普段からチマチマと書いて書いて書きまくるからとても非効率……。
~お昼~
前回から一日経ったお昼。
イバラキは後藤さんと一緒に庭にあるベンチで弁当を食べていた。
「…それにしても、今日皆なんかおかしくなかったか?俺に冷たいしよ」
「……(それはあんたの行動が原因だよ)」
昨日、大人気アイドル、元【ツヴァイウィング】の一人、【天羽奏】の名前を本人の前で全力で間違えた(わざとではない)ことによって周りから浮いてしまったイバラキ。
実質同じ職場で話せているのは後藤さんだけである。
「はぁ~~。前の職場では結構いろんな人と話せたのに。やっぱり人それぞれってことなのかね?」
「……(いやお前のあれさえなければ普通に接せただろ)」
心の中で次々にツッコんでいく後藤さん。
それに、後藤さんも今日は寝不足である。
理由は簡単。
奏に自分は名前をすぐに憶えてもらってないのに対し、後藤さんは苗字で読んでもらっていることに対しても奏の嫉妬である。
『どうすればあいつに名前を憶えてもらえるのか?』
という内容で話されまくった結果、寝不足になったのだ。
「なぁなぁ後藤さん。あんたはどう思うよ?」
「そうだな。まずは人の名前を覚えることから始めようか」
「いや、覚えてるぞ?」
「いや、昨日本人の前で堂々と間違ったお前が何を言ってるんだ」
「あぁ。あの赤髪の女?確か……【エクスカリバー】だったっけ?」
「それは勝利を約束した剣。もう人の名前ですらねぇじゃねか」
「……俺は基本生活に必要なこと以外は覚えないからな……」
この時後藤は思った。『それで奏さんの名前間違えまくったのか……だとしてもあれはありえないだろ』と。
イバラキは人の名前を聞いたとしても耳から耳へ、要するに聞き流ししてしまうために頭に入らない。
「(俺の名前を憶えられているのは今の生活に必要だからってことか?今度奏さんに教えよう)」
また同じ質問を聞かれたときにこれを言えばいいなと思う後藤さんであった。
「さて、そろそろ飯も終わろうぜ」
「そうだな」
最初は緊張して先輩という設定の立場なのに敬語を使ってしまっていたが、今では完全に打ち解けてお互い砕けた話し方になっている。
「ん?誰か走ってくるぞ?」
「え?……あ」
後藤とイバラキが目にした人物。
それは……
「昨日ぶりだなイバラキッ!!」
「お久しぶりですね」
元・ツヴァイウィングの二人、天羽奏と【風鳴翼】だった。
翼はイバラキを敵意全開の眼差しで見ている。
「おぉ。えっと、確か。あれだよ。えっと………【ハイパー サンダー】」
「天羽奏ッッ!!!いい加減覚えろッ!!」
「……奏から聞いたけど、本当に失礼な人物なのね」
「なんだよ青髪。初対面のクセに失礼な人物呼ばわりしやがって」
「「……はっ?」」
「………………」
初対面と言われてポカンとなる二人。奏はあのライブの時以来昨日しか会っていないが、翼はイバラキと何度も会っている。ノイズの群れをイバラキが一撃で倒した後、イバラキが帰ろうとすると度々現れる彼女。
翼はイバラキを無理やり連れて行こうとするが毎度のごとく一撃でノックアウト。
遥か彼方に飛ばされ、二課の人たちがわざわざ回収し、そして(無駄な)イバラキとの闘いの穴を見つける努力をしている。
『努力は裏切らない』。そんな言葉があるが、イバラキに対してそんな言葉は完全に無意味なのである。
そして後藤さんだが、『こうなるんじゃね?』とある程度予測をしていたためにあまり驚いていなかった。
「しょ、初対面だと……ッ!?ふ、ふざけるなッ!!もう何度も会っているではないかッ!!」
「お、落ち着け翼ッ!」
言われたことと怒り、大声を上げる翼。
そしてそれを止める奏。
「奏。こういうのはね、一度しっかりと言い聞かせなくてはならないの。だから離してッ!」
「やめろ翼ッ!!それたぶんさらに心の傷が広がるッ!!」
「……ところでさ、お前誰なの?」
「……風鳴翼よ」
「……(風鳴……?どっかで聞いたことあるような……ま、いっか)。おっけ、【風鳴 ツバメ】ね」
「翼だッ!!」
名前を間違えられたことにより怒る翼。
そして、奏と後藤さん。二人は違う意味で驚愕している。
「イ、イバラキが翼さんの苗字を間違えずに言った…ッ!?」
「な、なんでだ…!?アタシの時は苗字すらありえないほど間違えられたのにッ!?しかもほとんど原型をとどめている!?」
前に奏はほとんど原型を留めない形で名前を間違えられた。
なのに相方の翼はほとんど原型を留めて間違えられていた。
名前を間違える事態失礼なことなのだが、奏にとって原型を留めた間違いは羨ましくてしかたなかった。
「いや奏、後藤さん。普通はもし間違えていたとしても原型を留めるものでしょう?」
「いやいや、こいつの名前の間違えっぷりはもはやふざけてるよ!」
「ふざけてなんかないぞ。失礼だな、【オーケストラ カッター】」
「天羽奏だぁああああああああああ!!!!」
奏、ついにキレた。イバラキを殴ろうと剣幕な表情でイバラキに迫る。
そしてそれを止める翼。
今の奏の顔は、元アイドルとして、いや、女の子として出していけない表情だろう。
「離せ翼ッ!!こいつは一発ぶん殴らないと気が済まないッ!」
「駄目奏ッ!確かに二人の言い分は今ので理解できたけど、さすがに問題起こしちゃダメッ!!」
「おい【風鳴 トンボ】。こいつ何に怒ってるんだ?」
「奏、一緒にヤりましょう」
「そうだな。まずはどうするか……」
次に自分の名前を間違えられた翼は奏に参戦する。
「まぁまぁ二人とも落ち着いて……」
「そうだぞ。いい年した女の子がそんな顔しちゃ。後藤さんの言う通りだ」
「「「あんた(あなた)が原因だろ(よ)ッッ!!」」」
これにはさすがに三人ともツッコむ。
ちなみに、これでもイバラキに悪気はない。彼はただ先ほど本人が言ったように生活に必要ないことは覚えないのだ。
名前を言われても生活に必要ないと判断すれば即刻耳から耳へと流れていく。
「……ところで、さっきそこの青髪が後藤さんの名前呼んでたけど、三人とも面識あんの?」
「「「ッ!!」」」
ここで三人は“しまった”、そう思った。
後藤さんの任務はイバラキの監視および接触。
三人とも二課の存在であり国がもはや見逃すことができない存在となっているイバラキを監視しているのだ。
ここでちゃんとした言い訳を言わなければイバラキに不信感を与えてしまう。
そんな心配をしていたのだが…
「ま、いっか」
「「「((´▽`) ホッ)」」」
本人が特に気にしなかったため、その必要はなかった。
「さて、そろそろ仕事始めようぜ」
「あっ、イバラキ。今日仕事終わったら教師用の中央塔に来てくれ」
「えっ、なんで?俺関係なくね?」
「いや、ちょっと用があるからよ」
「………いいぜ。俺特に用ないからよ。それじゃ、俺は先に持ち場についてるからな」
そうしてイバラキはその場から去っていった。
「「「ふうっ~~~~ッ!!」」」
そして、三人は緊張の息が途切れ、安堵の声を出した。
「いやぁ…なんとか成功したな」
「まさか、こんなに簡単に行くとは…」
「まぁ結果オーライってやつですかね?」
「旦那から言われたことはやったから、大丈夫だろ」
――――――――――――――――――――――――――
~前日~
『そろそろ、イバラキ君をここに連れてこようと思うんだ』
『そうね、ただの観察じゃもう得られる情報はないしね…』
『と、いうことだ。翼、奏、後藤くん。三人で協力して、イバラキ君をここに明日当たりに連れてきてくれ。特に後藤君、頼んだぞ』
『は、はい………』
―――――――――――――――――――――――――――
と、いうことがあったのだ。
後は後藤さん。頼んだぜ」
「俺はただエレベーターに乗せるだけなんですけど」
「それでも、今までずっとあの男と信頼関係を築けていたのはとてもいいところだと思います」
「…そうですかね。ありがとうございます。それにもうすぐでチャイム鳴りますよ?」
「あっ、そうだった!それじゃあ、またあとでなッ!」
「失礼します」
そうして二人もその場から立ち去って行った。
「さて……あとは簡単だとはいえ、すごく緊張するな…」
~夜~
イバラキはリディアンの正門まで来ていた。
「…後藤さん。どこいった…?」
イバラキはついて早々当たりを見渡し後藤を見つけようとする。
「よぉ、待たせたな」
「いや、今来たところ……って、なんだその恰好?」
後藤さんの声が聞こえ、イバラキが振り向くとそこには黒サングラスに黒スーツの後藤がいた。
「あぁ、これはちょっとした諸事情だ。ささ、ついてきてくれ」
後藤さんについていくイバラキ。そして教師用の中央塔に着く。
後藤さんは何やら通信機のようなものをかざすと、扉が開いた。
「…なにこれ?」
「これはエレベーターだ」
「……他の階にエレベーターなんてあったっけ?」
イバラキは仕事上、室内も掃除をすることがある。そして、場所はもちろん廊下などである。
一階から上にエレベーターなどなかったため、疑問に思うのは当然だ。
「これは職員しか使わないからな。お前が知らなくて当然だ」
「じゃあなんで後藤さんは知ってんだよ?」
「……行けば分かる」
そして、二人でエレベーターに乗った。
その瞬間、エレベーターが急降下した。
「うぉッ…(やっぱこれは慣れないな…こいつは?)」
「…なんか楽しいな、これ」
「(まぁ、なんとなくこうなることは予想できたが……)」
急降下する絶叫系マシン並みの速さのエレベーターを楽しいと言っている時点で胆力もヤバかった。
そして、チンッ、と音で着いたことを知らせた。
「…この扉の先、なんなんだ?」
「…開くから待ってろよ」
そして、扉が開くと同時に……
―パンッ!!
―パンッ!!
「……?」
急に紙ふぶきがまった。
そこには、たくさんのごちそうとそれぞれ一つのクラッカーを持っている大人たち。
そして赤い服を着た大男がこう叫んだ。
「ようこそッ!!特異災害起動部二課へッ!!!」
「……あっ!!!」
そして、その大男を見た瞬間にイバラキは大声を上げる。
「お前は………あの時のおばちゃんたちの刺客ッ!!!」
『『『『『はっ??』』』』』