8/01
遂に八月に突入した。クリアまでまだまだだ。百層の階層の半分も満たしていない現状、攻略組含めて全てのプレイヤーが使命とも言える階層攻略を一時停止した。
イベント開催。夏のお楽しみタイムが始まった。SAOの男性プレイヤーは湧き、女性プレイヤーは新しい装備を吟味して選ぶ。水着を着て気になる男性を逆ナンして限定開放されたエリアの浅い海というか湖エリアでハメを外した。
俺達は見られるのが嫌だと言う女性陣の要望でアメリカンスタイルの庭のプールを展開させた。コルが一気に減ってしまい、懐が痛くなった。歴史の中でも証明されているが女の涙ほど卑怯なものはないと思う。嘘泣きなんかもっとズルい。
だけど眼福でした。ごちそうさま。
キリトが賢者モードになっていたが俺も似たようなものなのでそこは書かないでおこう。
8/03
夏限定イベント「海の魔王」
名前負けをして後のインパクトの無い題名で今のイベント以上に鬼畜な仕様になるのは長く続くオンラインゲームの醍醐味とも言えること。そんな事を考えていたら超大編のイベントのほんの一部だったようで、今回のは始まりのようだ。
難易度は下層レベルのようで気分転換にいつものパーティーを組んだ。俺、キリト、ユウキ、アスナ、サチ。女性陣は水着で男性陣も水着。トランクスタイプで俺はパーカー着用。キリトが細くて心配になった。現実世界に帰ったらたらふく食わせて太らせよう。取り敢えず女性陣のビキニ水着は眼福だった。エクレールさんがいればパーフェクトだったがないものをねだってもしょうがない。
イベント受注時点で支給された水着着用をしたが現実世界と変わらない心地良さで大学受験の疲れを癒してくれた気がした。もうだいぶ過ぎてるけど気分的に。
一応、数日間に渡って開催されているようだがほとんど今日一日で消化した。明日か明後日に全部終わらせようと思う。救いなのは鬼畜仕様じゃない事かねぇ。あくまでも息抜き程度の難易度で良かった気がする。でなければ化け物と化してたぞ、俺が。
ドロップの殆どは回復アイテムだったのでそれとなく弱い二人に渡しておいた。弱いと言っても片方は臆病なだけ、もう片方は一般のプレイヤーのレベルを大きく逸脱しているけどな。備えあれば憂いなし、だ。
8/06
「海の魔王」完遂。エネミーレポートとフィールドマッピングデータをアルゴを通して他のプレイヤーに公開した。これならば他のプレイヤーも簡単にイベントはクリアできるだろう。
大規模イベントの後は決まって休養日を設ける。完全休養日、一日中レベリングやMob狩りはせずにゆっくりと(気分的に)肉体を休め、精神を休める。疲れが溜まりきっている状態だと正常に思考が働かずにとんでもないミスを犯すかもしれないからだ。それを具体的に体現してくれた者が仲間にいたりするのだが本人のために内緒にしておこう。副団長の名が泣くしね。
大イベント、その始まりの終わりは中ボスで締めくくられた。海の魔物、雑魚レベルだったが見た目がアウトと女性陣から大バッシングを受け、野郎の俺とキリトが魚を捌くかのようにイカやらタコやらをかっさばいた。何故だか寿司が食べたくなった。これまた女性陣からバッシングを受けたが解せん。
帰ったら寿司を食おう。回らない寿司を父さんに奢らせるんだ。
そうだ。それがいい。キリトやアスナも連れて。ユウキも動けるのなら一緒に。父さんは医者だし、そこら辺は何とかなると思う。まあ、サチとかも、ね。アルゴはアルゴで現実世界は胡散臭そうだから遠慮したい。父さんの財布が一気に寒くなる。
8/10
現実ならまだまだ夏休みだぜヒャッホーイと喜ぶ時期。ウチの庭のプールではしゃぐ少女達を眺める親父の気持ちを味わった。保護者でも可。
ほぼ先にイベントをクリアした俺達は夏休み気分で攻略時の疲れを癒している。特に女性陣はプールで遊べる事に喜び、初めて思いっきり泳いで遊んだと言うユウキも楽しかったと告げて昼寝をしている。アスナもアスナでユウキと仲が良いからか、サチも含めて川の字で居間で寝ているわけだが欲情するよりもほっこりとする光景だ。
傍観に徹していた俺とキリトはのんびりと冷たい麦茶を啜りながら雑談をしている。長い間、同居しているからか日記を記している事はキリトは知っている。飲みながら片手でタイピングしているのも勿論、見られている。ユウキには日記に余計な事をされたが、βテスターの一人のキリトは色々システムを知っているので無駄機能とも言える機能も教えてもらった。携帯電話の液晶が角度によって見えなくなるのに似た現象を利用したプライバシー保護機能を使っているので反転した文字を読めても何が書いているかまではわからないのだ。
まあ、あれだけのトラウマを負ってここまで回復できたのも奇跡だがキリト自身の心の強さも目を見張るものがあるよな。クォーターポイントで味わった現実世界ではない根本的な死の恐怖を知っても尚、攻略組を続けられる学生。俺よりも年下なのに本当に立派だと思うよ。俺なんか三週間位脅えてたんだもの。
うーむ。キリトとも話題に出したがイベントが始まってからは攻略の足踏みが一気に止まってしまったなと思う。俺とキリトの当番の時はほぼ一瞬で終わったからその感覚が異常なだけかもしれない。そろそろ四十層に届くか届かないかの領域だし、できるなら早くしてほしいものだ。そうすればそれだけ早く帰れる。
よし。取り敢えず今日の夕食はざるそばにしよう。食材アイテムがあるかを探してから決めるとしよう。
8/13
危なかった。まさか自分自身がPKの被害になりそうになるとは。その予感は前からあったわけだがいざとなると驚くものだ。ゲームの中だからか、出血して服に血が残ったり怪我をして日常生活内での行動に支障が出る事はない。見た目的にも大丈夫なわけだがそもそも傷を負う時点で人生ゲームオーバーになるが。
対人戦。模擬戦闘以外では初めての命を賭けた戦いは後味が最悪だった。相手が生きるために、生き残るためならまだしもただ俺を殺したいというだけであんな事をされては胸糞も悪くなるものだ。しかも相手の強さは攻略組最前線レベルでキリトと同レベルの腕の持ち主だった。苦戦、苦戦、苦戦。一度でも食らえばゲームオーバーになる戦いに神経を磨り減らした。嫌な戦い方をするものだから余計に。
おそらくだが、そのプレイヤーがアルゴの情報にあったレッドプレイヤー、PKの犯人だろうと思う。ウチの連中には心配させたくないので黙っておく。狙いはおそらく、俺。最強のプレイヤーの一角であるお前を殺せば凄まじい快楽を得られるだろうと興奮しながら言っていたからな。
人と人とが殺し合う。元々命を守るために皆が生きているというのにああいう人種は危険な存在だ。もしもの時は俺だけが業を背負う。殺されるのなら俺が殺される。易々と殺されるつもりはないがそういう覚悟を持とう。
8/17
案の定というか何というか。デジャブを感じるような即バレが起きた。どれだけ勘が鋭いんだ、キリトは。
前にもオワタ式を見抜かれたようにレッドプレイヤーらしきプレイヤーに襲われた事がすぐにバレてしまった。何故かと問えば、経験があるのだそう。オンラインゲーム熟練者と初心者から足を抜け出した俺では持っている知識も経験も違うみたいだ。
どれだけ強くても数の暴力には時として、勝てない事がある。熟練者ともなれば持っているアイテムはレア度を含め、すぐにでも強くなりたいと思っているのであれば奪えば早い事をするんだそうだ。このデスゲームであれば生き残るためにプレイヤーキラーを厭わない者もいれば、英雄願望を持つ愚か者が装備を奪って自分に酔いしれる事もあるとか。そういうのは誰かを殺してまで奪う度胸はないらしくPKは多発していないのが現状だとコナン君ばりの推理をしてくれた。
俺も手伝う、もしまた殺しに来たのなら守ってみせる。とキリトは豪語した。もし俺が女の子ならコロリとキリトに溺れるような格好良い発言だが、残念ながら俺は男でキリトよりも年上。守るのなら俺がキリトを守り、キリトは守られるべきなのだ。
今回は渋々と引いてくれたが、あの顔はまだ諦めていないだろう。また同じ事が起きれば間違いなく首を突っ込んでくるのは目に見えている。
どちらにせよ、あのプレイヤーとはまた会う。その時は情けは与えずに殺す。俺のような高レベルプレイヤーを狙うのであれば攻略組は格好の的になる。アインクラッド攻略の邪魔になるようであれば排除する。
8/19
夏休みの宿題は八月に入る前に終わらせるタイプだ、俺は。ふと、あまり暑さの感じない夏を満喫していると真っ只中のユウキから夏休みの宿題は早く終わらせる方なのかと問われたので各々が答えを示すと、意外とこの話題が長続きした。
体が弱り始め、入退院を繰り返す始める前は宿題はそっちのけ派のユウキ。宿題をやるよりもやりたい事をやっていて先生にも何度も怒られてたなー、と小学生のくせにババア並の煤けた様子を見せた。何とも言えなくなってアスナがぎゅーっと抱き締めていた。気分を紛らわせるためと悲観的な人生を哀れんでの事か。仲の良いアスナだからこそすぐにできた事だろう。
俺もネガティブになりそうだったので豪華な食事を用意した。料理スキルを上げたいと言うアスナとサチと大量の食事を作った。料理スキル上げにはたくさん料理を作るのが第一候補なわけだが、母のいない父と妹の三人暮らしをしていれば自然と暇な年上の俺が家事を担当する事になる。レシピも隠し味も色々知っているのでレパートリーに困る事はなかった。嫁入り修行のために先生役を任せられている。
困った事にやんちゃ坊主二人がつまみ食いをしようとするので短刀、ナイフの扱いもアサシンのように手馴れた。後ろから人質を取る犯人のように首にペチペチとナイフの刃の腹で叩いたりが日常になりつつある。圏内ノーダメージの事があっても体が竦むそうで、つまみ喰いも命懸けだと二人は話す。キとユが。
……もう主夫でいいよ、俺。
8/23
少し早い夏休みイベント終了。殆どのプレイヤーがクリアアイテムを獲得したようだ。ボーナスステータスがリジェネ効果アップ(小)なので必要のない俺は他人に譲った。スキル上げをしたいと言うユウキに。もう攻略組の心構えを持っているようだ。
そろそろ夏限定に出していたアメリカンスタイルのプールを仕舞おうかと考えたがジェネレートしている家具アイテムを回収するのも面倒なのでそのままにしておこう。浮き輪を入れてケツをはめるのも結構楽しいというかリラックスできる。攻略の疲れを癒すのにうってつけなのだ。
ドロップアイテムもそれほど美味しくないし、メリットといえばと真っ先に上がるのは女性陣の水着姿だろうか。彼女を寝取られてから女子と関わる事を嫌って妹の水着姿しか見ていなかったが、久し振りに生で見るのも良かった。眼福と言えばいいのだろうか。同年代の元彼女に似た女子は見るだけで吐き気がするが、年下のアスナ達は意外と何とかなるものだ。
茶色の髪、焦げ茶色の瞳。今、思い出すだけでも頭が痛くなる。あそこまでクソビッチだとは思わなかった。口だけ、尻の軽いクズの一種。初めての彼女だったが、完全にトラウマだ。今の世界で似た者がいれば誰にも気付かれないように殺してしまいそうだ。高校二年で別れて以来、会ってない。会えばどうなることやら。
今日一日それを思い出すから舌打ちはするわ舌打ちはするわ貧乏ゆすりでイライラしているのを周りにアピールしたり。同居人に居候から怖がられてしまったようだ。反省しておこう。
8/30
いよいよ八月と夏休みが終わる頃だ。現実なら新学期の用意をするといった事で忙しくなるだろうが、このSAOではそんな事は関係なしにこの世界から脱出しようと日々努力を続けている。
お遊びのイベントも終わり、新しい始まりの区切りである九月に入る前。気分を切り替えて精神を削る戦いに再び臨む事になる。攻略組最前線の俺達も真面目に攻略をしている。キリト、俺。一歩下がってユウキ。血盟騎士団の副団長であるアスナは団長であるヒースクリフの下で必死に頑張ると聞いた。サチといえば留守番係でまだ経験が足りないユウキと共に自宅警備員を勤めている。
エクレールさん、最近はどうしてるんだろうか。ギルドぐるみで忙しいと聞いているが嫌な予感がしてならない。攻略の合間にエクレールさんを探す事にしようかと考える。あの人は俺よりも年上で色々と世話になっているから少しでも恩返しをしたい。
なにはともあれ、何をするにしてもこの世界では強さは何よりの解決手段だ。レベリングとスキル上げを欠かさずに行いたいと思う。