ギンガ団員、ガラルにて   作:Ly

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18-vsポプラ メジャージムリーグ②

「カビゴン!」

「クチート」

 

 カキタの予言通り、大きな音を立てながら着地するカビゴン。対するクチートは後ろ顎を使って威嚇している。少しだけカビゴンが怯えるも、指示に従い攻撃に出る。

 

「カビゴン、ここで地面を激しく揺らします!『じしん』です!しかしクチート、大きく飛び上がった!」

「動きの遅いカビゴンの弱点ですねー。有利な技を持っていても、先に動いて当てるのが難しい。相手の攻撃を待ってからでないと」

 

 空中で攻撃の姿勢を取るクチートにポプラが指示を飛ばす。対策は万全。この試合は引退の見えてきたポプラにとって残り少ない試合のひとつだ。目の前の相手がおそらく上位に相当するであろうことも見抜いていた。

 

「グロウパンチ!」

 

 故に、ゼンリョク。

 

「決まりましたが・・・ダメージをあまり受けていませんカビゴン!少し拍子抜けといったところでしょうか」

「いや、これで合っています。『グロウパンチ』は威力こそ低いですが、同時に攻撃力を高める技です。今の一回でクチートの力がかなり高まりましたよ」

「では一発で倒すのではなく時間をかけてでも確実に倒すと?」

「そのようですね。しかしカビゴンには体力を回復するきのみがあります。どう立ち回るのか、気になりますね」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「悩みどころね・・・」

 

 カビゴンの攻撃力は下げられ、クチートの攻撃力は上がった。それでもまだ種族の差が埋まるわけではないが、常に先手を取られるぶんルリミゾが不利だ。クチートの使う「アイアンヘッド」は「エアスラッシュ」のように食らった相手をひるませることがある。もちろんトゲキッスには及ばないが、先に攻撃され続けると面倒なのは確かだ。

 

「まあいいわ、『あくび』!」

 

 指示したのは攻撃技ではなく相手を眠りに誘う技。これならば先に動いても避けられることはない。欠伸をうつされたポケモンは眠気を誘われ、いずれ眠ってしまう。即座に何かを起こす、ということはできないものの、眠ってしまったポケモンは叩きたい放題。交代するか、眠るかを強いらせるいやらしい技だ。

 

「絡め手とはやるじゃないか」

 

 既にクチートは走り出している。欠伸をしながらも勢いは衰えず、攻撃を叩き込まんと距離を詰めた。後ろ顎を振り乱し、硬質化させて叩きつける。

 

「アイアンヘッド」

 

 ドム、という音とともにダメージでカビゴンが仰け反る。効いている、とポプラは思った。あと二発ほどでカビゴンを沈められるだろうが、きのみが厄介だ。とはいえまずは「あくび」への対処が必要だ。

 

「交代だよ。マタドガス」

 

 繰り出されると同時、足元に霧が立ち込める。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「これは・・・!」

「クチートをマタドガスと交代しましたポプラ選手!ピンクの霧が立ち込めます!」

「この個体は普段ポプラ選手が使っている個体と違います!『ミストメイカー』のマタドガスだ!」

 

 興奮するカキタ。視聴者がついていけるようフォローするミタラシ。

 

「どう違うのでしょうか?何かこの試合で違いが役に立つのですか?」

「普段であれば、『ふゆう』しているマタドガスを使っているのですが、今回は特殊な個体です。あのマタドガスが出す霧の中では、麻痺、火傷、眠り、毒といった一切の状態異常にポケモンがならなくなるんです」

「ではカビゴンの『あくび』が実質無意味に・・・!ここでも奇策を用意していたポプラ選手!」

 

 しかもですよ、とカキタは続ける。

 

「もしマタドガスがカビゴンに勝てなくても、もう一度クチートを繰り出せば、また威嚇されてカビゴンはもうほとんど攻撃に力が入らなくなるでしょう。そうなればクチートは『つるぎのまい』をします。誰にも止められませんよ」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「く・・・」

 

 してやられたな、とルリミゾは思う。ジムリーグでは登録した手持ちが公開される。ポプラの手持ちの顔ぶれに変化はなかったため、今までと変わらず、同じ個体だと思わされていた。魔術師に引っ掛けられた。

 

(マタドガスを簡単に倒せるのはイエッサンね。だけど後出しじゃ柔らかいイエッサンはすぐやられちゃう。でもカビゴンの攻撃をこれ以上下げられるわけにはいかない。クチートへの交代を牽制しつつマタドガスと戦えるのは・・・)

 

「ウォーグル!」

 

 カビゴンを交代し、「まけんき」のウォーグルを繰り出す。ここで撃ってきたのが「ヘドロウェーブ」や「マジカルシャイン」だとしても耐え、反撃に出られるだろう。そう考えながら繰り出したウォーグルを目で追えば、やけに辺りが暗くなっていることに気付いた。

 

 不意に暗くなったフィールドを疑問に思い、空を見上げれば黒雲が立ち込めている。

 

 

 バリバリバリ!

 

 

 鼓膜を劈く轟音が聞こえた後、黒焦げになったウォーグルが落ちてきた。

 

「想定済みさ」

 

 雷が落ちた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「なんだその読みはぁぁあ!?ウォーグル戦闘不能!一撃です!一撃で落とされました!」

「まるで未来が見えていたかのような『かみなり』でしたね・・・しかも命中させた。今期のポプラ選手、とんでもないですね」

「後継者が見つかればいつでも引退すると公言していたポプラ選手ですが、後継者が見つかったのでしょうか。あるいは見つかる確信があるのでしょうか」

「どちらにせよ凄まじい気迫です。今年88歳とは思えないプレイングですね」

 

 ジムリーダー歴70年。その重みは伊達ではない。ミタラシ、カキタが生まれる前から。ルリミゾが生まれる前から彼女はジムリーダーなのだ。

 

「ルリミゾ選手、下を向いたまま動きません!次のポケモンを出すのに30秒以上かかってしまうと反則が取られますよ!」

「彼女にとって初めてのジムリーグ戦、それでこんな絶技を見せられれば・・・彼女が受けた衝撃は相当ですよ」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「そんな・・・」

 

 ルリミゾは、

 

「なんて素晴らしい!こんなに心が躍るバトル久しぶりよ!」

 

 歓喜していた。「これがジムリーダーの実力か」と。四天王、あるいはチャンピオンにまで迫らんとする読み、戦術だ。前シーズンでポプラの順位が六位だったのが信じられない。

 

「ますます楽しくなってきたわ!もっともっと戦いましょう!カビゴン!」

 

 再び着地する巨体。あのマタドガスに「じしん」が当たるかはわからないが「ヘビーボンバー」が抜群に効くだろうと直感していた。

 

「ヘビーボンバー!」

 

 カビゴンが飛び上がった瞬間、マタドガスが引っ込み再びクチートが現れる。クチートの「いかく」を最大限活かした戦法だ。同時にマタドガスの苦手な「ヘビーボンバー」をクチートが代わりに受けるという意味もある。

 

「関係ないわ!押し潰しなさい!」

 

 威嚇されながらもクチートの何倍もある体躯が真上から押し潰す。が、あまりダメージは通らない。肉を押しのけるように下から這い出てくるクチート。まだピンピンしている。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ルリミゾ選手、立ち直りカビゴンを繰り出しました!対するポプラ選手は交代、またしてもカビゴン対クチートの構図です!」

「最初と違うのは、もうカビゴンが『あくび』を撃てない点、そしてルリミゾ選手のウォーグルが何もすることなく落とされたという点です」

「これで手持ちの数は三対四、ポプラ選手がリードしていますね」

「ただ気になるのは、ルリミゾ選手がいつもダイマックスさせていたカビゴンを早めに繰り出し、ここまで消耗していることです。他のポケモンでダイマックスを狙っているにしても、残りはチラチーノとイエッサン。あまりダイマックスが効果的ではありません。ウォーグルでダイマックスする予定だったのが崩されてしまったのでしょうか?それともカビゴンをこのまま使うのか・・・」

 

 その持ち前の考察力でルリミゾのプランを推測するカキタ。彼の思考を追うような解説はこのキャスターコンビの人気の理由の一つだ。

 

「ただ、ポプラ選手サイドもカビゴンの突破はまだまだ難しいです。クチートで攻撃力を下げたものの、カビゴンの耐久力はフェアリータイプではなかなか突破しにくいですし、『ヘビーボンバー』や『じしん』が突き刺さっています。どう突破するのかが見どころですね」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「さあ、下準備はできたよ。出ておいで」

 

 また交代。今度こそクチートとの殴り合いが始まると踏んでいたルリミゾは意表を突かれた。

 

「ヒヒィイイン!」

「ギャロップ!そういうことね!」

 

 指示していたのは「じしん」。揺れがギャロップに襲い掛かるが、ほとんど効いていない。ガラル地方のギャロップはピンク色でフェアリー/エスパータイプだ。例にもれず弱点は鋼タイプなのでカビゴンが「ヘビーボンバー」を二回ほど当てれば沈むだろう。普通の攻撃技で殴り合えばカビゴンが絶対に勝つ。

 

「さあ、戦おうじゃないか」

 

 ルリミゾを挑発するようにしわくちゃの顔を歪めて笑うポプラ。まるで魔女だ。

 

「乗りませんよ!」

 

 が、狙いが完全に読めた。ルリミゾはカビゴンを戻し、イエッサンを繰り出す。左右にステップしながら、パカラ、パカラと小気味いい音を立てて迫るギャロップ。角をカビゴンのいた場所に向け輝かせている。

 

「つのドリル」

 

 空振り。

 

「読まれてたかい」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「まさかの『つのドリル』だぁああ!が、外しました!一撃必殺ならず!イエッサンが降り立ちます!」

「なるほど!これが狙いか!」

「カキタさん、解説をお願いします」

「今までクチートを交互に繰り出して丁寧に、丁寧にカビゴンの攻撃力を下げたり、ウォーグルを引き出したりしていましたよね。それはカビゴンとギャロップの対面を作りたかったからだったんです」

「というのはなぜ?」

 

 ミタラシもそれなりに長く実況を務めているため、今の状況を見ただけでも当然理解できる。しかしそれを説明するためにわからないふりをして解説に振るのも仕事だ。目くばせをし、互いの役割を果たす。

 

「今見た通り、『つのドリル』です。当たれば一撃でどんなポケモンでも戦闘不能にする大技ですが、リーグの統計では1/3ほどしか当てられないと出ています。カビゴンの『ヘビーボンバー』と殴り合いつつ、ギャロップが『つのドリル』を当てられるまで耐えるためには、クチートの『いかく』でカビゴンの攻撃を下げる必要があったんですね」

「しかしルリミゾ選手はイエッサンと交代しましたよ、ルリミゾ選手はそれを読んでいたと?」

「信じられない予測判断ですが、仰る通りだと思います。ポプラ選手、『ミストメイカー』のマタドガスに続いて、あのギャロップが『つのドリル』を公式戦で使ったのは初めてですよ。ルリミゾ選手、ギャロップが『つのドリル』を覚えることをよく知識として知っていましたね。そしてそれを使ってくると今までのポプラ選手のプレイングから推理した。これはとんでもない試合ですよ。」

 

 今期のリーグは荒れるかもしれません、と締めくくりフィールドに目をやる。満面の笑みのルリミゾと苦々しい顔をしたポプラ。中堅や下位になるだろうと予想されていた二人だったが、どうやらその予想は外れそうだ。

 




vsポプラ、2/3です。やっぱり3話くらいになりそうです。もしかしたら4話になるかもしれませんね。

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