この世界って醜くありませんこと?   作:青川トーン

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第7話「運命と出会う日」

 さてはて、と振り返ってみればいつしか自分に「忠告した」彼女が立っていた。

 成長して姿が変わっても、やっぱり面倒事に巻き込まれるのは変わってないなと、シンジは心の中で笑う。

 

「どうして……どうしてあなたがここに」

 

「言ったろ、俺は出来る限り誰も死なせたくない。助けられる限りは助けるって」

 

 

 出会いはそう、謎の失踪事件を追っていた事からだった。

 蜘蛛の様な怪物に襲われていた所を幼い少女に導かれ、助けられた事から。

 

―あなたにはきっとつらい運命が待っている、死ぬかもしれない、だから後戻りするなら今

 

 諦めているような、どうともいえない表情で自分に語りかける少女を見て、助けたいと思った。

 この世界には理不尽な事が数え切れない程にある。

 

 魔術師としての役目から逃げて、記者として生きていた自分が本気で誰かの為に戦いたいと思った。

 

―それ以上は戻れなくなる

 

『でも俺はそれを望んでいる』

 

―あなたは行くのね

 

 それは本来あるべき運命と変わらなかったのだろう、より一層深い諦めの表情を見せながら彼女は言った。

 

 

 最後に会ったのは、そう……死ぬ直前だった。

 怪物が街にあふれ出さんとするのを止める為に命を全部使い切る勢いで戦って、致命傷を負って、その果てに戦いの中で出来た友が呼びかける向こうに彼女を見た。

 

 涙を堪えるような彼女の表情に、彼女が本当に望んでいた事を知った。

 彼女は救って欲しかったんじゃない、救いたかったんだって。

 

 だから死ぬ前に願い事が出来てしまった。

 

 後悔と未練が出来てしまった。

 

 

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 それは私がまだ夢を見ていたからか。

 世界を変えようと思った、運命を変えたいと願っていた。

 

 だから犠牲になる者を一人でも減らそうと思って、「彼ら」の戦いを止めようと陰から動いた事がある。

 

 その結果は、まあ察しの通り。

 何も変わらなかった、死人も犠牲者も。

 

 私が直接的に接触したシンジも、最後には「原作通り」死んでしまい。

 儀式もまた「原作通り」に失敗した。

 

 だから私は諦めた。

 だから私は運命を信じて、記憶の通りになると思って生きてきた。

 

 だが結果はどうだ?

 知識は役立たず、世界はバグる。

 死んだ筈の彼は今私を助けている。

 

 意味不明、俺も私もわからない。

 脚本としてみても危ない薬でもやっているのかとしか言えない。

 

 喜べばいいのか、嘆けばいいのかもわからない。

 

 ただただ頭が痛いだけだ。

 

「騎竜シンジ……何故死んだ筈の貴様がここにいる」

「俺にもわからねえし、そんなことはどうでもいい……俺はここにいるから戦う、それだけだ」

 

 ご丁寧に儀式の遅さにテコ入れとして用意された強化形態のご登場、ここにいるユウと翔子と違い目の前の騎士は激戦を潜り抜けた猛者だ。

 

「イレギュラーに死人……全く以って美しくない」

 

 だが相手は凄まじい「加速」を使う、どうする?

 

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「シンジさんでいいんだっけ……助けてくれてありがとうございます」

「ああ気にしなくていいさ、俺がやりたかった事だから……」

「俺はユウ、こっちが翔子、向こうの子は「奈々」です」

「そうか奈々ちゃんか、まあそれはそれとして今は目の前の奴を倒す事が大事だ、二人は奈々ちゃんを頼む」

 

 二人がまだ戦士として未熟だということをシンジは見抜いていた、だからここは引き受けると前に出る。

 

「そういやアンタの名前もまだ聞いてなかったな」

「……もう一度消え去るお前に名乗る名などない」

 

 青薔薇の男、その名をコルカスというが……非常に傲慢な男だ。

 彼は再びその姿が掻き消えるほどの速度で動き出す、目の前のシンジを倒す為に。

 

 だがそういう相手は「知っている」。

 

「アクセル……!」

 「魔術」によりシンジもまた「加速」する。

 先ほど、ユウを救えたのもまたシンジが加速していたからだ。

 

「ソード!」

「ぬぅっ!!」

 

 魔術によって作り出された剣がコルカスの鎧にぶつかり、大きな火花が飛び散る。

 

「悪い、アンタの目的とか願い事とかしらない。けどあの子を助けたいから、アンタを倒す」

 

 地面がまるで鏡の様に変化し、そこから一体の赤いドラゴンが現れる。

 人造の使い魔「赤竜」だ。

 

「ばかな……こんなことが……たかが死人ごときに……」

「ファイナル」

 

 ドラゴンが吐き出す炎を纏い、放たれたシンジの一撃を受けてコルカスは派手に吹き飛び、空中で爆発した。

 舞い散るのは青い花弁のみ。

 

「す……すごい」

 

 翔子もユウも、その圧倒的な戦いぶりに驚いていた。

 奈々もまた……この妙な状況にどうすればいいのかと悩んでいた。

 

 世界は色を取り戻し、再び動き出す。

 だがシンジの姿が消えたりする事もない。

 

 彼は間違いなくそこにいた。

 

 

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 同じ頃、二人の戦士が一体の異形と戦っていた。

 

「おいツルギ、トドメをさすぞ」

「わかってる、いくぞソウジ」

 

 それはツルギとソウジ、どちらも同じ組織のパワードスーツを纏っていた。

 蹴りに纏わせるのは二つの雷の力で、連携攻撃が決まった異形は爆発炎上した。

 

 彼らは同じ日本政府の所属ではあるが部隊が異なる為に滅多に会う事はない。

 だが今日はその滅多だった。

 

 突然、ソウジとツルギ以外の世界が止まり、彼らはその原因究明と解決の為に動いていた。

 

―これはあの黒幕女ではなさそうだ

 

 ソウジの持つ知識の中に、アレがこんな時間停止みたいな事をやるイメージはなかった。

 むしろアレは世界をどんどん回転させていくタイプの奴だ。

 

 ふと自分達と今襲い掛かってきた怪物以外は止まっていた筈なのに爆発音が聞こえた。

 

「ツルギ」

「ああ」

 

 二人は急いでその方向へと向かう。

 距離はそこまで離れておらず、パワードスーツの機能を使えばあっという間であった。

 

 その途中で世界の停止が解除されたのも知覚しつつ、辿り着いたソウジが見たのは。

 

 「人間の姿の」ユウと翔子、そして謎の騎士に……スーツのセンサーの表示がバグったナニカだった。

 

 ここに戦士達は出会った。

 

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 さてはて、問題です。

 自分以外に転生者や原作知識持ちがいた場合、どうなる?

 

 私も知りたい!

 

「紅……奈々……!」

 

 しかも滅茶苦茶敵意に満ちた目で見られているのは何故だ。

 ここの所、世界は私に優しくないのではないか?

 

 少なくとも私はこの男を知らない。

 

 本当にどうしたものか。

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