ギンガ団員、ガラルにて 作:Ly
翌日、ユウリは委員会から聞き取りを受けていた。
「君は脅されて、マグノリア博士とその孫のソニアさんの情報を言わされたんだね?」
「はい。地上絵と石碑について調べているようでした」
「ナックルシティの宝物庫も盗まれたものはなかった。タペストリーに記された厄災の伝説を調べていたようだったが、3000年前の厄災を何故今調べているんだ…」
御伽噺だろう、と言うリーグスタッフ。ガラルを滅ぼしかねないほどの厄災は御免だが、語り伝えられるほどの英雄が架空の存在というのはなんだか寂しかった。
「ありがとう、このことはローズ委員長にも伝えておくよ。怖かっただろう。部屋でゆっくりお休み」
そう気遣われたが、ジムチャレンジに行きたかったので別れてからターフスタジアムに向かう。ソニアから心配するメッセージが来ていたが、心配なのはこちらも同じだ。ソニアこそ気をつけてね、と返信してスマホロトムをポケットにしまった。
「ジムチャレンジ頑張れよ!お嬢ちゃん!」
「ありがとうございます!」
「期待してるからな〜!」
町は昨日の出来事など知らないように穏やかだ。委員会はジムチャレンジャーが襲われたという事件を隠したいらしく、お詫びに「でかいきんのたま」を二つ貰った。換金しろということらしい。それでもきちんとマグノリア博士の研究所には警備の人員が派遣されると聞いた。町の夜間の警備にはジムトレーナーも駆り出されるらしく、彼らが過労で倒れないか心配だ。委員会はことが大きくなる前に捕まえるつもりだと、スタッフは零していた。
「ガーディ、気にしなくていいんだよ?」
「クゥーン」
昨日、ボールから飛び出せなかったガーディはそのことをひどく気に病んでいるようだ。いくら言っても落ち込んだまま、尻尾も垂れ下がっている。絶対に敵わない相手に飛び出すことは勇敢ではなく蛮勇だ。
ユウリは昨日、降伏するときにガーディのボールをロックしていた。その判断がガーディの自尊心を傷つけることも理解していたが、相手は犯罪者、下手に逆らえば何をされるかわからない。
「じゃあ、今から行くジムで活躍してみせて!そうすれば自分を許せるでしょ?」
「ガウ!!」
嬉しそうに吠える。初めてのジムに少し緊張するユウリだったが、昨日の出来事により吹っ切れていた。
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ジムで休憩中、リーグ委員会からスマホロトムにメッセージが届いた。ピロン、という通知が鳴ったので開けば、先にメッセージを読んだらしいノマが話しかけてきた。
「ジムチャレンジャーがギンガ団に襲われたらしいぞ」
「何目当てよ、強盗?」
「石碑と地上絵について聞かれたらしい。石碑の謎解きをしようと夜中に出歩いてたら出会ったんだとさ」
危機感のかけらもないわね、と言いながらメッセージに目を通す。
ターフタウンにてギンガ団幹部、ロベリアを名乗る女にジムチャレンジャーが襲われ、マグノリア博士とその孫ソニアについての情報を聞き出された。石碑と地上絵についての情報を得ようとしていたこと、ナックルシティの宝物庫を襲撃したことと合わせると、ブラックナイトやそれを退けた英雄の剣と盾について調べていると思われる。
「まあ、当然そうなるわね」
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各街に存在する歴史的な遺産や資料の警護に力を入れてほしい。要点をまとめればそういうことらしい。キルクスには歴史を語る温泉があるが、襲われることはないだろう。何故なら当の襲撃犯は温泉を毎日見ているから。
「ウチのジムもジムトレーナーを見回りに出さないといけないのかしら。面倒ね」
アンタ行きなさいよ、とノマに雑に振る。
「ジムリーダー様が立ってりゃ誰も襲わないだろ、お前が行けよ」
「嫌よ、面倒臭い」
「俺だってそうだ」
当然警察も動いているが、ガラル全土に人員を割くわけにはいかない。ナックルシティやエンジンシティの見回りを強化しているらしい。キルクスには誰も来ない。田舎町の悪いところだ。
「温泉の壁画なんて誰でも見れるし来ないでしょ〜」
「じゃあ何もしないのか?」
「盗る物もないのに襲われるわけないわ。あと襲われそうなところといえば8番道路ぐらいじゃないかしら。遺跡みたいだし。でもあっちはナックルシティの警察が見てるらしいから私たちの出番はないわ」
「もし来られたら知らねえぞ、責任問われるんじゃねえのか」
(毎日飽きるほど見てるから襲わないわよ…)
ひらひらと手を振る。
「じゃ、そろそろインタビュー受けてくるわ。鍵閉めとかよろしくね」
「ああ」
足取りは軽やかにジムを後にする。
・・・
相変わらずキルクスは今日も雪が積もっている。はー、と息を吐けば白くなって消えていく。待ち合わせにはまだ早いが、遅刻して悪印象を与え、変なことを書かれるよりはマシだ。
「うぅ〜、寒いわね」
寒さに慣れているとはいえ平気なわけではない。どんな立場でも何を書かれるかわからない以上、丁寧に接さなければいけない。「もし挑発的な質問されても抑えろよ!」とノマに念押しされていたが、寛容なルリミゾはそんなことでは怒らない。
「余計な心配ね」
呟いた時、相手の記者らしき人が来た。
・・・
ノマの心配と裏腹に、完璧にインタビューを終えたルリミゾはステーキも食べてご機嫌だった。そういえば「おいしんボブ」にはカレーも置いてあるが、そんな逆張り注文をする輩がいればジムリーダー代理として粛清しなければならないだろう。
帰り道、ユキハミを蹴らないように歩く。ダルマッカがぴょんぴょん跳ねて雪に跡を残している。家に置いてきたポリゴンZは家具を壊していないだろうか。
「あえてナックルシティに行って警察と委員会のメンツを潰すのも面白いわね」
そうすれば更に警備が厳しくなり、本命のエネルギープラントに手が出しにくくなってしまうと考えてすぐに取り下げる。
「箝口令が敷かれるなんてよっぽど信用を落としたくないのね」
それもそうか、と笑う。ジムチャレンジャーが襲われたとなればジムチャレンジ開催にも懸念の声が上がるだろうし、リタイアする者も現れるだろう。偶々目撃されたから襲っただけなのに、と思いながら次の狙いを考える。
「キルクス近くだと集合かけられて不在がバレるし8番道路はダメね」
思考の熱で湯気が出る。こういうのはサターンやアカギが指示していたので苦手だ。残りでまだ訪れていないのは…
「ラテラルタウンの遺跡にしましょう!」
決まりだ。ターフタウンではジムチャレンジャーと遭遇したので、まだジムチャレンジャーが到着していない街を狙う。バトルをある種神聖視している彼女にとっても、ジムチャレンジの開催が危ぶまれることは避けたかった。
2話続けてバトルや野外戦闘を書けていないので私も溜まっています。
今日中にジムチャレンジかラテラルタウン襲撃の話を投稿します。
でかいきんのたまぐらいで口封じをするのは現実だとちょっと、というか大問題ですね。
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誤字報告助かります。
今回も読んでいただきありがとうございました。
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