「はあ…」
あれから2日がたった。
結局あの後、近くまでついてきて貰うという形で話をつけた。そしてそのままお別れという形になったのだが…。
「(まあもう会うことはないと思うけど…)」
とりあえず深く考えないようにしようと思い、机に顔を伏せた。
あたしの席は窓際で午後になると日光も当たりやすい角度に位置している。午後は昼食を食べ終わりお腹が満たされているため、色々と条件が整ってそれが眠気を増幅させる。このままお昼休みは何も考えないようにして眠りについてしまおうか…と思い瞼を閉じようとしたその時……。
「美咲ーー!!」
我がバンドのボーカルにしてムードもトラブルも生み出してしまうお嬢様がやって来た。
「んー……何……?」
「今日の放課後もう1回行くわよ!」
「行くって……どこに…?」
「白いミッシェルに会いによ!」
それを聞いた瞬間あたしは「マジか…」と思った。何しろあたしはその中身に遭遇した上に、今なるべく遭遇したくない気分だったからこの申し出は正直憂鬱だった。
「ねえこころ…、あの白ミッシェルにも用事ってものがあるんだし無闇に行くのは申し訳ない気がするんだけど…」
「そうかしら?」
「うん。とりあえず今日は止めといた方が…」
「でも他に会える場所も知らないし、白いミッシェルにいつ会えるか聞きに行きましょ!」
と、あたしの必死の抵抗はこころにより儚く砕けてしまった。
頭を抱えている内にこころは「それじゃあ早速行きましょ!」と飛び出して行ってしまった。
「いや待って、これから授業あるんじゃないの?」
「そう言えばそうだったわね!じゃあ放課後また来るわ!」
そう言い残し、こころは自身の教室へと戻って行った。
正直このまま放置しても良いのだけど、こころを1人にしたら何しでかすかわかったもんじゃないからあたしも放課後、こころに付き合うことになったとさ…。
はあ…。
あたしは今日何度目かわからないため息をついた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
あたしたちは昨日と同じ商店街に再びやって来た。そして端っこにある魚屋に辿り着いたのだが…
「あら?白いミッシェルがいないわね?」
そう、目的であった白いミッシェルがいなかったのだ。確かに場所は間違っていないはずなのだが…
「お、お嬢ちゃんたち昨日の子かい?」
店の前で考えていると中からこのお店の主と思われる男性が現れた。
「すみません、お聞きしたいことがあるんですが…」
「白いミッシェルは何処かしら?」
あたしが言い終わる前にこころが発言をした。
「ミッシェル…?ミッシェルってなんだい?」
「あの白いクマさんのことよ!」
「ああ~…。あの着ぐるみそう言う名前あったのか~。」
「いや、そう言う訳じゃ無いんですが…。」
と言ってみるが店長さんはこちらの話を全く聞いてない模様。
「違うわ!ミッシェルはあたしたちの仲間よ!」
いや、あんたさっき店長さんが「ミッシェルって何?」って聞いたときに白いクマのことって言ってたじゃん。そりゃ勘違いするって…。
「まあ…着ぐるみの担当なら今日は休みだから来てないんだよ。」
「あらそうなのね。じゃあ今日は来ないのかしら。」
「ああ、すまないね。」
とりあえずあたしたちはその場を後にしようとした。まあ白いミッシェルに会いに来たのに当の本人がいないと意味がないしね…と思っていたその時…
「あれ…?奥沢さん…?」
と、後ろから声をかけられて振り向いてみるとそこには
「沙島くんだっけ?こんにちは。」
「こんにちは…。…どうしてここに…?」
「いや、それがさ…」
「美咲~お友達?」
と、横目でこころのことを見る前に本人が沙島くんの方へと近付いて行った。
「いや、友達って言うか…知り合いって言うか…。」
「この間…奥沢さんに落とし物を届けた関係…ですかね?」
「まあ…そんなものかな?」
「つまり…美咲を助けてくれた人ね!」
いやどうしてそういう解釈になる?
と心の中でツッコんでいると…
「そんな大それたものじゃありません…。ただ僕は…」
「それでも美咲を助けてくれたことに変わりは無いわ!」
「そう…ですか。」
駄目だ、これ完全にこころのペースに飲まれちゃってる。だって沙島くん、凄くわたわたしてるし。
「こころー?沙島くんも困惑してるしちょっと落ち着いてねー?」
見てられないので助け船を出してあげることにした。一方の沙島くんはその光景を見て少し落ち着いたように見える。
「そう言えばあなたの名前を聞いてなかったわね!なんていうの?」
「えっと…沙島…健って言います…。」
「健?健っていうのね!」
そんなどっかで聞いたことあるような聞き返し方しなくていいから。そう心の中で呟いた。
「ほら、こころ帰るよ~。今からハロハピの会議あるんでしょ?」
「そうだったわね!……あ、健!今度あたしたちのライブをやるの!是非来てくれないかしら!」
「「えっ!?」」
あたしと沙島くんの驚きの声が1つとなった瞬間だった。
「ちょっとこころ!?そんないきなり言われても沙島くん困ってるんじゃ…」
「いえ、僕は全然大丈夫何ですけど…どうして僕に…?」
「だってあなた、美咲を助けてくれたじゃない!そのお礼に来て欲しいの!」
「そ…そうですか…。」
と、いうわけでこころは次のライブ……よりにもよって6日後の文化祭のライブに沙島くんを招待したのだった。
………だが、その文化祭ライブについてあたしは何よりも不安を抱えていた。その不安というのは…
「それで…ライブって言うのは何をやるんですか?」
「それはこれから考えるわ!」
「はい?」
そう。決まっているのは『ライブをやる』ということだけ。具体的にどのようなライブにするのか、どんなセットリストにするのかという肝心なものは何一つとして決まっていない。
沙島くんは「この人は一体何を言っているんですか?」とでも言いたそうな顔をしながらこちらを見てきた。ごめん沙島くん、あたしも同じ気持ちだからわかんない。
「あー…えっと…まあ、それは今から急遽考えるって話になってるからちゃんと本番までには間に合うと思うよ?」
「はあ…?」
彼は相変わらず半信半疑なのか得心のいかないような顔をしていた。まあ、気持ちはわかる。でも意外とどうにかなっちゃうんだよなあこれが(主に黒服の力で)。
「とにかく今日は帰るよ。早くしないと花音先輩たち待たせちゃってるしね。」
「そうね!じゃあ健!ライブ楽しみにしてて頂戴ね!」
そう言い残してこころはつむじ風のように身を返して走り去った。あたしもそれを追いかけるようにその場を後にした。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ふええ…美咲ちゃん、大丈夫…?」
「なんとか…。」
場所は変わって弦巻家。
先程まで作戦会議に使っていたテーブルに倒れるように伏せていて、その傍で花音さんがあたしを心配してくれていた。
「1番大変なのはここからですよ…。」
ホワイトボードを眺めると何も知らない人から見たら何かの暗号かと思われるようなイラストが沢山描かれていた。
ハロハピのライブはこの弦巻家で作戦会議が行われ、その中でこころやはぐみがわかんないことを言って、薫さんが「儚い」と言って、花音さんが「ふええ…」と言ってそれをあたしがなんかこう……上手いこと纏める。大体こんな感じである。
「みーくん、大丈夫?」
「あーうん。なんとか…。」
「そうだ!コロッケ食べる?差し入れで持ってきてたんだ!」
と、はぐみは何処から取り出したのかわからない紙袋からコロッケを1つ取り出して渡してきた。
「後でいいよ…。ちょっと落ち着いてから食べようかな。」
「そっかー。じゃあここに置いておくから欲しがったら食べてね!」
揚げ物の匂いが漂う紙袋を前にあたしは今日の皆の発言をあたしなりに翻訳して整理し始めた。最近は慣れてきたので大体わかるようになってきたのだが最初の頃はこの作業に1週間近くかかっていた頃もあった。それを考えるとあたしもこのメンバーに馴染んでしまったんだなぁと感じてしまう。
「そう言えば今日はミッシェルが来てなかったわね?」
「確かに!遅れるって聞いてたんだけどねー。」
「あー、ミッシェルなら今日は予定があって来れないんだってさ。」
「そっか。予定があるのなら仕方ないね。」
前にも説明したと思うけどこのメンバーで花音さん以外はあたしがミッシェルということに気付いていない。故にこのやり取りももう何十回やったのかわからないレベルの回数になっている。
「それより美咲!次のライブで新曲出来ないかしら?」
「いやいや。後1週間も無いんだよ?只でさえ時間もないのに…」
「今メロディが浮かんできたの!フンフフン…」
「ちょっと待って話聞いて!後録音の用意するからちょっと待って!」
こんな感じで今日もザ・ハロハピといったハチャメチャな雰囲気が繰り広げられていた。
これで本当に文化祭ライブに間に合うのだろうか…。心の中からあたしは不安でいっぱいになった。
久しぶり過ぎてこのシリーズ忘れられてるのでは無いかと内心ビクビクしてます(自業自得)。
こっから色々と更新速度とか技術力とか回復していきたい。
コメントや評価くれると嬉しい。