ギンガ団員、ガラルにて   作:Ly

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16-ジムチャレンジ①

 ターフスタジアムの中心、歓声とスポットライトが集まるなか、ユウリはヤローと向き合っていた。これからジムチャレンジの最後、ジムリーダーとの直接対決が始まるのだ。

 

「きみが襲われてしまったのは僕の責任です」

 

 すまない、とヤローは言う。続けて、

 

「何かあればすぐ駆け付けられると思っとりました」

 

 後悔を全面に、下を向いて振り絞るように話す。

 

「いえいえ、そんな。私は無事でしたし」

「何かあってからでは遅いのです」

「は、はい」

 

 広い肩幅で圧があるヤローが力を込めて発言すれば、ユウリは少しおびえる。

 

「僕は未熟者を叩き潰すのが怖かった。心を折るのが嫌だったんです。でも、危険が迫っている以上、やらなきゃいかんのです」

「これから先、旅を続けられるかどうか、僕が確かめます」

「僕が守れなかったのに勝手な話ですが、自分の身を守れないなら旅をやめた方がいいこともあるんです」

 

 どうやら難易度が上がったのかもしれない。冷や汗をかきながらユウリはボールを構えた。

 

 にこやかに微笑んだヤローがサイドスローでボールを投げる。

 

ジムリーダーの ヤローが

勝負を しかけてきた! ▼

 

「ガーディ!君の力を見せて!」

「ヒメンカ!」

 

 腰に帯を巻いたガーディが吠える。威嚇だ。ヒメンカは攻撃に力が入らなくなった。

 

「ほのおのキバ!」

「まもる!」

 

 ガーディが炎を口にヒメンカに噛みつくが、上手く守られたようだ。

 

「『たつじんのおび』ですか。ええ選択ですね」

 

 褒められた。少し嬉しい。が、気を取り直してすぐに指示を出す。狙いは弱点を突いて大ダメージだ。

 

「かえんぐるま!」

「やどりぎのタネ!」

 

 火を纏い回転しながら迫るガーディにヒメンカは慌てることなく冷静に種を植え付ける。吹き飛ぶヒメンカだが、まだ立ち上がる。ガーディはまだ無傷だ。どうやらダメージはないらしいが、まだバトルを勉強中のユウリは「なんだっけこの技?」と必死に記憶を探る。

 

「あ!じわじわダメージを与えて回復する技だ!」

「そうです。ようわかりましたね」

 

 「かえんぐるま」にぶつかってもヒメンカはなんとか耐えている。「たつじんのおび」で普段以上にダメージを食らったが、ヤローのために耐えたのだ。今日は大事なチャレンジャーだとヤローから聞いていた。自分が壁となってこの子を試さねばならない、と理解していたのだ。

 

「がんばれヒメンカ!『こうごうせい』!」

「ほのおのキバ!」

 

 ヒメンカが全身をスタジアムの上、太陽に向けて広げる。ところどころ焼けていた傷が癒えていく。「やどりぎのタネ」も相まって回復のスピードはかなり早い。回復しきられる前にトドメを刺そうと走るガーディ。

 

「いっけえええ!」

 

 ボゥ、とひときわ激しく炎がはじけ、ヒメンカは倒れた。これであと一匹。最初のジムなのでヤローの手持ちは二匹だけだ。盛り上がり所をわかっている観客の声がどんどん大きくなる。とはいえまだ見守るような暖かい声援だ。

 

「「「「オーオーオーオオオオーオーオー」」」」

 

「ウオオオ!僕たちは粘る!農業は粘り腰なんじゃ!」

 

 ワタシラガを繰り出すヤロー。完全に試すというより熱が入っている。

 

「ワタシラガァ!ダイマックスだ!根こそぎ刈り取ってやる!」

 

 ヤローがワタシラガをボールに戻し、ダイマックスバンドから力を注ぐ。あまり違和感のない大きなボールとの絵面にユウリは少し笑いそうになる。

 

「このまま押し切ろう!ガーディ、いけるね?」

「ガウ!」

 

 ガーディもボールに戻し、ダイマックスバンドのスイッチを押す。音声認証のやり方を後で聞いておこう、と思った。ジムリーダーたちが叫びながらダイマックスしているのがカッコいい。

 

 ボールが大きくなり、両手でなんとか投げる。

 

「「ダイマックス!」」

 

ズ・・・ズ・・・ズン!と空気が震え、着地で地面が揺れる。

 

「オオオオオオ!」

 

 普段は可愛らしい二匹も、大きな鳴き声でスタジアムを揺らす。それに応えるように観客の声も一層大きくなる。

 

「いっけええ!ダイバーン!!」

 

「アオオオオオオオオン!」

 

 大きくなったガーディが吠える。炎がパチパチとはじけて輝いた。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「なんというジムチャレンジャーじゃ!」

 

 汗を拭きながら嬉しそうにヤローが言う。フィールドの中心へ歩み寄り、少し話をする。

 

「ジムチャレンジにおいて、ジムリーダーに勝った証として「草バッジ」をお渡しするんだわ!」

「ありがとうございます!」

 

 ガシッと握手をして、ニッコリと笑い合う。

 

「君ならだいじょーぶだ!もっと強くなって、いつかアイツを返り討ちにできる!」

「ほんとですか!?がんばります!」

 

・・・

 

「やったねガーディ!」

「ガゥ!」

 

 尻尾を振り回し、全身で喜びを表現するガーディ。立ち直ったようだ。と、横を見ればいつの間にかボールから飛び出したメッソンがこちらを見ている。

 

「・・・」

 

「も〜〜〜可愛いな〜!!よしよし!!」

「めっそん!」

 

 メッソンもわしゃわしゃしてやる。ガーディはそれに嫉妬することなく、穏やかに見ている。どうやら二人の中は悪くないらしい。こんなに小さくて可愛い二匹ですら、仲を気にして、食べ物を用意して、平等に接しないといけない。五、六匹連れているジムリーダーやチャンピオンはパーティをどうまとめているのだろう。

 

「ルリミゾさんはカビゴンを連れているけど…」

 

 食費はリーグ委員会から出ているのだろうか。あの可愛いチラチーノは手がかからなさそうだな、などと想像する。バイウールーやイエッサンは大人しそうだし、ウォーグルは戦い方からして利口だ。

 

「カビゴンの食費ぐらいかな?」

 

 ソニアとポケモン研究所から支援を受けているとはいえ、カビゴンのように大食いなポケモンは避けようと思うユウリだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 一方その頃、キルクスジムでは。

 

「ぬわああああああ!!離れなさい!!」

 

 もごもごと、顔面にチラチーノを貼り付けたまま暴れるルリミゾ。さらさらしたチラチーノは掴みにくく、巧みにルリミゾの手を躱し抱きついている。

 

「どんな悲鳴だよ…」

「見てないで剥がしなさいよ!!」

 

 わかったから暴れるな、と近付いてチラチーノを後ろから捕まえるノマ。

 

「最近ますますやんちゃだな」

「アンタをボコボコにしてからずっとこの調子よ」

 

 そうかい、と適当に返す。ポケモンに懐かれる分には鬱陶しくないのか、チラチーノを叱るわけでもなくニコニコしている。不気味だ。

 

「何よ」

「なんだその笑顔」

「懐かれたら誰だって嬉しいわよ」

 

 気まぐれな野蛮人だと思っていただけに、驚いた。いつもこんな感じならいいのに。

 

「今なんか失礼なこと思われた気がする」

「き、気のせいだろ」

 

 やはり野蛮人だ。

 

「誰だって色んな面があるわ。戦いを好むのも、ポケモンを愛でるのも、ファンと会って喜ぶのも、短気なのも、全部含めてあたし。完全な善人、完全な悪人なんていないのと同じよ」

 

 妙に説得力のある言葉に、何も返せずただ黙ってキュウコンを撫でていた。

 

 

 

 

 

 

 




最初のジムなのでめちゃくちゃ短いですね。久し振りのちゃんとしたバトルです。

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今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。

次回はメジャージムリーグです。少し時間が開くかもしれません。

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