文化祭が終わってから1週間。あたしは空を眺めながら道を歩いていた。
(どういうこと?沙島くんは確かにあの時笑っていた筈なのにこころは沙島くんが笑顔じゃ無かったって言ってたけど…)
あの時のこころの言葉が気になり、気付けばここ最近このことばかり考えていた。
「美咲ちゃん?大丈夫?」
「へ?」
隣にいた花音さんに声をかけられ、思わず変な声をあげてしまった。
「どうしたの?なんか凄く考え込んでるみたいだったけど…。」
「あーいや、大丈夫です。それより花音さんはこれからバイトですか?」
「うん。」
「じゃあお店まであたしも一緒に行っても良いですか?ちょっと気分転換にハンバーガー食べたくなって…」
「うん。じゃあ一緒に行こっか。」
(まあ沙島くんのことは別にあたしには関係ないし…)
そう自分に言い聞かせ、あたしは花音さんの後を歩いて行った。
「って花音さん、そっちハンバーガーショップとは反対方向ですよ?」
「ふええ!?」
「もー…やっぱりあたしが率先するんで花音さんは着いてきて下さい。」
「ごめんね…?」
◆ ◆ ◆ ◆
「はあ…やっと着いた…。」
「あの……ごめんね美咲ちゃん。」
「良いですよ〜。慣れてますし…。」
ここに来るまでに花音さんがまたしても方向音痴を発動してしまい、到着するまでもかなり時間がかかった気がする。
そのままあたし達はハンバーガーショップに入店した。
「いらっしゃいませー!」
聞き覚えのある声があたしの耳に入ってきた。
「……なんでここにいるの?」
そう、その人物は今あまり会いたくなかった人物だった…
「あ、松原さん……に…奥沢さん?」
彼はキョトンとしたような表情であたしの方を見てきた。
「あれ?2人は知り合いだったの?」
「えっ?まあ…。てか花音さんの方こそ…」
「沙島くんはバイトの後輩なんだ。」
そういう事か。とあたしは納得してしまった。しかし、このタイミングで出会ってしまうのは運が悪いというかついてないというか…
「そう言えば健くんはそろそろバイト上がりだったっけ?」
「あっ!そうでした!」
「ふふっ。じゃあ私入るから健くんはもう上がる支度してていいよ?」
「すみません。それじゃあ僕はお先に失礼します!」
そのまま花音さんと入れ違いで沙島くんがバイトを終えて出てきた。そしてそのまま帰るのかと思ったが、沙島くんはどういう訳かあたしの元に来た。
「・・・・・・・・・」
「……えっと…奥沢さん?」
「あー……何?」
「大丈夫ですか?疲れてません?」
花音さんに引き続き沙島くんにまで同じことを言われるとは…。そんなにあたしって疲れてるように見えるのかな…。
「まあ大丈夫だよ。……多分。」
「そうなんですか?無理しないでくださいね?」
「ありがと…。ところで沙島くんって商店街の魚屋でもバイトやってなかった?」
「はい。掛け持ちしてるんです。」
「掛け持ち?それこそ大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。学校から許可貰ってますし。」
「いやいやそういう事じゃないよ。沙島くんの体とか…」
「大丈夫ですって。」
そう笑いながら彼は話すけどあたしから見たらそうには見えなかった。
「それより奥沢さんはどうしてここに?」
「あ、そうだった。あたしハンバーガー買いに来たんだった。」
当初の目的を思い出し、あたしは花音さんがいるレジに行き、注文を行った。
「あ、僕も買っとこ。」
それに釣られてなのか沙島くんもハンバーガーを3つ程注文していた。
そして注文を終えたあたし達はそのまま店を出た。……何故か同じタイミングで。
「奥沢さんもお持ち帰りで注文したんですか?」
「うん。弟と妹の分をね。沙島くんも?」
「はい。妹とおじさんにあげようかと思って。」
そんな会話をしながらあたし達は帰路に着いていた。実は最初に会った時に知ったんだけど彼の家とあたしの家は同じ方向にあるのだとか。それでもあたしの家とは離れているけど。
しばらくは無言で歩き続けていたが、どうにもあたしの脳内にあの時のこころの言葉がよぎってしまう。
(またこれか…。あーもうやめやめ。これは考えないようにしよ。)
「どうしたんですか?そんなに難しい顔して…」
正直この場で君のせいなんだけどねと言ってしまうことが出来ればまだ気分的にも楽になれたのだろうけど、これはあたしが勝手に考え込んでいるだけなので言うことは出来なかった。もし言ったとしても沙島くんからしたらいい迷惑だと思うし…。
「あ、着いた。」
「え?」
「僕の家です。」
「家って……え?」
彼が家と言ったところを見るとそこには大きな看板があり『サイクルショップ沙島』と書かれていた。名前からして自転車屋だろうか。
「ここ…だったんだ。」
「はい。」
彼の家の話は聞いたことが無かったけどまさかこんなわかりやすいところだとは思わなかった。いつも通っている道の途中に知り合いの家があるなんてなかなか思わないじゃん?
「それじゃ助かったよ〜。またよろしく頼むよ。」
「こちらこそいつもご利用ありがとうございます。今後とも是非ご贔屓に〜。」
店の名から2人の男性が出てきて1人は自転車に乗ってどこかへ行ってしまった。そしてもう1人の男性がこちらに気付き近寄ってきた。
「健くん、おかえり。こっちの方は…お友達?」
「うん。」
いや、しれっと「うん」って言ってるけどいつの間にあたしは友達になってたの?まあ、そんなことには今更ツッコむ気にはなれないのであたしは何も言わないことにした。
「あ。せっかく来たんだしお茶でも淹れるよ。ほら、お友達も上がってってよ。」
「いや、おじさん。奥沢さんはちょっと用事があるから今日は…」
「えっ?そうなの?」
「ほら奥沢さんハンバーガーの袋持ってるしね?」
「なるほど。じゃあしょうがないね。」
と、沙島くんのフォローのおかげでこの場を上手く切り抜けることが出来た。
「じゃあ奥沢さん、僕はここで。はやく帰らないとハンバーガー冷めちゃいますよ?」
「そーだね。じゃあ、また今度。」
そう言い残してあたしはそそくさとその場から立ち去った。
しかし、1人になってもなんだか心の靄のようなものは消えなかった。
何とかその思いを振りほどくかのように早足で自分の家へと足を進めて行った。
◆ ◆ ◆ ◆
夢を見た。
そこには大きな川があり、1人の男の子が溺れ、流されそうになっていた。
川の流れは速く、下手をすれば大の大人でも持って行きそうな程の激流だった。
そんな中、男の子に対して1本の光が差し込んだ。少年はその光に必死で手を伸ばし、光の先端を掴んだ。救いの手を掴んだと思い少年は安堵した。
「人殺し」
しかし、どこからかそんな声が聞こえた。
「お前のせいだ。」
そして少年が掴んでいた光は真っ黒な何かとなり徐々にそれは崩れ始めた。
「お前さえいなければ」
「どうしてお前の方だったんだ」
「お前は人殺しだ」
たすけて。
そう願ったが、願う度に黒いモノが充満していく。まるでそれが己の罪だと訴えかけるかのように。
ごめんなさい、僕のせいでごめんなさい。
必死に謝った。何に対して謝れば良いのかわからない。しかし、ただ謝り続けることしか出来なかった。
「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない」
何度も何度も同じ声が聞こえる。
まるで自分を呪っているかのように…。
本当に…ごめんなさい。
その思いと共に彼の意識は遠のいて行った。
本格的に自粛が辛くなってきた今日この頃。
早くいつも通りの生活が戻ってきて欲しいです…。本当につらたにえん。
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