メガロのドリルがジェットジャガーの胴を貫こうと迫る。
しかしジェットジャガーは軽く身を反らしメガロのパンチを避けると今度はジェットジャガーの拳がメガロに迫る。
メガロは腕を交差させて防御の体勢を取るが…ジェットジャガーの肘から火が噴き出す。
あれは…ブースターか!?
避けろと指示しようとするも既に遅い。
加速した拳がメガロを襲った。
「くぅぅ…!!!おい!こいつ見た目のわりにスピードもあるしパワーもありやがる!!!」
「ああ…運動性能も高い。卵共とは大違いだ…!」
パワーと防御に優れるメガロのガードを容易く弾いたジェットジャガーの拳。
あれに当たるのはまずい…
「いいわジェットジャガー…そのままその裏切り者と羽虫を潰しなさいッ!!!」
あそこにうるさい女が一名。
あいつを倒せばそれで終わる話だ、が…
直接エム・ゴを狙うとジェットジャガーの猛攻を受ける。
奴の優先順位としてはまず『主人を守る』次点で『俺達を倒す』だからエム・ゴを狙い続ければ奴はエム・ゴの護衛として動かざるを得ない。
それを利用してジェットジャガーの撃破、エム・ゴの殺害を狙う…
冷酷になったものだ。
人間だった頃には考えても実行には移せないような行動ではあるが…エム・ゴは生かしておけない。
奴を止めるのが俺の使命だと心に刻み戦ってきた。
熱線を放つ。
ジェットジャガーに向けてと思わせて、狙いはあの女。
放たれた熱線が自分に向けてだと思ったジェットジャガーだがまるで狙いが定まっていないとわざわざ回避することはなかった。
しかし、すぐにその狙いに気づいたジェットジャガーはエム・ゴの目の前に立ち熱線をその身で受ける。
好機と見たメガロも口から地熱ナパーム弾を放ちジェットジャガー達の周囲を火の海へと変える。
身動きの取れないジェットジャガーに対し熱線、光線、レーザー、ナパームの止まない雨が降り注ぐ。
幾ばくか撃ち続けるとやがて大爆発が起こり炎の柱がそびえ立つ。
「やったぜ!あのブサイク野郎爆発しやがった!!!」
「…いや、様子がおかしい」
炎が一点に収束して人の形を為していき…
「爆ぜなさい。ジェットジャガー」
炎の海から炎の巨人が誕生する。
そして、その巨人は真っ直ぐとこちらに特攻し──
「まずいッ!?メガロッ!!!」
メガロの前へと躍り出てその炎の巨人の特攻をモロに受けたガイガンは炎の巨人と共に爆発した。
「ガイガンッ!!!!!」
「あははははッ!!!死んだ!死んだわぁ!!!裏切り者が…死んだぁぁぁぁぁ!!!!!」
爆発が収束しその場に立っていたのはジェットジャガー。
倒れているのは…ガイガン。
「馬鹿ねぇ。そこの羽虫なんて見捨てればよかったのに。ジャガー帰りましょう。羽虫なんていつでも潰せるわ」
踵を返し、この場を去ろうとするエム・ゴ達にメガロは食らいついた。
ジェットジャガーの背中にレーザー殺獣光線を直撃させて足を止めさせる。
「羽虫の羽音がうるさいわねぇ…ジャガー。さくっと潰しなさい」
ジェットジャガーが振り向き、再びメガロとの格闘戦が始まる。
メガロとジェットジャガーの拳がお互いの体を打つ。
お互い防御などしない。
我慢比べである。
しかし、機械のジェットジャガーと生物であるメガロ。
痛みに強いのはどちらかなど分かりきっていたことで…
そもそも痛みなどないジェットジャガーに勝負の軍配は上がった。
「所詮生命など私の生み出す鋼の兵士達の前には無意味ッ!お前達など…」
エム・ゴが言葉を区切った。
何かに気づいたらしいが…エム・ゴが見ているのは先程ガイガンが爆発した場所。
そこにガイガンの死骸が無くて──
「どこに消えた!?まさかまだ生きて──!?」
急に暗くなった。
今日は満月だったので夜でも比較的明るかった。
雲ひとつない星空だったのだが雲が月を隠したのか?
空を見上げると月を遮っているのは雲ではない。
あれは───
月の前に躍り出たのは死神。
翼を広げ、両腕の鎌を煌めかせながら降下し──
ジェットジャガーの左腕を切り裂いた。
「なんだその姿は…私はそんな姿を創った覚えはないッ!?」
ガイガン…しかしその姿は先程とは異なる。
金色の美しい鱗は消え、紺色の体に。
鉤爪はより敵を切り裂くことに特化した鎌へと変化した。
「ナノメタルの装甲を切り裂くなんて…いや、ガイガンにもナノメタルは使用していたか…ジャガー!撤退よ!」
エム・ゴを右手に持ち、一瞬で飛び立つジェットジャガー。
「待ちやがれ!」
メガロがレーザーを放つもジェットジャガーは機敏な動きで回避し夜の闇に消えていった。
「もういい…これ以上はエネルギーの無駄遣いだ…」
「チッ…おい、お前大丈夫か?なんか今にも倒れそうだぞ?」
「ああ…正直今にも倒れ、そう…」
「ってえ!ガチで倒れる奴があるか!くそ、起きろ!お前引き摺って行くのはキツそうだ!おい!おい!」
爆発に巻き込まれた俺はほんの少し気絶していたようだ。
体に力が入らない。
しかし、このままではメガロが危ない。
くそ、なんだよあのジェットジャガーは。
ウルトラダイナマイトかましてきたぞ。
タロウか?タロウなのか?
ウルトラ兄弟のNo.6なのか?
しかもあのデザインなんか『もしFINALWARSにジェットジャガーが出たら』みたいなスタイリッシュなデザインになってるし…
ガイガンである俺を差し置いてFW版的な見た目に大変身するなんて許さん!
なんて思っていたら急に体がむずむずし始めて…
そうして、俺はFWの力を手に入れたのだ。
『ナノメタル』
エム・ゴが開発した自立思考金属体。
その名の通り、ナノメタルそのものが思考し自在変形を可能とする。
エム・ゴはこれを用いた鋼鉄の軍団を作り上げようとしていた。
しかし…
「ガイガンに使用したのはまだプロトタイプのもの…あそこまでの形態変化は…」
ありえないと言おうとしてそれこそありえないと結論付けた。
恐らくは使用したあの男の脳がナノメタルに命じたのか…
拠点としている移動要塞の自室で仮説を立てる。
まさかジャガーの左腕を持っていかれるとは…
傍らに仕えるジャガーを横目に今後の対策を練るが…
「エム・ゴ様、デムキです。お伝えしたいことがございます」
私の腹心の部下であるデムキが自室のドアをくぐって入ってきた。
長身痩躯で白髪頭の青年はドアの出入りもいちいち大変だ。
「それで?お伝えしたいことっていい知らせ?悪い知らせ?」
「いい知らせにございますエム・ゴ様。ついにあれを入手しました」
「そう…ようやく、ようやくあれが手に入ったのね…!ふふふ…ははは…あー最ッ高の気分ね…これでようやく私のターンに移ることが出来る…」
「計画は順調です。あとはエム・ゴ様の作品が出来上がれば…」
「全て終わるわ…デムキ、私は作品の制作に入る。しばらくは…」
「邪魔は致しません。そして、させません」
「よろしい…それでは創るとしましょう。私の最高傑作をッ!!!」
腰まで伸ばした紫の髪を束ね、私は工房へと向かった。
あれからぴたりと止まったエム・ゴの機械兵による襲撃、侵攻。
本当にぴたりと止まってしまったのでかなり不気味だ。
嵐の前の静けさと言うか…
「…い!おい!ガイガン聞いてんのか!?」
「あ、ああ…悪い。ぼうっとしてた」
「たっく、そんなんじゃ奴等に勝てねえぞ」
ただいまメガロとパトロール中。
といってもまったくもって異常なし。
暇だったから考え事なんて出来ていたわけなんだけど…ッ!?
な、なんだこの感じ…背骨が氷にでもなったんじゃないかってくらいの寒気。
「おい…お前も感じたか?」
「ああ…なんか来るぞ!」
「上だッ!」
メガロの声で俺も空を見上げる。
すると隕石か何かがこちらに迫ってき…
「ガイガン!?」
おもいっきり俺に直撃した隕石。
そのまま地面に隕石と一緒にゴールイン。
「痛…」
「くう…」
「イテテ…」
何かが俺の上にのしかかっている。
しっかりとのしかかられているため言葉が出ない。
前も見えない。
一体なにが起こって…
「トーレ、あなたが調子に乗って加速なんかするからこんな辺境の星に墜落してしまったのよ」
「だって~お腹空いてたんだもん。なんかここ美味しそうな匂いしたからつい…」
「言い訳は無用。あなたはしばらくご飯抜きで生活よ」
「まあまあウノ。トーレも悪気があったわけではありませんから…」
「ドゥーエ…あなたがいつもそうやってウノを甘やかすからいつまでたってもこの子は精神が成長しないお子様なままなのよ」
「トーレはお子様じゃないもん!」
「ハイハイ…それより、私達なにか踏んでない?」
「そういえば妙な感触が…」
ようやくこの三姉妹?かなにかは俺の上からどいてくれた。
まったくどんな奴等だ?
この俺を座布団にしやがったの、は…
「「「じー」」」
俺を見つめる黄金の竜が一、二、三…
「こ、こんにちはぁ…」
キングギドラやんけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!
しかもじっとこっちをずっと見てるぅ!
やめてくださいホント…食べても美味しくないんで…
「「「いい男…」」」
ひえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!
やっぱり食べる気だぁぁぁぁ!!!!!
って、うん?
今なんつった?
いい男?
え?まさか…あれですか?阿部さ…
別の意味で食われるぅぅぅぅ!!!!!
「「「ねえ、あなた名前は?」」」
そんなメイちゃんみたいな質問すんなよ…
トトロみたいに吠えてほしいのか?
こうなったら勇気を振り絞って…
あっ無理。
顔見るだけでなんかもう恐怖なんだけど。
「名前を聞いているのよ?」
「もしかしてしゃべれないの?」
「私達とぶつかった衝撃でどこか打ってしまったとか?」
「アッ、ソノ…ガ、ガイガンッテイイマス…」
勇気を振り絞って陰キャがヤンキーに答えてあげました。
だいぶキョドってます、はい。
「「「ガイガン…」」」
「「「いい名前…」」」
ギドラ様は告らせたい~恋愛怪獣戦~
「「「私、ギドラ!普通の宇宙怪獣なの!」」」
「「「大変遅刻遅刻~!他のギドラ族に先にあの星滅ぼされちゃう!(ドゴラの触手を口に咥えながら)」」」
「「「きゃっ!ちょっとぶつかったんなら謝りなさいよ!!!」」」
「…悪かったな」
「「「なによその態度は!!!」」」
「悪かったって言ってるだろ…それより」
「「「な、なによ」」」
「頭に結晶生物ついてるぞ」ピッ
「「「えっ///」」」
「ちょっと待て」
「なにかしら?」
「人を変な妄想に使うんじゃねえ!!!」
妄想っていうか変な世界にされてたぞ!?
なんだってんだ一体!?
「私達は星の環境を作り変えることが出来るんです」
「その力のせいかもぉ」
「さらっととんでもねえこと言ってんだけど!?」
なんていうか…すげえのが来たなぁ。
エム・ゴどころの話じゃないのかもしれない。
これは共通の敵が現れたことによって共闘、絆を深めて気づいたら仲間入りコース…
「ねえねえガイガン」
「は、はい…なんでしょう…」
「食べていい?」
「えっ?」
大きく口を広げたギドラの顔が迫る。
みなさんいよいよ最期の時が近づいてまいりました。
みなさんさようなら、さようなら!
解説
FWの発現
ピー助に使用されたナノメタルはプロトタイプなので状況に応じての変化が完成品より劣るがピー助の中の人の記憶を読み取りFWの姿を発現させた。特オタ万歳。
キングギドラ
正面から見て左から冷酷無慈悲な長女ウノ、真ん中がしっかり者の次女ドゥーエ、最後に食いしん坊で甘えん坊な末っ子三女のトーレ。
名前の由来はイタリア語の1、2、3から。