ぎんたまぐらし!   作:ユフたんマン

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まだお

桂は驚愕していた。

 

「エ、エリザベスがいっぱいぃぃぃいいい!!?」

 

 

 

「は!?」

 

桂はチュンチュンと鳴く小鳥の声を聞きながら目を覚ます。昨日胡桃と合流してからなんやかんやあり、現在制圧している三階にある用務員室で寝ていた。

 

「ふむ…腹が減った…」

 

桂は起き上がり、カセットコンロの上にヤカンを置き火をつける。

少し時間が経つと中に入っていた水は沸騰し、ヤカンは白い息を吐き出す。それを確認した桂はきつねそばと書かれたカップ麺に熱湯を注ぎ込み、蓋を閉じその上に箸を乗せ重しにし、タイマーをセットし3分待つ。

 

 

 

 

 

3分後、桂は蓋をあけ、割り箸を二つに割り、ふうふうと息を当ててからズルズルと啜る。

カップの中にあった麺を全部食べ切りゴミ袋にカップを捨て、割り箸を水道で洗い箸立てに刺す。

 

「では行くか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

徹夜で生存者の先生、佐倉 慈ことめぐねえと交代で見回りをしていた少女、胡桃は明け方になり、そろそろみんなが寝ている教室へ戻ろうか…というところで窓から人影が見えた。見間違えかと思い目を擦りもう一度目を見開く。

校庭には一人の男性が大きな買い物袋を持ちゆっくりと歩いている姿が…

 

「何やってんだヅラ先生!!?」

 

「ヅラじゃない、桂だ!!少しばかりゴッド・フィーバーに用があってな!!」

 

大きな声で叫ぶ桂に胡桃はヒヤヒヤしながら周りを見る。しかしコゲゾンはどこにもいない。いや、いるのだろうが姿が見えない。一体何故なのだろうか…

 

「ゴッド・フィーバーってあの学校から100mぐらいのとこにあるパチンコ屋だったよな…」

 

近場で今、コゲゾンが見当たらないとはいっても危険なことには変わりない。しかも桂は近所のスーパーのタイムセールに行くかのような軽装で袋と槍しか持っていない。

今すぐ胡桃は桂を追って連れ戻したいところだが、自分が行ってしまうとこの学校にいる生存者たちが危険に晒されてしまう。

 

「一体どうしたら…」

 

その時、トントンッと肩を叩かれ振り返るとそこにはオバQのようなエリザベスが立っていた。

 

「うわあ!!?」

 

ビクッと驚き後ずさってしまう。やはりエリザベスにはなれない。そう思っているとエリザベスはプラカードを何処からともなく取り出す。

 

『 

   桂さんを頼む。ここは任せろ

                   』

 

これを見た胡桃は沈黙する。本当にこの生物を信じてもいいのかと。しかし昨日エリザベスには既に助けてもらっている。少し悩んだ後…

 

 

「…わかった。ここは頼んだぞ!」

 

   ラジャー!

          』

 

胡桃は信じることにした。スコップを手に持ち桂を追って駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

桂の目の前には金色に装飾された建物が佇んでいた。店の看板にはゴールド・チンコとライトで照らされていた。

すると背後で靴音がなり振り向くと、そこにはスコップを構えたまま警戒しながら走る胡桃の姿があった。

 

「ヅラ先生!やっと追いついた…」

 

「ヅラじゃない、桂だ。ついて来たのか…学校は大丈夫なのか?」

 

「それなら大丈夫。ヅ「ヅラじゃない、桂だ」ラ先生のペット?に頼んできたからな!」

 

「ほう、エリザベスに…あいつなら確かに大丈夫だろう」

 

「それにしてもなんでこんな時間に来たんだ?」

 

「これは俺の推測だがな…コゲゾン共は生きていた時の記憶を頼りに行動していると踏んでいる。深夜と早朝は学校にコゲゾンの数は急激に減少していたからな。この時間ならこのパチンコ屋も開店していない。つまりは中に殆どいないというわけだ」

 

桂は前に出ると、自動ドアは作動し、開く。そこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何十体といるコゲゾンがこちらを見ていた。

 

「…いないんじゃなかったのか?」

 

「……逃げるぞ」

 

桂はすぐさま方向転換し逃げようとするが、既に家と言う家からコゲゾンが湧き出ていた。

 

これは…通勤ラッシュ!!

 

「路地裏に逃げるぞ!!まさかこんな事態になろうとは…この桂 小太郎の目を持ってしても…」

 

「ヅラァァアア!!どうすんだァァァ!!!」

 

「ヅラじゃない、桂だ!」

 

するとその時だった。小窓がパンッ!!と開かれ、男の声が聞こえた。

 

「おい、こっちだ」

 

「かたじけない…!」

「うわわわわ…!」

 

下にあった換気扇を足場にし、パチンコ屋に逃れる二人。足を掴まれそうになったがギリギリ掴まれることはなかった。周りを見渡すと男性用の便器がいくつか設置されており、ここが男性トイレということに気づく。

 

「誰か知らねーけどありがとな!」

 

「いいってことよ」

 

敬語を使わない胡桃に何も言わず答える。案外気さくな人なのだろう。その男は茶色のスーツズボン、白いワイシャツを着用しており、顔には謎の存在感を放つグラサンを付けている。

 

「って、マダオ先生!!?」

 

そう、二人にはこの男に覚えがあった。というか普通に知り合いだった。

彼の名前は長谷川 泰三、巡ヶ丘高校の日本史を担当する教師である。もらった給料は全てギャンブルに使うといったことから「まるでダメなおっさん」、略してマダオ先生と生徒から呼ばれている。しかも昼休みにパチンコ屋に行くというダメ人間っぷりだ。

しかし無駄に仕事は出来ており、パチンコ屋に行く際は必ずその日の仕事を全て終わらしている為、他の教師もあまり強く言えないというタチの悪い男だ。

しかも無遅刻無欠勤。

 

「ヅラっちも久しぶりだな…へへへ」

 

「ヅラっちじゃない、桂だ。」

 

もちろん桂もマダオとは知り合いで5年程の付き合いだ。いつものやりとりを終えたマダオを見た胡桃は喜びを隠しきれない。

 

「良かった!!あたしら以外にまだ生き残りがいたなんて!!」

 

「フン、このパチンコ屋に打ちに来ていてな。隠れて難を逃れたってわけさ」

 

「とにかく一緒にここから脱出して学校に戻ろう!!…っ!?」

 

そこでマダオの腕に巻かれた包帯が目に入った。それは赤黒く変色している。

 

「手酷く…やられちまってね…奴らに。足手まといになる…てめーらだけでさっさと行っちまってくれ…」

 

「長谷川…お前…」

「マダオ先生!!」

 

「そう悲しい顔すんな、ヅラっちに恵飛須沢ちゃんよ…俺もヤキが回ったもんだ。あんな連中にやられちまうなんざ…」

 

ここで胡桃は既視感を覚える。あれ?これってまた…

次の瞬間、胡桃の脳裏に映像が映し出される。

 

「またこれかァア!!?」

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

マダオは走る。しかし奴らは撒けない。パチンコ屋の中を駆け回る。途中、パチンコ台の近くに置かれていたパチンコ玉を地面にばら撒き足止めするが、マダオはもう既に限界だった。

 

ドンっと背中に壁がぶつかる。もう逃げ道はない。マダオを追いかけていた奴らは好機とばかりにゆっくりと近づく。

 

「ハセガワ〜〜オ前ハ死ヌノダ〜〜!」

 

シルクハットを被り、上半身はスーツを着ているが、ズボンを履かずにブリーフを露出させている男が手に持っていた銃を構える。

 

「「イーー!!」」

 

戦闘員のような黒いスーツを纏った奴らも男に続く。

 

 

 

パンッと乾いた音がパチンコ屋に木霊した。

 

 

 

▽▽▽

 

「奴らってコレ誰だァァァァァァ!?コレ完全に別の事件に巻き込まれてるじゃねーか!!」

 

回想を追体験した胡桃が怒りの咆哮をあげる。

 

「店長だ。最近勝ちが多くてな。前もボロガチして店長を挑発してたらしばかれた」

 

「どんな店長!?なにこの無駄な存在感!!」

 

「クソッ…サンダルじゃなけりゃもっと素早く動けたのに…」

 

「サンダルはもういいわ!!つーかヅラ先生もだけどアンタら結局全然コゲゾン関係ない所で勝手に死にかけてるだけじゃねーか!!」

 

そこで桂は少し顔を赤らめゴホンと咳払いする。

 

「今、コゲゾンって…」

 

「うれしそーな顔をするなァァ!うぜェェェ!!」

 

胡桃は桂のスネを強めに蹴り、桂はその痛みに少し声を上げながら蹲る。

そんな桂をほっといてマダオに質問する。

 

「けど至近距離で撃たれてよく助かったな…死んでたかもしれねーだろ?」

 

マダオは不敵な笑みを浮かべ、懐からあるものを取り出す。

 

「こいつが俺を助けてくれたのさ」

 

そこにあったのは銃弾で撃たれて破壊されたファミコンが…

 

 

 

 

 

「なんでファミコンが裸で懐に入ってんだァァ!!おかしいだろォ!!」

 

「そ、それはァア!!これはファミコンではないかァ!!最近発売されたSwitchとかいうファミコンか!!?」

 

「Switchはファミコンじゃねーから!!それにゲームに反応すんじゃねえ!!今の回想をツッコめやァァァ!!」

 

「回想…?何を言っているんだ?病院行くか?」

「ちょっと恵飛須沢ちゃん…疲れてんならしっかり休めよ?」

 

「誰が疲れさせてんだ、誰が」

 

茶番を終えた胡桃は疑問に思う。マダオが生きていることは純粋に嬉しい。しかし何故桂はここへ来たのかがわからない。

 

「まぁファミコンとかの話はどうでもいい。「どうでもいいだと!?そこに治れ!!叩き斬ってやろうか!!!」なんで桂先生はここに来たんだ?」

 

荒ぶる桂を無視して胡桃は問う。

 

「桂じゃない、ヅラだ…あ、間違えた。ヅラじゃない桂だ。…俺がここに来たのは…ッ!?そこにあるではないか!!?」

 

桂の視線の先にある物は…マダオ…ではなく、マダオが座っている、肩に担ぐ程の大きさのラジカセだった。

 

「そこをどけィ!!」

「ウバラァァアア!!?」

 

桂は座っていたマダオの顔を蹴飛ばしラジカセを肩に担ぐ。

 

「もしかしてヅラ先生…」

 

「そうだ。これが俺の求めていた物だ。学校にあった物は少し調子が悪くてな。パチンコのレジの後ろにこれが置いてあったのだ。そしてそれを拝借しようとしていたわけだ」

 

胡桃は呆れる。こんな非常時にこの男は何をしているのだろうと。それについて来た自分も自分だが…

 

「ハァ…じゃあもう帰ろうぜ。みんな心配してるだろうし」

 

「ああ、これを手に入れたからにはもうここに要はない。本当はここの景品の食糧や生活用品も頂きたかったのだが…あれでは無理だろうな…」

 

トイレのドアの隙間から店内を覗き見ると、店内には何十、何百という数のコゲゾンがたむろっていた。

 

「おい、学校に生存者がいるんなら早く行こうぜ。夜になったらもっと増えるぜ」

 

「わかっている」

 

そう言って怪我でトイレの窓から出られないマダオを軽々と持ち上げ外に放り出すと、桂も続いて外に出る。胡桃も後に続き、出来るだけコゲゾンに見つからないように学校へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

夜…

 

 

 

「はい、せーの!」

 

桂は肩にラジカセを乗せ、陽気な曲を流す。

 

 

ーーーーー攘夷が☆JOYーーーーー

 

ズンズンチャンチャンとリズミカルな音楽に合わせ桂はエリザベスと共にリズムを取る。

 

「やるなら今しかねーZURA!やるなら今しかねーZURA!

攘夷がJOY 攘夷がJOY!」

 

『   

  JOY! 

      』

 

「違う!!喋れや!サインじゃなくて!お前ホントは俺のいない所でペラペラ喋ってんの知ってんだかんな俺!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(アタシは一体何を見さされているんだ…?)

 

 

ヅラのラップ「ラップじゃない、カツラップだYO!」…カツラップは一時間続いた。

 

 

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