ギンガ団員、ガラルにて   作:Ly

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~♪戦闘!アクロマ~
 
 
 


37-vs■■■■ 感性vs理性①

 

 ワイルドエリア、野生の世界は電灯などなく、ただ月と星の光だけが薄く地上を照らしている。少し闇に溶けたような距離で、奇抜な髪形の男が語る。

 

「申し遅れましたね。私の名前はアクロマ!世界を旅して『ポケモンの潜在能力はいかにして引き出されるか』を研究しています!」

 

 離れていて表情は見えないが、あの無垢な瞳が知識欲に輝いていることは容易に想像できた。これはバトル前の挨拶のつもりなのだろう。礼儀として、ルリミゾもボールに手をかけながら自らを語る。

 

「ギンガ団幹部、ロベリア。帰るための方法を探しているわ」

 

 果てしなく長い帰路の手掛かりは逃せない。倫理観を無視できるこの男ぐらいしか、自由に動いて協力してくれる人間はいないだろう。そう考えたルリミゾの髪が風で揺れる。遠くで鳥ポケモン達が飛び立った。バサバサという音の合間、どちらともなく場の雰囲気が戦闘に変わった。

 

理科系の男の アクロマが

勝負を しかけてきた! ▼

 

 ガラルのトレーナーのように熱意のある投げ方はしない。アクロマはただ下手(したて)から軽くボールを投げた。

 

 ルリミゾも合わせて力を抜いてボールを投げた。

 

「ぐふ!」

 

 本人の希望によって一番手はチラチーノ。対してアクロマが繰り出したのはレアコイル。

 

(あいつの言ってる内容からして何かしらの道具……まあ進化の輝石ぐらいは持ってるでしょうね)

 

 進化の輝石は、ポケモンの進化するエネルギーを全て溜めこむ石。進化しない代わりに、その種としての力を全て防御力に変換する。チラチーノならどう対処すればいいか理解しているはずだ。

 

「任せるわ!好きにしなさい」

 

「ポケモンに任せるのですね。『エレキネット』!」

 

 レアコイルが電気の網を放った先、既にチラチーノの姿はなく、盛り上がった地面があるだけ。「穴を掘る」だ。即座にそれを察したアクロマは淡々と指示を出す。

 

「出てきたところに『放電』しなさい!」

 

 地面タイプの技である「穴を掘る」をまともに食らってしまえば、いくら頑丈なレアコイルとはいえ大ダメージだ。素早いがリーチの短いチラチーノへの解答は自分を中心とした広範囲攻撃。

 

「ロックブラスト」

 

 しかし、チラチーノが飛び出したのは少し離れた背後。ロベリアの指示はまるで常にチラチーノの位置を把握していたかのよう。硬いレアコイルの体に岩石がぶつかり、ガンガンと音が鳴る。効果はいまひとつだが、()()()()()()()()()()

 

「右後ろ45度、『チャージビーム』」

 

 レアコイルからチラチーノは離れていて「放電」するには負担が大きい。無理矢理範囲を広げて「放電」で攻撃することもできたが、あえてしなかった。一匹目相手に全力を使い果たしてしまえば、後続に控えているかもしれない面倒なエースのポケモンに積みを許してしまうかもしれないから。

 

 耐久力の高まっているレアコイルであれば、「チャージビーム」で能力を上げるほど得になる。またチラチーノの位置さえ割れていれば近付けさせない牽制ができる。

 

 しかし、レアコイル動けず。地面にごとりと落ちて体を揺らすことしかできない。

 

「詰めなさい!」

 

 それを確認するよりも早く、まるでレアコイルが動けないのを予知していたかのように指示を飛ばすロベリア。

 

「レアコイル!?何が……」

 

 と、チラチーノの頭に着けられた道具を見て理由を察した。夜闇で遠く、繰り出した時には確認できていなかった。

 

「『王者の印』。あたしにピッタリな名前ね」

 

「どうして怯むことを?確実ではないでしょう」

 

「だって、怯みそうだったじゃない?わからないかしら?」

 

 勘ではなく直感。当然本人以外に伝わるはずもないが、ロベリアは総合的な経験から判断していた。今まで怯んだ敵、怯まなかった敵、そしてチラチーノのコンディション、本人に自覚がなくとも、それらを「流れ」として把握していた。

 

「動けませんか、仕方ないですね」

 

 レアコイルは再び距離を取るために動こうとするが、わずかしか体を動かすことができない。そうして一瞬、ゴン!と鈍い音が鳴った。チラチーノが怯んでいるレアコイルに「はたき落とす」を使った音だ。

 

「やっぱり持ってたわね」

 

 地面に転がったのはピンク色で掌大ほどの石。進化の輝石だ。これを落としてしまえば、もうレアコイルに異常な硬さはない。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 面倒な相手だ、とアクロマは思った。リスク承知で、経験を基に異様な領域まで踏み込んだ判断をしてくる。「もしも裏目に出たら……」というような危険な選択肢を「アドバンテージが取れる!」と突っ込んでくる。

 

(こういう動きに対してはいかに咎めるかが大切ですね)

 

 無理矢理突っ込んでくるのを上手くいなせれば、相手は自滅する。問題はその勢いを殺し切れるかどうかだ。

 

「ロックオン」

 

 あちこち動き回るチラチーノは想像以上に厄介だった。スピードに加えて指示なしでの自由な動きとそれをサポートする指示。多少手間をかけてでも削る必要がある。

 

「距離を取って『リフレクター』、詰めさせないように」

 

 物理に対して強くなる壁を張らせた。チラチーノもレアコイルを追いながら「光の壁」を張ったようだ。

 

(長引くほどこちらの被弾が増える。そうすれば怯む可能性も高まって……相手の思う壺ですね)

 

「一撃で決めましょう」

 

 声を合図に、レアコイルが下がりながらエネルギーを集める。チラチーノは技を撃たせまいと近付くが、()()()()()()()()()()()。チラチーノが辿り着いて攻撃をするよりも速く。命中率は五分五分。一般的にはロマン技、とも呼ばれるそれをアクロマは実戦で用いていた。「ロックオン」してしまえば必中。気付いたロベリアが叫ぶがもう遅い。

 

「待って!『守る』!」

 

 チラチーノが反応するよりも先に。

 

「電磁砲」

 

 極太の雷が放たれた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 吹き飛ぶチラチーノと、冷静に追撃の指示を出すアクロマを交互に見て、ロベリアは笑った。

 

「派手なことするじゃない」

 

 チラチーノは全身がビクビクと震え、痙攣している。思う通りに動かせないもどかしさから、苛立ちを込めてレアコイルを睨みつけている。麻痺だ。

 

「光の壁がなかったらヤバかったわね」

 

「ぐふ」

 

 返事も短く、苛立っているのがわかる。やってくれたな、とでも思っているのだろうか。

 

「『投げつける』、そこから『蜻蛉返り』」

 

 近くで小さく指示を出した。十分に役目を果たしてくれた。動きが鈍くなったとはいえ、道具を『投げつける』動作に影響が出るわけではない。振りかぶった手に持つのは王者の印。

 

「いけ!」

 

 ゴチン!と金属同士が音を響かせる。再び技を放とうとしていたレアコイルがゴトッと落ちた。動けなくなったレアコイルへと加速しながら駆けていくチラチーノ。

 

「ぐふ!」

 

 仕返しとばかりに強烈な蹴りを叩き込み、そのままボールへと戻っていく。

 

「相性不利だったけど……本当に良い仕事したわね」

 

 チラチーノは一人で進化の輝石をはたき落とし、「光の壁」まで張ってくれた。そして麻痺しているにもかかわらず指示を完遂し、手元に帰って来た。ボールを指でピン、と弾いて褒めた。バトルが大好きな性格だけあって、こなせる仕事量が本当に多い。大ダメージこそ与えられなかったものの、レアコイルはもう機能停止したと言っても差し支えない。

 

「クロバット!」

 

 交代先はギンガ団としての奇襲係、クロバット。バサバサ、と小さく羽音が聞こえた後、夜の闇に紛れて姿が消えた。羽ばたく音すらも聞こえなくなった。夜の闇はクロバットが最も力を発揮する状況である。タイプ相性を超えた蹂躙が始まる。

 




お待たせしました。
王者の印を頭に着けたチラチーノ、想像すると結構可愛いですよね。
アクロマは頭がいいですが、私の頭は悪いので何度も書き直して頭を良くしようと試みています。頭のいいキャラはアホには書けないのでつらいところですね。
肩書が理科系の男なのは、ルリミゾ視点だからです。

評価・感想いつもありがとうございます。本当に励みになります。
誤字報告助かります。
遅れてしまってすみません、ストックもあるのでこの頭いいゾーンをなんとか抜けるよう頑張ります。
読んでくださりありがとうございました。

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