ちっちゃいガイガンになってた   作:大ちゃんネオ

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死闘の覇者

 既に身体は限界を越えていた。

 機械で構成される部分は機能しないし、ずっと悲鳴をあげている。

 これ以上の活動は無理であると。

 それでも……。

 

「歌が聞こえた、だと……。戯れ言を」

「戯れ言なんかじゃないさ。マジだ、ぜ……」

「いいや戯れ言だとも。立ち上がったのには驚かされたが立ったところでなんだというのだ。最早動く死体も同然ではないか」

 

 確かに、それは奴の言うとおりだ。認めよう。

 けれど、だけど、だとしても────。

 

「根性見せやがれ……。ええ? ピー助さんよぉ」

 

 発破をかけ、鉤爪で太腿を叩く。

 すると震えていた足が素直に言うことを聞いてくれたので胸を張り、レッドアローンの前に立ちはだかる。

 

「歌が聞こえただの根性だのわけの分からないことを……」

「分からないだろうな。完全機械(パーフェクトサイボーグ)のお前には。さあ、最終ラウンドだッ!!!」

 

 共に駆け出し、震える大地。

 レッドアローンの巨体が迫り、襲いかかる腕を掻い潜り思い切り自身の質量を武器にしてぶつかっていく。

 密着した状態から鉤爪でアッパーを繰り出す。

 硬い感触。

 これだけでは足りない。

 鉤爪で殴る、殴る、殴る、殴る、殴る!

 ひたすらに殴り続けるッ!

 およそ鉤爪の使い方ではない。  

 だけどこいつはぶん殴りたい。

 散々やってくれたというお礼を籠めて。

 

「馬鹿な……ここまでの力がどこに!?」

「どこからだろうなぁ!!!」

 

 鉤爪でビンタを繰り出し、レッドアローンを吹き飛ばす。

 鉤爪鉤爪言っているが、この鉤爪には一応ハンマーハンドという名前が設定されている。

 なので切り裂くだけでなく打撃にも使えるのだ。

 なのでとにかく打つ!打つ!打つ! 

 そしてフィニッシュに頭突きだッ!!!

 

「どうした! 動きが鈍いぜ高性能!」

「チィィィッ!!! ガイガァァァァン!!!!!」

 

 再び激突。

 レッドアローンの巨腕と鉤爪がぶつかり合う。

 漫画でよくある拳と拳がぶつかり合うシチュエーションと一致する。

 その時、ふと思った。

 

 なんて、人間のようだろうかと。

 

 およそ怪獣の戦い方ではないと。

 

「ガイガン……! ガァイガァァァァァン!!!!」

「うるせぇぇぇぇぇ!!!!!! 俺は……俺は!」

 

 瞬間、身体が人のものになったような錯覚に陥る。

 拳で戦っているようだと。

 しかしこの身体は確かにガイガンのものである。

 

 ……なるほど、確かに俺は人間と怪獣の()()のようだ。

 

 翼ちゃん……みんな……。

 ゴジラ……他の怪獣達……。

 

 人間と怪獣の両方である俺が、人間と怪獣の両方を守るんだ──────!

 

 至近距離での熱線。

 効かないだろうが顔面にぶち当てるだけでいい。

 一瞬でも目隠しが出来ればいい。

 視界を奪った隙に肉薄。

 腹部の回転鋸が唸る。

 斬れ、斬れ、斬れ!!!!!!!!

 

「ぬおおおお!!!!」 

 

 散る火花が眩しい。

 常時なら耳を塞ぐような甲高い音が叫び続ける。

 だがここで思わぬ事態が発生。

 アルカノイズの大量召喚。

 それも大型のものまで。

 レッドアローンにだけかまけている場合では……。

 

「ピー助!」

 

 翼ちゃん!

 

「アルカノイズは私達に任せろ! ピー助はその機械人形(からくりにんぎょう)をッ!」

 

 ……任された!

 あと一手で決めるッ!!!

 

「勝負だレッドアローンッ!!!」

「来いッ! ガイガァァァンッ!!!」

 

 バイザーが煌めき、自身の最大火力がこみ上がってくる。

 そして、放つは極彩色の熱線。

 迎え撃つのはレッドアローン最大火力を誇る『プロトンスクリームキャノン』

 胸部が開き、禍々しい赤い光が収束して────いま、二つの光線がぶつかり合う。

 

 脚と尻尾で地面に根を下ろし、ここから一歩も下がらないと意地を張る。

 どちらも退かない。

 退くことなど出来ない。

 光線のぶつかり合いも拮抗を続け……ガイガンとレッドアローンの狭間で爆発。

 白い光が二体を包み込んだ。

 ビルは薙ぎ倒され、爆風は広範囲に広がっていく。

 怪獣すらも吹き飛ばすだろう渦の中、それでも二つの足音が轟く。

 

「キシャアアアアアア!!!!!!」

「─────────!!!!!!」

 

 咆哮。 

 真白の光の中を二体の怪獣は駆けていた。

 ……次こそ、最期だと。

 だからこそ、全力。

 

「デェェェストリガァァァァァァ!!!!!!!」

 

 ガイガンの身体が朱と黒に染まる。

 鋼の(かいな)と血の鎌が交差する。

 一瞬、睨み合ったガイガンとレッドアローン。

 そして……。

 

「「ッ!!!」」

 

 再び交差する。

 レッドアローンの拳はガイガンの顔面寸前まで迫っていた。

 そしてガイガンの鎌は────レッドアローンの顔面を貫いていた。

 

「ガッ……」

「……終わりだ」

 

 落とされる、血塗れの鎌。

 レッドアローンを断ち斬っていく。

 両断されたレッドアローンは爆ぜて、ガイガンをも飲み込んで……。

 

 

 

 

 

 

 

「ピー助ッ!?」

「今はこちらが優先よ翼!」

「くっ……」

 

 装者とキャロルの最終決戦最中。ピー助は敵怪獣を討ち果たし、敵と共に消失。

 ピー助は恐らく小さくなったのだろうが……。

 それでも、心配である。

 だが今は戦場にいるのだと切り替え最後の一撃を放たんと仲間達と共にアームドギアに全ての力を集中させる。

 キャロルはその一撃を撃たせまいとするが響がそれを阻む。

 今が好機。

 ──────放つ。

 束ねられた五つの力はキャロルが練り上げた碧の獅子機の装甲を破壊する。しかし、あと一手キャロルを倒すには足りなかった。

 

「アームドギアが一振り足りなかったな……」

 

 言いかけて、気付いたキャロル。

 響の手に、五人の力が束ねられている。

 

「奇跡は殺す! 皆殺す! オレは奇跡の殺戮者に!」

 

 キャロルの放つ黄金の光の潮流が響を飲み込む。

 いや、飲み込んでなどいなかった。

 巨大化した響のアームドギア()が光線を受け止めていたのだ。

 

 その時、キャロルは謎の痛みに襲われる。

 記憶の拒絶反応?

 いや、これは亡き父が娘を止めようとする痛み。

 だがそれすらもキャロルは燃やし尽くして自身の力へと変換し再び響へと光を放った。

 そして響もまた、戦いを終わらせようと全てをその手に握り締め、キャロルとぶつかり合う────!

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」 

 

 競り合う光と拳。

 キャロルの放つ光の方が優先か……。

 

「立花に力を! アメノハバキリ!」

「イチイバル!」

「シュルシャガナ!」

「イガリマ!」

「アガートラーム!」

 

 翼、クリス、調、切歌、マリアが更なる力を響へと届ける。

 だが、更にそこへもうひとつの力が加わって……。

 

 

 

 

 

 

 ……。

 …………。

 ……あ。

 少しばかり、気絶していたようだ。

 今の自分に残された力はもう僅か。

 しばらく、回復に専念しなければいけないほどに。

 だけど……。

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 あれは……響ちゃん。

 そうか、まだ戦いは終わっては……。

 本当に、本当に僅かな力かもしれない。  

 それでも、みんなのために……。

 

「ガイ、ガン……」

 

 力を送り届ける。

 そして、そこで俺の意識は途絶えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法少女事変 怪獣災害について。

 記録者 山根加代子。

 これは最早それぞれ別種の事変として扱うべきではないかと思うほどに今回の事件は大きなものとなった。

 錬金術師達の思惑なんかよりも世間の目はこちらに向けられている。

 それもそのはず、なんといっても錬金術師関連のことは情報統制が敷かれているからだ。

 あれだけのことが起きても、チフォージュ・シャトーという空に浮かぶ魔城が現れてもである。

 まあ、情報を包み隠すというよりも民衆を食いつかせる、視線を誘導したという方が正しいのだろう。

 現にその効果は絶大で怪獣を殺せという声も少なくない。

 

 かつてルナ・アタックが起こった時にその姿を現世人類に現したゴジラ。

 封印を破かれ現れた護国聖獣達。

 海底より現れたマンダ。

 錬金術師に付き従っていた銀色のロボット。

 そして、S.O.N.G.が聖遺物という名目で所有するガイガン。

 

 このうちマンダ以外の怪獣が東京に現れ、東京は彼等の戦場と化した。

 最初現れたロボットを追うようにガイガンが現れ戦闘を開始。

 その後、護国聖獣達が現れ最後にゴジラの登場。

 護国聖獣達はあのチフォージュ・シャトーの発する音により暴れたとする推論はあるが詳しい原因は不明。

 五体の怪獣の出現につられゴジラは現れたというのが有力な説となっている。

 ゴジラと護国聖獣はキャロルの造り上げた碧の獅子機の爆発のあと、それぞれの住み処へと帰ったようで現在MONARCHが調査中である。

 

 また、激闘を繰り広げたガイガンとロボット怪獣はガイガンの勝利で幕を閉じたがガイガンの行方は未だに不明。

 S.O.N.G.は懸命の捜索を続けている。

 

 また、ロボット怪獣の破片等は回収されたとのこと。しかし、回収出来た量はあのロボット怪獣の質量の10%にも満たないという。

 これが意味するところはつまり、あのロボット怪獣の残骸は何処かへと消えたということ。

 だが、あのロボット怪獣はガイガン同様にサイズの調整が効くようなので小型化した可能性は充分にあり得る。

 瓦礫の山から見つかる可能性はそう低くはないと私は考える。

 

「それはきっと、ピー助君も……」

 

 一言呟き、加代子はノートを閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 72時間。

 行方不明となった人間の生存率が大きく下がるラインである。

 とうに72時間は過ぎている。

 調査隊の撤収も命じられ、あとは瓦礫撤去などへ任務が切り替わる。

 それでも、諦め切れない者がいる。

 行方不明者の家族である。

 最も、彼女が探すのは行方不明怪獣であるが……。

 

「ピー助ぇ! どこにいるー!」

 

 あれから三日間ピー助の捜索に専念する翼。

 彼女の心には辛い思いが日毎に募っていた。

 

「エルフナインは戻ってきたんだ。あとはピー助だけ戻ってくればまたみんなで……」

 

 また、自分の大切な者が離れていってしまうかもしれない。

 それは嫌だ。

 だから、帰ってきてと。

 彼女の懸命な願いは果たされるのだろうか……。

 

「ピー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ます。

 真っ暗だ。

 夜の帳は下りてしばらく経ったよう。

 瓦礫や埃にまみれた身体を振るって少しばかり小綺麗にするがどうにも胸がざわついて仕方ない。

 そしてすぐ、ざわつきの正体に気付いた。

 すぐ近くで眠っていたジェットジャガーのせいだった。

 こんな野郎のすぐ近くで眠っていたのか俺は。

 

「……ガイガン」

 

 !?

 こいつ、まだ生きて……。

 

「生憎、しぶとくてな……。もうじき、全ての機能は停止する、が……」

「へっ。しぶといのはお互いさまってわけか……」

「流石の耐久性……流石はエム・ゴ様の作品だ……」

 

 作品、か……。

 

「作品であるお前が羨ましいよ……」

「お前は……」

「なん、だ……」

「今のお前を見たら、きっとあのエム・ゴの野郎も鼻を高くするだろうぜ。あいつは機械と生物の融合により完璧のその先へ行こうとしていた。機械じゃ完璧止まりだとさ。けどお前はただの機械以上の場所へ行ったんだ」

 

 ああそうだ。

 こいつはどうにもいけ好かない野郎だがそれでも俺はこいつのことを……。

 認めてやるしかないのだ。

 同じ、エム・ゴから造られたものとして。

 

「お前は完全機械なんかじゃない。俺なんかに執着して、俺なんかと張り合って……。なんだ、俺と変わらないじゃないか……。お前は俺と同じ不完全な存在だ」

「ふ……。そうか、私も不完全であったか……。以前は嫌っていたその言葉だったが……。今は、何故か心地が、いい……」

 

 それきり、ジェットジャガーが言葉を発することはなくなった。

 ……もう、限界か。

 

 たまたま。

 たまたま、落ちてるオリーブオイルを見つけた。

 よくもまあ割れずに残っていたものだ。

 見ればこれ結構いいやつでは?

 俺だったらもう夢中で飲んでしまうものである。

 ……。  

 鉤爪で上手いこと栓を開ける。

 そして少しだけ、巨大化。

 ようするに着ぐるみサイズ。

  

 ……最後の晩酌だ。

 お前がこれを好きかどうかは分からないが俺から出来ることはこれぐらい。

 

 半分ほどかけてやってからジェットジャガーを持ち上げ、飛び立つ。

 そして闇の中、海へと飛び立った。

 遠い、遠い海へ。

 ここならば、静かに眠れるだろうとジェットジャガーを海へと……。

 

 朝日が昇る。

 眩しい、眩しすぎる。

 眩しすぎるので背を向けてこの海域から飛び去る。

 

「あばよ、兄弟……」

 

 このあと、日本に戻ってからしばらく一匹だけで海を眺めていた。

 ようやく落ち着いてきた頃に翼ちゃんが俺の名前を呼んでいたのでひょっこり顔を出したらそれはそれはもう大変なことになった。

 殺されるかと思った。

 

 ひとまず終わったこの魔法少女事変と呼ばれるようになるこの事件。

 平穏な日々に戻れると思っていたが、新たな脅威はすぐそこまで迫っていたのだった……。

 

 戦姫絶唱シンフォギアGX編 完




ちっちゃいガイガンになってた 次章

青い空、白い雲……
南海の孤島でバカンスを楽しむ装者達。
しかし……

重量は2000t
ゴジラ2世ミニラ誕生!

ピー助「もしもしゴジラさん? あなたのとこの同族が生まれましたよ。育児してくださいよ~」

ゴジラ「ちょっといま消耗してるからミニラはお前に託したぞガイガン」

ピー助「え、ちょっ、えぇ!? あの怪獣王育児放棄しやがった!」

ミニラ「パパ~」

ピー助「俺はパパじゃありませんー! 俺のことは……師匠! 師匠と呼べ!」

ミニラ「シショー」

怪獣島の決戦 ゴジラの息子……ではなく。

怪獣島の決戦 ガイガンの弟子

神秘の島ゾルゲル島
成長するミニラ

カマキラス クモンガ登場!

敢然!たちあがるミニラ!

ミニラ「サァコイ!」

特訓をうける!

ピー助「さあ俺の真似して真似。……こう!」熱線

ミニラ「イヤイヤ!」

マリア「なるほど。ピー助の教育ママ……じゃない。教育パパか」

翼「ピー助が教育パパ……つまり母親は私ということに!」

マリア「なに言ってるの家事も出来ないのに。ここは私の方が適任ね」

翼「道を阻むかマリア……。ならば、いざ真剣に勝負!」

凄まじい迫力!

切歌「デェェェェェス!!!!!!!」

製作   大ちゃんネオ
特技監修 大ちゃんネオ
特技監督 大ちゃんネオ

強敵におののく!

監督 大ちゃんネオ

迫る毒牙!

危うし!ミニラ!

シンフォギア×ゴジラシリーズの決定版!(自称)

怪獣島の決戦 ガイガンの弟子

ご期待ください。

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