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今回からはいよいよアンダーワールド、公理教会編です!
皆様の期待に応えられるよう、頑張ります!
なぁ、君は誰だ?俺を呼ぶ君は誰だ?答えてくれよ
俺は後ろ姿しか見えない金髪の少女に手を伸ばす。
俺は君を知っている。分かっている。君も俺を知っている。
名の名前は.....アリス。
君の名前はアリス。
少女は振り返り、俺に向けてそっと微笑みこう告げた。
「待ってるわ、セイヤ、いつまでもセントラル・カセドラルのてっぺんであなたが来るのをずっと待ってる」
少女はそれだけ言い残し、暗闇の中に消えてゆく。
「待ってくれ、行かないでくれ、待っ_」
俺の手は少女を掴むことなく、何もないただの空気を掴む。
正確に言えば何も掴んではいない。
…いや、掴んだのだろうか?、…それは少女の記憶、アリスの記憶。
彼女はセントラル・カセドラルのてっぺんで待っていると確かに言った。
ならば、彼女はそこにいるはずだ。
俺は伸ばした手をパタンと戻す。まず目に入ったものは青空、視界の周りには青々とした木々も見える。身体に伝わる冷たい感覚、土の匂い、風の音。
ゆっくりと身体を起こし、ここは森の中だと言う事を改めて理解した。周りの景色はSAOや、ALO、今まで経験してきたどのVRMMOよりも鮮明なものだった。
そうして、俺は目の前にあるとてつもない大きさの切り株を見つめた。
ん?
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 」
俺の叫び声に驚いたのか、木々から鳥が数羽バサバサと音を立てて飛び去るのが見えた。この世界で初めて見た生物。悠々と空へ飛び立つその姿は現実のものとなんら違いがあるようには見えなかった。
そんなことより、高さ何十メートルかも分からない程の大木が切り倒されているのだ。とても人智のなせる技ではない。
一体誰がどうやって?と、いうかどこの森だよここは?アンダーワールドに来て早々、遭難ですか?そうそう、そうなんですよ、ってやかましいわ!
自分で自分にツッコミを入れながら額に右手をぺしっと置き、一旦冷静になる事にした。
比嘉さん、帰ったら覚えとけよ、なんで森の中なんだよ?
このままはのたれ死んでしまう。すぐにでもこの森を抜け出さなければ。
「ねぇ、貴方何してるの? 」
突然後ろから話しかけられ、声がした方を向くと、
茶髪の整った顔立ちの修道服を着た少女がこちらをみていた。
今少女は確かに日本語を話した。若干のイントネーションの違いはあるが、日本語だ。そして、それはまさしく『人間』だった。首を傾げる13歳位の少女は紛れもない人間だ。目の前の少女は生きている。それはゲーム内のNPCとは違う。父さんいやラース、貴方方はなんてものを創ってしまったんだ。
...違うそうじゃない、ここの世界では当たり前に人間なのだ。天命という命が尽きた時、アンダーワールドから永遠に消滅する。つまり死ぬという事。勿論寿命も存在している。それは人間だからだ。
「その腰の剣、服装、…衛士様、では無いわよね、また『ベクタの迷い子』かしら? 」
少女にそう言われ自分の姿を見ると、服装はSAO時代の真紅のコート、レザーパンツ、そして腰には鞘は朱色、刀身を赤黒く染めた片手剣であるSAO時代からの愛剣《ラ・ヴィーナ》がそこにあった。
そして、頭をフル回転させ少し困った表情の少女に対する言い訳を考える。
「俺は、…衛士でも、そのベクタの迷い子?てのが何か分からないけど、多分それでもない、俺は少し遠い場所、から来たんだ」
ここに少女がいるという事は近くに村か何かがあるということか、助かった。アンダーワールドに来て秒で餓死など洒落にならないからな。修道服を着ているということは、こちらの世界でも宗教が広まっているということか。
・・・
「遠い、、、もしかしてキリトと同じ所からきたのかしら? 」
『キリト』確かに少女はそう言った。
「君…キリトを知っているのか!? 」
「し、知ってるも何も、…取り敢えず場所を変えましょう! 私の家に案内するわ! ついてきて! 」
俺は頷き少女の後についていく事にした。まずここの土地を知る人に色々と聞かなければならない事がある。
先程出会った少女、セルカ・ツーベルクによるとあの巨木は通称悪魔の木、ギガスシダーというらしい。あれを切り倒した張本人は、紛れもなく、キリト本人。そしておそらく俺のよく知るであろうユージオという茶髪の「剣士」だったようだ。
俺は心の中で「ユージオ」という名前を繰り返し思い浮かべる。
ユージオ、忘れてはいけない名前、存在。
そもそもこの世界には記憶がないとはいえテストダイバーとして一度来ているので多少見覚えがあっても不思議では無いか。
ギガスシダーがある南の森からしばらく歩き広い麦畑を通ると、
円形の城壁に全面を囲まれた村が見えてきた。
------ルーリッド村------
人口こそは少ないと予想されるものの村には立派な中世ヨーロッパ風の家屋が沢山立ち並んでいた。中には教会も見える。俺は改めて一つの文明がこの世界にあるのだと痛感した。つまり、実質この世界を作ったラース職員達はこの世界の創造主、神となるわけだ。考えるだけでも恐ろしい。
セルカの家は村の中央の噴水付近に位置していた。
白いレンガで造られた壁に、屋根は青い瓦だろうか? ヨーロッパ風ではあるが、 瓦という事にしておこう。異世界にありそうな建築様式だな。ふと愛読書の異世界転生ものの小説を思い出す。周りよりも一回り大きく堂々とした門を構えている。
玄関口に入ると居間に案内され、椅子に腰掛けるように言われた。
見た目に反して、中はしっかりとした木造建築らしい。
しばらくするとセルカがお茶を注いで来てくれ、俺の向かいに座った。
遠慮なくお茶をすすると、完全に紅茶の味がした。そこまで再現されているのか、、、美味いな、これ。
「改めて、セルカ・ツーベルクよ、一応この村の長の娘なの」
「ただの剣士、セイヤだ、よろしくな」
俺とセルカはしっかりと握手を交わした。どうやら握手は共通文化らしい。
「まず、セルカに聞きたいんだけどキリトとユージオはここにはいないのか? 」
「えぇ、ザッカリアに向かったわよ、色々な理由があってね、そういえばセイヤ、貴方キリトに似てるわよね」
「あぁ、よく言わrそうかな? 」
ザッカリアとは街の名前だろうか、見たところここは辺境の村みたいだし、都市部とは少し距離があるようだ。
俺は再び紅茶(?)をズズズっとそそり、少し考えて口を開く。
「なぁ、セルカ、アリスって人知ってるか? 」
その途端ガタッと勢いをつけて、セルカが立ち上がった。
なんかまずいこと言ったか?
「姉さまを知っているの!? 」
姉さま…?おっとそう来たか、つまりアリスとセルカは姉妹、となるとやっぱりこの村は、…なるほどキリトとユージオもセントラル・カセドラルを目指して… アリスを探しに?
しかしどういうことだ?この村出身でアリスの知り合いであろうユージオは妥当としてもキリトはどうだ? キリトは計画について伝えられていない筈だ。比嘉さんの話だと俺とアリスは幼馴染らしいが、もし俺と同じテストダイバーであるキリトもアリス達と関わりがあったとしたら?俺と同じ《夢》を見た可能性がある、と。
とりあえずキリト一行と合流しなければ。
「あぁ、聞いてくれ、セルカ俺はキリトとユージオと同じくアリスを探しに行きたいんだ、そのためにここに来た。なぜ知っているかは言えない、だけど絶対アリスをここに連れて帰る、それだけは言える、セルカ、ザッカリアまでの道を教えてくれないか? 」
セルカは少し考えたようにうなずくと
「姉さまはね、私なんかと違って神聖術もうまいし、村の皆からの評価も高かったのよ、それに比べて私は、、、だけどね、キリトとユージオに教えてもらったのよ、アリスにはなれなくても充分に代わりを務める事はできるって、私は私だって、私にしかできない事もあるって。でもそれでも私には姉さまが必要なの、姉さまはやっぱり罪人なんかじゃなかった、禁忌目録を破る勇気を持った凄い人なの、だから、、、帰ってきて欲しい」
これで全てが繋がった、かアリスはやはり禁忌目録を破り、公理教会に連行された、それをキリトとユージオが探しに行った、と
にしても、キリトがダイブしてから数時間後にダイブしたはずなんだが、…内部ではどれくらい経過しているのだろうか。
神聖術というのは、おそらくこの世界における魔法のようなもの。父さんが言っていた気がする。
「ごめんなさい、バカよね、私出会ったばかりの人にこんな…」
「気にすんな、尋ねたのは俺だし、それにキリト達の言う通りだ。セルカ、君は君自身なんだ、それにほら、さっき村を歩いている時だって、小さい子達がセルカに集まって来ていただろう、皆からの信頼があるのはアリスだけじゃない、それはセルカもさ、いや、セルカにしかできないことだ。」
そう言ってセルカの頭をゆっくりと撫でる。
セルカはなぜかうつむいてしまったが、あれ?撫でるのは共通の文化じゃない?
「そして、アリスも絶対俺達が連れて帰るさ」
「で、でもセイヤ、公理教会に行くためには整合騎士になる必要があるわよ?そのためにはまずザッカリアの剣闘大会に出て、それから衛兵になったりしないと、…しかもその剣闘大会もう始まる頃よ」
「まじかよ、…ザッカリアまではどれくらいかかる? 」
「2日ぐらいかしら」
「…とにかく! ザッカリアまではどう行けば良い? 」
「道は地図を書けば分かるけど、、許可証、身分証がないと、ザッカリアに入れもしないわよ? 」
まずい、いきなりピンチだ。この世界では天職なんかないし、身分も証明できない。
「ど、どうすれば身分を証明できる? 」
「と、父さんに頼んでみるわ」
ということで俺は村の衛士長であるジンクと立ち合いをする事になった。
理由は俺が求めた天職が剣士だったからだ。
セルカのお父さんは最初は見ず知らずのやつにいきなり身分証をなどと反対していたようだが、アリスを連れて帰ると言う俺の強い意志を見込んでくれたのか許可を出してくれた。村の人々はアリスの事を初めから無かった者と考えていたようだが、心の隅では気にかけてはいるらしい。
衛士長ジンクは数日前に天職を求めたユージオに負けたばかりで、やる気は満ち溢れているらしい。にしても、いきなりの勝負を良く受けてくれたものだ。
村の教会の前に俺達を中心として大きな人だかりができてゆく。
「ほ、本当に大丈夫なの? セイヤ」
「あぁ、大丈夫さ、セルカ、It will be alright! 」
「い、いとうぃるびーおーらい?」
「こっちの地域の言葉で、全てうまくいくって意味さ」
「ふふ、やっぱり貴方達って面白いわね」
貴方『達』? キリト、、またなんか仕込んだな
セルカと言葉を交わした後、俺は人だかりの中心まで移動し、ジンクと向き合う。言葉こそ交わさなかったものの、強い意思は感じ取れた。
仮にも衛士長である。
そこでセルカに習ったばかりのアンダーワールド流の礼を行う。手を右胸に当てそのまま軽く会釈をする形だ。これがこちらの作法らしい。
「只今から天職を求める者、セイヤと衛士長ジンクの立ち合いを始める。両者実剣を扱うものとする。勝敗は、村長である私が判断しよう」
その掛け声に反応し、村民の歓声があちこちから上がる。
しかし、俺とジンクの緊迫した剣気により、場は一瞬で静まり返る。
そこに残ったものはささやかな風の音、熱気に包まれた観客の息遣い
「始め」
俺は合図とともに左足を下げ、前傾姿勢をとる。
右手は愛剣の柄を握りしめ、一方左手は鞘を握った。
相手が抜刀したのを確認し、鞘から10センチほど赤黒い刀身を抜く。
一呼吸おき、すぅっと冷たい空気を肺に目一杯取り入れる。
「良いか、誠也お前には特典としてSAO時代の装備をコンバートさせておいた、あちらの世界に着いたらまずソードスキルを試してみるんだ、良いな? 」
父の言葉が脳裏に蘇る。
足に全体重、意識を集中させ、思い切り踏み込む。
俺の周りを中心に気配が一変する。
単発式ソードスキル
雷の呼吸
壱の型
霹靂一閃
赤い刀身が黄色のエフェクトに染まる。
直後、目を灼くような閃光のエフェクトと、轟音が弾ける。
強烈かつ目にも止まらぬ一閃はジンクの刃を根本から切り落としている。残るのは《ラ・ヴィーナ》の剣の鍔鳴りだった。
閃光のような速さで抜刀した剣を一瞬のうちに鞘に納めたのだった。
あるものは言う、あまりの速さに抜刀したのかさえも分からなかったと
あるものは言う、まるでその一閃は、轟く一発の雷のようだったと
そして、静寂は歓声へと変わった。
見事ジンクに打ち勝った俺は、剣士として認められ、水、食料を頂き、ザッカリアまでの地図も貰った。一方ジンクはというと、お察しの通りかなり萎えてしまったようだ。しかし、彼が決して弱かった訳ではない、あの「霹靂一閃」に僅かながら反応したのだ。SAO内でもずば抜けたスピードを誇るユニークスキルに反応できたという事だ。彼に任しておけばこの村は安泰かもしれない。
セルカと、セルカのお父さんに1日でも泊まって行かないかと言われたが、一歩でもキリト達に近づきたいので申し訳なく思いながら断った。
------ルーリッド南門------
「もう、行ってしまうのね」
「なんだ?行って欲しくないか? 寂しがり屋だなぁ」
わざと幼い子どもを見るような目付きをし、猫撫で声で、セルカの髪をくしゃくしゃに撫でる。
「ちょっと!? そんなんじゃないから! 」
とセルカは頬を赤らめジタバタと幼い子供の様に抵抗している。
「でも、セイヤの剣技凄かった、あれならきっと、、」
「分かってる、俺は絶対整合騎士になって、アリスを連れて帰る。」
「うん!待ってるわ」
俺はじゃーなとセルカにひらひらと手を振りながら門を出た。
地図に書いてある通りの道を進む。道と言ってもしばらくは一直線だが。
「セイヤ! 」
セルカの声に後ろを振り向く。
「いとうぃるびーおーらい! 」
「おう、It wil be alright、セルカ」
全てうまくいく、必ずここに戻る。
例えどんな障壁があろうとも
〜to be continued〜
ここまでお読み頂きありがとうございます!今回は約4300文字、まじで疲れました、…引き続き感想等お待ちしてます!
次回「ゲームであって遊びではない」