6/02
命名、シックスセンス。死を嗅ぎ取る能力。首の後ろがチリチリする感覚を考えられる人間の隠された能力として名付けた。これがあればダンジョン、迷宮区での不意打ちにも誰よりも早く反応できる。索敵スキルもシックスセンスの恩恵なのかもうマスター寸前だ。キリトでさえ俺の三分の一だというのに。
そのシックスセンスだが、最近よく発動している。チリチリしっぱなしで疲れが溜まる。誰かに狙われているのだろうか、と勘ぐる上に無闇矢鱈に剣を抜いてしまう癖がついてしまっている。もし現実世界なら銃刀法違反ですぐに捕まりそうだ。
ユウキカウンター事件からユウキは妙に機嫌が悪い。女の子は傷つきやすいとは妹からよく聞いているがまさに現状がそれだ。拗ねてるし飯は奪うし殴ってくるしカウンターでまた泣かせるというループ。これだけを聞けばドメスティックバイオレンス的な事になっているが習慣というか癖になっているからしょうがないと思いたい。コルを凄まじく消費してご機嫌を取るのが最近の攻略日常。女性扱いスキルをマスターするのだ。女の子は別腹である。
まあ、完全に殴った俺が悪いんだけどね。意識しなくても自然にカウンターが出るような癖がついてしまったら普段の暮らしにも支障が出そうだ。帰還しても日常的に人をクロスカウンターで殴りまくっていると監禁までされそうである。ブタ箱と呼ばれる犯罪者の牢獄に。
カウンターというカウンターを何度もしているせいか、体術スキルも上昇しまくりなんだよな。使う度に熟練度が上がるのはわかっていたがプレイヤーを殴るだけでも上がるってどういう事やねん……。
6/05
戦神の加護の恩恵で上がっていたスキルの熟練度が更に上がった。片手剣と細剣はとっくにマスターしているが、他の体術スキルといった戦闘に関係が微妙なスキルは日常生活の中で少しずつ上昇するようだ。これもSAOの醍醐味と言うべきだろうがデスゲームが台無しにしている……この言葉も何回目だろうか。茅場晶彦死ね。
少し前に発表されたユニークスキルとエクストラスキル。未だに取得者がいない。何があるかもわからないし条件もまだ不明のまま。現段階では一番近い者はキリト、俺、ヒースクリフ。クォーターポイントのダメージ量が最も多いトップスリーの面々だとアルゴは言う。キリトはソロのまま、俺もソロ、ヒースクリフはケツ命騎士団というギルドを立ち上げてギルド長となっている。条件は俺とキリトのみが合い、ヒースクリフはまた違う条件を満たしているのかもしれない。
むむむ。ヒースクリフを見れば殺意が湧くのは本当に何故だろうか。理由もわからないまま他人への殺意に身を任せるのもどうかと思い、抑えているがもしヒースクリフが茅場晶彦ならこの殺意と積もりに積もった負の感情が爆発して自分の命も顧みずに殺しに掛かりそうだ。そうならない事を祈ろう。
6/08
前から試そうと思ってた事を日記を読み返して気付いた。他にも気付けた事が多々あるのでやはり初めに日記を付けようと思ったのは間違いではなかった。細かい事にも大きな事にも。もっと早く読んでいればわかっただろうにという部分もあった。
例えばオワタ式のHPが減る条件。よくよく見ればアルゴに殴られているではないか。その時に死んでいない上、圏内ノーダメージシステムがある事は気付けるはずなのに。しかも他人ではなく自分の日記なのに気付かないなんて間抜けにも程があるぞ。
これからは日記を毎日読み返すようにしよう。そう決めてから今日一日は下層の方へ行ってユウキの安全レベリング、スキル熟練をした。体を自由に動かせる事に喜びを覚えている彼女の願いを少しでも叶えたいと思うのは妹と年が近いからだろうか。できるだけ彼女のやりたい事をデスゲームでもこのSAO内で叶えよう、というか叶えろと年下のアスナに言われているのでユウキを拾ってからもう一人の妹ポジション兼居候が定着している。
まあ、彼女の見せたソードスキルをシステム補助無しで再現できるのは本当に驚いた。持ち前の才能と言うべきか、イメージが豊かでリアルそのものなのか。イメージを完璧に再現できるのもあるのだろうか? どちらにせよ、ユウキは病気故にこういったゲームでは無類の才能を発揮できるのだろう。普通は体を動かすのは当たり前。然れどその当たり前に誰よりも憧れたから遺憾なく発揮できているのかもしれない。
イメージ。イメージをするのだ馬鹿弟子よ……
こんな台詞を吐けるほど彼女はノリノリだった。わざわざ事前に俺に頼んだ付け髭まで添えて。後で酒の肴になると思い、スクリーンショットで保存しておいた。ユウキは恥ずかしそうにしていたがおじさんの楽しみだ。甘んじて受け入れるのだ。
SAOに入ってから一気に老けた気がするなぁ……。
6/12
報告から。同居人が増えた。サチという名前の女の子だ。
今日の夕飯の用意をしていると急にキリトが訪ねてきた。ビックリしてしまったがあの子の目が普通ではなくなっている事にすぐ気が付いた。幼い頃に見た重病だと告げられた父の患者と似たような目をしていた。言うのであれば全てに絶望したような無機質で光を灯さないような目だ。無碍にするわけにもいかず、メソメソと泣いているサチと一緒に家に招き入れた。ユウキの慌てる姿がどうもシュールだった。
自分とユウキの分はユウキの許可を得て後回しにし、作っていた夕飯を二人に振舞った。どちらもあまり進んでいなかったが泣きながらもサチはシチューを飲み、キリトは白いシチューの入った皿の中身を眺めるだけで何もしなかった。無理矢理食べさせても後で戻すほど精神が参っていたので二人を泊まらせた。
まあ、今も書いているけどキリトは叫ぶわ叫ぶわ。ユウキも心配して俺の部屋に来てキリトの事を教えられたわけだが。暴れに暴れた形跡があり、部屋は滅茶苦茶になっていた。枕の中の羽毛は舞い、ベッドの布団はボロボロ。部屋の隅で泣きながらずっと誤っている姿が部屋に入ってすぐ目に入った。
今日はここまでにしよう。人は誰かの温もりがあればそれだけで安心すると言うし、野郎で悪いが手を繋いで安心させてやろう。父の言葉を信じれば、だが。
6/14
俺はパパか。お父さんか何かか。
大分、気分が落ち着いたキリト。メソメソと五月蝿かったサチを黙らせる。いい加減に何日もメソメソしていると家も辛気臭くなるので女の子にはあらぬ張り手ビンタをして気合を入れてしまった。更に泣くかと思えばユウキに横槍キックを受けて笑い話っぽくなったお陰か、色々と事情を聞く事ができた。
このサチ、あの「月夜の黒猫団」の一員らしい。更にその「月夜の黒猫団」は二人が来た日に壊滅したそうだ。あのお調子者やリーダーの疑り深い子も。尤も、リーダーのケイタ君は自殺をしたそうだが。昔によくあった一層から飛び降り自殺と同じ事を。実質、生き残っているのはサチだけらしい。死のうとしたが死ぬのが怖くて精神を病んだキリトと共に家に来たのが経緯。
そもそも何故壊滅したのかを問えば欝状態に陥る二人。揃って自分が悪いと言い出すわサチはまた泣き出すわ。いつから俺の家はこんなにも辛気臭くなったのだろうか。ユウキに急かされ、抱き締めて撫でるという主人公にのみ許された禁断の恥ずかしい所業をした。俺のキャラに合わない行動にも思えるのだが。自分のキャラというものはここに来てからもう忘れた。
原因は「月夜の黒猫団」の少しレベルアップして調子に乗ったメンバー。罠の考慮もせずに宝箱に目が眩んでトラップに引っ掛かる。更に潜っていたダンジョンの安全マージンギリギリなので苦戦必須。転移結晶すら使えない場所でモンスターに囲まれてやられたらしい。それをキリトが自分の本来のレベルを隠してキチンと説明していなかったのが悪かったと思っているようだ。リーダーのケイタ君も最後は恨み言を言いながら死んだそうでそれが呪いのようにキリトにのしかかっているのだろう。
サチは何だ。偶々臆病であるのが幸いして回避に徹底し、キリトの側を離れなかったのが命拾いしたらしい。何というか、SAOで何度も見た光景だな。
暫くは二人を家に泊めようと思う。目を離せばふとした拍子で自殺しかねん。特にキリトが。表面上は大丈夫そうだが内面はもうボロボロだろう。まだ少年のまま、年上の俺が支えないといけないな。あの子との約束もある。
6/18
段々と落ち着きを見せてきたキリト。まだまだ情緒不安定な部分もあるが悪夢に魘される事は少なくなってきているそうだ。喜ぶべきはずなのに回復が早いのが気に掛かる。仲良くしていた面々が死に、その責任が自分にあると罪悪感を抱いていた割には復帰が早いような気もするのだ。
周りには同性の年上はいない。SAOに参加している者の中には年上は探せばいるだろうがキリト以上に心を許せる者は殆どいない。ヒースクリフという名前が頭に浮かんだが燻る負の感情の事を考えれば避けたい。ふとしたきっかけでレッドになるなんて事になれば一巻の終わりだからだ。オワタ式の俺では一対一では圧勝でも数で攻めてこられれば対処は殆ど不可能だ。やはり戦いは数なのは真理なのだろうか。ドズル・ザビは賢者か。
攻略組最前線復帰はまだ難しいものの、サチとはよく下の層で散歩をしているらしい。カッポーのようで甘酸っぱいとユウキから感想を貰ったが己は何歳だ。出歯亀をするオバハンのようだぞ、と言えば膨れっ面をして罵倒をしてきた。手を出せば俺の意思関係なくカウンターをし、痛い目に遭う事を学んだようで攻撃から口撃へと八つ当たり方法を変更しているようだ。ボキャブラリーが豊富ですこと。前に女性陣に慰められた時を思い出したよ。アスナは兎も角、女神様のエクレールさんは今何してんだろ。アルゴはアルゴで偶に飯をたかりに来るけど。
うーむ。仲の良いプレイヤーが少ないのは更に難しくなる上層に対応できなくなるかもしれん。いくら息が合い、背中を安心して預けられるキリトがいたとしても少年らしい弱さを見せられてはずっと頼るわけにもいかんし。やはりずっと避けていたギルドという団体のグループに加入するか創立するしかないのだろうか。背中をずっと気にするような毎日は送りたくはないんだがなぁ。殺意も外に出れば感じるし、勘弁願いたいよ全く。
そろそろ六月も半分が過ぎた。恒例のステータスチェックを六月末に載せてステータス配分の調査を再開しよう。流石に他人にはホイホイと見せるわけにもいかんが少しでも戦力は欲しい状況なので協力は惜しまないつもりだ。
6/21
何か凄い武器手に入った。レアドロップなのだろうか、今ある全ての武器を上回る性能を持っている。変わりに要求値がレベル七十とは何たる事か。けしからんけしからん。今でも最高峰の62だというのにお預けですか。強化も含めればハーフポイント、地獄のクォーターポイントの区切りでも通用するレベルじゃないほど活躍しそうだ。
「魔大剣アヴェンジャー」だと。何ともオトコノコの心を擽るネーミングだろうか。そこは普通に魔剣かアヴェンジャーだけでいいと思うんだ俺は。要求値はレベル七十に加えて大剣スキル、両手直剣スキルを500まで。???という項目もあるので謎だ。
両手直剣スキルは未だにゼロだな、と思いながら今後の攻略状況を考えてどのスキルを上げようかと迷う。クォーターポイント突破後、あの地獄と比べるのもあれだが難易度が上がり始めている事を考えればフロアボスを慣れていないスキルと武器で戦うのも自分にも他のプレイヤーにも危険が及ぶのでどうしようかと本当に思う。戦神の加護は壊れたし時間はかなりかかるだろう。
誰かに売ってもらうか交換してもらおうかと考えたがキリトは多少のリスクを背負って少しでも強くなろうと肥やしだった戦神の加護を引っ張り出して使っているそうだ。なので無理、と。アスナもアスナで使い始めているらしいし知り合いは全滅ではないか。
アルゴに頼もう。揺すりや脅迫で何とか……とイメージがあるのはそれだけアルゴが胡散臭いからだろうか? もしかすると彼女自身が実験の為にストックしているかもしれんし駄目元で聞いてみよう。
駄目でした。
6/28
あー、こんな事があったなーと懐かしみながら下層のクエストをユウキと共にこなした。レベル差が激しいのでピンチの時以外は手を出さないようにしてみたがレベルの割には上級者の動きをするので出番は殆どない。あったとしてもクエストの終わり方の分岐点をアドバイスした事くらいか。
ユウキを例えるのなら玄人が知識を持っている状態で同じゲームをプレイし直す、いわば昔に流行った俺TUEEEEEE!的なのだろう。強くてニューゲームにも似ているがステータスは初期値のままなので違うだろう。ソードスキルもシステムの補助なしで上級のを発動させるしもしかすると習得してなくても振り方を覚えていれば使えるのだろうか。
習得している状態は何から何まで自動でできるがソードスキルというシステムは習得していなくても発動する仕組みになっていると仮定してみる。以前に見せた上級ソードスキルを真似る事ができるユウキだからこそ発動は可能、まさにシステムの抜け穴を突いた裏技なのかもしれない。
もしこの仮定が正しければSAO攻略で更に有効的に進められるかもしれない。システム外スキル。茅場晶彦がシステムに組まなかった誰かが考えるスキルが働くのかもしれない。とすれば茅場晶彦が思い描いている絵図を根本的な部分からへし折る事も不可能ではないのかもしれない。
何にせよ、更に難易度が上がる上層に対応できるように力を蓄えよう。スキル上げとレベル上げ。根本的なステータスの向上による己の強さの強化を再び始めよう。
レベル 63
筋力 487
敏捷度 603
片手直剣スキル/完全習得
体術スキル/534
索敵スキル/746
???スキル/完全習得
???スキル2nd/完全習得
軽業スキル/109
隠密行動スキル/214
片手細剣スキル/完全習得
投剣スキル/87
識別スキル/198
料理スキル/280
鍛冶スキル/13
武器防御スキル/13