みんな、クリスちゃん(の胸部装甲)が好きなんすねぇ。
あれ、ここは…奏ちゃんの部屋だ。
なんで…
あ、そうか、これは夢か…
『奏…ごめんなさい…私が…私が弱かったから…うわああああ!!!!!』
誰かが泣いてる。
翼ちゃんだ。
翼ちゃんが泣いている。
奏ちゃんを失い、自分のせいだと、自分の弱さのせいだと…
目を覚まし、頭が働くのを待つ。
いや、待っている暇はない。
重い頭をぶんぶんと振って、眠気を払う。
クリスちゃん…ごめんなさい。
やっぱり俺、翼ちゃんのそばにいなきゃ。
あの固い寝床の方が俺には合っている。
寝ているクリスちゃんを起こさないようにそーっと抜け出して部屋を出る。
一宿一飯の恩は忘れないよクリスちゃん。
俺、君とは分かりあえる気がするんだ。
だからきっと君とは手を取り合って戦える。
だから今は少しお別れだ。
泣き虫で、家事が壊滅的で、不器用な女の子のところに戻らなきゃ…
部屋を出て廊下を歩く。
ここにはクリスちゃんしかいないのか?
最初はこそこそ隠れながら移動していたけど、どうにもここには人がいないようだ。
てっきりクリスちゃんに指示を出してる黒幕がいるもんだと思ってたけど…
「あら?どうしてここにあなたがいるのかしら…ガイガン?」
不意に、背後から声が響いた。
振り向くとそこには女…全裸の。
クリーム色の髪を伸ばし、金色の瞳は幻想的でその肢体もまるで…とか例えるのも野暮なほど美しい。
ワオ…なんて言ってる場合じゃない。
なんだこいつは?
ガイガンのことを知っているということは…どういうことだ?
まさかガイガン(俺)を北海道沖で引き上げたとかいう奴等…?
「警戒しているのは動物の本能かしら?ここになぜいるのかは分からないけれど…丁度いいわ、運動に付き合ってくれないかしら?」
運動?
一体何をするつもりだ?
「あなた、エネルギーが足りてないのね?まずは万全にしなさい」
そう言ってどこから取り出したのかクリスちゃんが使っていた杖を取り出し、ノイズを召喚した。
ノイズはその場から動かない。
やはりあの杖にはノイズを操る力が…
「食べなさい。その身はノイズを殲滅するために造られた機械の体。ノイズを捕食することがあなたにとって最高のエネルギー補給。かつてもそうして戦い続けてきたでしょう?」
かつて?
あの二年前のことか?
『ガイ…ンは、……の…望…』
『ガ…ガンは……ガンは勝ち……か?』
『俺達………コンビ…』
ッ!!!
なんだ、今の…
…記憶?
はあ…はあ…
頭を強い衝撃が襲ったかのようだ…
はあ…はあ…
ノイズ…
あれを食べれば…
「ふふっ…そうよ、獣らしく喰らいなさい。そして、その力を…」
いつの間にかノイズを食べ終えていた。
体がノイズを求めていたのか…?
それに体も巨大化している…
「準備は出来たわね…それじゃ、実験を始めましょうか」
目の前の女は黄金の鎧を身に纏った。
これは…クリスちゃんが纏っていたネフシュタンの鎧!?
だけど銀から金に…
パワーアップ…でもしているのだろうか。
それに実験を始めましょうかってどこかの天ッ才物理学者みたいなことを…
「立花響のデータを元に、私はこのネフシュタンと同化した!まずはあなたで…どれほどの力を秘めているか…試す…」
…なるほど、実験動物になれってことか。
そんなの、嫌だね!
レーザー光線を女めがけて放つ。
しかしそれはバリアに阻まれた。
…遠距離攻撃はダメらしい。
「ほら、ご自慢の爪とノコギリでかかってきなさい?」
こいつ…
安い挑発だけど乗ってやる。
こいつは倒さなければならない。
そう直感が告げている。
やるしかない…!
女に向かい駆け出す。
武器はあのピンク色のムチみたいなやつか?
油断せずにいかねば…
奴は棒立ち、鉤爪を振り下ろして、脳天をかち割ろうと狙う。
しかしそれは防御されてしまう。
そんなのは予測済みだ。
左手をアッパーのように女の腹を抉るべく狙うもそれも阻まれる、しかし…
「流石は怪獣…パワーではネフシュタン以上…」
このまま押しきってしまえば…勝てる。
しかし、そう簡単にいくものでもなく、がら空きの胴に蹴りが入り、後ずさる。
「今度はこちらの番…」
そう言ってムチを振るう女。
予測の難しい攻撃が次々と襲う。
防御するのも精一杯、攻撃はさらに苛烈を極め防御すら出来なくなってきた…
「なんだよこの音は…って、フィーネ!?その姿は…それにペンギンもでかくなってるしなにがどうなってんだ!?」
クリスちゃん!?
流石に気づくか…
けど、こんなとこにいたらクリスちゃんが危ない…
「クリス、あなたがガイガンを連れ込んだの?脱走しようとしていたから始末しようとしていたのだけれど…」
調子のいいことを言う。
くそ、クリスちゃんが近くにいちゃやりづらい…
「そいつは人質だ!殺したら…」
「人質?こんなやつを人質にしたところでなんにもならないわ。それなら殺してしまっていいでしょう?」
「そんな…!?」
更に激しさを増す攻撃にひたすら耐えるしかなかった。
下手に反撃したらクリスちゃんに当たってしまうかもしれない。
今はただ耐えろ。
反撃のチャンスがあるはずだ…
よく視ろ…
…
そこッ!
「なにッ!?」
両腕の鉤爪でムチを絡めとった。
ふう…俺もだいぶ器用になったもんだ…
それじゃあ、ちとエグい攻撃かもしれないが…殺らせてもらう。
今やつは身動きが取れないでいる。
ムチを俺に掴まれているからだ。
そしてパワーでは俺が勝っているのなら…
「ぐっ…手繰り寄せてくる…なにをするつもり…ま、まさか…!?」
気づいたようだ。
なら、このまま…一本釣りッ!
一気に近づいてきたこの女、そして起動する回転ノコギリ…
もう分かるだろう。
「ああああああッ!!!!!!!」
エグい。
かなりエグい。
しばらく肉は食えそうにない。
しかし、やらなければならない。
こいつは敵だ。
本能がそう叫んでいる。
この女を手にかけるという罪は…俺が背負う。
女の断末魔が少しずつ小さくなり、沈黙した。
ノコギリも止め、女の体が床に落ちる。
あたり一面赤い。
俺もかなり返り血を浴びた…
しかし、これで…倒したんだ…
ネフシュタンの鎧も回収して…二課に…
ここで、クリスちゃんと目があった。
かなりキツイものを見せてしまった。
心に傷を負わせてしまったかもしれない。
だけど、こうするしか…
「…!?ペンギン避けろ!!!」
え、なん、で…
体を、何かが貫いた。
これは…ネフシュタンの…
「流石はネフシュタン…この再生能力、まさかあんな目に合うとは思わなかったけど効果は実証出来てよかったわ」
こ、こいつ…傷が、治って…
「ありがとうガイガン…この
かつての…支配者…?
こいつは…一体、何者…なんだ?
貫いていたムチが抜かれ、今度は俺が床に倒れ落ちる。
「もうあなたに用はないわ。消えなさい」
ムチを構え、トドメをさそうとしている。
こんな…ところで…
翼ちゃん、ごめん。
俺も、君のもとから…
『Killter Ichaival tron』