Bloodborne/宵歩きの狩人   作:疾風怒号

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感想を求めよ、執筆を全うする為に


3:死地

 

「オオォォッ!!!!」

 

 

 

走る勢いを乗せ、振り抜いたノコギリが獣の胴を袈裟懸けに深く裂く。奴がたたらを踏み、下がった顎を折り畳まれていた刃が跳ね上がり伸張するままに打ち据え、振り上げた鉈を思い切り叩き込んだ。

 

 

 

「いぎゃ」

 

 

 

がすっという音、短い断末魔と共に頭が潰れ獣が頽れる。頬に付着した返り血を拭いながら振り返れば、同じように血に塗れた惨殺死体が二つ。俺が狩った人型の獣だ。

 

 

やはりと言うか何と言うか、斧と何かの鈍器で殺された俺はあの施設で転がっていた。何度こうして目醒められるのかとも考えたが、俺が先に殺した筈の獣が馬車の影で座り込んでいるのを見つけた時点で『考えるだけ無駄』だと割り切る事にする。

 

拝借した輸血液はそのまま保持、下ろした梯子もそのまま、だが確かに殺した筈の獣は俺と同じように生き返っている。そんな奇怪な状況など、考察を試みるのも馬鹿らしいだろう。

 

 

閑話休題(それはさておき)。これらを狩って幾らか学んだ事がある。

一つ目は獣の強さ。ちょっとやそっとでは怯む程度で斬りかかって来る上に、銃弾もやたら効きが悪い。ノコギリ鉈で頭を一撃すれば流石に死ぬが、その隙を作るのも一苦労だ。

 

二つ目は俺自身の技術。どうしてか俺の身体は良く動く、恐らくは記憶を失う前に培ったものなのだろうが、一体俺は何をしていたと言うのか見当も付かない、勝手にノコギリ鉈が変形し、意識しない内に銃弾が飛び出して的確に獣を怯ませる。と言うか【ノコギリ鉈】とはそういう事だったのか、ノコギリと鉈で使い分けられるからノコギリ鉈? 分かるわけが無いだろう!

 

三つ目、この獣は()()()()()()()()()()という事。現に拙いながら言葉を発し、道具を扱い、斬り裂いた懐からは、俺が拝借したものと同じ輸血液と数発の弾丸が零れ落ちた。

自らを人と認識し、人に獣の姿を幻視する元人間の獣、それがこれらなのだと結論付ける、勿論全くの見当違いかもしれないが、少なくとも今の状況ではそう思うしかなかった。

 

 

 

「……言い訳だな、この人殺しが」

 

 

 

死体の眼を閉じさせながら呟いた、もう後戻りは出来ない。

武器をベルトに掛け、冷たい梯子を登っていく。何処からか響くナニカの声に身を竦め見渡した街は、ぽっかりと大口を開く、巨大な化物のようにも見えた。

 

 

梯子を登り切った先には、あの白く枯れた人形のような群れが蠢いて手招きしていた。その中心には、突き立つように青白いランタンがある。

ランタンに触れると、その光がより強くなる。墓石に触れた時と同じように意識が遠のき…………

 

 

 

「…………何だって言うんだ、此処は」

 

 

 

気付けばあの館のある場所に戻っていた。いい加減に頭がおかしくなりそうだ、いや、すでに正気など失っているか、記憶の無い人殺し、如何にもそれらしいじゃないか。

 

感覚を確かめる様にまた緩やかな坂を歩く。改めて見れば此処はやはり異様だ。異様さを認識した、実感したと言うべきか、そよぐ花は見た事のない花弁を散らし、坂の縁、石を積み上げた段には打ち捨てられた『人形』、そう人形だ。力なく項垂れる死体のような人間大の人形がある。……何度も言うが考えるだけ無駄だ、放って置こう。

 

館の扉には触れた記憶は無いが、その扉は開け放たれている。恐る恐る覗き込んだ先には車椅子に腰掛ける人影。

 

 

 

「…!」

 

 

 

車椅子。垣間見た記憶がフラッシュバックする。俺に輸血を行ったあの老人かと扉の影に背を付けた。

きい、と車輪の軋む音がする。

 

 

 

「やぁ、君が新しい狩人かね」

 

 

 

バレている。

穏やかだが、それが妄言でないと確信させるはっきりとした声が響いた。観念して影から出る。

そうして見えた声の主、彼は不思議な雰囲気の老人だった。草臥れて掠れたような、それでいて強い存在感を放っている。

 

 

 

「……ジャック・フィッシャーだ、貴方は」

 

「私か。私はゲールマン。……君たち狩人の、助言者だ。そしてようこそ、狩人の夢に」

 

 

 

ゲールマンと名乗った老人は緩く微笑み、そして疑問をぶつける間も無くこう続けた。

 

 

 

「ただ一時とて、ここが君の家になる。……今は何もわからないだろうが、難しく考えることはない、君はただ獣を狩ればよい。それが、結局は君の目的にかなう」

 

「……俺は、狩人か。何も分からない俺が」

 

「そうとも、狩人とはそういうものだよ、じきに慣れる」

 

 

 

 

そういうとゲールマンは、唐突に俺への興味を失った様に眼を伏せた。これ以上話す事は無いという事か。

だが、此処に来て初めての人との会話は、暗くなりかけた心に暖かく響いたように感じる。……狩りを続けよう。そうする事しか、きっと今の俺には出来ないのだから。

 

踵を返した所で、背に彼の声が掛かる。

 

 

 

「……夢から出る方法は分かるね、墓石に触れ、灯火を強く思う事だ。 そして此処に在った、今は失われた道具を見つけたのなら、全て自由に使うといい。……君さえ良ければ、あの人形もね…………」

 

 

 

人形を使う、とはどういう事か。……おままごとでもしろと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





???「2004文字とは、感心しないな……」





仕掛け武器、銃、技術、理性を以って殺した→『狩った』



ただただ暴力を振るい生命活動を停止させた→『殺した』




と言った所で、割り切れる筈も無いのだけれど。
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