ギンガ団員、ガラルにて   作:Ly

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12-ターフタウン、邂逅

「あの人、生で見たらやっぱりカッコよかったな〜」

 

 はやく挑戦したいな、と笑う。そのためにはまず草・水・炎という前半3タイプのジムを攻略しなければならない。ターフタウン、バウタウン、エンジンシティは道路が円く通っていることから、よく前半の街と言われている。8つあるのに3つが前半、というのは3つめのジム、炎タイプのカブで躓くトレーナーが多いのが理由だ。

 

 ユウリは今、ガラル鉱山で絡んできたビートを倒したところだ。この道を抜ければターフタウンはもうすぐそこだと聞いている。

 

「でもまずは目の前のジムに集中しないとね!」

「めっそん!」

 

 メッソンが傷を負いながらも頷く。鉱山で働く人たちや野生のポケモンと連続でバトルした後に、同じジムチャレンジャーと戦うのはなかなかハードだった。

 

 はやくノーマルタイプのユニフォームに袖を通したい。開会式でホップに買ってきてもらったこのレプリカは、自分の番号をプリントしてもらっているのでジムチャレンジで使うことが出来る。ユウリはジムチャレンジに元々乗り気ではなかったが、半年前にテレビで見た試合でとあるトレーナーのファンになっていた。

 

「あたしは!もう後には退けない!」

 

 そう叫びながらカビゴンをキョダイマックスさせ、マクワと互角の勝負を繰り広げたトレーナー、ルリミゾだ。試合二日前に突然意識不明で運ばれたジムリーダーに代わり出場したその少女は、ユウリとほとんど変わらない年齢にもかかわらずメジャージムリーダーに勝利し、メジャー昇格を果たしていた。

 

 この人と同じ舞台で戦ってみたい。気付けば食い入るように画面を見つめていた。幸運なことに隣の家の幼馴染、ホップの兄であるダンデはユウリにジムチャレンジへの参加を望んでいた。身近すぎて憧れというよりは親近感のあるチャンピオンよりも、テレビで見たあの強い心の少女に憧れたことはホップには内緒だ。

 

「ホップとライバルになってくれ。競い合う相手がいれば、きみもホップもどんどん強くなる!」

 

 そう言われてしまえば断る理由はない。なにより言われずとも内側から燃え上がる熱情に突き動かされていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ターフタウンに到着したユウリは、ソニアと合流し地上絵についての意見を求められていた。

 

「黒い渦がガラル地方を覆い、巨大なポケモンが暴れ回った・・・」

 

 ブラックナイトって何なんだろうね、ソニアが地上絵を眺めながら伝承を語る。いつもの癖で垂らした髪をくるくる弄っている。

 

「地上絵にして残すくらいだから、きっと凄い厄災だったんだろうね」

「ダイマックスと関係があるのかな・・・」

 

 ふり絞って答えたが、考えモードに入ってしまっていて聞いていないようだ。しばらく考えたあと、ソニアはありがとね、と感謝してヤローのリーグカードをくれた。あまり歴史に興味はないが、ソニアの研究がうまくいくことを願うばかりだ。

 

 去っていくソニアを見送ってから辺りを見渡せば、イシヘンジンとヨクバリスの顔に穴が開いた記念撮影用パネルがある。しまった、一緒に撮ればよかった。と思ったがもうソニアの姿は見えなくなっていた。

 

・・・

 

「お姉ちゃん、知ってる?ターフタウンのどこかにお宝が埋まっているんだって!」

「ほんとに!?すごいね!!」

「石碑を調べたらいいんだって!」

 

 ソニアとの会話を近くで聞いていたのだろう。女の子が面白そうな話を聞かせてくれる。もしも歴史の解読に繋がりそうなものが見つかれば、ソニアの助けにもなる。売れそうなものだったら旅の資金にしてしまおうとも考えていた。

 

「ありがとう!ちょっと探してみる!」

「頑張ってね~!」

 

・・・

 

「ダメだ、全然見つかんない・・・」

 

 女の子と別れて小一時間、何も発見できなかった。目的はジムチャレンジなので探索はほどほどにして宿で休む。明日、ヤローの待つターフスタジアムを訪れるつもりだ。まだ夕方だが、休憩がてらベッドで横に・・・

 

・・・

 

「はっ」

 

 完全に眠ってしまっていたようだ。深夜に目を覚ました。気分転換にメッソンを連れて散歩に行く。ターフタウンは治安も良いし、このジムチャレンジの時期に悪い人はいないだろうと判断した。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「どこかに強いトレーナー落ちてないかしら」

 

 はあ、と溜息をつく。熱いバトルも襲撃も最後にしてからしばらく経っている。ルリミゾは溜まっていた。

 

 スマホロトムで眺めるニュースではダンデがまたキバナとエキシビションマッチを行うという。試合は明後日、シュートシティで行われるらしい。ダンデのライバルを自称するキバナは何かと試合の機会を与えられている。ズルい。何度負けても諦めない姿勢だけは見習いたいものだ。

 

「そうだ、今ならチャンピオンがいないじゃない!」

 

 エキシビションとはいえ無敗記録をさらに伸ばすためにチャンピオンは調整に入った。治安維持のために深夜に駆り出されることはないだろう。どこかの管理されている遺跡や石碑を狙いに行こうと決めた。

 

 ジムチャレンジ期間、ジムリーダーの業務はとても忙しい。メジャージムリーグの試合とジムチャレンジャーへの試練の両方をこなさなければならない。まだジムチャレンジャーは旅立ったばかりなので来ないだろうが、明後日はメジャージムリーグでポプラとの試合だ。前半の3ジムのリーダーは、ジムチャレンジ開始直後でとても忙しいため今月の試合はほとんどない。その代わりに後半のジムリーダー同士が当たるカードが多いのだ。

 

「ジムリーダー代理になったのに、こんなに忙しいとあんまり意味がないわね…」

 

 考えることをやめて着替える。ターフタウンには石碑や地上絵があるらしいので見に行きたいと思っていたが、連日ジムトレーナーたちとの特訓の予定が入っていた。明日はステーキハウス「おいしんボブ」で記者からの取材を受ける。それは楽しみなので別に構わないのだが、キルクスに拘束されてしまう。

 

「クロバット、行くわよ!」

 

 行き先はターフタウン。ジムチャレンジャーも早ければ到着しているだろうが、慣れない旅で今はぐっすり眠っているだろう。

 

・・・

 

 スタッと降り立つのはターフタウンの町のはずれにある丘だ。観光地だが今は静寂に包まれている。夜で地上絵が見えないのにわざわざ訪れる人はいない。イシヘンジンとヨクバリスの顔に穴が開いた写真撮影用パネルを見て、次は観光で来ようと思う。

 

「少し離れて飛んでいて」

 

 指示を出し、近くを警戒させる。ドータクンやポリゴンZは出していない。今日調べたい石碑は住宅の横だったり、街の真ん中にあるので人と鉢合わせて即座に「ギンガ団だ!」と騒がれるのも面倒だ。服装もジャージにマスクと帽子で、不審者とも言えなくもない程度の変装にしている。積極的に一般人を巻き込みたいわけではない。

 

「まずここね」

 

 「飛行」「毒」と向かい合った石碑に文字が書いてある。あまり厄災と関係はなさそうだ。少し離れたところには「水」と書いてある石碑があった。噂通りなら宝が埋まっているらしいが、破壊して探すのは全て回ってからでもいいだろう。

 

「草、悪、と」

 

 花屋の近くに「草」、ジムの前に「悪」があった。位置関係をメモしておこうとペンを取り出す。その時だった。

 

「石碑の謎解きですか?」

「え、えぇ。気になって眠れなくて」

 

 声をかけられた。相手の姿は暗くてよく見えないが、咄嗟の返答で誤魔化し会話を繋げる。これから石碑を破壊するかもしれないのに、絡まれると面倒だ。やれ、と即座に視線でクロバットに指示を送る。

 

「うわ!びっくりした!」

 

 避けられた。クロバットが失敗するなんてありえない。体調は万全のはずだ。後ろからクロバットが迫ったため人影はこちらに駆けてくる。

 

「何かいます!気を付けてください!」

「ッ!?」

 

 近付いて明らかになったのは声の主がユウリということ。こちらの心配をしながら走ってくる。性格の優しさがこの状況でも発揮されているようだ。横にメッソンを連れているが、完全に怯えてしまって使い物になっていない。とすれば静かに近付くクロバットに気付いて避けたのはユウリだけの力だということになる。才覚と反射神経に驚きながらも、ポリゴンZとドータクンを繰り出しクロバットと挟む形を作る。

 

「あの奇襲を回避したのはアンタが初めてよ」

「ポリゴンZにドータクンって・・・ギンガ団のロベリア!?」

 

 よく知ってるじゃない、と笑いながら対峙する。

 

 ユウリにとってはジムチャレンジが始まっていきなりの、あまりにも過酷な試練だった。

 

 




深夜だしジムチャレンジャー寝てるでしょ vs 深夜でも悪人なんて歩いてないでしょ
邂逅です。(将来)強いトレーナーが落ちててよかったですね。

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