ腕を伸ばしてきた。その迫ってくる腕に向かって思い切り斧を振り上げる。ゴキッという嫌な感触と鈍い音を鳴らしながらその腕はあらぬ方向に曲がっていた。

 

「がぁっ!?て、てめぇ……!」

 

 中途半端に反撃をしたせいか奴が血走った目でこちらを睨みつけてくる。折れた腕もあっという間に治っていく。

 これ以上の追いかけっこは流石に無理だ……もう走れるだけの体力が残ってない。斧も脱力しそうな腕に無理やり力を込めて握っているに過ぎない。今襲われたらほぼ抵抗することが出来ずに死ぬ。

 

「適当に遊んでから殺してやろうと思ったが止めだ。テメェはここですぐに殺してやらァ!!」

 

 

 ──水の呼吸・壱ノ型、水面斬り

 

 

 斧を振り上げようと構えていた俺の後ろから声が聞こえると同時に、腕を振りかぶっていた奴に向かって水が流れたかと思った次の瞬間には奴から血が噴き出し、頸が斬れて地面にボトリと転がり落ちた。

 

「……え?」

「無事か、そこの小僧」

「あ、はい。なんとか……」

 

 そこには黒い洋装に身を包み、青の縦模様が入った羽織を着けている男がいた。腰元を見ると刀が差してあった。……この時代に刀?というかあの洋服、なんかどこかで見たような記憶が……

 頸を失った奴の体はボロボロと崩れていっている。だが頸だけになってもこちらに視線を向けてまだ恨み言を口にしていた。

 

「何なんだ……何なんだお前はよォ!せっかくあと少しでそいつを食えたってのに邪魔しやがって……!許さねぇ許さねぇゆるさ────」

 

 そう言い終える前に塵になって消えてしまった。

 

「あ、あの。あなたは一体……」

 

 刀についた血を払って納刀した彼は此方に視線を向けると口を開いた。

 

「俺は鬼殺隊隊士、片岡吉澄だ。先程お前を殺そうとしていたものは鬼と呼ばれている異形の存在だ」

「きさつたい……おに……」

「そうだ。文字通り鬼を殺す隊士と書く」

 

 さっきまで追われていた緊張感から解放されたせいか中々頭が働いてくれない。この人の話をしっかりと聞かなきゃ後悔するのは俺なんだ、しっかりしろ俺!まずは冷静になれ!

 一つ、深呼吸をして一旦体と頭を落ち着かせる。

 

「それで、お前さんはどこから逃げて来た?迷子ならば家の近くまで送ってやるが……」

「俺の村は、さっきの奴に全員殺されました。俺の家族も……」

「そうか……間に合わなくて、すまなかった」

「あの、でも!俺の妹だけ死体がなかったんです。だから、もしかしたら、まだ生きてる可能性が……!」

「わかった。お前さんの村まで送ろう。案内してくれるか?」

「は、はい。こっちです」

 

 そう言って俺は先導して村まで片岡さんを案内する。村に着くと否が応でも皆の死体が目に入ってくる。やっぱり、親しかった人の死体は何度見ても慣れないな……

 

「あの、現場保存とかはしなくていいんですか?」

「あぁ。一般人の死体や後始末などは隠と呼ばれる部隊に任せている。この後も隠を呼んで事後処理をしてもらうがどうかしたか?」

「あの、ならせめて家族は俺が埋葬してもいいですか?」

「それくらいならば問題ない。その方が気持ちの整理もできるだろう」

 

 そう言っている間に家に着いた。この扉を開いたら、父さんと母さんが生きていていつものようにこちらに笑いかけてくれたらどれだけよかったか……

 扉を開けても、やはりそこには冷たくなった父さんと母さんの死体があった。その事実にまた精神が揺さぶられるが、唇を噛んで泣きたくなるのを無理やり抑えて家の中を隅々まで探すが美代の姿は見当たらない。

 

「美代!俺だ、兄ちゃんだ!返事をしてくれ!美代!」

 

 そう声をかけると外からガタリと何かが動くような音が聞こえた。

 外には納屋があった。そこなら小さい美代なら家よりも隠れられる場所が多い。美代を隠す場所としても納得できる。

 そう思い急いで外に出て納屋の扉を開ける。開けると暗くてよく見えないが、奥の方に箱の後ろに隠れている小さい影が動いているのが確認できた。

 

「美代!」

 

 そう言うと美代は恐る恐る顔を上げ、こちらを見て目を見開いた。

 

「お、にい……ちゃん……?」

「そうだ俺だ!ごめんな……美代一人を暗い納屋においてけぼりにして」

「おにいちゃん……おにいちゃあああああん!!」

 

 立っているのが俺だと分かって安心したのか、美代が勢いよく泣きながら飛び込んできたのを受け止める。

 受け止める時に鬼に付けられた傷が痛むが、それが俺が生きて帰ってくることが出来た実感を湧かせていた。

 

「おかあ、さんがぁっ!おとうさんも、村の人たちも、みんな、みんなぁっ、うわああああああん!!」

「ごめんな。助けられなくて、ごめん……!」

 

 美代が泣いているのを見て堪えきれずに涙がどんどん溢れてきて少しの間、二人で抱き合いながら声を上げて泣き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、すみませんでした。お恥ずかしいところをお見せしました」

「いや、お前さんたちはまだ子供だ。子供なら泣ける時に泣いておけ。そうしないといつか心が壊れてしまう」

「……はい。お心遣いありがとうございます」

 

 赤く腫れた目を冷やしながら礼を言う。まだ現状を分かっておらず不思議な顔をしている妹に今までに起こったこと、鬼や片岡さんのいる鬼殺隊のことなど全てを話した。まだ小さい妹にこんな話を聞かせるのは酷だと思うけど、何も知らないよりはいいと思う。妹は賢い子だ。全部は無理でも多少は理解してくれるだろう。

 

「さて、お前さんたちにはこれから二つの選択肢がある」

「二つ……ですか」

「そうだ。一つは鬼や俺たちのことを忘れて普通の生活に戻る道。これは頼れる親戚がいないのなら藤の家紋を掲げている家に頼んでそこで暮らしていくことも出来る。

もう一つは俺と同じ鬼殺隊に入って鬼を殺す道だ。こっちは正直あまり推奨できる選択肢ではない。隊士になったとしても鬼に殺されてしまう奴がほとんどだからだ。だから俺としては前者の方を勧めるが────」

「俺は、鬼殺隊に入ります」

 

 片岡さんから初めに鬼殺隊のことを聞いた時から考えていて選択肢を示されたことで改めて固まった決意を告げる。

 するとこの答えは想定していなかったのか、片岡さんの目が僅かに見開かれ妹が驚いた顔でこちらを見上げてくる。

 

「……お前さん、本気で言ってるのか」

「もちろんです。こんな事がこの国の色んなところで起きてるんですよね?」

「あぁ」

「だったら、どこにいても危険はほとんど変わらないはずです。鬼に効くらしい藤の花も効力がずっと続くわけじゃない。それじゃあ妹を、美代を守ることが出来ない。そんなのは嫌だ!」

 

 俺は前世も今世も争いとは無縁の生活をして生きてきた。そんな平和ボケしている俺に死ぬ覚悟も殺す覚悟もある訳が無いし、今後持つかも分からない。だけど今は守らないといけない家族がいる。生きていてくれた家族がいる。その家族を守るために何も出来ない子供のままではいられない。

 

「俺は、美代を守るための力を手に入れるために鬼殺隊に入りたい。それにこんなことが俺の目の前でもう起きて欲しくない。」

「危険だぞ」

「理解しています」

「力を手に入れるのにも辛い修行がいる」

「覚悟の上です」

 

 嘘です辛いの嫌ですできるだけ優しくして欲しいです。でもそんなんで力が身につくわけが無いのも理解してるつもりだから泣き言を言えるわけがないのも分かってます。

 

「ハァ……わかった。俺ができるのは選択肢の提示と助言だけだ。本人の覚悟まで口は出さん。ここから東に七日ほど歩いたところに韮崎山がある。そこにいる嵐山という男を訪ねろ。そいつは鬼殺隊に入隊希望の隊士を育てる役割をしている。その男に片岡吉澄に言われたと言え。一応俺からも手紙は出しておく」

「ありがとうございます!」

「もうお兄ちゃん!一人で全部決めないでよ!」

「ご、ごめんな美代。でも美代を守るのに一番いい方法だと思ったからさ」

「だったらせめて私には少しくらい相談してくれてもいいじゃん!家族でしょ!」

「……そうだな」

「……ほんとに行くの?」

 

 美代が眉が下がった悲しそうな顔で俺の羽織を握りしめてくる。

 

「うん。決めたことだから」

「だったら私も行く!その嵐山さんって人のところに行けば私もお兄ちゃんも大丈夫なんだよね?」

「……そうだな。夜間に外に出なければ二人で嵐山のところに行くことも可能だろうし、そこで修行している間は嵐山が守ってくれるだろう」

「だってさお兄ちゃん!」

「……わかったよ。元々置いていくつもりはなかったし、美代がいれば修行も頑張れそうだ」

「うん!置いていくって言われたら無理やりにでもついて行ってお説教してやったんだから!」

「ハハ、そりゃあ怖い。……それじゃあ母さんたちを埋葬しよう。あの世から俺たちが無事に生きていけるように見守ってもらうためにも、いい着物を着せよう」 

 

 そうして箪笥の中に仕舞ってた普段は着ない上等な着物を両親に着せて、庭に穴を掘り二人を埋めていく。

 

 ────今まで、ありがとうございました。せめて、美代が好い人のところに嫁ぐまで見守ってやってください。俺は大丈夫です。美代が嫁に行くところを見るまでは絶対に死ねませんし死ぬ気もないので、俺の分も美代を守ってください。

 

「終わったか」

「はい。ありがとうございます、片岡さん。こんな時間まで付き合ってもらって」

「構わん。他の鬼が来るとも限らんし朝まではここにいよう。もう夜もかなり更けている。明日ここを発つのなら早めに寝なさい」

 

 その言葉に従い、隣の部屋に押し入れから布団を取り出して潜り込む。あんなことがあった後だからすぐに寝付けないと思っていたが、体はかなり疲れていたらしくすぐに瞼が落ちてきた。

 ウトウトしていると隣の布団に入っていた美代がこちらに潜り込んできて、俺の体にしがみついてきた。その腕は細かく震えている。……そうだよな。美代だってまだ七歳なんだ。怖かったに決まってる。

 

「大丈夫だ、美代。大丈夫だからな……」

 

 そう言って俺は美代の小さい体を抱きしめる。そうすると安心したのか震えは止まってすやすやと寝息をたてていた。それが分かると俺もすぐに意識が落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝起きると既に片岡さんは出発した後だった。寝てる間に治療をしてくれていたのか、俺の体には包帯が巻かれていた。囲炉裏には片岡さんが置いていったであろう巾着とその下に紙があり、中を開いて読んでみるとこう書かれていた。

 

『俺は次の任務が入ったからお前さんたちが起きるころにはもう出発しているだろう。その巾着は少しばかりの餞別だ。遠慮せずに使いなさい。はした金だが嵐山のところへ行くまでの食費に充てるといい。お前さんみたいな子供を鬼殺の道に進ませるんだ。これくらいのことはさせてくれ。夜間は無理に進もうとせずどこかの家か宿に泊まらせてもらうといい。お前さんたちが無事に育つのを遠くから祈っている。どこかで会うことがあれば元気な姿を見せてくれることを願う』

 

 巾着の中を見てみると、少なくとも五日ほどは店で食べるのには困らないほどのお金が入っていた。

 ────ありがとうございます片岡さん。しっかりと、妹を守れるように強くなります。あなたに恩返しが出来るくらいに、強く。

 家の外を見てみると、夜間に隠の人が来ていたのかあれ程あった死体がさっぱり消えている。何の音もしなくなった静かすぎる村をしばらく歩いていると、村の外れに何箇所も土が盛り上がっている所があった。ここに皆を埋葬してくれたらしい。

 俺はそこにしゃがんで手を合わせる。

 ────助けることが出来なくてごめんなさい。それと、今までありがとうございました。あなた達のことをずっと忘れずに、あなた達の分まで精一杯生き抜きます。どうか安らかに。

 そう祈ると、俺は家に戻って家に残っていた金と売れれば金になってあまり嵩張らないものを選んで風呂敷に詰めていく。無いものにあれこれ言うのも何だけどこういう時は鞄が欲しくなってしまうな……

 準備を終えて美代を起こし、あまりにもボロボロだったりすると人攫いとかに連れて行かれるとどこかで聞いたことがあるから、新しめの着物を着せて頭に母さんの形見の簪を挿す。

 

「行こう。無理すんなよ。足痛くなったら背負ってやるから」

「うん。お兄ちゃんも無理しないでね」

 

 そうして俺たちは嵐山さんがいるという韮崎山に向かって、手を繋いで歩き出した。

 

 

 

 

 




暁 良生(りょうせい)

前世は鬼滅の刃箱推しで少し蝶屋敷贔屓だった雑食オタクな大学生。
唯一残った妹を守るため示された道を歩み始める。韮崎山に向かう道中に鬼滅の世界だと気付く。
今回の大量虐殺の結果、SANチェックに失敗して表情が失われることに。


暁 美代

家族思いの素敵な笑顔の女の子。
置いて行かれた場合狂気の執念で兄を追い続け、数年後に鬼殺隊で再会する未来があった。その未来だと超ブラコンになって近づく人間全てを敵視して威嚇していた。
こちらはSANチェックに成功したが多大な精神ダメージを受けた。失敗していたら表情と感情も失われていたかも。


片岡 吉澄

元々この鬼とは別件で近くまで来ていて宿への帰り際に通りがかったときに鬼の声が聞こえて駆けつけた。
多分出番は今回限り。もう出てくることはないかも。
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