折れない剣   作:ko6ske

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進行度1-5

 カツカツと硬質な靴音を鳴らしながら、今度は迷いなく、白を基調としたカルデアベースの廊下を進んでいく。

 

「ううん。もう迷っていられない、の間違いかな」

 

 ずっと、迷ってはいた。

 

 朝に清姫が起こしに来た時も。朝一の朝食を食べ終わった時も。トレーニングルームで体調不良の話を聞いた時も。少し遠い場所にある医務室に向かう時も。

 

 足は黙々と目的地に向かいつつも、心の片隅では「彼の部屋に行くべきだ!」と、主張を続けていた。

 

 その心の声を無視して、遠回りを続けた。

 

「ただ純粋に恥ずかしかった」

「女性が男性の部屋に行くのは、はしたない行為だ」

「彼にいやらしい女性と思われたくない」

 

 今振り返ってみると、思わず笑ってしまう位に下らない理由を、だけども私にとっては大事な理由を付けて、正しかったであろう心の主張に蓋をして、知らんぷりを続けていた。

 

 最初から行くべきだったのかもしれない。一人の『女性』としてではなく、一人の『マスター』として。

 

「つ……着いた……」

 

 世界の最果てに有るとすら感じていた場所は、歩き出せば心の準備が出来ない程に近く、あと一歩を踏み出せば、部屋の扉に手が届いてしまう場所にあった。

 

 バクバクと、緊張している気持ちが耳元でうるさく鳴り響く。全身が石化したかの様に固まってしまい、今すぐ背中を向けて逃げ出したい気持ちに駆られる。

 

 まだ彼と、『マスター』として会う準備が出来ていない。

 

「すーー…………はぁーー…………」

 

 気持ちを落ち着けるため、深呼吸を一つ挟む。

 

「すー………はぁー………」

 

 気持ちを切り替えるため、もう一回。

 

「すぅ……はぁ……」

 

 覚悟を決めるため、最後に一回。

 

「よし!」

 

 とりあえずだけど、彼と『マスター』として会う準備完了。何が起きているのかは医務室で知り、彼がどんな状況になっているかは、ある程度の想像はできた。

 

 今の私に隙は無い。扉を開けて、彼がどんな姿で出てきても、私は驚きはしない。

 

「いざ!」

 

 気合の入った掛け声と共に、最後の一歩を踏み出しながら、扉に手をかける。

 

「わっ……ぷ!」

 

 しかしその手は見事に空を切り、結論から言うと、私は廊下に尻餅を着いた。

 

 気合を入れすぎた一歩から伸ばした手は、先に扉を開けられた事によって空振りし、その勢いのまま前のめりに倒れるはずだった。しかし、扉を開けた張本人にぶつかる事で、前のめりに倒れる事は防がれた。結果、前に倒れる勢いはそのまま後ろに向きを変えて、廊下に尻餅を着くことにはなったが。

 

「おっと……失礼。怪我は無いかね?」

 

 頭上から、声が降ってくる。

 

 歳を重ねた男性らしい、低くて、渋くて、どこか彼の面影を感じる声。

 

「そういえば。このような状況に適切な台詞があったはずだ……確か……」

 

 私は、ゆっくりと顔を見上げる。

 

 床に付きそうな程に長い緋色のマントで身体を覆い、幾度(いくたび)の激闘を潜り抜けた証とも言える、大きく、勇ましい傷痕が残る褐色肌の顔。そこから伸びた、綺麗な灰白色(かいはくしょく)の顎髭を撫で、少し考え事をする老年の男性。

 

 顎髭を撫でる手は、老人らしい皺が刻まれてはいるが、枯木のように細くはなく、どちらかと言うと、ゴツゴツとした巨岩の方を連想させる。

 

 と、考え事が終わったのか、真紅に燃える瞳をこちらに向け、『マスター』である私に向かって言った。

 

「問おう。貴方が、私のマスターか」

 

 こうして、私と彼の運命は重なり、マスター・藤丸立香と剣士(セイバー)・ベオウルフの物語が、幕を開けた。




「勝った!『進行度1』完!」

これにて進行度1は終わりです! 長々とありがとうございました!

ラストはクラスがセイバーだし、ただ単に運命構図を書きたかっただけです……許してください……

次回予告しますと、アサシンのサーヴァントと戦う事は決定してます。バトル有りです。

次回の進行度2も、よろしくお願いしますm(_ _)m
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