さて、UA数が6100を突破しました。並びに、お気に入り登録者数が
132件にのぼりました!当初の予想を遥かに超える評価に感謝してもしきれません。皆様、本当にありがとうございます!
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お気に入り登録者様につきましては、今回から前書きにお名前を記入させて頂く事を割愛致します。申し訳ございません。
改めまして、お気に入り登録ありがとうございます。
では、5話目「整合騎士」どうぞ
そこに佇んでいたのは、肩までかかる銀髪を黒いリボンで纏め、真紅の色の眼を持つ『整合騎士』と名乗る少女だった。歳は、俺より1つ2つ上だろうか。
少女は落ち着いた雰囲気を漂わせながらも臨戦態勢にあるのか、今にも鞘を払おうかという状態だ。
『整合騎士』はアリスの場合だと、禁忌目録を犯した翌朝に村に来たらしいが、この少女、整合騎士イーディス・シンセシス・テンは、「任務
で来ただけ」と言った。ルーリッド村付近に出現したゴブリン共の調査というところだろうか。率直に言うと運が悪い。まだ翌朝に来てくれた方が逃げる時間も稼げた筈だ。どちらにしても、ここで捕まるわけにはいかない。
「…初めまして、イーディスさん、僕をどこに連行するのでしょうか?」
「もちろんセントラル・カセドラルよ、貴方たった今禁忌を犯した罪人じゃない」
やはりセントラル・カセドラルに連行されるのか、しかし一体連行してどうするのだろうか?一体何が目的だ?ただの処罰?いや違う。
セントラル・カセドラルに連行された、禁忌を犯した人間がどうなるのか?アリスはどうなったのか、アリスはどうなっ、、、、、た?
比嘉さんは、アリスのフラクトライトは2日間のうちに公理教会によって修正されていたと言った。修正?なんのために修正する?
…それだ、何のために修正するか、整合騎士なら知っているはず。
しかし、はい分かりました、と公理教会の機密情報を簡単に教える訳がない、しかも罪人に。なら、遠回しに探るしかない。
「イーディスさん、ひとつ聞きたい事があります。」
「なによ? 」
「アリス・ツーベルクという少女を知っていますか? 」
彼女は少し驚いた表情を一瞬浮かべてから口を開いた。
「アリス・ツーベルク? 確かにうちの整合騎士には、アリス・シンセシス・サーティちゃんって子はいるけど、、、ツーベルクではないわね、人違いじゃないの? 」
これで、確信を掴んだ。その、アリス・シンセシス・サーティは恐らく、フラクトライトを修正された後のアリス本人だ。
つまり、彼女は整合騎士になった、という訳だ。どういう道理かは分からない。しかし、強制的にアリスのフラクトライトを修正したのならば、公理教会を許すわけにはいかない。フラクトライトを修正するということは、人格そのものを修正すると言うことだ。最悪、記憶すら奪われている。しかし、フラクトライトを修正する程の力をなぜ公理教会が持っているのだろうか?それは、システム上有り得ない筈なのだが。なぜそれ程のシステム権限を持っているのだろう。父さん達がまだ気づいていない問題が発生している可能性がある。
わざとこのままセントラル・カセドラルに乗り込むという考えも一瞬よぎったが、武器は必ず没収される。やはりここで彼女と一戦交える必要があるだろう。
「そうですか、お待たせしました、イーディスさん、やはり俺はここで捕まるわけにはいかないみたいです。」
「そう、、、こちらは罪人に対して天命を7割まで奪う権利があるわよ? それでもやるのね? 」
「勿論です。」
俺が抜刀するのをしっかりと見届け、一呼吸置いてから彼女は鞘から剣を抜き放った。
柄は白く編み込まれ、刀身を真っ黒に染めた『日本刀』そのものを連想させるその剣に思わず吸い込まれそうになる。
彼女の真っ白な鎧は洞窟の水晶に反射し、白く、ただ白く輝きを放つ。
彼女は真っ白のマントをたなびかせながら後方へと俺から距離をとった。
「システムコール。ジェネレート。サーマル。エレメント。」
その暗唱が耳に入り、急いで迎撃態勢に入る。
彼女の右手5本の指先が赤く発光し、まるで弓を弾く様に構えるとその赤い光は、パチパチと音を立て、鋭く形状変化する。
「フォーム。エレメント。アローシェイプ。」
彼女の手から鋭利な光弾が勢いよく放たれる。
尾を引き迫る光弾に対して俺は背中に剣を回す。
そして、間合いに入ると同時に光弾の正面へと流れる様に足を運ぶ。
「水の呼吸、参ノ型、流流舞い」
まるで流れる水の様に足を運び光弾を真正面から全て斬り伏せる。
「ありゃ、妙な技を使うのね」
「『あの世界』で必死に習得した技だからな!」
「その流派、人界でも見たことがないわね、なんていうの? 」
「、、、アインクラッド《赤鬼流》」
「アインクラッド《赤鬼流》、、、聞いたことないわね、まぁいいわ時間も稼げた事だし、奥の手出させてもらうわよ! 」
奥の手?確かにまだ彼女は剣を一切使っていない。その事は分かっているのだが、何か予想外の事が起こるかも知れないと身構え防御態勢に入る。
「あたしの完全支配術を完成させるには少し時間が必要なんだ、でも、お前と話している間に完成したよ! 」
完全支配術、一体なんだそれは?こちらの世界に来てからも一切聞いた事がない。整合騎士だけが使える特権攻撃術なのだろうか。
「エンハンス・アーマメント」
高らかに声を上げると、
彼女の刀身が青紫色のエフェクトを放ち、洞窟内を眩しく照らす。
エンハンス・アーマメント、、、意味は確か武装完全支配術
彼女が既に踏み込んで地を蹴っている事から回避は不可能と判断し、
迫り来る剣撃に対し対抗する技を切り出す。
「漆ノ型、雫波紋突き」
雫波紋突きは、水の呼吸の中でも最速の技、主に迎撃、牽制用に使える突き技だ、これなら充分間に合う。
直後、青紫色のエフェクトと、青色のエフェクトが弾け、地を揺るがす程の轟音と共に鋭い戦慄が全身を駆け抜ける、、、筈だった。
剣が交える瞬間、一瞬だが彼女の刀身が煙るように動いた。同時に俺の刀身から繰り出された突きの軌道が微妙にずれたのだった。
否、ずれたのではない、彼女の剣は、「すり抜けた」
すり抜けた斬撃は俺の肩口をそのまま切り裂く。
迫る痛みに備えようと歯を食いしばったが、、激痛は襲ってこなかった。刀身が届いたのは衣服までだったようだ。勿論衣服もすり抜けたようだが、肉体までには達していなかった。
2連撃目を恐れ、一旦距離をとることにし、素早く後ろへ後退する。
一瞬見ただけだが、彼女の剣は物体をすり抜ける、つまり、
防御力無視、パリィ無効という事だろう。彼女の前には鉄壁の鎧も意味をなさない。
そのような強力な相手と渡り合う方法は1つしかない。
避けることも、受けることも出来ないなら、こちらから仕掛けるのみ
俺は、一定の距離、おおよそ10メートルを保ちながら走り出す。
恐らく、射程はそれ程長くないし、攻撃範囲も狭い。
「いい判断ね、、、でもあまり整合騎士をなめないことね」
彼女は剣を横に構えそのまま刀身を2本の指でなぞる。
すると、刀身が再び青紫色のエフェクトを放った。
剣を振り上げたかと思うと、剣先から一粒の紫色の滴が地面に短く音を立てて滴り落ちる。彼女はそのまま刀身を地面に突き立てた。
地面から黒い影が伸び始めたかと思うと、影はあっという間に人の型に出来上がり、そこに彼女、イーディスの『分身体』が現れたのだった。
つまりこの瞬間、俺は避ける事も受ける事も出来ない相手を2人相手にしなければならない状況になったのだった。
「まじ、かよ、、、」
整合騎士とは一体何者なのか。かつての世界でも今回ばかりは似たような経験すらなかった。複数の相手をした事はあるが、影は斬る事が出来ないだろう。ならば勿論狙うのは本体の方だが、それでも影が邪魔をする筈だ。なら、どうやって本体に近づくのか、考えられる方法は1つしか無かった。
『速さ』で上回る事、速さで相手を翻弄し、突破口を開く。それしかない。しかし、「それ」を行うにはかなりのリスクを伴う。
彼女の速さを上回るには「雷の呼吸」を使うほかない。
しかし、ゴブリンとの戦闘から「水の呼吸」を乱用し続けた結果、
今急に「雷の呼吸」に呼吸を変えるとその反動によりしばらく動けなくなるだろう。
ならば一太刀で決めるしかないが、その呼吸のモーションを少しでも
影に邪魔されれば敗北は免れない。
俺の脳裏に赤い鎧に身を包んだ銀髪の騎士の姿が蘇る。
「一瞬の判断の遅れは後で命取りになる、覚えておきたまえ。」
気づけば俺の足は走り出していた。剣を鞘に納め、湾曲している洞窟の壁に向かって。
壁を右足で強く踏みしめる、そしてそのまま横向きになり、壁を疾駆する。ALOで培った軽量級妖精スキル《ウォールラン》の応用技。
あまりのスピードに自分の周りの景色さえ黒く霞んでいく。
彼女の間合いに近づくと彼女の影が反応する。こちらに向かって来るその瞬間、壁が深く窪み、空気が振動する。壁を思い切り蹴ったのだ。
「雷の呼吸、壱ノ型」
そうしてそのまま空中で彼女の影を追い越すと悠々と地面に飛び降り更にそこから強く踏み込む。
彼女は驚きの表情を浮かべ剣を構えるがもう俺は間合い5メートル前まで入っていた。
剣の柄を右手で握り前傾の居合の構えを取る。
「霹靂一閃」
直後、踏み込みによる雷が落ちたかの様なエフェクト音と、黄色のエフェクトフラッシュが空間中を満たした。
・・・
遂に彼女の剣を捉えたのだった。
勿論、彼女の剣は物体をすり抜ける。それは剣とて例外ではない。
実際先程やられたばかりなのだから。
しかし、気づいたのはそれだけではない。
・・
彼女の剣は肉体はすり抜けない。
「ッな!? 」
ポタポタと赤い鮮血が俺の左腕から滴り落ちる。地面には血溜まりができ始めているようだ。
そう、つまり彼女の剣を自らの腕で受け止めた。
彼女の剣の様な日本刀に近いものはしっかり踏み込み、正しい角度を保って振り下さなければ腕を斬り落とす事はできない。
今彼女は防御の為に剣を振り下ろした。それを見越して腕を切り落とす事は不可能と信じ、この行動に出た。
つまり、今までの《ウォールラン》も、「霹靂一閃」も
「全て囮さ」
俺は残る力で、右手に握った剣を彼女の剣の柄に当て、そのまま弾き飛ばす。沈黙の間に地面に剣が落ちる短い金属音が響いた。
影は彼女が剣を手放すと同時に消えてしまったようだ。
「まだ、、、やりますか? 」
「参ったわよ、神聖術だけじゃ貴方に勝てないもの」
「そうですか、ではこれでッ、、、ッ!? 」
その場からいち早く立ち去ろうと足を動かした瞬間、不意に脱力感に襲われ、膝から崩れ落ちてしまった。地面にうつ伏せになり、指先さえ動かない。反動が来るにしては、早すぎる。更に傷口の鋭い痛みが同時に襲ってきた。戦闘が終わり痛みを誤魔化していたアドレナリンがきれてきてしまったのだろうか。
そうして俺はゆっくりと意識を手放していった。
〜to be continued〜
ここまでお読み頂きありがとうございます!
こうして、イーディス戦は引き分け、といった形で終わってしまいました。彼女は本気だったのでしょうか?笑
次回から話が急展開致します。
引き続きご感想等お待ちしています!
次回『再会』