カツカツと硬質な靴音を鳴らしながら、今度は迷いなく、白を基調としたカルデアベースの廊下を進んでいく。
「ううん。もう迷っていられない、の間違いかな」
ずっと、迷ってはいた。
朝に清姫が起こしに来た時も。朝一の朝食を食べ終わった時も。トレーニングルームで体調不良の話を聞いた時も。少し遠い場所にある医務室に向かう時も。
足は黙々と目的地に向かいつつも、心の片隅では「彼の部屋に行くべきだ!」と、主張を続けていた。
その心の声を無視して、遠回りを続けた。
「ただ純粋に恥ずかしかった」
「女性が男性の部屋に行くのは、はしたない行為だ」
「彼にいやらしい女性と思われたくない」
今振り返ってみると、思わず笑ってしまう位に下らない理由を、だけども私にとっては大事な理由を付けて、正しかったであろう心の主張に蓋をして、知らんぷりを続けていた。
最初から行くべきだったのかもしれない。一人の『女性』としてではなく、一人の『マスター』として。
「つ……着いた……」
世界の最果てに有るとすら感じていた場所は、歩き出せば心の準備が出来ない程に近く、あと一歩を踏み出せば、部屋の扉に手が届いてしまう場所にあった。
バクバクと、緊張している気持ちが耳元でうるさく鳴り響く。全身が石化したかの様に固まってしまい、今すぐ背中を向けて逃げ出したい気持ちに駆られる。
まだ彼と、『マスター』として会う準備が出来ていない。
「すーー…………はぁーー…………」
気持ちを落ち着けるため、深呼吸を一つ挟む。
「すー………はぁー………」
気持ちを切り替えるため、もう一回。
「すぅ……はぁ……」
覚悟を決めるため、最後に一回。
「よし!」
とりあえずだけど、彼と『マスター』として会う準備完了。何が起きているのかは医務室で知り、彼がどんな状況になっているかは、ある程度の想像はできた。
今の私に隙は無い。扉を開けて、彼がどんな姿で出てきても、私は驚きはしない。
「いざ!」
気合の入った掛け声と共に、最後の一歩を踏み出しながら、扉に手をかける。
「わっ……ぷ!」
しかしその手は見事に空を切り、結論から言うと、私は廊下に尻餅を着いた。
気合を入れすぎた一歩から伸ばした手は、先に扉を開けられた事によって空振りし、その勢いのまま前のめりに倒れるはずだった。しかし、扉を開けた張本人にぶつかる事で、前のめりに倒れる事は防がれた。結果、前に倒れる勢いはそのまま後ろに向きを変えて、廊下に尻餅を着くことにはなったが。
「おっと……失礼。怪我は無いかね?」
頭上から、声が降ってくる。
歳を重ねた男性らしい、低くて、渋くて、どこか彼の面影を感じる声。
「そういえば。このような状況に適切な台詞があったはずだ……確か……」
私は、ゆっくりと顔を見上げる。
床に付きそうな程に長い緋色のマントで身体を覆い、
顎髭を撫でる手は、老人らしい皺が刻まれてはいるが、枯木のように細くはなく、どちらかと言うと、ゴツゴツとした巨岩の方を連想させる。
と、考え事が終わったのか、真紅に燃える瞳をこちらに向け、『マスター』である私に向かって言った。
「問おう。貴方が、私のマスターか」
こうして、私と彼の運命は重なり、マスター・藤丸立香と
「勝った!『進行度1』完!」
これにて進行度1は終わりです! 長々とありがとうございました!
ラストはクラスがセイバーだし、ただ単に運命構図を書きたかっただけです……許してください……
次回予告しますと、アサシンのサーヴァントと戦う事は決定してます。バトル有りです。
次回の進行度2も、よろしくお願いしますm(_ _)m