今から数年前、こんな事件があった。
『〇〇市の河原で1人の成人男性が死亡。溺れていた子供を救出したが、そのまま息を引き取った』
そしてその後、その一家は変わってしまった。
母親は人が変わったように狂い、息子に手を上げるようになった。
その後、女は児童虐待の容疑で逮捕。子供は親戚に引き取られた。
子供の方は親戚の人に引き取られたという話だ。
果たしてその子供の行く末はどうなったのか……。
その事実を知るものは数少ないと言われている。
〇 〇 〇 〇 〇
12月上旬、遂にハロハピのライブの日がやって来た。
あたしはいつもの様に頭以外をミッシェル状態にし、何時でも行けるようにスタンバイしていた。
こころたちがいつもの様にステージ裏で気合いを入れてる中、あたしは落ち着かない状態だった。
「(……沙島くん、今日来てるのかな……?)」
思わずステージの方に視線を向ける。もし来ていたとして……彼はどんな感想をいうだろうか……。……どんな顔を見せるのだろうか……。
「(って、またあたし変なこと考えてる……)」
これで何度目だろうか。再びあたしは頭を抱えた。何とか振り払おうとしても、油断した時に脳裏に現れてしまう。
「(って、こんなこと気にしてる場合じゃないや。あたしはライブに集中しないと……。うん、奥沢美咲集中しよう!)」
まるで自己暗示をかけるかのように自分に言い聞かせる。
ココ最近、ずっとこの繰り返しだ。ふとした時に彼のことを思い出してしまい、それを何とか思考から振り払おうとする。
なんだか、自分が自分で無くなっているような気分に陥ってしまっている。
「(はあ……)」
「美咲ちゃん、大丈夫?」
考え事の末、溜息を零していると花音さんが心配したのか声をかけてきた。
「大丈夫です。ちょっと……考え事をしていただけなので……」
そう言いながら、ミッシェルの頭を被り、何時でもステージに出て行けるように準備をした。
「ねえ美咲ちゃん、そのストラップ……いつも持ち歩いてるね」
「へ? ……ま、まあ……」
花音さんに言われてあたしは手に持っているクマのストラップを見た。
確かにこの間もそうだが、あたしはずっとこのストラップを持ち歩いている。
「花音ー! ミッシェルー! あたしたちの出番よー!!」
そんなこんなでライブもあたし達の出番がやって来た。ストラップをテーブルに置き、ミッシェルの頭を整えて、ステージの方に向かった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ライブが終わり打ち上げが終わった後、あたしは着替えて、ハロハピの皆と帰路に就いていた。
「あ! いたいた! 美咲さーん!! 花音さーん!!」
そんな時、あたしを呼ぶ声がした。
声のした方を見ると、美琴ちゃんが手を振りながら……そして、沙島くんも美琴ちゃんに手を引かれて、こちらに向かって駆けてきていた。
「美琴ちゃん、来てくれてたんだ」
「勿論ですよ! ハロハピのライブはいつもチェックしてますから!」
自慢げに語る美琴ちゃんに対して、あたしは苦笑いしていた。
「あら! 健に美琴じゃない! 久しぶりね!」
「ねーねー。君たち、こころんとみーくんの友達なの?」
「おや……こころ達はこんなに可憐な少女と友達だったのか……。ああ……儚い」
「はぐみさんに薫さん!? こんなに一気にハロハピの皆さんにお会い出来るなんて…………。
あ、すみません! ちょっと皆さんのサイン頂いても良いですか!?」
「良いよー!」
「ありがとうございます!! えっと……紙……いや、色紙は……」
よほどハロハピが大好きなのか、美琴ちゃんは今までに無いくらいハイテンションだった。
「……あの……なんかすみません」
「いや、大丈夫だよ」
「美琴ちゃん、ハロハピ大好きなんだね」
「はい。ハロハピのライブはほぼ毎回と言っていいほど行ってるんです。なんか、学校の友達に誘われたライブで皆さんを見て以来、虜になった様に語ってますから」
「そっか。嬉しいなぁ」
まるで実子を見守る用に、花音さんと沙島くんは3バカと美琴ちゃんを見つめていた。
「おにーちゃん! おにーちゃん! 見て見て! ハロハピの人達からサイン貰っちゃった! それとこころさん達の連絡先も交換しちゃった!!」
「へー。良かった…………あれ? 美琴、色紙なんか持ってたの?」
「薫さんがくれたんだ!!」
「ほんっとすみません! それとありがとうございます!」
美琴ちゃんがはしゃいでる一方で、沙島くんは薫さん達に頭を下げていた。
あたしと花音さんが苦笑いしてると「花音さんと美咲さん! お2人のサインも良いですか!?」と駆け寄ってきた。……ほんとアクティブな子だね……。
そのまま色紙にサインを書き、その後あたしと花音さんとも連絡先を交換した美琴ちゃんは「もう明日死んでも悔いはないよ……」とまで言っていた。よっぽど嬉しかったんだろう。
「奥沢さん、美琴は……」
「あそこで倒れてるよ。なんか嬉しさのあまり失神したみたい」
あたしが指した先には、笑顔で倒れてる美琴ちゃんと、美琴ちゃんに必死に呼び掛けてる花音さんがいた。
「……すみません、あれ多分意識ありますよ」
「……え?」
「多分倒れてから、起きるタイミング見失ってますね。いや、ホントすみませんうちの妹が……」
「あーいや、元気な子そうで……」
この展開には流石にあたし達は苦笑い……っていうか、さっきから苦笑いしかしてない気がする。
「今日のパフォーマンスもミッシェル大活躍でしたね」
「え?」
「いや、突然大砲持ってきたと思ったら弦巻さんその中に入って飛んじゃいましたし……。それで奥沢さんが綺麗にキャッチしてたのが特に」
「あーうん……」
いや、ホントあれはダメだって。
一応練習はしてたけどこころの動きが奇想天外過ぎて定位置に落ちてこないんだもん。というか空中で方向転換するとか……予測なんか出来るわけがないって。
…………まあ、ちゃんと落とさずに受け止めましたけども。
「もし良かったら……次のライブも見に来て良いですか?」
「うん。大丈夫だけど」
「ありがとうございます。次もミッシェルの活躍、楽しみにしてますね」
そう言われてあたしは「ありがとう」とだけ返答した。
しかし、その心中ではなんとも言えないもどかしさが渦巻いていた。
その時の彼の笑顔は……偽物ではない。しかし、どうしてもあの日の笑顔が脳裏に浮かび……やっぱり、あの時の笑顔とは少し違う。 と感じてしまう。
「美琴、そろそろ行かないとおじさんに頼まれていた物、売り切れちゃうから行くよ?」
「えー!? もう行くのー!?」
そんな事を考えていると、沙島くんは美琴ちゃんに帰るように促していた。
美琴ちゃんも、こころ達と談笑していたのだが渋々と彼と一緒に別れの挨拶を交わし、その場から去っていった。
「(……今日も……駄目だったのかな)」
去りゆく背中を横目に、あたしは少しだけ複雑な気持ちになった。
少しだけ暗い雰囲気だったあたしに対して、こころはあたしの顔を覗き込むようにしてあたしの前に来た。
「美咲! 次は健にも笑顔になって貰いたいわね!」
こころの言葉に、内心あたしは思わず目を見開く程に驚いていた。
こころは周りをよく見ているためか、まるで人の奥底にある『何か』を見通しているかのようなことを言う。今回も……あたしの心の底、そして沙島くんの表情の裏側を見ていたかのように……。
「……そーだね」
「(……全く。こころには敵わないな……)」と心の中で呟きながら、あたしはその背中を追いかけて行った。
……その時のあたしは、なんだか自分に素直な気持ちになれていたような気がした。
お久しぶりです。
気がつけばもう最後の投稿から3ヶ月経とうとしてますよ。時が経つのって早いですね……。
私事ではありますが……最近、出会いがあれば別れもある。そしてその別れというのは、どうしても少しだけ未練がましくなってしまうというのを体感しました。
なんだかんだ言っても思い出があると離れるのは寂しいものですね。
さて、脱線してしまいましたがようやく小説に手を出せるようになり、ぼちぼち再び調子を戻して行きたいと思います。
まだブランクあるかもですがこれからも応援の程よろしくお願いします。m(_ _)m
良ければコメントと高評価、キズカナ作者のつったかたーのチェックもよろしくお願いします。
つったかたー↓
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