ギンガ団員、ガラルにて   作:レイラ(Layla)

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24-前夜

 

 ジムにて練習後、雑談をするルリミゾとノマ。「あついいわ」はノマの戦術にかなりの変化をもたらしたが、未だにルリミゾに土をつけられずにいる。ルリミゾはジムトレーナーでは飽き足らずワイルドエリアにまで足を運ぶ始末だ。

 

「しっかしワイルドエリアでの特訓ってどんなことしてるんだ?」

 

 ワイルドエリアで鍛えに行くトレーナーは多いが、試合形式とは異なり野生との対決だ。あまり練習にならないというトレーナーも多い。

 

「最近物騒だから、襲い掛かって来る野生のポケモン相手に野外戦の訓練よ」

「野外戦?」

「バトルじゃなくてルール無用の戦いよ。トレーナーだって狙われかねないんだから」

 

 この前もサイトウがやられてたでしょ、と補足すれば顔をしかめるノマ。

 

「バトルだけじゃなくてそんな戦いも想定しなきゃいけねえのか。ジムリーダーは大変だな」

「アンタも襲われたらどうすんのよ。私は守らないわよ」

「ワイルドエリア行くか~!」

 

 ジムトレーナーも警備に駆り出されるため、実際に鍛えておくことに損はない。ルリミゾはジムトレーナーとの訓練のメニューに入れておこうと決めた。

 

「明日、ついにキバナとだな」

「ええ。アイツ今期は砂嵐で戦うみたいよ」

「直接対決を勝たなきゃ一位は見えないな。頑張れよ」

「ま、見てなさいよ。先に倒し方をレクチャーしてあげる」

 

 そう自信満々に告げてから片付けを始める。明日の為に今日は午前で切り上げて家へ帰る。三戦目にしてやっとホームでの試合だ。ルリミゾは観客の声援が耳に入らないタイプなのであまり気にしないが、それでも自分のファンが多いことは嬉しかった。とはいえキバナはファンが多い。キルクスにも一定数いるだろう。

 

「俺たちは――お前に夢見てんだ。勝ってくれ」

「言われなくともあたしは勝つわ」

 

 任せなさい、そう言ってジムから出た。ジムトレーナーたちと十分に特訓し、天候を変えるパーティの対策も考えてある。飛び出てきたダルマッカを蹴らないように回避し、転ばないようにバランスをとる。滑ってしまうとなんだか縁起が悪い気がしたのだ。

 

「明日、楽しみね」

 

 腰のベルトに結んであるボールたちが揺れた気がした。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ボッコボコにしてナックルジムを奪い取るわよ!」

「ぐふ!」

 

 大きなポケモンたちを除いてほとんどのポケモンが出ているため、家がとても狭く感じる。

 

「提出されているポケモンは、と・・・」

 

 ギガイアス、こうあつポケモン。砂嵐を引き起こし、キバナが得意な土俵を作り出す。攻撃力、防御力ともにとても高く、砂嵐下では特殊防御も上がるため突破するのはなかなか面倒だろう。相手のポケモンに有効打がない場合、「ステルスロック」を展開することもある。交代戦のためではなく、後続のドラゴンポケモンの強さをより引き立てるための土台作りだ。ただでさえ種族として強力なドラゴンポケモン相手に体力を削られた状態で向かい合わねばならないのはなかなかに厄介だ。

 

 フライゴン、せいれいポケモン。砂嵐のなかでもダメージを負わず、活躍できるポケモンだ。素早く、そして攻撃力が高い。ただしドラゴンポケモンの中では一歩劣る性能だろう。それでも上手くキバナと連携して戦ってくるのが強いのだが。

 

 ヌメルゴン、ドラゴンポケモン。ただただ特殊攻撃に強い。イエッサンに当てられることだけは避けなければならない。草タイプの技を食べて攻撃力を上げるという特性だが、あまり草技を撃つ場面がないので想定する必要はないだろう。

 

 ジュラルドン、ごうきんポケモン。防御力があり、そして特殊攻撃がとても強い。「りゅうせいぐん」や「ラスターカノン」といった技を持ち、生半可なポケモンでは一撃で葬られてしまうキバナの代名詞だ。キョダイマックスも可能なので注意すべきだろう。

 

 ジャラランガ、うろこポケモン。今回から投入された最も警戒すべきポケモン。格闘技が得意なため最優先で潰さなければならない。フェアリータイプや飛行タイプの技に弱いため、お互い弱点の突きあいになるだろう。怖いのはバイウールーを起点に「はらだいこ」や「ソウルビート」といった積み技を積まれることだ。

 

「だいたいがっしりしたポケモンばっかりね」

 

 フライゴン以外は速いポケモンがいない。その分耐久力があるため殴り合いになるだろう。そうなればチラチーノやイエッサンがかなり苦しい。適切に有利なポケモンに繰り出し、タイプ相性や長所の押し付けを活かせる指示を出さないと種族としての戦闘能力の格差は埋められない。

 

「ぐふー?」

 

 自分の出番はあるのか、とパソコンを触っているルリミゾの手元に飛んでくるチラチーノ。

 

「前回は一発でやられたものね、見せ場があるといいわね。残念ながら先発はもう決めているの。()()()()

「ぐふぐふ!」

 

 尻尾でぱさぱさと抗議されるが、勝利が目標だから仕方ない。画面も見えない。

 

「こら!ちょっと・・・ああもう!」

 

 こうなると、好みのきのみを渡すまで落ち着かない。チイラの実を冷蔵庫から取り出す。辛味と甘味の何とも言えないバランスの味だ。ルリミゾはあまり好きではないが、チラチーノがよく食べるため用意していた。明日の試合前にでも、もう一つあげようと思っている。控室で精神統一してるときに顔に張り付かれたらたまったものではない。

 

「ぐふー!!」

 

 嬉しそうに齧りつくチラチーノ。少しだけ、帰れなくてもいいかな、なんて思ってしまう。ジムリーダーとして慕われ(?)、ジムリーダー達と全力でバトルができる。

 

「ああ、でも、この気持ち悪さは」

 

 孤独は。きっと帰るまで消えないのだろう。自分だけが異物であるという自覚、違和感。どれだけ戦っても、どれだけ有象無象を蹴散らしても、満たされない。

 

「誰か、この気持ちを――」

 

 そっと近付いてくるユクシー、ポリゴンZ、ドータクン、クロバット。抱き合って分かち合う。

 

「ひとりなら、狂ってたわね」

 

 ポケモンたちが一緒にいるから耐えられる。

 

「ありがとう。チラチーノたちも、ポリゴンZたちも」

 

 明日こそが本当の戦いだ。

 




キバナのパーティのネタバレです。どう戦うんだろうな、とか思いながら次話をお待ちください。まだ頭の中で戦っているので、少し時間がかかるかもしれません。チイラの実は別に試合中発動しないのでご安心を。
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