ギャグやらイチャラブやら挟む間がない終盤は書くのに体力がいる…
「俺はピー助!翼ちゃんのペットだ!!!」
そう言い放つ彼女の瞳は青ではなく赤い色に染まり、纏う雰囲気も違う。
本当にピー助のようだ。
「マリア・カデンツァヴナ・イヴ…あんた、人を救うと言って…」
この戦場を見渡し、静かにそう呟くピー助。
その顔は悲しみを滲ませていた。
「そうだ。これは世界を救うために必要な犠牲…人間でないあなたには分からないかもしれないけれど」
「人間でない…か…」
そう、ピー助は人間ではない。
この世界のことも分かっていないだろう。
それならピー助は…
「ピー助、私と共に来て。私にはあなたが必要なの。この世界を変えるためにも。今の世界は強者が弱者を虐げるようになっている…それを変えるためにも!」
ピー助はまだ知らないであろうこの世界の残酷さ。
それを知ればきっと私に賛同してくれるはずだ。
しかし、ピー助は私の誘いに即答した。
「悪いが、それは出来ない相談だ」
「どうして…?あなただって人間を守ってきたんでしょう!?多くの弱者を…あなたはこんな世界のままでいいの!?」
マリアが叫ぶ。
俺は…世界を守るとかそんな大層な理想は掲げていない。
「俺はただ、奏ちゃんが守ったもの、守ろうとしたもの、俺の大切なものを守るために戦っているんだ」
「そんな…理由で…」
「ああ…世界を救うなんてことに比べたらちっぽけかもしれない。だけど…俺にとっては大事なことなんだ…一番守りたかったものを守れなかった俺にとっては…」
もし、あの時俺が奏ちゃんを守って、助けてあげることが出来たなら…
あるのはそんな後悔だけだ。
だからせめて、奏ちゃんが守ろうとしたものは守る。
翼ちゃんを…響ちゃんを…みんなを…
「月が落ちてくるっていうなら俺はそれを阻止してみせる。だけど、こんな風に犠牲となる命があるというなら…俺はここにある命を守る」
「交渉、決裂ね…」
マリアが槍を向ける。
俺は双剣の形状を変更し、ナイフ程の大きさとなったアームドギアを逆手に構える。
「ハアッ!」
「ハッ!!!」
二人同時に駆け出し、戦いが始まった。
突きだされた槍をナイフで受け流し、もう一方の手に持つナイフで首、頸動脈を狙う。
バックステップにより回避したマリアに向かってナイフを投擲する。
回転しながら飛ぶ刃は槍で弾かれ、甲板に突き刺さる。
「得物がなくなったわねッ!!!」
槍を上段から振り下ろそうとするマリア。
その隙だらけの胴を蹴込みを食らわせる。
「かはっ…!」
その衝撃に空気を吐き出すマリア。
吹き飛ばされ、甲板の上を転がる。
予想以上の威力に自分でも驚いているが向こうもこちらに迫ってきていたことにより相乗効果で威力が上がった。
カウンターのお手本のような蹴込みだった。
「武器に頼れば隙が生じる…」
「くっ…いつもは全身武器みたいな体のくせに…」
そりゃまあサイボーグだから仕方ない。
けど今日は5000年ぶりの人間の体だ。
修行のおかげで苦労することなくこの体を扱える。
とはいえ翼ちゃんの体だ。
大切に扱わないと。
「よくもマリアをッ!!!」
ッ!
切歌か!?
鎌が胴を真っ二つに切り裂かんと迫る。
回避は最早無理。ならば…
「デスッ!?」
鎌の刃を肘と膝で挟み受け止める。
切歌はなんとか力ずくで押し通そうとするが万力に挟まれたかのような感触に苛立ちが隠せない。
悪いが切歌には黙っていてもらおう。
今はマリアが優先だ。
先ほど投擲したナイフを呼び戻し、切歌に直撃させる。
安心しろ、峰打ちだ。
邪魔者を排除して、マリアと向き合う。
さっきの一撃がまだ効いているようで槍を杖代わりにして立っている。
「ここで負けてなんかいたら…私は世界を救えない…私は…私は…」
彼女に近づき、俺は語りかけた。
「あんたは本当は優しい人のはずだ。元の優しいマリア・カデンツァヴナ・イヴに戻ってくれ…」
「優しい…?」
「そうだ。あんたは本当はこんなことするような人では――ッ!!!」
ガイガンギアを強制的に解除して、翼ちゃんを後ろへと突き放した。
「ピー助ッ!?」
よかった…翼ちゃんの体は守れた…
胴体に突き刺さった槍を見ながら、安堵する。
「ピー助、そんな…私を庇って…」
「優しさなんて必要ない…世界を救うには…愛するものも必要ない…」
槍を引き抜かれて、よろめく。
足に力が入らない。
マリア…
ダメだ…あんな状態では…
覚束ない足で、マリアへと近づき傷つけないように抱きしめた。
「えっ…」
マリア…元の優しいマリアに戻ってくれ…
このままでは心が壊れてしまう。
それが嫌だと思ったから俺は…
マリアを抱きしめたピー助は力なくその場へと倒れた。
目に光は灯っておらず、呼吸もしていない。
死。
そんな単語が頭を過った。
「嫌よピー助…あなたまで私を置いていくの…ピー助…ピー助ぇ!」
倒れたピー助に寄り添い、体を揺さぶる。
すぐ目の前にマリアがいたが眼中になかった。
嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。
ピー助がいなくなってしまったら私は…
次の瞬間、後頭部に強い衝撃が走った。
朦朧とする意識の中、私に銃を向ける雪音の姿を見た。
「さよならだ」
そう言って、引鉄を引く雪音の姿が意識を失う前の私が最後に見た光景だった。
海中から現れた遺跡…『フロンティア』
ピー助と戦闘を終えた後、神獣鏡の光によって浮上したそれの中枢に私はいた。
これがあれば世界を救える…
世界を救うには優しさなんていらない。
愛もいらない。
だから、ピー助を殺した。
ピー助は殺した。
私は殺した。
私が殺した。
あの時、抱きしめられた時、声が聞こえた。
優しい低音の…大人の男の声。
あれがおそらくピー助本来の声…
私の心が壊れてしまうのが嫌だと言っていた。
そのために彼は殺されるはずの少年を救い、私が手をかけようとした兵士を庇い、私に人殺しをさせなかった。
私は彼に守られていた。
彼は私を守ってくれた。
そんな相手を私は殺したのだ。
「これで全てを振りきれる…私は、世界を救う…」
そう呟く、彼女の頬には涙がつたっていた――
目を覚ますとたまに見かける天井だった。
いや、たまにでもないか…
あれからそういえば、私は…雪音に撃たれて…ピー助が…
「ッ!ピー助がッ!!!」
「ピ?」
ピー助が刺されたこと思い出して、咄嗟にベッドから起き上がる。
ピー助は果たして無事だろうか…
「ピー」
そうねピー助、ピー助のことが心配ね。
ん?
「ピー助!?」
「ピ」
ちっちゃいピー助が何食わぬ顔でベッドの隣の椅子に腰かけていた。
「ピー助あなた刺されて…」
「ピッピッ、ピ~」
鉤爪を左右に振って、得意気に鉤爪を腰に当て胸を張った。
傷は…ない。
あの時、確かに槍で突き刺されて…
ピー助の回復力なら治るものなのかしら?
あぶねぇ…ガイガン忍法生き返りの術が間に合わなかったら翼ちゃんが大変なことになってた…
忍術を学んだことでちゃんと使えるようになって助かった…
もう最近の俺は一度死んで甦り過ぎなのではと思わないこともない今日この頃。
とにかく翼ちゃんが無事でよかった…
俺が倒れている間になにがあったのか分からないけど…響ちゃんも胸のガングニールが無くなったらしいし、未来ちゃんも生きてたしと嬉しいこともあるけれど海底からルルイエみたいな遺跡が浮上するし、ガタノゾーアでも出てくるんじゃないかと不安でしかない。
ここには東宝怪獣だけじゃなくウルトラ怪獣もいるのではと思わずにいられない。
けど記憶の限りウルトラ怪獣はいなかったから大丈夫だろう。
「よかった…ピー助が無事で…」
ぎゅっと翼ちゃんから抱きしめられる。
俺が無事なのはいいけど翼ちゃんが…
「私は大丈夫。体はなんとも…」
?
やっぱりどこか悪いの?
「…あの状況で無事でいられるはずがない」
翼ちゃん?
「いえ、大丈夫よ。それよりも状況を確認しに行きましょう」
翼ちゃんに持ち上げられ、医務室を出る。
大丈夫か心配だけど翼ちゃんは無理してでもいくんだろうな…
その時は翼ちゃんを守るために戦うだけだ。
そう決意する俺だったが、状況は俺が思っていたよりも深刻だったのだ――
ガイガン忍法生き返りの術
一度死んで甦ることが可能。
復活には少々時間がかかるため、その間は無防備。
翼さん共々倒れているところを緒川さんに救助されたため問題なく復活出来た。
オマケ
クリスちゃん レーダー感あり
響ちゃん レーダー感あり
友里さん レーダー感あり
マリア レーダー感あり
切歌 微弱だがレーダー感あり
調 レーダー感なし
393 レーダー感なし
翼ちゃん レーダー感なし