織田3大軍師と恐れられた男〜女性ばっかの戦国時代で種子島で成り上がる 作:焼肉定食
清洲城勝家は白装束で登城した
勝家の隣には涙目になって震えている信勝
そして織田家の重臣一同が、信勝と勝家の左右にずらりと居並び、信勝へ向けて同情の視線を送っていた
「信奈さま。信勝さまの不始末は、家老であるあたしの不始末。難しいことは分かりませんが……この場は、あたしの首でどうかご容赦ください!」
「勝家。あんたがいないと今川との戦に勝てないわ。言ったでしょう? 損得を計算すると、死ぬべきなのは信勝だという結論がとっくに出てるのよ」
「うあああああん!姉上、二度と逆らいませんからお許し下さい! ぼくは目が覚めました!名古屋名物のういろうを全国区にしようだなんて小さい野望を抱いて謀反ばかり起こしていたぼくの方がうつけでした! あねうえぇええ〜!」
……えっと。そんな野望抱えていたのかよ
俺は小さくため息を吐く
「死にたくないっ!しかし勝家は殺さないで下さい!勝家は姉上に一度も弓をひいていません!でもぼくも死にたくない!」
すると思わず少し俺は驚いてしまう
こいつ六のこと庇いやがった。
元々家臣を軽く見ていただけではないのかと思うと少し考えることが増える
「もう沙汰は決まっているの。六は本日よりわたし付きの家老に配置換え。信勝の取り巻きたちは追放。そして信勝はこの場で切腹」
「切腹!? そんな痛そうな死に方はイヤです無理です姉上ッ?」
「そう。拒否するなら、わたし直々に打ち首にするまでよ」
「姫さま、信勝さまは実の弟君です。なにとぞ」
「くどい、六! 身内の反乱ひとつ鎮められないで、天下なんて言えないでしょうッ? みんなもよく聞きなさい! 今後、わたしに逆らった者はたとえ家族であろうとも殺すわ! わたしはこれから私情を捨て、第六天の魔王になるの。それが天下のため、民のためなんだから!」
すでにうつけの信奈の顔は消えている
今の信奈は、ぞっとするような鋭い視線を持った絶世の美少女と化しており、その手には太刀が握りしめられていた
あまりにも美しく、あまりにも神々しく、それゆえにあまりにも恐ろしかった
しかし家臣たちが顔を伏せて震え上がる中、ただ一人だけ異を唱えた者がいた
「姫。」
「万千代さん大丈夫。」
俺はそういうと万千代さんを止める
「何を。」
「こういった場合だったらあのバカの方が有能だからな。」
「待てよ信奈。自分の弟を殺すんじゃねぇ!!」
良晴が信奈の元にかけていく
「ばっ……バカ!サル、お前まで手討ちにされるぞ!」
と勝家が悲鳴のような声を漏らした
「……こういうのは古参者よりも新参者の正直な奴が話かけた方が素直になりやすいんだ。特に良晴は信奈のよき理解者だ。俺だって言いたいことはいくつかあるけど、あいつは信奈の中では特別なんだよ。」
「……どういうことですか?」
「見てれば分かる。……あいつの家族好きも早々だからな。」
するとぎろりと良晴を睨む
「よくもわたしに逆らったわね。あんたはどうせここで死ぬのよ、サル。言いたいことがあるなら今のうちに言いなさい」
「ん、そうだな。そうするか。お前、ここで魔王と化して信勝を斬ったら、これからも自分の周りにいる親しい人たちを斬って斬って斬り続ける魔王人生一直線だぜ? お前それでもいいのかよ?」
「そうよ、それでいいって言ってるでしょうッ? 天下万民のためよ!家臣たちがわたしの命令に従わない限り、天下統一なんて無理に決まってるでしょう?どうせわたしの言ってることが理解できないバカばかりなんだから、黙ってわたしの言うことを聞けばいいのッ!わたしに逆らう弟なんて要らないのよ!」
「ふざけんなッ。何が天下だよ、このバカ女っ」
「な、なんですってッ?」
ざわめき始める家臣たちに
「本当に大丈夫なのですか?」
「欲望に忠実な良晴と変なところで不器用な信奈。相性は見た感じいいと思うぞ。あぁやって大名に向かってどうどうと意見を言えるって人物は今まで俺しかしてこなかっただろ?あぁいう輩がいる軍は強い。それにあんだけお調子者の良晴の意見は結構的を得ていることが多いんだよ。あいつが信用していることも結構あるしな。」
だから素直になりやすいんだ
「……殺したくないに決まってるじゃない! 自分の弟を殺したがる女の子なんて、いるわけないでしょ! いちいち言わせないでよ、バカ!」
「姉上……」と信奈の足下にうずくまっていた信勝が思わず声を漏らしていた
ならもう答えは最初から出てたんじゃねぇかよ。じゃあ、そう言え。お前は尾張の主で、一番偉いんだろ? 素直にそう言えばそれで済むんだ。ったく、とことん可愛くねぇ女だな」
「な、な、なんですってッ!?」
家臣たちの前で泣いてしまった。しかも事もあろうに、良晴に叱りつけられて
これからは家臣たちの前で魔王として振る舞おうと決意していたはずの信奈はうろたえ、錯乱していた。そして、ぶっきらぼうに怒鳴っていた
「わ、わ、分かったわよ! 信勝は許すわ!」
「あ、姉上……」
伏してうなだれている信勝のもとに、信奈が腰を下ろした
「ふ、ふん。勘十郎……刀のかわりに、ういろうをあげる。食べなさい、あんたの好物でしょ」
「……いいのですか、姉上?」
「仲直りの印よ」
「……い、いただきます……」
家督争いで家中が割れる以前は、信奈から毎日のようにこうしてういろうを貰っていた
高級品の「ようかん」に比べると、砂糖が少なく、ひどくさっぱりしている
それでも信奈が「ほーらほら勘十郎、餌をあげるわ」とはしゃぎながら分けてくれたういろうの味を、幼き日の信勝はどんなご馳走よりも美味しいと感じてきた
そもそも信勝がういろうを好きになったのは、姉が手づからくれた、自分へのご褒美だったからだと万千代さんが
それなのに周囲に野心家やおべっか使いを侍らせて、姉上をないがしろにしてきた
そして、あの姉上を家臣団の前で泣かせてしまったのだ
なんと自分は愚かだったのだろう、と信勝は心から後悔しながら、ういろうを頬張る
これで、信勝を殺すという件は落着した
スッと信奈が目を細めながら立ち上がる
そして、消えていたはずの殺気が再び蘇った
「さてと……サル、家臣たちの前で言いたい放題にわたしを罵ったあんたにはどう落とし前をつけて貰おうかしら?」
「え、何事もなく穏便にハッピーエンドを迎える雰囲気じゃなかったの? 」
「よくもわたしを泣かせたわね、サルのくせに生意気だわ! 死になさいよ!」
そして苦笑して
「いい加減にしろ。」 「まあまあ。姫もサルどのも、そのあたりで」
俺と万千代さんが止めにはいる
「信勝どのが姫に忠誠を誓うのならば、八十点です。それでよいではないですか」
「ダメよ万千代 。誰も罰されないんじゃ、家来たちに示しがつかないもの」
「その者は小者で、しかも姫の飼いザルですよ。それよりも信勝どのの始末のほうが大事」
「一応謀反を起こさせた訳だし、周辺の奴らも織田家当主を確実なものにするのにはいい機会だろうな。」
姉代わりの長秀が、包み込むような癒し系笑顔で信奈の癇癪を抑えていく
「それじゃ万千代、浩介あんたたちならどう始末をつける?」
「そうですね……」
「姉上。お許しいただけるのでしたら、ぼくは二度と取り巻き連中に担がれないよう、潔く織田姓を捨てます! ただいまより、分家の『津田』姓を名乗ります!」
「……それはいい案です、信勝どの。九十点」
「ついでに名前も改めます! これからは姉上に対して澄み切った心でお仕えします、ですから名前も『信澄』に改名します!」
「……ちょっと媚びすぎかもしれません。三点」
「まぁいいだろ。他のものには減給3ヶ月。および謹慎一週間あたりがだとうだろ。六は信奈付きの家臣団に変更。」
「ふ、ふん。まあいいわ。それじゃ、あんたは今日から津田信澄と名乗りなさい、勘十郎」
「ありがとうございます、姉上!」
「他の者は浩介の案に従うこと。」
「「「御意。」」」
こうして今度こそ信勝の始末は決着した
そしてその夜
「……やっと静かになったか。」
「なんだ浩介か。」
「俺の家もここだからな。たく。全く忍びからの報告に耳を傾けることもできない。」
と酒盛りをしている全員に対し呆れてしまう
「忍び?」
「五右衛門に頼んで雇ってもらったんだよ。服部半蔵からの贈呈もあるけどな。」
「…あぁなるほどな。」
元々調略を仕掛けるのは得意な方だと思っている
「真面目な話どれくらいになりそうだ?」
「勝率は半々。後は天候次第だな。」
「…やっぱり厳しいか?」
「厳しいどころじゃない。……というよりもこれでもギリギリまで上げて5割なんだよ。」
家康が早いか。こっちが今川義元を討ち取るのが早いか
「……てか桶狭間の戦いがあれ自体がキセキみたいなものなんだよ。元々。あんな綺麗に戦法が嵌ることが難しい。」
「それもそうだな。」
「月は叢雲花に風。うまいこと言ってても気を引き締めないと周りの者は全員死ぬからな。それくらいの覚悟はしているんだよ。」
「…そっか。」
良晴は少し考える
「戦国時代に本当に来ちまったんだよなぁ。」
「……そうだな。」
俺は軽く苦笑する
「んじゃ早く寝ろよ。明日からも大変だぞ。」
「おう。おやすみ。」
「おやすみ。」
と俺は寝どこに戻る
……恐らく最後の平穏となろう日々を踏まえて