折れない剣   作:ko6ske

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進行度1-3

 トレーニングルームから医務室に向かう途中。すれ違ったサーヴァント達と、軽い挨拶や雑談を交わしながら、レオニダスが言っていた、彼の体調不良の原因を、少し考えてみる。

 

 まず考えられるのは、『一時的な魔力不足』。これは無い。ある訳がない。

 

 サーヴァントを現界させる魔力は、常にカルデアの電力から提供されている。仮に提供する魔力が不足ともなれば、まず消費を抑えるため、サーヴァント達に霊体化などをお願いするだろう。しかし、自他共に認める万能の天才、ダ・ヴィンチちゃんと、並列思考であらゆる可能性を考え、カルデアの危機を救ってくれたシオンさん。この二人が揃ってカルデアにいる今、魔力不足を始め、極めて初歩的な失敗を、するわけがない。

 

 次に考えられるのは、『サーヴァントにだけかかる病気』。これも魔力不足同様、除外しても大丈夫だと思う。

 

 基本的な話、生身の身体を持たないサーヴァントが病気になることは、まずない。一度だけ、クリスマスに流行った「シュメル熱」があったけど、あれもかなり特殊な状況だった。似たような事がもう一度無いとは言い切れないけれど、今まで挨拶を交わしたサーヴァント達の元気な様子を見ると、選択肢から外しても、多分、大丈夫だと思う。

 

 となると、考えられる中で一番可能性が高いのは……。

 

「やあマスター、おはよう! 医務室に用事かい? 若いのに感心しないネ」

 

「おはようございます、教授。で、今回の事件の動機はなんですか?」

 

「挨拶ついでに犯人扱いは酷くない!?」

 

 『他サーヴァントの仕業』。

 

 例え話。IFのお話。【たまたま】医務室の前で、【偶然】出会った、【胡散臭い】アラフィフのアーチャーの仕業。とかね。

 

 

 アラフィフのアーチャーこと、『新宿のアーチャー』。

 

 特異点と化した新宿で出会い、あれやこれやと─亜種特異点『悪性隔絶魔境 新宿』参照─あった後、カルデアのサーヴァントとして召喚された。

 

 以降、特異点を作るまでの活動は(今のところ)少ないけど、他のサーヴァントにちょっかいをかけ、時にはサーヴァント同士が殺し合いを始める殺傷事件のきっかけを、ちょくちょく作ったりしている。

 

 なので、今回も教授の仕業かと思い、朝起きてから今までの経緯と、私の拙い推理を話してみたけど、

 

「なるほど。だけど残念! 今回私は関わってないよ。他のサーヴァントの仕業と言う君の推理は、当たっているけどネ!」

 

 当の教授はこの様子。

 

 真意が掴めない笑みと、わざとらしく、軽い口調で語られる言葉。もしかしたら、「自分は関わってない」というのは、息をするのと同じくらい、無意識に出来てしまう嘘かも知れない。けれど、仮に教授が本気を出せば、私……いや、並大抵のサーヴァント達では見抜く事は出来ない。それこそ、見抜けるのはホームズぐらいだろう。

 

「教授は、今回の犯人を知っているの?」

 

 一応聞くだけ聞いてみるが、教授が簡単には答えを言わないだろう。今までの経験を思い浮かべながらも、万が一を期待して聞いてみると、

 

「もちろん知っているとも! しかし、関わった彼の事を、犯人扱いはしないでほしい。今回は誰かに故意に起こされた事件でも、彼の不注意から起きてしまった事故でも無い。そこを、間違えないでくれたまえ」

 

 にこやかな笑みを浮かべながら、サラッと答えてくれた。

 

「犯人じゃない? それってどういう」

 

「しっ……わからなくても、とりあえず頷きたまえ。今後の君のために、ね」 

 

 人差し指を私の口に当て、続こうとした言葉を口の中で遮りながら、私にだけ聞こえる小さな声で話す教授。私の瞳を見つめる視線は私を見ているようで、何処か遠くを見ているようにも感じる。

 

 何かを探しているのか、あるいは、何かを確認しているのか。

 

 どちらにしろ、私は教授の言葉に従い、小さく頷いておく。理由は、後から聞けばいい。

 

「よろしい! では、立ち話は私の腰に悪い。『医務室』の待合室で、ゆっくりと話の続きをしようじゃないか!」

 

 私が小さく頷いたのを確認した教授は、オーバーな身振り手振りで私の後ろに立つと、周りには誰も居ない、物静かは廊下に響く声を出しながら、私の背中をグイグイと押し、『医務室』の中へと入っていった。

 

 

「よっこらせ……ふぅ。やはり、ここの椅子は良い」

 

「だね。ふわふわで気持ち良い……」

 

 待合室に置かれた、適度な柔らかさと反発力を持った椅子に、教授と向かい合うように座り、一息つく。部屋の主であるアスクレピオスは居ないのか、『医務室』内は、シンと静まり返っている。

 

「アスクレピオス君なら居ないよ。なんでも、急患が出たらしくてね。ナイチンゲール君と共に出てしまった。おかげで私の腰痛は後回し! 彼の湿布はよく効くから、早めに診てほしいネ……」

 

「なるほど。で、本題に入っても?」

 

「アラフィフに冷たいなぁマスターは……」

 

 やれやれ、と、肩を竦ませる動作が似合いそうな声で呟きながら、ゆっくりと足を組み、こちらに視線を向ける。

 

「では、答え合わせを始めようか」

 

 待合室に掛けられたアナログ時計が、朝の8時を知らせるのを合図に、教授の授業が始まった。




「教授の腰が重すぎて執筆速度がマッハで遅くなってヤバい」
意訳・教授のキャラが難しすぎて全然書けませんでした

!!何故書こうと思ったし!!

5/31追記
やっと書き上がったのですが、医務室に居る時間が思いの外長くなったので分割します。お待たせして申し訳ございませんでした

次の教授ピックアップは全力で引くので許してください

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