ガイガンの引っ越し
二課に戻って奏ちゃんから翼ちゃんに引き取られた俺ことガイガン。
それに伴い新しい住居として翼ちゃんの家に引っ越すことになった。
引っ越すといってもやることないけど。
そんなわけで現在、翼ちゃんのカバンの中に隠されて輸送されている。
なんかカバンの中って密輸されてるみたい。
「ピー助、そろそろ着くからね。もう少しの辛抱よ」
辛抱だなんてそんな。
密輸気分を味わっていたのに。
たまにカバンの中に潜り込んで遊ぼうか。
それから五分後。
「ピー助、着いたよ」
ついに新居に到着か!
さあ一体どんな部屋なのか。
まあ、翼ちゃん几帳面そうだし部屋は綺麗だろう。
それでは拝見…
地獄を見た どうしようもない 地獄を見た
服は脱ぎ捨てられ、飲み干されたペットボトルは散乱し、テーブルには本、空き缶、様々なものが積み上がっている。
「どうしたのピー助?ほら、ここが新しいお前のお家よ?」
家?
ここが?
ごみ捨て場じゃないの?
百歩譲って夢の島だよ?
こんなとこにいたらガイガンじゃなくてゴキネズラになっちゃうよ?
ん?
あ、あの黒い…ヤツは…
奇しくもガイガンの宿敵と同じイニシャルを持つ、あの生物…
G…
………………………
いやあああああああ!!!!!!!!!!!
「あ!?ピー助!どこに行くの!?」
全速力でこの部屋を飛び出し、空へと飛び立った。
…あぁ、空って、なんて美しいんだろう…
「あら?ピー助君じゃない。どうしたの?今日はお引っ越しでしょ?」
二課にとんぼ返りした俺が最初に出会ったのは友里さん。
聞いてよ友里さん!
翼ちゃんの部屋がとてもペットをこれから飼うぞって人の部屋じゃないんだ!
「うーん…なにかを訴えているのは分かるんだけど…ごめんなさい。私には何を訴えているか分からないわ」
ちくしょう!
人語を話すことが出来れば…
そうだ!
筆談すればいいんだ!
俺って天才!
いや、天ッ才!
くそ…手が鉤爪だからペン持てねえじゃん…
俺って馬鹿…
「ピー助君…落ち込んでるのは分かるわ。何かショックなことがあったのよね?」
はい…
どうして俺、ガイガンなんだろう…
アンギラスとかバラゴンとかゴロザウルスよりはマシだけどさ…
とにかくこの体であることが忌々しい…
「ほら元気出して?あったかいものは…ピー助君にはダメか。とりあえずお魚をあげましょうか」
よっしゃラッキー!
ご飯くれる人はみんな好きだぜ!
「ふふっ怒ったり落ち込んだり元気になったり忙しいわね」
ヤバイ年甲斐もなくはしゃいでしまった…
この体になってから精神年齢幼くなった気がする。
まあそれより魚、魚~。
ピー助が急に飛んでいってしまい、私はピー助の捜索に明け暮れていた。
「ピー助!どこにいるの!?」
ピー助まで私を置いていってしまうの?
やはり部屋の掃除すら出来ないような私では…
ん、携帯が鳴っている…緒川さんか。
「はい…どうかしましたか?」
「翼さん、次の仕事のことで…って、どうかしたんですか?声に元気がありませんよ?」
平静を装っていたつもりが見抜かれてしまった。
私もまだまだのようだ。
素直に相談しよう。
「実はピー助が…家に入れた途端逃げ出してしまって…今、探しているところです…」
「ピー助さんですか?ピー助さんなら友里さんからご飯をもらっていましたが…」
え?
は?
…なるほどピー助、本当は私よりも友里さんのような大人の女性がいいということ…?
ふふ…見ていなさいピー助…今に見返してやるわ…
そろそろ夕飯の時間だ。
夕飯も友里さんからもらおう。
…?
この匂いは…
に…肉の匂いだ…!
一体どこから…?
あ、あれは…!
廊下の先に肉が見えている。
こんがり、ジューシーな…巨大な鳥肉!
あれって、あれだろ?クリスマスとかに食べるやつ!
トムとジェリーによく出てくるやつ!
よもや、こんなところで出会そうとは!
まさに、運命だ…
ここのところ魚ばかりで少し飽きていたのは事実。
肉が食べたいと思っていたところだ!
マッハで飛行し肉まで一直線。
よし!肉ゲット!
「つ か ま え た」
ひえっ。
なんだ今の冷たい声…
てか、なんでこんな廊下に肉が?
ま、まさか…これは…!
「そう、罠よ」
上から影がさした。
背後にいたのは翼ちゃん…
な、なんだこの翼ちゃんから発せられるプレッシャーは…
体が動かない…
動けガイガン!なぜ動かん!?
「ふふ…影縫い」
影縫いって忍法だよね!?
翼ちゃんどっちかと言ったらというか完璧に侍とか武士とかの部類なのに忍法使えるとか卑怯だろ!
「さあ…私達の家に帰りましょう?」
いやぁ…
Gが出るようなとこはヤダー!!!
ガイガン動いて!
ガイガーーーーーンッ起動おおおおおお!!!!!!
無理でした。
翼ちゃんに連れられ再び訪れた夢の島…
あれ?片付いてる。
まさか…あの後、翼ちゃん部屋の掃除を…
あぁ…分かってくれたんだね俺の怒りが!
こんなキレイな部屋なら安心して住める!
床に服もペットボトルも散らばってないし、テーブルもキレイで…ん?何かメモ用紙が置いてある。
何か書かれているようだ。
よーく目を凝らして見るとそこには…
『掃除しておきました 緒川』
あっ…
もう、俺は、ダメかもしれない。