もしもーし地下空洞怪獣児童相談所ですか?
一匹ちょっと育児放棄された子がいまして。
ええ、ええそうなんです俺に押し付けてきたんです。
血縁関係?
いえ全くの赤の他人ならぬ赤の他怪獣ですよ。
種族?
あ、まだ言ってなかったですねゴジ……。
ブチッ。
き、切りやがった……。
ゴジラの息子って言わなきゃよかったぁ!
てかなにあいつの名前出しちゃいけないわけ?
まあ、王の息子の世話なんざ普通したくないよな怖くて出来んわ!
「ぴゃあ!」
ああこら抱きついてこないで。
回転カッターの刃で怪我しちゃうぞ。
「ぴえん」
おい今ぴえんって言ったか?
言ったよな?
生まれてきたばっかなのに流行の先端いってんの?
え、ぴえんももう古い?
ウソでしょ……。
ともかく、面倒を見るってなに?
どうすりゃいいん?
「ぴゃあ……」
え?
腹減ったの?
こくこくと頷くミニラさん。
マジか。
流石に狩りの仕方は分からない……よな。
生まれてきたばっかりだし。
しゃーない獲ってきてやるか。
ミートオアフィッシュ?
「ぴゃ」
フィッシュね了解。
それでは海へレッツらゴー。
海へ向かって進軍していると足元に翼ちゃん達がやって来た。
イエーイ翼ちゃーん見てたー?
俺、子持ちになっちゃった。
今から魚を獲りに行くのだとジェスチャーで伝える。
「……子持ちししゃも?」
うーん微妙に違う。
いつもは人の心完璧に読むくせにこういう時に限って読めないんだからもう。
「違いますよ翼さん。あれはお弁当に入ってるお醤油ですよ! 魚の形してる!」
ダァ違う!
違うよ響ちゃん!
「バーカ。どう考えてもあれは腹減った魚食べたいだ!」
近い!
近いぜクリスちゃん流石やで!
とりあえず魚を獲ってこよう。
いくぞ南太平洋。魚の貯蔵は充分か?
獲ったどー!!!!!
やりたかっただけです、すいません。
たんまりと胃袋に貯蔵してきたのでもしかしたら余るかもしれない。
さあミニラさんや口をお開け、あと上も向いてね。今からご飯あげるから。
「ぴゃ」
空に向かって口を開くミニラ。
そんなミニラの口の中へ胃袋に貯蔵した魚達をとうにゅ……おえっ……。
「ぴゃーー!?」
ま、待ってもう少しで出るから……。
おえっげほっ……。
「ピー助!? なにやってるの!?」
な、なにってマリアさん……ミニラにご飯あげるところですよ……おえっ。
「その子が怖がってるでしょう! そのあげ方は駄目!」
ええ……。
このあげ方ぐらいしか出来んし……。
しかしそういうわけで喉元まで来ていた魚達は胃の中に戻した。
むう、ご飯をあげるって思ってたより大変なんだな。
このあとマグロの群れを追いかけた。
マグロ食ってるような奴は駄目だなとか言ってる場合ではないからどんどん食べたまえミニラ君。
別に食わなくてもそれなりに生きていけるとはいえ、食べ盛りの伸び盛りなんだから。
じゃんじゃん食べなさい。
「ぴゃ」
え、なにくれるの?
いいんだよお前が食べな。
俺もうさっき食べたから。
ただその優しさだけはずっと大切にするんだよ。
「ぴゃー?」
お前はいずれ王になる。
怪獣の王に。
あのゴジラさんがどこで誰とこさえたのかは知らないがとにかく怪獣王ゴジラとなる運命なんですよ。
そうなった時ね、王様が駄目な王様じゃ駄目なんだ。
みんなが困っちゃう。
だから優しい王様になってくださいませ。
「ぴゃー……ぴゃ!」
よし、その意気。
それでは早速生きるための訓練に入るぞ!
「ぴゃー!!!」
なんかよく分からんけどボコボコいってる沼。
さあ、よく見ていたまえ。
やはりゴジラと言えば熱線。
俺も吐けるから。
水面に向かって……ゴオォォォォ。
ほらね。
さあ、やってみよう。
大丈夫、君なら出来る。
なんせゴジラの息子だからね。
「ぴゃ、ぴゃ~……」
なに日和ってんですか!
いけるから!
自分を信じて!
ビリーブミー!
フォローミー!
「ぴゃ……ぴゃ!」
意を決したミニラは沼に向かって熱線を吐き出すが、熱線というより熱輪だな。
ドーナツみたい。
最初はこんなもんなのか?
映画でもこんなだったよな確か……って、あれ?
なんか、思い出せない。
まあ最後に見たのはガイガンになる前だから5000年以上前だし仕方ないよね。
「ぴゃー!」
いや自分で吐いた熱線にビビらない!
もっかい!
もっかいやろう!
「ぴゃ~!」
ああもう抱き付かない!
俺の身体は危ないんだから!
ほら、吐く!
ええいッ!
踏みっ。
「ぴゃあぁぁぁぁ!?!? ゴオォォォォ!!!」
ほーら、吐けた。
いい子いい子。
それじゃあ、もう一発やろうね~。
ピー助を追ってジャングルを進むとピー助はなにやらあのミニラと名付けられた怪獣の……なんだ?
口から光線を吐く練習をさせているのか?
「ふふ、ピー助ったら教育ママならぬ教育パパね」
「教育パパ? ピー助が?」
ピー助がパパ……?
「つまり私があの怪獣のママか」
「は?」
「え?」
「先輩……」
「それはちょっと……」
「デース」
「な、なんだというのだ皆で。おかしなものを見つめるような目で私を……」
「おかしいわよ翼! あの怪獣のママは翼じゃない。この私よッ!!!」
「まだおかしいのがいたよこんちくしょう」
このあと夜までマリアとどっちがママに相応しいか喧嘩した。
ミニラを寝かしつけて通常サイズに戻る。
あれ、通常サイズって言ってるけど小さい方が怪獣からしたら異常だよな?
え、てことは大きい方が通常サイズで小さい方は異常サイズ?
あれ、でも小さいことが俺のアイデンティティーみたいなところあるから小さい方が通常サイズ?
やべぇ、自分のことが分からなくなってきた。
ここはどこ私は誰?
いやこのレベルで分からなくなってはないが。
「ピー助お疲れデース!」
お疲れデース。
いやぁ慣れないことをしたもんだから変な疲れ方してしまった。
いや、なんというか子育てしてる方すごいなっていうか俺も親に感謝しないとなっていうか……。いや、親もまさか息子がガイガンになってるとは思ってもみないだろうけど。
どうしてんだろうなぁ今頃。行方不明扱い、なのかなぁ俺って。
なんかすんげぇ申し訳なくなってきた。
改めて許せんわあの宇宙人。
俺のこと拉致ってガイガンの脳味噌にするとかなに考えてんの本当。意味分からんわぁ!
「ピー助本当に疲れてるみたい」
「顔に疲れが出てんな」
え、顔に出ている?
そのレベルかぁ。
やっぱ慣れないことをしたからだな。
そういえば翼ちゃんとマリアさんは?
「どっちが赤ちゃん怪獣のママに相応しいか喧嘩してるよ」
えっ。
なにそれこわい。
やだやだ関係ないフリしとこ。
にしても疲れたぁ……俺も寝よ……。
「大きいあくび」
「もう遅いし寝るかぁ」
「そうだねクリスちゃ……ふぁぁぁ~……」
「でかいあくびだなぁ。ピー助のが移ったか?」
そんな俺から移せるものなんてびょう……ゴホン!
いや、ないからそんなものは一切ないので大丈夫だ安心してくれ。
いやダガーラみたいな例もあるし俺にもワンチャン……?
ズーノーシスみたいなのあるやも。
人怪獣共通感染症みたいな。
あとでアルコール消毒しとこ。
とまあ長々とやってるけど寝よう……。
あー今すぐにでも寝れるぞこれ……。
……遠目からだけどミニラの様子を見とくか。
「すぅ……すぅ……」
よしよし寝てるな……。
「……ぴえ」
ん?
起きた?
なんだ、辺りを見回してどうし……。
「びえ~~~!!!!!!!!!!!」
っるさ!
な、なんや急に泣き出したりなんかして……。
ま、まさかあれが俗に言う『夜泣き』なのか……!?
「か、怪獣も夜泣きするんデスか!?」
「近くに親がいないからきっと寂しいんだよ!」
「ピー助くん!」
「親だろ泣き止ませてこい!」
そんなぁ!?
俺に出来るのかそんなこと!
もう今日は夜泣きを止めるような体力はないぞ!
……ああ、しかし、そうか……。
これが、親になるということなのか……。
どんなに疲れていても子供の面倒を見なきゃいけない……。
「すう……すう……」
おらてめぇゴジラぁぁぁ!!!!!!
俺は立派に夜泣きにも対応してやったぞこんちくしょう!!!!!!(深夜、徹夜テンション)
ピー助の子育てはまだ始まったばかり。
次なる試練は……。
地下深く。
「びえ~~~!!!!!!!!!!!」
「……」
蠢く脚達。
妖しく輝く八つの瞳。
次回 ちっちゃいガイガンになってた子育て編
『近所のやべー大人にご用心』