こころの導きによってあたしは商店街にやって来た。
「ねえ、ここに白いミッシェルがいるって本当なの?」
「ええ!間違いないわ!」
そう言われてあたしは周りを見渡すが近くで人だかりが出来ている様子は無かった。昔ミッシェルに入ってバイトをしたときがあったから何となくわかるのだが、子どもたちはああいった動物キャラのキグルミが好きなのだ。そしてこの時間帯は小学生たちが遊びに色々なところにいる筈だ。だからキグルミキャラがいればすぐに群れが出来るだろう。
しかし、今の
「いたわ!あそこよ美咲!」
こころに手を引かれ辿り着いたのは商店街の端っこに位置する魚屋さんだった。普段余り通らない上に目立たない場所だったので見落していた。
見るところなんだかあの白いキグルミの人もお疲れのような雰囲気だった。推測ではあるが先ほどまではここで道行く人たちにこのお店の宣伝をしたり近寄ってくる子供たち一人一人のお相手をしていたのではないだろうか。
こう思うのには一応あたしなりの億見がある。まず、白いクマのキグルミは多少汚れている…ということだ。こういったバイトをしたあたしはわかるのだけどキグルミは汚れても洗濯機にかけることが出来ないためホコリを綺麗に落とすのも一苦労だ。特に白は汚れが目立ちやすいのでより入念にケアをする必要がある。
つまり何が言いたいかと言うとあのキグルミは足元だけでなく腹部や頭部にも若干茶色っぽい汚れがついていた。基本的にこういった部分に目立つ汚れはつきにくい為、興味をもった子供たちが近づいて触りにきた、そしてそれが重なった結果そうなったと考えた。
…まあ、実際の所はよくわからないけど。
とりあえず今は白いミッシェルもお仕事中だしここは迷惑にならないようにこころを連れて帰ろうと思っていた。
「あなた、ミッシェルの兄妹かしら?凄くそっくりね!」
と、そうは問屋が下ろさないようでこころは早速白いミッシェルの元へ行きいつもの如く独特の世界観を広げていた。
一方の白ミッシェルは反応に困っているのかジェスチャーだけで何かを訴えていた。まあこういった仕事は無闇に声を出すわけにはいかない事が多いので大体サインでどうにかするしかない。
「どうしたの?何が言いたいのかしら?」
そして目の前の少女にはてんで伝わってないと見た。あたしはため息をつきながら彼女のもとに近づいた。
「こころ、何やってんのさ…」
「この白いミッシェル、あたしたちのミッシェルと似てるから兄妹じゃないかしら?」
純粋も時になんとやらというべきなのか……そう思い白ミッシェルを見るとこっちはこっちで結構テンパっていた。
「こころ、ミッシェルにお兄さんがいるっていうのは聞いたことがなかったけど…?」
「それもそうね。じゃあどうしてこんなに似ているのかしら?」
「それはわかんないけどとりあえずこっちのミッシェルはお仕事中だし邪魔しちゃ悪いから今日はもう行こっか。」
「そうね、じゃあ明日また来ましょ!」
「あ、結局また来るんだ…」
こころを言いくるめると白ミッシェルの方を見てあたしは頭を下げた。それに気づいた向こうも丁寧にお辞儀を返してくれた。
「じゃあまた来るわ!」
そういうとこころはどこかに向かっていきあたしも彼女を見失わないように彼女の後を追う。
「ちょっとこころ待っ……いたっ!」
こころのことばかりで周囲に気を配って無かった為かあたしは誰かとぶつかった。幸いお相手も優しい人だったのでお互いに謝罪しあうだけですんだ。
「美咲、大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ」
そのままその日はこころに着いていって終わりを迎えた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ただいま。」
その後、こころの家で花音さんたちと合流し何時ものようにハロハピの会議(という何か)を行い、結局色々と騒いだ後に解散し帰宅した。
「はあ…。なんか今日は一段と疲れた…。」
鞄を自室の机に置き、椅子に腰をかける。
そう言えば明日授業変更あったけどどこだったかな…と思い、記入したメモ帳を探す。
「……あれ?」
確かメモ帳は文化祭のステージ使用許可を貰うときにそのまま制服のポケットに入れていたはず…。しかし、そこにメモ帳は無かった。念のため鞄の中も探したが見つからなかった。
「(あれ…?確かにあたしはポケットに入れてそのままだったはず…。)」
「もしかして落とした…?」と思うがどこで落としたかはわからない。学校で?それとも商店街でぶつかった時?それともこころの家?色々と考えてみるがとりあえず商店街に落としたとすると不味いかもしれない。何しろあのメモ帳には学校に関する連絡事項を書き込んでいるのだ。こういったものからも犯罪に巻き込まれる事があるとよく聞くため油断ならない。
そう思ったあたしは制服のまま走って外に出た。願わくばそこにまだ残ってるか…もしくは思い過ごしであって欲しいと思いながら…。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
商店街の魚屋さんの前についたあたしはとりあえず家から持ってきた懐中電灯を照らしながら辺りを探し始めた。多分だが一番可能性が高いのはここだと思う。
そう思い辺りを探し続けていた時…
「あの…すみません。」
ふと声をかけられた。そこには自分と同じくらいかちょっと高いくらいの背丈の男の子がいた。
「どうかされましたか…?」
「あー…いえ、ちょっと…」
「もしかして……探し物…ですか?」
「えーっと…まあそんなところ…ですかね?」
突然話しかけて来た人物に少し警戒しながらも質問に答えた。男の子はあたしの顔を見て少し何かを考えていた。
「……あの…人違いなら申し訳ないんですが…今日の夕方、ここに来ました?金髪の子と一緒に。」
「・・・・・え?」
その質問によりあたしは少し警戒心を強めた。自分とこの人物は初対面だ。何にどうしてそんなことを知っているのか。
「……どうしてそんなことを聞くんですか?」
「……実はその人に渡さなきゃいけないものがあるんです。落とし物をされたので…」
落とし物。
その言葉にあたしは「もしかして…?」と思った。
「すみません、その落とし物ってメモ帳ですか?表紙がピンクの…」
「そうです!これなんですが…」
青年が取り出したのはあたしが探していたメモ帳だった。
「……なんでこれを?」
「あの…実は…僕、白い熊のキグルミの中にいて…あなたが誰かとぶつかって落としてるの…見てたから…。」
なるほどね…。そういうことなら合点がいく。
「よく見てたんだね…。」
「すみません…僕、視力は良い方なんで…」
「いや、知らないけど…」
と、話していたのだがあたしの中でもう1つの疑問が浮かんだ。
「……で、何で君はこんな夜にここに?」
「あの…実はこれを落とし物置き場に置いておこうとしたんですが…誤って持って帰ってしまっちゃって…それで店長がいたら預かって貰おうかと…」
「あー…成る程。それで…。あ、それともう1つ質問いい?」
「えっ?…はい…。」
「メモの中身…見た?」
「えっと……ごめんなさい…。」
「そっか…。ごめんね、変な質問して。」
話しているうちに何となくだが彼への警戒心が溶けた気がした。それにしてもメモの中身見られちゃったか…。とりあえず大切なものが戻って来ただけでも良しとするか…。
「メモ帳、ありがと。」
「い、いえ!こっちこそ勝手に中見ちゃってすみません!」
「いやもういいよ。落としたあたしにも責任はあるわけだし。」
深々と頭を下げる彼を見て何となくだけど…どこか懐かしいような感じがした。因みに彼とは全く面識が無い。では何故……というのはあたしもわからないが今は考えないようにしておくのが良いのかもしれない。
そしてあたしは時計を見た。時計の針は既に短針が8に向いていて、長針も12を指そうとしていた。
「あ、もうこんな時間か…」
そう呟くと彼の方に向き直した。
「じゃああたしはそろそろ行くよ。それじゃ。」
「あ…あの…!」
早く帰ろうとしたとき、彼に呼び止められた。
「何?どうしたの?」
「すみません。もう周りも暗いから女の子1人じゃ危ないと思うので…差し支えなければ近くまで送りましょうか…?」
そう言われあたしは少し悩んだ。確かに辺りは真っ暗で不審者が出る可能性はある。そう考えると彼の意見は聞いた方が良いが、ついさっき知り合ったばかりの彼を信じきれないというかこれ以上お世話になるのは気が引けると言うか……。そんな考えが葛藤していた。
「えっと…君の方は大丈夫なの?ほら、夜遅くて親とか心配しない?」
「………大丈夫…です。」
なんだろう…ちょっと彼の声が低くなったような…。気のせい…?
「……じゃあ…君の名前聞いていい?あたしは奥沢美咲。」
とりあえず今はこれ以上踏み込むべきではないと思い、少し話を反らすことにした。まあ…メモを拾ってもらったんだし何か機会があればお礼がしたいと思ったので名前を聞くことにした。
「僕は…沙島健と言います!」
まっすぐと彼は…沙島くんはそう言った。
この時のあたしはただ…いつかこのお礼が出来れば良いなと考えていただけだった。それだけだった。
やっとこさ2話でございます。
そして2話にしてようやくオリ主くん登場です。
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