ガンダムSEED Destiny 白き流星の双子   作:紅乃 晴@小説アカ

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第41話 それぞれの立ち位置

 

 

 

「第4戦闘軍の展開確認」

 

地球軍…主に、大西洋連邦の独断に近い開戦と、直後の核ミサイル攻撃を退けたプラント政府は、ザフト軍の降下作戦を承認。

 

ザフトのニュートロンスタンピーダーの威力を知った地球軍も月へと撤退したことから、宇宙での戦争は消化試合の様相を見せたのち、再び戦争状態となった両勢力の戦いは地球へと移り変わろうとしていた。

 

「しかし、なんとも篩った言い回しですな、積極的自衛権の行使とは」

 

出撃してゆく降下部隊を見つめながら、ザフト軍の司令官はそんな言葉をこぼした。積極的自衛権とはいえ、自分たちの庭ではなく地上へとザフト軍を下ろすことになる。

 

ユーラシア連合がまだ動きを見せていない中、少なく見積もっても、地上での戦闘は苛烈を極めることになるだらう。

 

「そう言ってくれるな。政治上の言葉だ、仕方ない」

 

「第一派で現在包囲されているジブラルタルとカーペンタリアから地球軍を追い払うというのはいいとしましても、その後は」

 

「さあてどうなるかな」

 

ゴンドワナ級「アヴェンジャー」に集う指揮官たちは、始まってしまった第二の戦争を前にして、その後の行く先を見つけることはできていない。

 

コーディネーター、プラントの独立、地球からの支配からの脱却を目指した前大戦とは違い、今回はプラントは望まぬ戦争に身を投じるのだ。ユーラシアや各組織と進めていた融和政策や、地球とプラントとの関係性の見直しが粛々と進んでいた中で、大西洋連邦が行った行為はまさに横槍。はっきりいえば友好な関係を構築する上での邪魔者でしかない。

 

「無論我々とて先の大戦のような戦争を再びやりたいわけではない。国民感情を納得させられるだけの上手い落としどころを見つけ、戦闘を終結させて後は政治上の駆け引き、ということになるのだろう」

 

だがな、と椅子に座る指揮官は顔をしかめる。戦争状態であるならまだ救いはあったかもしれないが、彼らは再び核を撃ってきた。

 

血のバレンタインから数年。あの惨劇を忘れられないコーディネーターたちの、ナチュラルに対する憎しみは…最早消えることはない。

 

「議長のお手並み拝見、ということになるか、その後は」

 

今は今を率いる指導者の言葉が全てだ。そう言った指揮官に、ほかの指揮官たちも黙って頷くことしかできなかった。

 

 

 

////

 

 

 

アプリリウス市の秘密ドッグへと無事入港したオーブ船である「ヒメラギ」。護衛対象であるデュランダルやラクスたちも下船し、今はザフト軍のSPたちに警護されている。

 

トランスヴォランサーズにとっての任務はこれで終了だ。パイロットスーツから正装へと着替えたリークとトールは、見送りにデュランダルたちへと敬礼を打つ。

 

「では議長、我々はこれにて」

 

「ああ、助かったよ。ラリー・レイレナード君にもよろしく伝えてくれ」

 

デュランダルも多忙の身だ。件の核ミサイル攻撃の後処理もあるため、SPや側近に促されるとリークたちと軽く言葉を交わして別の便へと乗り込んでゆく。

 

ふと、横を見ると不満げに唇をとがらせたミーアの姿が目に入った。

 

「えー、もう帰っちゃうんですか?」

 

「これが任務です。それに今の情勢じゃあ、我々がプラントに長居するのはよろしくはないでしょう?」

 

「せっかく、流星様の昔話とか聞けると思ったのにぃ」

 

「仕方ありませんわ、ミーアさん。私たちと同じように、彼らにも彼らの務めがあります」

 

ぶーたれるミーアをラクスが優しげな口調で慰める。ミーアは「はーい」と間の伸びた返事をして、迎えにやってきた者たちの方へとふわりと浮かび上がった。ラクスもリークたちに別れを告げてミーアの後を追うように地を蹴って浮かび上がる。

 

「では、青年たち。ラリーやキラにもよろしく頼む」

 

「バァーイ」

 

マネージャーであるバルトフェルドとアイシャは、オーブからのお土産や、慰安で歌ったお礼に貰ったファンレターを小脇に抱えて去ってゆく。

 

だいぶ板についている様子であったが、船に乗っている間にバルトフェルドからも何かしらの情報が入ったら連絡すると約束はしてもらった。

 

「さてと、リークさん。これからどうします?」

 

「とにかく、今はほとぼりが冷めるのを待つしかないさ。地球側もあんな兵器を見せられたんだ。再度、核攻撃をしようなんてリスクが多いマネは避けるはずだ」

 

「だと良いんですけど。こりゃあミリィにまた怒られるなぁ」

 

プラントと地球は戦争状態だ。しばらくはオーブの船も監禁状態だろう。予想より長く宇宙に滞在することになりそうだと、リークとトールが内心ぼやいていると、ミーアたちと入れ替わる形で見知った顔がドッグの桟橋へと入ってきた。

 

「イザーク?」

 

「貴様らぁ!一体これはどういう事だ!」

 

開口一番に声を荒げると、イザークはするりとリークの前に着地してそのまま正装姿のリークの胸ぐらを掴み上げた。

 

「ちょっ、ちょっと待って!何だっていうんだ、いきなり!」

 

「それはこっちのセリフだ!俺達は今無茶苦茶忙しいってのに、評議会に呼び出されて何かと思って来てみれば貴様らの護衛監視だとぉ!?」

 

「護衛監視?」

 

「何でこの俺がそんな仕事の為に、前線から呼び戻されなきゃならん!」

 

「ちょっと待ってくれ、護衛監視?」

 

ギャーギャーと喚くイザークの言ってる言葉の意味が、リークとトールにはよくわからなかった。すると後から降りてきたディアッカとニコルが不思議そうな顔をして首を傾げた。

 

「え、外出を希望してんだろ?」

 

「ディアッカ。俺たちはそんなもの出してないぞ」

 

「議長護衛の任務を終えたから、このままオーブに帰還する手筈だが…」

 

リークたちの任務はデュランダル議長を無事にプラントに送り届けることにある。本当ならばヒメラギの整備や補給を受けたのち、さっさと地球圏へと帰還したいところだ。

 

それに、こちらがこのアプリリウス市に到着したのはほんの少し前だ。数日滞在しているならまだしも、到着したばかりのこちらがプラントへ外出申請をする暇など無い。

 

そう答えると、ニコルとディアッカは顔を見合わせてから、不自然なリークたちへの配慮に思考を巡らせる。

 

「まぁ、こんな時期だから、いくら友好国の人間でも、プラント内をウロウロはしてほしくないんだろうよ」

 

「それは聞いている。だが誰か同行者が付くとは」

 

「難しい立場なんですよ、貴方たちは。いくら傭兵企業とはいえ、最大の出資者はオーブとユーラシアとブルーコスモスなのですから」

 

「ま、事情を知ってる誰かが仕組んだってことだよな」

 

その〝誰か〟はわからないけど、と続けたディアッカに、リークとトールは顔をしかめた。あまりにも手際が良すぎて不気味だ。考えられるのは護衛対象であるデュランダル議長の配慮なのかもしれないが、状況が状況だ。両手を上げて喜んでプラント観光などできる状態でも無い。

 

そんな二人の疑念を知ってか知らずか、イザークは不機嫌そうな顔をしたまま二人へと問いかけた。

 

「フン!ついでだ。貴様らどこか行きたいところはあるか?」

 

「本当にイザークはツンデレですね」

 

「うるさい!せっかく俺たちが警護につくんだ!これですぐに帰りますなんて認められるか!」

 

正直にいえば、イザークたちとゆっくり話せる時間はここ数年存在しなかった。リークにとっても、トールにとっても、目の前の三人は戦友であり友だ。オーブでの生活やシンとの訓練のことで話したいことは山ほどある。

 

だが、その前にリークとトールによぎった場所があった。

 

「たしかに、行きたいところはある…PJ達の墓に」

 

その言葉に、高慢そうだったイザークの顔つきが真剣なものへと変わった。彼も彼で、プラントを守るために散っていった者たちへ思うことがあるのだろう。

 

「あまり来られないからな。だから行っておきたい」

 

共に戦った戦友を弔うために。それはリークが所属しているメビウスライダー隊で必ず行う〝儀式〟だったからだ。

 

ゲイルが戦死した時も、リークが行方不明になった時も、そしてトールの師であるアイザック・ボルドマンが戦死したときも。

 

死んだ仲間たちを悼むことをリークたちは辞めなかった。それは変わらない。今までも。そしてこれからも。

 

 

 

 

////

 

 

 

「そうか、やはり大西洋連邦は…」

 

「ええ、表向きはオーブが今回どちら側なのかをはっきりさせたい思惑が見えます」

 

「敵か、味方か。戦争となれば、複雑な外交努力よりもそちらの方がよほどわかりすいと言ったものだな」

 

オーブ、ヤラフェス島にある医療施設の個室。そこで入院しているウズミは、現代表であるホムラから度重なる会議で垣間見たそれぞれの思惑を話し合っていた。

 

「お父様!私は同盟には反対です!伯父様が言ったように、大西洋はすでに核を持ち出したのですよ!?」

 

その場に同席したカガリは、自身の思いを素直にウズミへとぶつける。大西洋連邦のやり方はあまりにも無理やりすぎる。まだユニウスセブンの痛みから立ち直ってもいないと言うのに、事を急げばその先に待つのは破滅だ。

 

「しかし、氏族たちの言い分もある。事はそう簡単には進まん。それに私は病床の身…ホムラや、お前たちの進めるオーブの在り方に口を出すことは…いや、そもそも、前大戦で私が指揮をとったことが間違いでもあるのかもしれんな」

 

そう遠い目をしていうウズミに、カガリは言葉を無くす。たしかに、前大戦でオーブは国土であるオノゴロを焼くこととなった。

 

いくら民間人の犠牲者が少なかろうと、そこで戦争行為が起こったという過去が、セイラン家をはじめとする多くの氏族たちに不安と恐怖を植え付けているのだろう。

 

「結局、どちらとも手を取り合わず外交を進めた結果、オノゴロを焼き、プラントにオーブの技術を拡散させてしまった責任はあろう。ウナトたちにとって、その轍を踏むまいという思いがあるのだろう」

 

「しかしお父様!このまま大西洋と条約を結べば、オーブ軍の派遣や、技術供与を迫ってくるのは明白です!戦争を加速させるわけには」

 

「そのためにも、暴走する大西洋を収める必要はあろう。ユーラシアの有権者や、ブルーコスモス側にもすでにアプローチはかけておる。この二年間に費やした融和への努力は、決して無駄ではない」

 

あの杜撰な大戦から多くを学んだ自分たちは、二度とあのような過ちを犯さないために、さまざまな手段と方法を用いてプラントとの融和を進めてきた。国を焼かず、戦わず、そして話し合いで解決できる道筋を作ることが、ウズミやカガリの目標であり、理想でもあった。

 

「大西洋を抑える手立てはあるのですか?」

 

ホムラの問いに、ウズミは蓄えた髭を緩やかに撫でながら言葉を紡ぐ。

 

「ナチュラル主義を掲げる彼らだが、アズラエル財団を抱えるブルーコスモスや、MSの生産数で上回るユーラシアが反戦へと切り替えれば、ジリ貧になるのは彼らだ。外堀から埋めて、彼らの戦争行為を抑圧するしかあるまい」

 

大西洋連邦とはいえ、一連邦がザフトと戦争行為を続けるにも限界はある。MSを潤沢に生産できるユーラシアや、それをバックアップするブルーコスモスからそっぽを向かれれば、大国といえどその懐情勢は厳しいものになるだろう。

 

そんな中で、カガリは過去の事を思い返しながら不安げな目で父へと訴えた。

 

「もし、ブルーコスモスやユーラシアが、大西洋に協力的になったら…」

 

アーモリーワン、ユニウスセブンで遭遇した敵は明らかに地球側。あれが大西洋連邦だけの力とはまだ断定できない。ハルバートン閣下や、アズラエル理事が助力してくれる環境があるからこそ、今の融和も進めることができた。

 

もし、そんな二人が属する大国と組織が、コーディネーターに牙を向けたとなれば…。

 

「…その時は、我々も覚悟をせねばなるまい」

 

ウズミはその壮麗な声でカガリを見据えて答える。彼のいう覚悟を想像して、カガリはオーブが再び戦場になる未来を予想した。

 

そうなる前に、今度は止めてみせる。

 

父に見えないように手を握りしめたカガリは、これから向かって来る波乱の世界を前に、そう心に誓うのだった。

 

 

 

 

 

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