ギンガ団員、ガラルにて   作:レイラ(Layla)

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23-バウタウンでお食事(おかわり)

 

 レストラン「防波堤」に来たルリミゾは、店の給仕のイエッサンを撫でながら困惑していた。

 

「ル、ルリミゾさん、どうも・・・」

 

 リーグ戦勝利おめでとうございます、そう話しかけられた。ドアを開けたら目の前にユウリがいたのだ。ルリナに快勝して気分よく海鮮を味わうつもりだった。まさかまた出会うなんて。

 

「一緒に食べますか?前はあまり話せませんでしたし」

「いいんですか!?」

「はい」

 

 よくない。だが誘わないわけにもいかない。ソニアと良好な関係を維持するためにも、ソニアと友人であるユウリには丁寧に接さなければならない。それと少しだけ、自分に強くなる方法を求めた少女が気になっていた。

 

・・・

 

「へえ、旅立ちの日はそんな感じでメッソンを選んだんですね」

「そうなんです。その後まどろみの森で――あっ、あんまり言わない方がいいんだった・・・」

「まどろみの森がどうかしたんですか?」

(ルリミゾさんなら・・・大丈夫かな。いい人だし)

「まどろみの森で、不思議なポケモンと出会ったんです」

 

 内緒ですよ、と付け足すユウリ。どうやら海鮮料理を味わうことを犠牲に、何かを得られるようにこの世はできているらしい。毎日通いつめよう、とルリミゾは思った。

 

「攻撃が当たらない・・・幻影だったんですかね」

「だと思います。気付いたら私もホップも倒れてたんです」

「森の中でですか!?危ないですね・・・」

 

 そもそも森の中へ戦闘経験のない未熟なポケモンと駆け出しのトレーナーで入ること自体が自殺行為だ。ありえないな、と思うルリミゾ。面白い情報が得られたが、それとこの無鉄砲なジムチャレンジャーへのお説教は別だ。

 

「いいですか、ワイルドエリアでも同じです。自分の力量を超えた物事には絶対に首を突っ込まないこと」

 

 死にますよ、あなたもメッソンも。そう脅せば、効いたのか顔を青くしている。

 

「ごめんなさい、気を付けます・・・」

「身に染みたなら大丈夫です。食事中に暗い思いをさせて謝るのはむしろあたしの方ですよ」

(今の怖さ、迫力どこかで・・・)

 

 料理を食べるルリミゾを見つめるユウリだが、どうにも思い出せない。

 

「エンジンシティには向かわないんですか?」

「ルリミゾさんの凄い試合を観て、私も頑張ろう、って思って向かおうとしたんです。でももう一度食べてから行きたくて・・・」

「あはは、あたしと同じですね」

 

 顔を赤くするユウリ。

 

「じゃあ、明日にでもエンジンシティに?」

「はい、カブさんに挑戦しようと思ってます」

「頑張ってくださいね、カブさんで躓く人も多いらしいですから」

 

 相談なら乗りますよ、と伝えれば、ぱあっと目を輝かせて嬉しそうにしている。心の支えになれたならそれでいい。

 

「します!躓かなくてもします!」

 

 それは困るなあ、と笑った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 店を出て、別れの挨拶をするルリミゾ。

 

「それでは、次はキルクスで会いましょう。また会う気もしますけどね」

 

 冗談めかして言う。意図せずこれほど縁があるのは珍しい。きっとこれからも会うことになるのだろう。

 

「楽しかったです!カブさん倒して会いに行きます!」

「あ、そうだ。これ昨日市場で買ったんですけど、丁度いいですしあげます」

 

 さざなみの御香を渡す。丁度メッソンを連れているし、いいプレゼントになる。

 

「メッソンに持たせれば、水タイプの技が調子良く撃てるみたいですよ」

「いいんですか!?」

 

 ありがとうございます!とまた少し耳が痛くなるくらいの声で喜んでいる。ジムトレーナーへのお土産で買ったものだったが、ノマの分を減らせば全員に行き渡るので大丈夫だろう。

 

(あんまり一人に入れ込むのはよくないんだけどね)

 

 少しだけ、襲撃に巻き込んだことへの罪悪感があった。

 

「さよなら~!」

「ええ、さよなら」

 

 ホテル「スボミーイン」へと向かうユウリと、自分で予約した宿へと向かうルリミゾ。どちらの足取りも軽やかだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「おみやげよ!」

 

 ジムトレーナーたちに御香を配っていく。ノマの前で御香がなくなる。

 

「おい、俺は?」

「アンタは第二鉱山で拾ったなんか熱い石よ」

「・・・そうか」

 

 手渡せば、思っていたよりも熱かったらしく「熱ッ!?」と落としそうになっている。赤い水晶のようなものを含んだ石だ。

 

「あはは!落とさないでよ!あたしのお土産なんだからね!」

 

 心にもないことを言う。

 

「それ、『あついいわ』じゃないですか?」

「「え?」」

 

 ジムトレーナーが心当たりのあるアイテムらしい。二人して間抜けな声を出してしまった。

 

「天気を晴れにするポケモンが持っていると、晴れの時間が長くなるアイテムですよそれ!」

「え!?そんな良いアイテムなのこれ!?」

「やっぱり一番働いてるからな~ご褒美もしっかりしてるな!流石はジムリーダー代理のルリミゾ様だな」

 

 厭味ったらしくノマが言う。ただ単に「熱ッ!?」と言わせたいがためだけに持って帰って来たのに、想定外に良い贈り物となってしまって気まずい。返せと言う訳にもいかないので、バトルで発散しよう、と決めたルリミゾ。

 

「じゃあ早速試しにバトルしましょう!フィールドに出なさい!」

「おいそれ完全に仕返しだろ!放せ!あああああああ!」

 




日常回です。私も戦闘狂がうつったのか、バトル以外の話を書くのが難しくなってきました。明日にでも病院に行く予定です。

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