あのスタイリッシュさ…ホレないわけないんだよなぁ
「あれからピー助は目が覚めない、か…」
「ええ…恐らくあの変身によるエネルギーの激しい消耗が原因でしょうけど…シンフォギアなら手が出せるけど、ピー助君はさすがの私もねぇ?」
ラボにて、あれから一切動かないガイガン…ピー助はさすがの了子君でもお手上げらしい。
翼は先の戦いによる負傷でしばらくは入院となりピー助もこのとおり…
残る響君は…
「お疲れ様です師匠!」
このとおり。
本人の希望から俺に弟子入りし、前とは比べ物にならないほど成長している。
「ピー助君…まだ目が覚めないんですね…」
「ああ…了子君達が懸命に調査をしてはいるが…」
「ピー助君は謎が多いからねぇ…このまま回復を待つしかないかしら…」
二課の主戦力二人が欠けた状態。
格段に成長したとはいえまだまだ新人の響君だけではノイズはまだしもネフシュタンの相手は厳しい。
なんとかピー助を再起動させて戦力の安定を図りたいが…
「うーん…」
「どうした?響君?」
「いやぁピー助君なら食べ物で釣ればすぐに目を覚ますんじゃないかって…」
「さすがにそれは…けど、ピー助君ならもしかすると…」
うむ…
たしかにピー助なら…
「ものは試しだ。食堂に行ってなにか持ってこよう」
「私、行ってきます!」
そう言って響君はラボを出た。
「普通ならそんなはずないって思っちゃうんだけどね~」
「ああ…普通ならな。…だが、ピー助ならなぁ」
「ピー助君ならねぇ…」
あれ…ここは…どこだ?
さっきまで戦っていたはずなのに…
それにしてもお腹が空いたなぁ。
とにかくエネルギーが足りてないといった感じだ。
…この匂いは…
肉だ!
近くに焼きたてジューシーな肉ッ!
こんなところにいる場合じゃねえ!今すぐ肉の元へ行くぞッ!
おおおおおおッ!!!!!!!
「ピーーーーー!!!!!!!」
肉!
肉はどこだ!?
肉…
見つけたぞ!
飛びついて、かじりつく。
ステーキか…300gくらいありそうだ…
焼き加減はウェルダン。
しっかり火が通っているッ!
バクバクバクバク…
ふ~!食べた食べた…
ん?
ステーキに夢中で気がつかなかったけど、司令に了子さん、響ちゃんがいる。
「まさか本当に目覚めるとはね…」
「言い出した私も驚いてます…」
?
なんだなんだ?
みんなして俺を見て呆れた顔をして。
俺なんかやっちゃいました?
一回言ってはみたかったこのセリフ。
「うん、分かりやすくて大変結構!ピー助起きがけで悪いが早速仕事だ」
目覚めたばかりだというのに…
まったくガイガン使いの荒い司令だなぁ。
「それではピー助、翼のお見舞いに行ってきてくれ」
二課の医療施設にて、私は一人ベッドで横になっていた。
ケガは大したことないというのに、司令はこの際しっかり休めと言って復帰させてくれなかった。
任務でも仕事でも無いのに学校を休むのははじめてだ。
だけど…暇だ。
剣として鍛えてきた私にはこういう時、何をすればいいか分からない。
体を動かそうにも絶対安静と般若のようなナース長から厳しく言いつけられてしまっている。
どうしたものか…
コンコンと扉がノックされた。
看護師さんだろうか?
扉は開いたけれど、誰もいない。
これは…まさか…
看護師さん達が噂していた―第2病棟のユウコさん!?
こ、怖くない…怖くなんか…剣である私が怪奇現象程度に…
「ピー?」
「ひっ…」
ピーとはユウコさんはそんな声を出すのか…
そういえばピー助もピーって鳴くわね…
…
というか今の鳴き声は…
「ピー助ッ!」
「ピ?」
「ピー助ッ!」
「ピ?」
イエス!アイアム!
…ごめんなさい、ふざけました。
それにしても翼ちゃん、なんで涙目?
「よかった…第2病棟のユウコさんではなくて…」
第2病棟のユウコさん?
なんじゃそりゃ。
というか、この部屋!
自分の家だけでなく病室までこんな汚して!
「いや、これはその…緒川さんも忙しくて中々片付けに来てくれなくて…」
そんなの理由になりません!
とにかくお掃除の時間です!
あ!翼ちゃんは寝てて病人だから!
「あぁピー助…片付けなんて別にいいのに…」
よくない!
もうちゃっちゃと片付けよう。
まず服を畳んで…この下着は…上下揃っていない!?
探さないと…
あぁ本もたくさん床に散乱させて…
この花も萎れちゃって…
~1時間程経って~
あぁ…やっと終わった…
最近はここまでひどいのは無かったからか余計に疲れを感じる。
「すごいねピー助は。いつでも嫁入り出来るわね」
誰のせいだよッ!
もともとは俺だって片付け得意な方じゃないんだぞ!
そんな俺がこんな家政婦並のスキルを手に入れるなんて更正施設かなんかだよ翼ちゃんの部屋は!
「ようやく二人でゆっくり出来るわね」
だから誰のせいだと。
「そういえばピー助に聞きたいことがあるんだった」
?
なんですか?
「あの時の姿のこと。ピー助があんな姿になれるなんて…ピー助は知ってたの?」
まったく知りませんでした。
てっきり昭和版固定だと思っていたのに…
これは強化フォーム的なそういうサムシング?
「そう…自分でも知らないのね…」
うーん自分のことなのに知らないのってなんかモヤモヤする。
なんか調べる手段とかないですかね?
自分(ガイガン)のデータにアクセスとか…
ない?
そうですか…
「もう暗くなってきたわね…ピー助、帰れる?」
もちろん。
行きも飛んできたからね。
「そう、また来てね。ここは暇でしょうがないから」
当然また来るさ!
俺が来ないと病室が汚部屋になっちゃうからね。
それじゃまた明日も来るから!
「うん、また明日」
バイバイと手を振って、帰りは窓から飛び立った。
夜は暗いから目立たないのでちょっとお空のドライブ。
風が気持ちいい~。
ん…この風に乗って漂う匂いは…
お好み焼き!
ちょっと立ち寄るくらいならいいよね…
あの青髪のシンフォギア装者との戦いから苛立ちが募ってどうにも落ち着かない。
あの化け物…
次会ったらぶっ倒してやる。
そう考えながら夜の街を歩く。
別に目的なんてない。
ただ歩く。
それだけだ。
しかし、そこで妙な物を見つけてしまった…
ほーん、『ふらわー』か…
粉物やるにはピッタリな名前じゃないか。
あぁ…お好み焼きの、ソースの匂いが…
お腹空いた…
これは完璧にお好み焼きの気分。
それ以外のものは今日は受け付けないぜい。
とは言ったものの俺がお好み焼きを食べるにはハードルが高い。
お店で食べるのは論外、二課に帰ってもお好み焼きが出てくることなんてない…
一体どうしたら…
「おい」
ちょっと待って、いま人生で一番の考え事をしてるから…
って、え?
いや、今のは俺に言ったわけじゃ…
「そう、そこのお前だよペンギン」
あ…
またペンギンって…
「この間の奴に似てるけど、あいつはこんなちんちくりんでもずんぐりもしてねえな」
この間の奴?
あー!!!
こいつ、この間の!
このやろう!どっからでもかかってきやがれ!
「似ているということはつまり関係あるかもしれない…?つまりこいつを…」
なんだぶつぶつ言いやがって!
戦うなら相手するぞ!
「…なるほどな、お前、こいつが食いたいんだろう?」
え…?
そりゃ食べたいけど…
それがどうしたっていうんだ!
「ちょっと待ってろ」
そう言って少女は店の中へ。
数分後。
「ほうら、こいつが食いたいなら着いてきやがれ」
た、食べたい…
じゅるり…
ちょっとだけ…ちょっとだけなら…
あー!待ってー!!!
「よしよしいい子だ…ほら、食べな」
わーい!
お好み焼きに食いつこうとした瞬間、体を持ち上げられる。
あれ?
「捕まえた。所詮はケダモノ、簡単に捕まったぜ」
ふぁ!?
なんてこと!
そしてここはどこ!?
いやいや落ち着け、巨大化すればこの程度簡単に…
簡単に…
あれ、巨大化出来ない…
なんで…?
じゃあ回転ノコギリで驚かせ…回らない!?
レーザー光線砲も…撃てない!?
なんで…
まさか、まだエネルギー不足が…
こんな女の子の腕力からも逃げられないくらい素のパワーも落ちてる。
これは…ガチでピンチかもしれない。