久しぶりに、人間だった頃の夢を見た。
父と山に行った時のこと…。
「いいか?動物ってのはこっちが何かしなければ基本的に攻撃してこないんだ」
そう言いつつアオダイショウを掴んで持ち上げる父。
いや、既に何かしてると思うんですが…。
まあ、この個体はおとなしい子なのだろう。
「もし、俺がこいつに襲いかかればこいつも反撃してくるだろう。動物は基本的に襲われた時はまず逃げることを考える。そしてそれが無理だと判断したら…戦うんだ」
父は動物に詳しかった。
別に動物園の飼育員だったとかではないが、とても詳しかった。
鳥の鳴き声を聞けばなんの鳥か言い当て、この動物を知っているか?と聞けば大体知っていると答えられた。
そんな父を持ったからか自分も自然と動物好きになっていって…。
今は怪獣になった。
いや、動物好きだから怪獣になったわけではないが…。
とにかく、こうして人間だった頃の夢を見るということがとても懐かしかったのだ。
父は…どうしているだろうか?
ピッピピピーピピピー、ピッピピピーピピピー…お?休憩室に一人でいるあれは響ちゃんでは?
筑波から帰ってきてからずっとなにやら落ち込んでいるようだしここはアニマルセラピーのスペシャリストとして行くっきゃない。
へ~いそこの彼女~。
俺で遊ばない?
「ピー助君…」
どしたの響ちゃん。
らしくないぜ。
ご飯食べる?つご飯
「食欲ないんだ…」
な、なんだと…。
あの響ちゃんがご飯に見向きもしないなんて…。
これは本格的なカウンセリングが必要だ。
えいっとジャンプして響ちゃんの膝の上へ。
「…ピー助君」
へいへいどんどんぷにっちまいな。
一度触り出したら止められない止まらない。かっぱえびせ…じゃない。ピー助です。
「触り心地、いいね…」
そうでしょうそうでしょう。
その調子でしばらく無心でぷにるんだな!
…
……
………
「ピー助君」
なんですの?
「ピー助君のお父さんはどんな人…いや、怪獣か。どんな怪獣だったの?」
うーん残念ながら俺の親父は人でね。
いや、俺も人なんだけど…。
まあ、いいや。
で、俺の親父か…。
まあ、普通の人かな。
普通の父親。
普通の父親ってやつを立派にやってた人だと思う。
食うのに困ったこととかないし、真面目に働いてた。子育ても…まあ、そんなに怒られたことはないけど結構厳しい人だったかな。
曲がったことが嫌いで、口癖は「筋を通せ」
…こう思い出すのもすごく久しぶりな気がする。
もう二度と会えないのだろうか。
まあ、会えないだろう。
俺がいた世界はノイズなんていなかったし、なにより俺が生きた時代は2019年。この世界は目覚めた時点で2040年代と未来なのだ。
時空を越えるとはまさにこのこと。
なにかの弾みでひょっこり元の世界に戻れたら…いや、戻ってもこの身体じゃ捕獲されて研究…なんてことになってしまうだろう。
ゴジラシリーズに登場した怪獣に酷似した未確認生物発見!みたいな感じで。
「…お父さんに、会ったんだ」
え…?
響ちゃんのお父さんに?
「久しぶりに会ったお父さんは、昔みたいにカッコよくなくて…」
あ、あぁあぁあぁ!
ほら、元気出して!よしよし。
うんうん生きてたらいろんなこともあるよね!
ピー助は焦った。
まさか、こんな出だしから重い話だとは思っていなかったからだ。
落ち込んでいても思春期特有の後々笑い話になるようなかわいい話題だと思っていたのだ。
やべぇよやべぇよ…これじゃ父親自慢したみたいじゃん!
えーっと、うん。
あれだあれ!
うちの親父はあれだった、他人には厳しくて自分には甘かったかな~なんて。
夏休み、実家に帰省したら天井から親父の足が生えててさ~。換気扇つけようとDIYしてたら足滑らせて天井ぶち抜いてたんだよね!
これ俺が天井ぶち抜いてたらめちゃくちゃ怒られてたけど親父ったら笑って済ませようとしてさ!挙げ句の果てに自分がぶち抜いたとこに換気扇取り付けて最初からそのつもりでしたーみたいな顔してんの!
まったくもうそういうとこが…こう…人間だよね!(やけくそ)
「…ふふ。なに言ってるかは分からないけど、わたしのこと慰めようとしてくれたんだよね?ありがとう、ピー助君」
いやぁどういたしまして(照れ)
「…もうしばらく、触ってていい?」
ええんやで。
それからしばらく、響ちゃんの膝の上で大人しくしていました。
見たか、これがアニマルセラピーだッ!!!
二人の様子を影から見守る者が二人…。
翼とマリアである。
「いいの?ピー助を独占させて」
いつもならすぐにピー助を返せと言わんばかりに突撃する翼が様子見していることを不思議に思ったマリアがそう訊ねた。
「…落ち込んでいる立花を元気づけようとしているのだろう。立花が元気になれば返してもらう。そう、あくまで貸してるだけだ。延滞は許さない」
「…そう」
へぇ…ふぅん。
「なんだ、その笑みは」
「別に~」
「おい、マリア!話はまだ終わってないぞ!」
ピーピピピーピピ、ピピ、ピー、ピーピーピピ、ピピ、ピー…おっとあれに見えるは山根博士。
なんか、翼ちゃんとマリアさんに絡まれてる…。
「ピー助を連れて行くなど宣ったのは貴女ですか?」
「え、いや、それは…当初、そういう予定だったってだけで現状を鑑みてその必要はないと報告したからもうピー助君を連れて行くなんてことは…」
「ない、と言い切れるの?」
うわぁ…あの二人顔こっわ。
駄目やで~折角の美人が台無しやで~…とは思うけど、いま関わると面倒なことになりそうだからあれはスルーしよっと。
お、あれに見えるはクリスちゃんと切調コンビ。
へーいそこの彼女達~俺で遊ばな…。
『緊急事態発生!総員、第一種警戒態勢!繰り返す!第一種警戒態勢!』
第一種警戒態勢!?
すぐにブリッジに行かないと…。
大阪府某所
「レイラインの解放…」
自動人形のファラが森の中、警備していた兵士に口付けをしていた。
(それにしても、何故ここだけ警備が厳重に…?まさか、計画がばれて…いや、そんなはずはない。奴等はまだなにも気付いていないはず)
とにかく、任務の遂行を優先しようと判断したファラは兵士達を次々と蹂躙し、目当ての場所へと到達した。
巨大な岩。
それは周辺の木々よりも高く、存在感を発していた。
そしてファラは岩を一瞥すると剣を振るい、竜巻を発生させてその岩を砕いてみせた。
───それが、なにを呼び覚ますかも知らず。
異変が起きたのは岩が砕け散ってすぐのことだった。
風は止み、木々も息を潜め、その森に住まう生物達の呼吸も感じられないほどの静寂。
そして、ファラはとても巨大な力を感じたのだ。
大地を揺らし、砕き、割ってそれは現れた。
四つ足、金色の体色。そしてなにより目を引くのは背中の巨大な氷柱達。
そう、ここは護国聖獣の一体を封印していた場所。
護国を司る聖獣が一柱「
「これは…面倒なことになりそうですね」
それだけ呟くと、ファラはテレポートジェムを用いてこの場を後にした。
闇魏羅珠の咆哮が、大気を震わせた。
大急ぎで司令室に入るとモニターに映し出された光景に目を奪われた。
あれは…アンギラス。
しかし、俺がよく知る個体とは違う。
護国聖獣の方のアンギラスということか。
氷を司る怪獣なんていう属性付与がされているのだ。
しかし、氷属性って強キャラかかませのどちらかのイメージがあるがどうだろうか?
いや、そんなことはどうでもよくてだな。
「巨大生物は東へと進行。この先には…市街地があります!」
「避難はまだどころか始まってすらいません!周辺はパニック状態です!」
オペレーター達の報告を聞き、まあ、そうだろうなと一人で納得していた。
いきなり怪獣なんてものが現れたのだ、そりゃパニックにもなる。
それにこの世界は怪獣が身近ってわけではないし、俺という知名度バリバリな存在もいるけど、こうして人間の生活している近くに怪獣が現れたのははじめてのことなのだ。
「ここは…MONARCHが発見、管理している護国聖獣の一体が眠っているとされた場所です。まさか、封印が解かれた…?」
山根博士の推測は当たっているはずだ。
恐らく、祠か何かがあったはず。
しかし、管理しているというのに破壊されるなんてことがあるだろうか…?
「司令!我々に出動命令を!」
翼ちゃんが司令に進言する。
だけど…。
「装者は全員ヘリにて現場に急行。そして待機だ」
「あの怪獣はどうすんだよ!」
クリスちゃんが司令に食いかかる。
怪獣と戦う気やったんか…。
まあまあクリスちゃん。
餅は餅屋やで。
「ピー助。頼めるか?」
任務…了解!
それじゃあ早速出撃…。
「ピー助!」
司令室を出ようとすると、翼ちゃんが俺の名前を呼んだ。
「ピー助。無茶はしないで…」
翼ちゃんの不安そうな顔。
そして素の口調。
ああ、ダメだ。
こんな顔をする翼ちゃんは、昔を思い出して…。
こういう時、不安を和らげてあげる台詞は…。
大丈夫やで翼ちゃん。
命なんて安いものだ。特に、俺のは…ぶっ!?
言い終わった瞬間、翼ちゃんに思いっきり抱き締められた。
顔が翼ちゃんの胸に押し付けられて呼吸が出来ない。
波紋を…波紋の呼吸を…!
「馬鹿なこと言わないで!絶対に帰ってきて…帰って来なかったら、無理矢理連れ戻すわ」
しまった。さっきの台詞は本編でもリリーナ様から怒られるやつやった…。
だ、大丈夫やで翼ちゃん。アンギラスなんて脇役も脇役。ゴジラやキングギドラ、デストロイアみたいな大物を相手にするよりはずっと楽だから。
いや、アンギラスさんのことはもちろん尊敬してるからね。
翼ちゃんを安心させるために言ってるからねこれ!
翼ちゃん。そろそろ行かないと、街が大変なことになる。
「ええ…。ちゃんと、帰ってきて」
応よ!
ガイガン!目標を駆逐する!
というわけで井上ワープ。
闇魏羅珠の目の前に降り立ち、行く手を遮る。
俺の後方約2キロには市街地が広がっている。当然、避難なんて完了していないからまずい。
不味すぎるのだ。
というわけで奴とコミュニケーションを取ろうと試みるが、怒り心頭に発するといった感じで全く返事がない。
なにをそんなに怒っている?
封印を解かれたからか?
眠りを邪魔されたからか?
話しかけるが全く応答せず、それどころか俺に向かって駆け出してきた。
後肢で立ち上がり、前肢で叩き付けてくる闇魏羅珠と取っ組み合う。
聞いてないかもしれないが聞け。
そりゃあ誰だって眠りを邪魔されたら気分を悪くするさ。けどな、俺達怪獣の怒りは人間からすりゃ天災なんだ。ここでお前が暴れて人間に危害を加えたらお前や他の怪獣達は人間から憎まれることになるんだぞ。
そうなったら、ただでさえ居場所のない怪獣達の居場所がなくなってしまう。
怪獣と人間。
正しい距離感で付き合っていかなきゃいけないんだ。
そうでないと、互いが互いを傷つけることになってしまう!
だからこれ以上お前を進ませるわけにはいかない!
闇魏羅珠を押し返し、体勢を立て直す。
いや、そんな暇を与えてはくれなかった。
背中の氷柱をこちらに向けると…氷柱が、俺を貫かんと迫ってきた。
何本かは叩き折ってやったが、身体中に氷柱が掠り、左肩にはもろに一本刺さってしまった。
くそ…抜けねえ!
奴も刺すだけでは飽きたらず、そのまま俺を振り回して…なんてパワーしてんだこいつは!
ああくそ!傷口が広まっていくじゃねえか!
やっぱりこいつ殺すか…いや、駄目だ。
脳裏には、昨晩見た夢。父の言葉があった。
こちらからなにもしなければいい。
こっちから攻撃しては余計に火に油を注いでしまう。
だから…耐えろ。
奴の気が済むまで付き合ってやるんだ…。ブスッ!
…ブスッ?
首を下に向けると、右の脇腹に氷柱が刺さっていた。
…。
……。
テメェ!地球攻撃命令の時みたいに顔面ギッタギタのズッタズタに切り裂いてやろうかぁぁぁぁぁ!!!!!
ピー助はもう既に、耐えられそうになかった。
次回へ続く。
GMK版アンギラスの設定とか構想載ってるやつ探し回ってやったけど大変やった。
初期のアンギラス、バラゴン、バランの護国三聖獣も見たかったでござる。
まあ、後々いろんなところで小ネタ的に三体並べられたりしてるけど。
オマケ 出張ガイガン
ピ「セレナちゃんが生きてる世界か…マリアさんはどうなっているのか果たして。さて、次なる世界は…。どこだここ。路地裏?」
<カシャン…カシャン…
ピ「ん?この特徴的な足音は…」
<くるり
???「なんだこのペンギンみたいな奴は…」
銀色のボディ
真っ緑な目
ピ「ファ!?シャドームーンやんけ!ゴルゴムの仕業か!」(ノルマ達成)
それでも月は君のそばにの世界
作者 キューマル式様
月影信人(以下 月)「いや、確かに見た目シャドームーンだが違う!」
ピ「見た目がシャドームーンだけど違うってどういうことやねん!い、言っとくけどな!俺はキングストーン持ってないぞ!」
月「見れば分かる。ほら、変身解除しただろ?これでも納得しないか?ちなみに、今は仮面ライダーSHADOWって名乗ってる」
ピ「はえ~。てか、何気に言葉通じてるんですがそれは…。あ、なるほど。人外だからかオッケー了解。…ところで」
月「なんだ?」
ピ「その光太郎ファッションはリアルでは如何なものかと…」
月「変…身ッ!!!」
ピ「あ、あかんやつみたいですねこれは」
<キック迫り~