第四話「闘争」
-A part-
「なあ翔子、俺達のこの力ってなんの為にあるんだろう」
「それは……私にもわかんないや、でも私は無いよりはよかったと思うよ?」
「……俺は、無けりゃよかったと思っている」
「まあそりゃあユウくんからしたら私を傷つけた呪いみたいなものだからねぇ」
昼休み、校舎の屋上で翔子とユウは語り合う。
自分達の力の事、自分達が何をするべきか。
「私は、この力を皆を助ける為に使いたいかな。最近、なにかと物騒だよね?ほら、私のマンションの件に連続火災、それに今朝だって」
今この街を連続殺人犯がうろついている、犠牲者は皆「矢」で射抜かれて殺されている事から同一犯とみられているが、監視カメラが尽く壊されており手がかりが全く無い状態でもある。
犯行時間は全て夜のうちに行われている為、夜間の外出禁止令まで出ており、あらゆる場所には警察官が出動している。
「怖くは、ないのか?」
「怖いよ、だからこそ怖くなくなるように私は止めたい」
「……翔子がそうしたいなら、俺はそれを手伝うよ……まだ上手く力は使いこなせないけど」
平和に過ごしたい、その為には「力」で掴み取るしかないのか。
そう考えながらユウと翔子は空を見上げた。
あの火災から三日、タクミは火災のショックから街を彷徨っている所を翔子に保護されたという事になった。
大した怪我がない事から空雅家の経営する小さな診療所で療養状態となり、意識が戻ったのが今朝。
それから警察の聞き取りが入るが、事件当時の事の多くを語れないタクミの様子にユウの父であり主治医であるタケシが聞き取りは精神的負荷が高いと中断。
しかし「放火殺人」である事と、犯人が男である事だけはタクミが伝え、聞き取りの続きは後日となった。
そして授業を終え、居候となった翔子とユウが帰って来た事によって物語は進む。
ユウの母であるユカリが用意してくれた紅茶に悪戦苦闘するのはタクミ、彼は致命的なまでに猫舌だった。
机を囲む三人の雰囲気は緊張感に満ちている。
それはそうだ、ユウは翔子と再会したばかりだというのに謎の少年が運び込まれてきて、それが翔子を襲った異能者で、タクミからしても自分が暴走して襲い掛かってしまった相手に助けられて、その知り合いの家族の病院で休ませてもらったという、気まずいもの。
それに加え、家族を一気に失った悲しみと自分がバケモノに変わってしまった困惑もある。
「んじゃ……その自己紹介からしようよ、まず。私は阿木都翔子、このユウくんの幼馴染で……君と同じ様な能力を持ってるよ」
「俺は空雅ユウ、俺も翔子と同じ様な力を持つけど、真面目に使ったのは昨日ぐらいの初心者だ」
「………俺は、俺は駆狼タクミ……私立ヘイセニア大学付属中学3年……それだけ……です」
タクミは二人よりも一つ年下、とはいえ同じ学校である事にユウと翔子も驚く。
「身近にいるもんだね、能力者って」
「そうだな……で……駆狼……さん?」
「……タクミでいいです、先輩」
「じゃあタクミくんはこれからどうしたいのかな?」
このやりとりは、あくまで診療所としての治療などではなく……同じ「異能者」としてのやりとりだ。
だからユウと翔子が聞きたい答えは、その力で何をするかという事だ。
「俺は……まだわからないです。ただ……父さんを、母さんを……妹を殺した奴を許せない……そいつがただ憎い。それだけです」
「そうだね……私達は家族を殺されてないからわからない、けどそうなるよね……それなら、私はそいつを捕まえるのには協力したい。話の通りなら殺人犯が今も街をうろついているってことだよね?まだ誰かが犠牲になるかもしれないのは、私は許せない」
「……俺は、俺もわからない……だがタクミくんが困ってるなら、俺はタクミくんを助けたいとは思う」
わりとしっかりとした翔子、まだ戸惑いのあるユウ、その違いにタクミは少し親近感を抱きつつも、少しだけ安心した。
そのやり取りを気配を消して見守る少女は少し安堵の笑みを浮かべ、その姿を消す。
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少年少女の青春異能バトル物語、はっじまるよー!
あれから三日、特に事件も起きず、敵も現れない……とでも思っていたのか?
いやニュースを見ているとなんとまあ次から次へと出てくるわ凶悪犯罪者。
放火魔……の方は一応誰か見当はついているので主人公達がもっと戦える様になってから倒してもらうしかない。
というかあの三人じゃないと初見で耐えられないので……。
とはいえ矢を使う奴はまったくわからない、原作では矢を使う奴なんて居なかったのでおそらくはまた生えてきた存在でしょうなぁ……。
おかげさまで、警察に所属するお父様が大忙し……「異能犯罪対策科」と呼ばれる部署に所属し、政府や企業と共同でパワードスーツの開発や異能の研究などを行ってもいるのですが。
昨日帰ってきた際に「ここ最近、謎の怪物が現れていて出撃続きだ」とぼやいていた。
お母様も「半分ぐらい始末しようかしら?」と言ったがお父様は「いいや、お前を守るのは俺だって約束したろ?」という口説き文句で返し、お母様メロメロ。
娘の前でイチャラブしすぎだよこの夫婦。
とまあ、とりあえず得た情報としては……。
この街には何かしらの悪の勢力が居るという事。
それはそれとして、この世界の政府や公の組織が秘密裏に異能と戦う為の研究を行っているのは私の原作知識通り、「神経圧裂弾」とかユウ達でもくらうとマジでヤバイ武器だったり、対異能者戦闘向けのマニュアルだったり、逆に政府側に所属する異能者も多い。
お父様はただの人間です、でもパワードスーツ「GXF-S」を着ている時は異能者すら圧倒する正義の味方。
組織と技術の力で戦うのもまた人間のやり方なのです。
まぁ原作だと10年後にようやく実戦配備されるはずの技術なんですが……なんでこの時代で既に完成しているんですかねぇ……?
もしかして未来から来た人でもいるのかな……。
とまぁ、疑問はさておき、今日も日課の主人公達のストーキング。
何かあった時には即対応!
ここ二日は特に全然寝れてないよ!なんでかって?タクミがなかなか起きかったからだよ!
本当なら一日で起きる筈だったんだがなぁ……。
で、ようやく起きて彼のチャームポイントの猫舌を堪能した後に主人公チームの意志確認が始まった。
原作では特にそういう事はなく、普通に学校に通っていると次々と戦いの巻き込まれていくという感じで主人公達から積極的に突っ込んでいくのは続編からの筈だった。
タクミが家族の仇を探すのは想定内、むしろ原作では黙って行動していた際に襲われて重傷を負うのでここで話すのはいいかもしれない。
翔子がタクミの手助けと犯人探しを手伝うのも想定内、いつ自分達の平和が壊されるかと考えるとそうなるのも当然。
となるとユウも翔子についてくるのもまた想定内だった。
彼はどうしようもなくお人よしだ、だから困っている奴がいたら助けたくなるし、人を殺しまくる敵を放ってはおけない。
となると今後は主人公チームの行動にこっそり後ろからついていく、という形になるか?
さて、時間も時間だし、私は私でそろそろ「起きそう」な事件の場所へと向かう必要がある。
祝福のエターナル 第四話は平和な昼のAパートと、クッソグロテスクなBパートに分かれている。
おおまかなあらすじとしては
・ユウと翔子の学園での生活
・帰ってきて目を覚ましたタクミとのやりとり
までがAで。
・護送中の快楽殺人者(名称不明)が異能に目覚めて脱走する
・その途中で大勢殺傷してあちらこちらで爆発が起きたりする
・それに主人公達が気付き止めに行く
・はじめての「悪」との戦いが始まる
だいたいこんな流れだ。
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-B part-
スコンと矢が警備員に突き刺さり、ドサリと倒れる。
そこにすっと舞い降りてきたのは蝙蝠の怪人だ。
突き刺さった矢から「生命エネルギー」だけを吸収し、蝙蝠怪人は満足げに頷く。
「う……ウワーッ!!!バケモノだ!!」
それは互いにとって運が悪かった、交代の時間としてちょうど居合わせた別の警備員と蝙蝠怪人が出くわす。
即座に蝙蝠怪人は矢で警備員の心臓を打ち抜き殺害、生命エネルギーを回収。
しかしその叫びを聞いて駆けつけてきた巡回中の警官達に見つかった。
「動くな!」
それは聞けない要求だ、怪人は空に飛びあがり、警官達が発砲する。
飛び交う弾丸を軽く避け、蝙蝠怪人は夜の空を舞う。
そして辿り着いたのは古びた教会。
蝙蝠怪人は恭しく膝を着け、頭を下げ、差し出す手の上に生命エネルギーを結晶化させたものを出現させる。
「ようやく、規定の量までエネルギーを集めたか……だが最後の最後でしくじるとはな、このアジトも引き払わねば」
一人の男がそれを受け取り、吸収する。
「うむ、肉や血などという不純物よりも純粋な生命エネルギーだけが俺の乾きを癒してくれる」
目の前の怪人は男が創ったものだ、人間を改造し、創造した「改造人間」だ。
もっともそこに元の意志はなく、命令に忠実なだけのプログラムや目的にあわせた能力だけ。
「さて……いい加減に出てくればどうだ?いつまでも隠れられるとでも思っているのか?」
男が移した視線の先には紫色の瞳の少女、奈々だ。
「……貴方は何かしら?」
「狩人(ハンター)だよ、君達「祝福されし者」を狩るためのね」
「……その為に無関係な人間を犠牲にするの?」
「別に人間も君達もかわらないぞ?鳥を狩るか鹿を狩るか程度の違いしかない」
「そう、なるほど……つまりあなたは敵ね」
邪悪な気配に少女は怯えもしない、それが男にとってはつまらず……不愉快でもあった。
スコンと壁に矢が刺さる。
蝙蝠怪人の放った矢は奈々を貫く事はなく空を切っただけだった。
その様子に男は驚き、喜びの表情を浮かべた。
「ほう!まさか君が「虚無」だったとは!これは驚いた!」
その様子にもまるで表情を動かさず、奈々は落ち着いた様子でそれを見下ろす。
「あなたは私をどうにかしたいようだけれど……残念ながら私はあなたをどうこうする訳ではないわ……あなたと戦うのは……」
男が眉をひそめるのと同時だった。
教会の壁が吹き飛び、剣を携えた一人の「銀騎士」が飛び出した。
「お前か!お前が大勢の人達を!」
怒りの篭ったその声は若い男の声だった。
「……潮時か、後は任せるぞ」
狩人は即座に背を向け姿を消し、場に残ったのは銀騎士と奈々、そして蝙蝠怪人。
燃え盛る教会の中で戦いが始まるのを少女を見下ろしていた。
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肝心の快楽殺人者さんは待てども待てども現れず、代わりに現れた蝙蝠の怪人を追いかけてみたら、かなり邪悪なタイプの知らないおっさんがおりまして……。
少なくとも今の私の力では勝てそうになさそうな強敵感も醸しだされていたので、ユウ君たちに投げるかと考えていたら、これまた知らないタイプのヒーローが登場した件。
誰なのアナタは一体……!?味方なんですよね!?わたくしと一緒に戦ってくれるんですよね!?
・ユウ
この力どうしよう
・翔子
人助けしたい!
・タクミ
仇討ちしたい
・お父上
実はパワードスーツを着て戦う
・お母様
旦那様大好き
・蝙蝠怪人
生命エネルギー集め係
・謎の狩人
異能者狙いの奴
・奈々
なんか知らん奴が増えた……
・銀騎士
全身鎧、剣を使う謎の男 あだ名は王子