2/01
さて。二月だ。新年を迎える一月も過ぎ、二月を迎えてこのデスゲームが始まって71日ほどだろうか。徐々に問題はあれどもSAO内での生活は確立され始めていた。
大きく分ければ俺もその仲間、ボス討伐によるゲームクリアを目指す攻略組。攻略組に期待を寄せつつもこのSAOでリアルと変わらない生活を送ろうとするグループ。細かく分ければもっとできるが、要は攻略に精を出す者とそうでない者で分けられる。
自殺しようとする者も減り、当初移り変わりが激しかった人口は安定を見せている。そんな中、攻略組は休む間もなくボスの攻略に臨んでいた。第四層迷宮区ボス討伐をだ。もう終えているから特に話す事はない。
日頃からキリトとクエストをこなしていたから息もピッタリ、レベルも安全マージンを容易く超えているのでそうそう苦戦はしなかった。というわけで最速ボス討伐、犠牲者ゼロを達成して全プレイヤーを沸かせた。妬みを言うアホもいたが無視だ。バカオウ、まだ生きてたのか。
そして初のラストアタックボーナス。ボスドロップもゲットできた。ボーナスステータス満載の服なので試着した。似合わないので肥やしストレージに移す事にした。ドロップは防具と装飾品、恩恵があるか微妙な性能だった。
―― 窮鼠の指輪 …… HPバーがレッドゾーンの時に攻撃力倍加
元からレッドもイエローもねーよ。茅場晶彦死ね。
2/07
第五層開放。及びにレベリング地帯調査。新しい階層が開放されればいつも同じ行動をしている気がする。
レベルは少ししか上がらなかったが新たなスキル枠が増えたのでそこだけは素直に喜ぼうと思う。特にこれは育てたいと思うスキルは無いのでマスターした直剣スキルを装備してマスターの恩恵をありがたく戴こうと思う。細剣もそろそろマスターできそうだし。
そうそう。聞けば今も戦神の加護を使うプレイヤーは俺だけらしい。メリットは素晴らしいけどデメリットが酷だもんね。強制HP二桁とかやってらんねーよって俺も思うよ。未だに使うのは自殺志願者とまで言われ、どんな反応をすればいいかわからなかった。
――笑えばいいのか? 笑えよ、ベジータ。
2/09
アスナに変な団体に誘われた。名前は料理同好会。別に変でもないけど。メンバーが二人だけなのは変だと思うがそこは触れないでおこう。
攻略組以外で料理スキルを習得している者もいるそうだが、殆どははじまりの街から出たがらないらしく、第五層の空き物件をレンタルして今日一日完全オフで料理研究に勤しんだ。
このSAO、料理はできるけど調味料はないというクソったれな不具合を抱えているのだ。レシピは大学生活に備えて簡単なのを教わっているがまさか仮想世界で使う時が来るとは。だが調味料がない。塩とかは大丈夫だが、オイスターソースといった色々混ぜたソースはないそうなので作るしかない。
取り敢えずマヨネーズだけはできた。ウチの親父が好きなので作り方を覚えていて良かったと今、思う。他は要研究、要試食だ。後日、改めてアスナと研究する事になった。課題としてレシピを知る者を引き込むこと。そう聞いたがフレンドの名前を見て考えてみた。
アスナ、今やってる。
キリト、使えん。
エクレールさん、家事は駄目だと話していた。
アルゴ……アルゴ?
今度、アルゴも巻き込もう。というかフレンド少ないなァ。
2/12
SAOのGMから新たな情報が入った。スキルはスキルでも特殊なスキルの実装の情報がプレイヤーの中で噂されている。
アルゴ経由で知ったが、どうやらスキルの中でも特殊なユニークスキルとエクストラスキルがあるらしく特殊な条件を満たす事で使えるようになるとのこと。何のこっちゃら。
ユニークスキル、エクストラスキル。まさかと思って自分の???となっていたスキルを確認してみた。名前が開示されていない……だと……!? ますます気になる。この謎に包まれたスキルはユニークスキルでもエクストラスキルでもない事になる。バグスキルか何かなのか? 2ndとかあるから発展版と解釈も可能だが。
オワタ式のデメリットはバグで俺というアバターはバグに侵されていてこのスキルはバグが偶然生んだ産物、という事なのか?
―― アルゴからの新しいクエスト …… スキルの習得調査
……アルゴ、俺を便利屋だと思っていないか?
2/14
レベリングの傍ら、ユニークスキルとエクストラスキルの情報が齎されてから色々と試す毎日が始まった。特定の条件を満たせば装備可能になるとの事なので考えられる条件を試行錯誤してみた。
まずはソードスキルの使用回数。万遍なく使えば新たなスキルが発現する可能性、考えたが時間が掛かりそうなので後日期待。
モンスター討伐数。ある特定の数を越えた状態でレベルが上がれば発現。無意味。この方法はハズレだったようだ。
スキルマスターの数、もしくは特定の組み合わせのスキルマスター。謎に包まれたスキルがあるので検証は難しいと思う。片手直剣スキルは完全習得しているが今は何か変化があるわけでもなかった。
何かしらのアイテム。秘伝書の類を使用する事でスキルが開放される。レベリングと同時に行っているアイテム収集に期待。段々とコルだけが貯まる一方である。いい加減に装飾品がなくてアニールブレードより上の武器が切実に欲しい。後はキリトみたいな軽装の服装防具とか。
RPGで考えられるのを一通り試してみたがどれも時間が掛かりそうだ。茅場晶彦の事だ。鬼畜な課題を出して笑っているに違いない。
改めて茅場晶彦に殺意が湧いた。コノウラミハドコヘブツケルベキカ。
2/18
遂に熟練度ブーストによる細剣スキルマスター完了。ズラリと並ぶ細剣と直剣のスキルが眩しく見えた。
完全習得という文字を見ながら戦神の加護というアイテムは大概チートだなと呆れる。デメリットは大きいが元々デメリットしかない俺だからこそできた事なのか。チート性能を持っていたとしてもわざわざ自分の命を天秤に乗せる物好きはいないだろうと思っている。
細剣スキルマスターをアルゴに伝えると、スキル熟練度のアルゴの考察を含めた説明を受けた。ブースト抜きにスキルの熟練度を上げる方法は使い込むこと。例えば直剣ならば直剣に分類される武器を使用し、敵にダメージを与える、敵を倒す、ソードスキルを使う。定められた行動をする事で熟練度は上昇する。
まだ調査中だが、レベル差も熟練度の上昇に影響するらしい。安全マージンを確保した上で苦戦する事なく行動をしても著しく熟練度の上昇は下がる。簡単に言えば弱いものイジメをしても強くならないということ。
俺の場合、異常とも言える上昇は様々な要因があるからだろう。戦神の加護のブースト、レベリングを行う時には手数で行動数を稼いでいる、レベルはモンスターが上、これは自分の考えだがHPの差も関係しているのではなかと思っている。オワタ式、HPが1だと差はどれだけになる事やら。
これはひどい。オワタ式である事をまだ誰にも話していないのでキリトをビーターだとすれば外道チートではないか俺は。チートってレベルじゃねーぞ。
2/22
久々にパーティーを組んでクエストをした。キリトと組むのも何度目だろうか、スイッチという掛け声すら必要ないほど息が合うほど親密度がカンストしている気がする。そろそろ合体秘奥義なるものが出せるのではないだろうか。二人限定一撃必殺ソードスキルとか。
キリトとのパーティープレイを期に、武器を直剣に戻した。細剣は細剣でメリットはあるんだけどそろそろキリトと合うのは直剣だと感じてきた。筋力値も正気の沙汰とは思えない数値を叩き出しているし、剣速も細剣と変化していないとキリトに教えてもらった。
以前のアルゴのスキル熟練度講座で少し気になる事ができた。ある条件下に置いて熟練度ブーストが可能ならステータスにもブーストが掛かるのではないかという悪魔じみた考え方を。もしその仮説が正しければ全てに説明ができる。
オワタ式の俺。一撃でも食らえば死ぬ他のプレイヤーよりも過酷な枷を抱えている。つまりは生き残るためには避け続けるしかない。武器での防御も防御力を越えてしまっては例え1でも死ねる。今まで全ての攻撃を避けてきた。もし、それがステータスの成長に少なからずの影響を及ぼしているのだとしたら? あくまでも仮定の話。だが一度考えてしまえばそれが嘘だとどうしても思えなくなる。
俺のステータスは……無傷ボーナスで化け物となっているのだろうか。少しだけ自分がわからなくなった。
2/23
バレた。バレた。バレた。ずっと隠したかった事を知られてしまった。何でバレた。必死に隠していたのに何故バレたんだ。
このSAOで最も仲が良い最も知られたくないキリトに秘密を知られてしまった。オワタ式のHPを隠したいのに見破られてしまった。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。あのキリトに限って誰かに言い触らしたりはしないだろうが不安で不安で堪らない。もしあの子が誰かに言えばどうなる? 殺される? 死の恐怖を忘れていたはずなのに心の底から湧き出てきた。あの時と比べればマシだが少し手が震える。
もうこうなったいじょうはげんかいだ。おれはもしものときはあのこを、あのこを。きりとを
こ ろ す