ガンダムSEED Destiny 白き流星の双子   作:紅乃 晴@小説アカ

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第3話 舞い降りる剣

「カガリ!急いで!」

 

爆音、衝撃。

 

アーモリーワンコロニーの全てが揺れているような感覚。士官の誘導に従って建物の筋を走るカガリたち。すぐ後ろでは、カオスによって倉庫が撃ち抜かれ、中にあった弾薬の誘爆が始まっていた。

 

襲いかかる衝撃から、アレックスとキラは護衛する二人を庇うように守り、足を止めずに進み続ける。

 

ふと、キラは何かを感じ取った。ざわりとする何か。この感覚はーーーパイロットの時も感じる…何だ?

 

「キラ?どうしたの?」

 

立ち止まったキラに、フレイとカガリたちも止まる。前方を誘導していた士官たちはかまわずにシェルターへの道筋を駆けていく。

 

ざわり。

 

ダメだ。そのまま行ってはーーだめだ!!

 

「ダメだ!そっちはーー」

 

キラが声を上げたと同時に、それは倒れた。アビスに破壊されたジンが倒れ、その倒壊に先頭を走っていた士官たちが巻き込まれたのだ。咄嗟にキラたちは開けられているハンガーへと入り、押し寄せる粉塵や爆風から身を守る。

 

「くっそぉ!!」

 

「フレイ!こっちに!」

 

とにかく今は外が危険だ。このハンガーも襲撃される可能性はあるが、爆炎と熱反応にさらされる外よりは幾分かマシだ。

 

「キラ…」

 

「君を傷つけたら、サイに会わせる顔がないよ!」

 

「そんなこと言ってる場合か!?」

 

大事だからだよ!とカガリからのツッコミに反論するキラ。そんな二人を置いておき、アスランは辺りを見渡しながら、引っかかっている言葉を紡いだ。

 

「けど、なんでこんなことが…おそらく、ザラ派の過激派かーーあるいは…」

 

「地球軍?」

 

キラが考えを読んだように答える。たしかに、今力を取り戻しつつある大西洋連邦のあり方は危険すぎる。復興の仕方が無理やりなのだ。地球圏の軍事に傾きすぎているせいで、もっと大切な体制や経済性が損なわれるほどに。

 

もし、大西洋連邦が以前のようにブルーコスモスの思想に傾倒し、暴走するような行為に走ったとしたなら…。

 

「可能性は捨てきれないな…くっ」

 

「とにかく、ここにいるのは危険だ…どうする?」

 

心配そうに言うカガリの言い分も最もだ。ここに居ては、いずれあの三機の攻撃に晒されることになる。通信機を取り出してみるが、ジャマーが張り巡らされているのか、通信は遮断されていた。

 

敵はかなり入念な準備をしてきているらしい。

 

「ラリーさんたちが来るまでは…」

 

「キラ、アレで行けるか?」

 

手を拱いてるキラに、カガリがハンガーを指差した。そこにあるのは二機のモビルスーツ。特徴的なジンやゲイツのモノアイを受け継いだ、ザフトの次期モビルスーツ、ザクウォーリアだ。

 

「ザフトの新型量産機…?けど、構成が違いすぎると思うけど…」

 

乗れないことはないだろう。だが、オーブのものや、アレックスが乗っていた頃のザフト軍機とはかなり変更が掛けられているはずだ。起動手順のマニュアルすらわからない状態で、どこまで出来るか…。

 

「ちょっと待って、これなら何とかなるかも」

 

キラとアレックスがそう思っていたら、いつのまにか上着を脱いで髪の毛を軽く結い上げたフレイが、鎮座しているザクウォーリアの足元へと歩いて行っていた。

 

「たぶん…ここら…へんっと!!」

 

キラやアレックスたちの視線を他所に、フレイは脚部の装甲を手探りで探りながら、声と合わせてバンッと拳で叩く。すると装甲の一部が開いた。フレイは振り向くと二人に向かって無言で親指を立てた。

 

ビジネスカバンからお気に入りの作業用手袋と、最低限の工具、そして愛用している端末を取り出す。フレイは慣れた手つきで開いた装甲からカバーを取り出し、コネクターカバーを外しーーさらに分解作業に入っていく。

 

「フ、フレイ。いつもそれ持ってるの?」

 

「万能なのよ?これ。線番さえ間違えなければ」

 

高級そうなハンカチの上にばらしたパーツを丁寧に並べるフレイは、露出した配線コネクタへ愛用の端末の通信用コネクタを順番に差し込んでいく。

 

すると、端末が息吹を上げて、ザクウォーリアのCPUとの同期を始めた。

 

「この通りっと!ーーふむ、凄いわねこれ。かなりフォーマット化されてる。けど、基本レイヤーは一緒…構成も…よし、これならキラたちでも大丈夫だと思う」

 

ついでに機体のオプションに保存されているマニュアルと操作機能をまとめた資料も引っ張り出すと、フレイは役目を終えた部品を元通りに手早く修復していく。

 

その後ろ姿を見ながら、アレックスは引きつった笑みを浮かべていた。

 

「なんとかなるかも…」

 

「凄いな、彼女…」

 

キラの呆気に取られた顔とアレックスの顔を見比べて、カガリは「わかってないなあ」と肩をすくめた。

 

「オーブ1のメカニックと言っても過言じゃないからな」

 

「1番はハリーさんよ。ほらハッチ空いたからさっさと乗る!!」

 

いつの間にかハッチを開くスイッチと昇降ウィンチまで下ろしたフレイが、手を叩きながら呆然とするキラとアレックスに早く乗るよう促した。

 

「すっかりいつもの彼女だなぁ…フレイは僕が」

 

「あ、ああ、カガリ。いくぞ!!」

 

そう言って二人は別れると、それぞれ引っ張り出されたウィンチに捕まってコクピットに乗り込んで行くのだった。

 

 

////

 

 

 

《インパルス、発進スタンバイ。パイロットはコアスプレンダーへ!》

 

新造艦ミネルバでは、新たなセカンドステージの機体が発艦するための準備が進められていた。コアになる戦闘機に乗り込んだパイロットは、機体を起動させ、発進準備を整えていく。

 

《モジュールはソードを選択。シルエットハンガー2号を解放します。シルエットフライヤー射出スタンバイ!》

 

巨大なプラットホームが稼働し、解放されたハッチから武装が搬出されてくる。この機体は、奪取された機体とは違い、ミネルバでの運用を専用に作り上げられたものだ。

 

《プラットホームのセットを完了。中央カタパルトオンライン。気密シャッターを閉鎖します。発進区画、非常要員は待機して下さい》

 

専用機とあって、ミネルバのプラットホームの全てが連動して稼働しており、各武装が配置されたと同時に、コアの戦闘機ーーコアスプレンダーが迫り上がっていくプラットホームによって発進位置へ運ばれていく。

 

《中央カタパルト発進位置にリフトオフします。コアスプレイダー全システムオンライン。発進シークエンスを開始します》

 

艦船用ドッグに座するミネルバの中央ハッチが開いていく。その中で、コアスプレンダーに乗るパイロットは眼前に広がる箱庭の世界を見据えた。

 

《ハッチ開放。射出システムのエンゲージを確認。カタパルト推力正常。進路クリアー。コアスプレイダー、発進、どうぞ!》

 

スロットルを上げて、射出滑走路から飛び立っていくコアスプレンダー。その後に続いて次々と武装機も飛び立っていく。

 

《カタパルトエンゲージ。シルエットフライヤー、チェストフライヤー、レッグフライヤー射出、どうぞ!》

 

閉鎖的な空へと打ち上げられた歪な影は、それぞれが高速度を保って飛んでいく。行く先は遠くからでもわかるーー湾岸のザフト軍基地だ。

 

 

////

 

 

時を同じくして、13番港口に停泊していたオーブ製の輸送艦も動き始めていた。後部ハッチが開き、一機の〝モビルアーマー〟が姿を表す。

 

《シン!わかってるとは思うけど、コロニー内では発砲は厳禁よ!そのために装備を変えてるんだからね!》

 

無重力内でインカム越しにパイロットへ通信を送るのは、現れた機体の整備を担う技師、ハリー・グリンフィールドだ。彼女が言う通り、機体にはビーム兵装や無反動砲などは搭載されておらず、替わりに機体下部に大剣型近接兵器、「シュベルトゲベールⅡ」が懸架されている。

 

「わかってます!グリンフィールド技師!シン・アスカ、発進いけます!」

 

コクピットで準備を進めるシンは、事態の緊急性が高かったため、ノーマルスーツは着用せず、大急ぎで帰ってきた私服姿のまま乗り込んでいた。頭部を保護するために、オーブ製のヘルメットだけを被り、機体のセッティングを終えていく。

 

その隣では、元アークエンジェルのメカニックだったコジロー・マードックがもう一機のモビルアーマーのハッチを解放していく。

 

そのコクピットでは、シンの上官であり師匠にもあたるラリー・レイレナードがセッティングと機体の調整を続けていた。

 

「シン!コロニー内では俺たちの機体は不利だ!キラのストライカーのOSが書き換えが終われば、俺も出る!!」

 

迫り上がった機体は、本来ならキラの専用機だが、当人が緊急事態に巻き込まれているため、急遽ラリー自身のデータに変更されることになった。機体OSと駆動制御パラメータの変更に時間がかかるため、シンが先行して出撃することになる。

 

《トールは僕とキラくんたちの救助を!ザフト軍から装甲車は貸してもらえる!》

 

《わかりました!シン!無理はするなよ!》

 

港口では、ザフト軍からの通信で要人救出を行うことになったリークと共に、この隊のメンバーの一人であるトール・ケーニヒも準備を進めている。

 

トールとリークが乗る機体は宙域専用機であり、大気が存在するアーモリーワンを長時間飛行するには向かない仕様となっているため、正体不明の敵に手一杯なザフト軍の替わりに二人はキラたちの救出へ向かう手筈となる。

 

「わかってます、ケーニヒ教官!リニアレール、蓄電キャパシタ、確認!」

 

簡易的なリニアレールの射出機に電磁パルスが蓄電されていく。この港を管理するプラント側からもシンの元へ通信が届いた。

 

《メビウス・ストライカーへ。議長からの命だ。特別に発進を許可する!》

 

「了解!メビウス・ストライカー、シン・アスカ、行きます!!」

 

すでに旧型と揶揄される地球連合軍のモビルアーマー〝メビウス〟。

 

数多の伝説を宿したその名を冠したシンの機体は、リニアレールによって打ち上げられると、スラスターに火を灯してアーモリーワン内部に繋がるトンネルへと突入していくのだった。

 

 

////

 

 

《接触回線で聞こえてるね?データリンク構成するから、そのままに。キラ、お願い》

 

起動した二機のザクウォーリア。片側に乗るキラは、フレイの指示通り、アレックスが乗るザクの肩を通した接触回線を繋げたままザクの機体データを素早く更新させていく。

 

「フィッティング完了、ナブコムリンク、CCD再設定、データフィールド形成、システムオンライン。行けるよ、アスラン」

 

OSの最適化を行ったキラは、そのデータをアレックスーーーもとい、アスランにも送る。大まかな機体の動かし方と、キラとアスランの動きについてこれるデータには更新できたはずだ。

 

「キラ、俺のことはアレックスだと」

 

「こんな状況じゃ仕方ないでしょ?カガリを傷つけるわけにもいかないからね」

 

変なところで頑固な親友にキラは笑みを浮かべながら言葉を告げる。そう言われたアスランは、どこか真剣な表情のままキラの言葉に頷いた。

 

「わかってる。俺の身に代えてでもーーー」

 

「お前!またそういう!!」

 

なにかと自己犠牲で解決しようとするアスランの悪い癖だ。それを隣で聞くカガリが黙ってあるわけがないだろうに…。取っ組み合いを始めそうな勢いでまくし立てるカガリを宥めるように、キラは通信を再び繋いだ。

 

「あーもうはいはい。フレイ、しっかりつかまっておいてね?」

 

そう言って隣に捕まっているフレイを見上げる。彼女はまるで心配してないようにキラへ柔らかく笑みを向けた。

 

「ふふ、守ってくれるんでしょ?」

 

「当然っ!」

 

ハンガーの扉をこじ開けて出た二人。

 

とにかく、今は一刻も早くここから逃げるべきだ。なるべく敵に見つからず、気取られぬようにしなければーー。

 

そう思って開けたハンガーの扉の前には…。

 

「キラ!正面だ!」

 

『ーーーなに?コイツら』

 

ステラのガイアが待ち構えていた。

 

「散開!!」

 

急に現れた二機のザクに向かってステラは躊躇いなくビームを放ったが、キラの一声でアスランと揃って二手に分かれる。

 

ステラがアスランへ狙いを向けようとした瞬間に、キラは機体を前進させて肩に備わるシールドを前へ突き出すように体当たりを打ち込んだ。

 

『くっーーこいつ!!』

 

『なんだ?動ける機体が居たのかよ!』

 

倒れたステラに気がついたのはアウルのアビスだ。胸部と両肩に備わるビーム兵装を展開するが、それを見てすぐにアスランも行動を起こす。

 

「甘い!」

 

最適化されたザクを巧みに動かしながら、スペック上有利なはずのアビスを翻弄していくアスランのザク。

 

『ちぃ、こいつ!!動きが違う!!』

 

「機体の慣熟もできていないが…!ええい!!」

 

シールド内部に備わるビームアックスを引き抜き、動きに対応できていないアビスへ接近戦を仕掛ける。

 

見つかった以上、ここで相手の機動力を奪わなければ、追われて撃ち抜かれてジ・エンドになる可能性が高い。

 

「逃げ回れば、死にはしない!」

 

接近戦を嫌がってビームを放つアウルだが、その尽くを躱していくアスラン。

 

「アスラン!!このぉ!!」

 

ビームで釘付けにしようとしたアビスの元へ飛び込んだキラは、同じくビームアックスを引き抜いてアビスと交差を重ねていく。

 

『ちぃい!なんなんだよ、お前らぁぁあ!!』

 

『やぁあああ!!』

 

復帰したステラのガイアも加わって応戦するが、攻めきれずにいる。いや、守りに徹したら削ぎ落とされそうな息苦しさまで感じた。

 

情報では、式典に向けた配置だからこそ、優秀なパイロットは少ないと言う打算的な策でもあった。

 

しかし、相手ニ機はとんでもなく速い。

 

本当にスペックはこちらが上回っているのか?機体性能すら物ともしない技量の壁が、ステラたちとキラたちの間に横たわっている。

 

その戦いを観測したスティングは、ある話を思い返していた。

 

〝メビウスライダー隊〟

 

かつての戦いで多くの伝説を残した幻の部隊。スティングもそんな与太話などと切り捨てようと考えていた。

 

だが、今の状況がそれを否応なく刺激する。スティングやアウルの中で、これまでにないほどの危機的警鐘が鳴り響いてる。

 

『こいつら、戦い慣れしてる!!』

 

アウルの操るアビスが繰り出すビームを避け、さらにはビームアックスでガイアのビームを切り払うザクを見て、背筋がゾッと凍った。

 

「奴ら、どこの所属なんだ?」

 

三人の動きや戦い方を観察しながら、アスランは思考を張り巡らせる。動きからして地球軍かザラ派かを判別できると思っていたが、相手も相応の手練れと言える。

 

攻めきれないのはアスランやキラも同じだった。それに、こっちはカガリとフレイがいる。無茶な動きができない以上、戦いを長引かせるわけにもいかないーー!!

 

「ちぃい、このままじゃ!!」

 

「ーーアスラン!上だ!」

 

キラが声を上げる。すると、アスランとキラのザクの頭上を一機の戦闘機が飛び去っていった。

 

『なんだ!?』

 

『新しい…機体…!?』

 

スティングたちも驚愕する中、飛び上がった戦闘機は変形し、後続に続いていた影とドッキングしていく。

 

「コアスプレンダー、ドッキング。機体状況、良好」

 

空中で分離機から合体するなど、聞いたことがない。

 

胴体部と脚部がドッキングすると、背面に武装パッケージが組み付けられ、フェイズシフト装甲のように、灰色の機体が色味を帯びていく。

 

「インパルス、レイ・ザ・バレル…敵機を撃退する!!」

 

人型となった新しい機影。その真正面から、アーモリーワン内部に侵入した〝メビウス〟が居た。

 

「キラさん!アスランさん!」

 

コクピットのスロットルを引くシンは、操縦桿を横へ捻り、グッと引き絞る。

 

「くっそぉおお!!やめろぉおお!お前ら!!」

 

メビウスの形を模していた機体は、駆動モーターの音を唸らせ、機体の姿を即座に変えていった。両翼のフレキシブルスラスターから脚部が分離し、胴体部から迫り上がった頭部と腕部が現れ、機体はモビルアーマー形態から、人型へと変形を果たす。

 

『可変機?見たこともないタイプだ…!!』

 

頭上を過ぎ去り、合体した機体も、シンが操る機体も、近接格闘兵器を携えて降下し、アスランとキラのザクの前へと降り立った。

 

「やっと作り上げた礎を再び壊すというのか、貴様たちは!!」

 

「また戦争がしたいのかよ!!アンタたちは!!」

 

MMI-710 エクスカリバー レーザー対艦刀を地面に叩きつけるインパルスの中で、レイ・ザ・バレルは怒りに満ちた顔でアビスを睨みつける。

 

15.78m対艦刀 シュベルトゲベールⅡを携えてガイアの前に降り立ったオーブの誇る技術で作り上げた可変機、〝メビウス・ストライカー〟の中で、シン・アスカも混迷する状況に怒りを抱く。

 

意図せず巡り合った二つの軌跡はーーーまだ見ぬ宇宙へと飛び立っていく。

 

 

 

 

 


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