ガンダムSEED Destiny 白き流星の双子 作:紅乃 晴@小説アカ
長らくお待たせしました。更新再開です。
「初陣がデブリ戦とは…やれやれ、嫌なクジを引いちまったもんだ」
出撃したミネルバ陣営は、ハイネが乗るオレンジ色のザク・ブレイズウィザードを先頭に、二機の緑色のザク・ウォーリアと、レイが駆るブラストインパルスで構成されていた。
場所は旧大戦で出来上がったデブリ帯。
ボギーワンと称される敵艦は、この中へと逃げ込んだのだ。
「向こうだってもうこっちを捉えてるはずだ。油断するなよ」
「解ってます、右翼から前進します」
ハイネの指摘を受けて、レイは指示通りに右翼側からボギーワンへ接近するルートを取る。
デブリ帯は複雑に入り組んだ迷路のような宙域だ。下手にルートを外れれば、敵に待ち伏せられる格好の的になるか、またはデブリに阻まれて行手を遮られることになる。
後方にいるミネルバも同じように、デブリ帯の複雑怪奇なルートを避けて、ボギーワンが侵入したであろうルートを進んでゆく。
「敵艦に変化は?」
「ありません。針路、速度そのまま」
敵艦に変化はない。ならば、デブリ帯の奥へと隠れられる前に勝負をつけるべきだとミネルバのクルーは考えを決める。
デブリ帯の奥へと隠れられれば、地の利を得るのは向こうだ。そうなる前になんとしてでも捕捉したい思惑があった。
「よし。ランチャーワン、ランチャーシックス、1番から4番、ディスパール装填。CIWS、トリスタン起動。今度こそ仕留めるぞ!」
ミネルバの火器管制システムが起動してゆく中、同艦より発進したオーブ軍機体…否、議長認可で雇われることとなった傭兵部隊は、進んでゆくミネルバのモビルスーツ部隊とは別のルートを進んでいた。
「ライトニングリーダーより、各機へ。フォーメーションはストライダーを維持。状況は?」
鏃のような編隊を組んで飛ぶメビウス隊は、デブリの合間を軽やかに飛び去りながらボギーワンへと距離を詰めていた。
ラリーの動きは滑るように滑らかであり、モビルスーツで通れないようなデブリの合間をなんの躊躇いもなく縫って行く。それに続くメビウス隊も、ラリーとも劣らない機動力でその変則的な軌道に追従してゆく。
「やけに素直だね。敵は」
唐突に、ラリーの横に付いているリークが呟いた。ライトニング1を担う彼の危機への嗅覚は鋭い。ここまで接近しているというのに、敵が何もアクションを起こしてこないのは不可思議と言える。
ラリーは操縦桿を握りながら、脇にあるモニターに印を付けて後続のメビウスへ送信する。
「俺たちのいる場所はここ、そして敵はここにある。距離としては俺たちがミネルバから出ても変わりはない」
「敵が動きを止めている?」
今の状況を簡単に説明するならば、敵との追いかけっこだ。デブリ帯に逃げ込んだということは、敵は相応に振り切る動きを見せてもおかしくない。
それにこちらは慣れない新造艦ミネルバの操舵だ。デブリを抜けてボギーワンへ接敵することは困難を極める。デブリに突っ込んだ以上、敵がこちらとの距離を維持する必要はない…と、なれば。
「罠か?」
「そういうことになる。おそらく…」
ラリーはすぐにミネルバへのレーザー通信を試みる。だが、通信システムを作動させた段階で響いてきたのは激しいノイズ音ばかりだった。
「ライトニングリーダーよりミネルバ!聞こえるか?…ちぃ、Nジャマーか!」
Nジャマーを展開されている以上、相手は何かしらの方法で攻勢に出てくる。ラリーたちは機体を翻しながら進路を進めてゆく。〝三機〟の流星はデブリの中を鮮やかな軌跡を描いて飛んでゆくのだった。
////
「インパルス、ボギーワンまで1400」
その異変は、ミネルバのクルーも察知していた。レイのインパルス、そしてミネルバのモビルスーツ部隊の射程距離にボギーワンが入ろうとしているというのに、敵艦の動きに変化はないのだ。
「未だ針路も変えないのか?どういうことだ?」
「何か作戦でも?」
この二年間、プラントの中でもクライン派と、ザラ派に分かれた小競り合いはあったものの、それはジャンク品のモビルスーツや、廃棄されたものを修復したもので行われており、艦を用いた戦闘行為には発展してこなかった。
そして、その油断に対する危機管理がミネルバクルーには欠落していた。
「…しまった!」
敵の思惑に気づいた時には、すでに事は術中の中だ。岩陰に隠れていたのはボギーワンと同等の熱量を発するだけの機器。
「デコイだ!」
まんまと敵の思惑にはめられたミネルバ部隊も、デブリの中に潜んでいたモビルスーツ隊からの強襲にさらされることになる。
『各機、散開!!』
『よーし、行くぜ!』
『わかった』
実戦投入されたカオス、アビス、ガイアのそれぞれは身を潜めていたデブリから一気に離れてゆき、通り過ぎたザフトモビルスーツ隊の背後を捉えた。
アビスが放ったエネルギー砲が、構える間も与えずに、ハイネの後ろについていたザクウォーリアを容易く貫く。
「ショーン!!うッ!」
爆散した残骸を一身に受けながら、予想だにしていなかった背後からの攻撃で、モビルスーツ隊は乱れる。その隙をカオスを駆るスティングたちは的確に突き、統制を撹乱させていく。
「散開して各個に応戦!くっそー!待ち伏せか!ん?ボギーワンが…」
ハイネが敵機に気を取られた瞬間、自分たちが今まで目指していた反応が消えていることに気がつく。
「ボギーワン、ロスト!」
「何ぃ!?」
ミネルバも敵の狙いにようやく気がついた。索敵をするオペレーターが現状把握のためにモニタリングしたデータを読み上げてゆく。
「ショーン機もシグナルロストです!それとイエロー62ベータに熱紋3!これは…カオス、ガイア、アビスです!」
「索敵急いで。ボギーワンを早く!」
焦りを隠せないタリアの悪い予想は的中していた。処女航海でおぼつかないミネルバの死角に、ボギーワンこと、ガーティ・ルーは陣取っていたのだ。
『よし、敵は罠にかかったな。ミラージュコロイド解除!ダガー隊発進と同時に機関始動!ミサイル発射管、5番から8番発射!主砲照準、敵戦艦!』
艦長のイアンが的確に指示を放ってゆく。ミラージュコロイドを解いたガーティ・ルーからミサイルと同時に数機のダガー隊が出撃してゆく。
「ブルー18、マーク9チャーリーに熱紋!ボギーワンです!距離500!」
「背後に回られた!?」
「更にモビルスーツ2!レーザー照射、感あり!」
「アンチビーム爆雷発射、面舵30、トリスタン照準!」
「間に合いません!オレンジ22デルタにモビルスーツ!」
完全に先手を取られたミネルバへ、出撃したダガー隊が迫る。モビルスーツをデブリの中へ出撃させたのが完全に仇となっていた。対空防御を放つミネルバであるが、モビルスーツの接近に打つ手は残されていない。
『幾ら新造戦艦といえど!!』
ダガー隊のパイロットたちが、無防備なミネルバへと銃口を向けて、ロックをしようとした瞬間だった。一陣の閃光が閃き、ダガーの内の一機のコクピットを貫いたのだ。
『なにぃ!?』
パイロットが見上げる。
そこにはデブリの合間を縫って真上から飛来する一つの流星があった。
「隊長の読みが当たった!!」
補修を受けたシンのメビウス・ストライカーが、モビルアーマー形態からモビルスーツ形態へ変形しながら迫るダガー隊へ奇襲を仕掛けたのだ。
ラリーの指示は、足と小回りが効くメビウス隊でボギーワンを捜索し、シンの任務としてはメビウス・ストライカーでデブリに潜み、ミネルバを狙う敵艦の警戒と、敵モビルスーツの迎撃にあった。
「オーブ軍機!メビウス・ストライカー!アスカ機です!」
「ミネルバ!援護する!今のうちに退避を!」
ビームライフルから閃光を放ってダガー隊を牽制してゆく。敵も素人ではない。機敏な動きでシンの攻撃を避けて反撃してくるが、シンも機体を鋭く閃かせてダガー隊から放たれる光を避けてゆく。
「機関最大!右舷の小惑星を盾に回り込んで!」
『逃すな!ゴットフリート一番、てぇー!!』
デブリへ逃げるミネルバへ、ガーティ・ルーがゴットフリートを放つが、その光は当たることなく近くにあるデブリを吹き飛ばすに留める。
なんとか危機を脱したミネルバで、タリアは息を吐きながらオペレーターであるメイリンに次の指示を送る。
「メイリン!残りの機体も発進準備を!」
「はい!」
「小惑星表面を上手く使って直撃を回避!アーサー!ぼさっとしていないで迎撃!」
「は、はい!ランチャーファイブ、ランチャーテン、ディスパール、てぇ!」
ガーティ・ルーの艦長、イアンは短期決戦を望んでいたが、こうもデブリに隠れられては戦略が違ってくる。忌まわしげに顔をしかめながらミネルバから放たれるミサイル迎撃を指示してゆく。
その隣では、マスクをかぶったネオ・ロアノークが不穏な笑みを浮かべているのだった。
////
デブリの中では、カオス、アビス、ガイアの攻撃により、ザフトのモビルスーツ部隊は劣勢に立たされていた。
『もらいぃ!』
アビスから放たれたビームをなんとか避けるザクウォーリアだったが、避けた先で待ち構えていたガイアのビームサーベルによって、その胴体は真っ二つに引き裂かれる運命を辿った。
「ベイル!!」
仲間の断末魔が響く中、奪われたザフトの最新鋭機と対峙するハイネとレイ。
「あっと言う間に二機も…」
数の有利さもあっという間に覆された。ハイネは後方からミネルバが攻撃を受けている情報を受ける。
「ミネルバが!?俺達はまんまと敵の罠にハマったってわけか!?」
「ああ、そういうことになります。敵はかなりのやり手です」
完全に分断されたか…!!ハイネは奥歯を噛みしめながら敵の策略の巧妙さに苛立ちを募らせる。だが、ここで冷静さを失っては敵の思う壺だ。ここはなんとか、奪われた新型機を抜けてミネルバに合流しなければ…。
その思惑を読んでいるのか、三機は統率の取れた機動力を発揮し、デブリの合間を縫いながら、ハイネとレイを釘付けにしてゆく。
『よぉし、このまま一気に…』
『アウル!上だ!』
トドメだと言おうとしていたアウルに向かってスティングが叫ぶ。咄嗟に頭上を見上げると、デブリの影から光がいくつも現れる。
その全てがミサイルであることを理解するのに時間は掛からなかった。
すぐさまアビスを回避機動へ切り替えると、過ぎ去ったミサイル群の発射元へ目を向ける。しかし、そこにすでに機体の影はなく、アウルの見つめるコクピットモニターの側面に、走る光が見えた。
『モビルアーマー!?』
アウルから見ると、一機の型落ちのモビルアーマーが飛翔しており、機体がわずかに傾いた瞬間、一機の影から二機のモビルアーマーが鮮やかな編隊を組んで飛行していることがわかった。
「ライトニングリーダーより各機へ!敵が予定通りに来た!応戦するぞ!」
「ライトニング1、了解!」
「ライトニング2、了解!」
フォーメーションを崩さないまま、ラリーが通信で両機に伝えると、リークとトールも慣れた手つきでラリーの動きに追従する。いつも通り。変わらない形を保ったまま、三機のモビルアーマーは、ザフトの最新鋭機に向かって飛んでゆく。
戦力差は火を見るよりも明らかだ。
『たかがモビルアーマーでぇ!!』
『甘く見るなよ!!』
圧倒的な有利さを持って、スティングとアウル、ステラが迎え撃つ。
型落ちのモビルアーマー、メビウス。
だが、その機体に封じ込まれた伝説を、彼らは目の当たりにするのだった。