ガンダムSEED Destiny 白き流星の双子   作:紅乃 晴@小説アカ

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第2話 ガンダム奪取

 

 

アーモリーワン、ザフト軍基地。

6番ハンガー。

 

翌日の新型新造艦に合わせて調整が進められている新型機が、その中に眠っていた。

 

オーブからの技術者移住や、ザフトにおけるフリーダムやジャスティスなどの「ファーストステージ」の技術がフィードバックされた機体として開発されたものであり、先の大戦後締結されたユニウスセブン条約後に、ザフトが開発した試作MS群「セカンドステージシリーズ」。

 

それは、フリーダムやジャスティスといったファーストステージ機を引き継ぎ、同時代の量産機を凌駕する性能を有している。

 

新造艦の進水式に合わせて、ザフト軍の新たな機体系譜の始まりを告げる機体たちであった三機はーーーこの日を境にその運命を一変させていく。

 

「さて行くぞ、仕事の時間だ」

 

進水式という大きなイベント。警備が手薄になるこのタイミングを見計らってザフト軍の基地と、このハンガー内に忍び込んだ三人は、先に侵入していたスパイ達と共に動き始めた。

 

「な、なんだ!?貴様たち…がっ!?」

 

コーディネーターと同等か、それ以上の身体能力を発揮しつつ、ザフトの兵士を一掃していく彼ら。

 

先ほどまで街中で可憐に踊っていた少女も、無機質な表情のままで手に持ったコンバットナイフを振りかざす。

 

「はぁあああ!!」

 

全く対応出来なかった整備員やパイロットを血祭りに上げていく。三人のうちの一人が、手に持った小銃でザフト兵を貫きながら、別の場所を掃討するもう一人の仲間へ声をかける。

 

「アウル!上だ!」

 

スティング・オークレーの言葉に、笑みを絶やさぬまま背面へ銃を放つアウル・ニーダ。

 

「うわぁ!」

 

最後に残った兵士の首根を切り裂いたステラ・ルーシェ。

 

三人は血の海になったハンガーの中で、一息つくと、すぐに行動を開始する。

 

「スティング!」

 

「よし!いくぞ!」

 

他のスパイたちが周辺を警戒してる間に、スティングたちはハンガー内に横たわる三機のモビルスーツへ乗り込んでいく。

 

「OK、情報通り」

 

事前に知らされていた情報と同じパネルへ指を走らせる。凄まじい速さでインターロックや、防護壁のデータを書き換えながら、三人は機体を起動させた。

 

「いいよ」

 

最後にステラの乗り込んだ機体が起動すると、灰色の機体に電力が迸り、鮮やかな色が配色されていく。

 

「反応スタート。パワーフロー良好。全兵装アクティブ。オールウェポンズ、フリー」

 

ありがたいことに武装もセットで置いてくれているではないか。アウルはニヤリと笑みを浮かべて武装を装備し、機体を立ち上がらせた。

 

「システム、戦闘ステータスで起動」

 

その高揚感に、三人はまるで無垢な子供のような顔をして機体を歩み出させていく。そんな彼らの足元。致命傷を負いながらもなんとかコンソールパネルにたどり着いたザフト兵が、非常用のスイッチを叩いた。

 

ハンガー内に警告音が響く。だが、もう遅い。

 

撃鉄は起こされたのだ。

 

スティングはコクピットの中で高らかな笑い声をあげる。

 

「ふふふ、あはははは!さぁ、ぶっ壊そうじゃねぇか。こんな嘘にまみれた世界を!!」

 

宇宙に浮かぶ空気が詰まった袋だ。それを破裂させたらどうなるか?その姿を想像しただけで、彼らの笑いは止まらないものとなっていくーー。

 

さぁ、始めよう。全てを元に戻す戦いを…!!

 

 

////

 

 

「警報!?なんだ!?」

 

行政区から基地内の視察へ訪れていたカガリたちにも、その警告音は聞こえていた。穏やかに基地を案内してくれていた係のものや、同行していた議長の顔色が変わる。

 

「カガリ!!」

 

「アレックス!!」

 

すぐさまカガリの護衛としてアレックスが彼女の前へ。フレイの横にはキラが付いて辺りへくまなく意識を張り巡らせた。

 

「閉めろ!早く!!」

 

「六番ハンガーだと!?」

 

誰かの声が響いた瞬間、それを上回る爆音が軍基地に響いた。地鳴りと衝撃で、カガリが思わず腰を落としてしまう。

 

事が起こったハンガーは、不運なことにキラたちがいるすぐ側のハンガーだった。爆煙の中から姿を現した三機のモビルスーツをみて、ザフト兵が悲鳴のような声を上げる。

 

「カオス!ガイア!アビスも!?」

 

可変機として開発されたザフトの新型モビルスーツ。その三機が突如として起動し、ザフト軍を攻撃し始めたのだ。

 

『まずハンガーを潰す。モビルスーツが出てくるぞ!アウル、付いてこい!ステラ!お前は左だ』

 

『了解了解!』

 

『解った』

 

カオスに乗るスティングの指示を聞いて、三人は動き始める。光の極光がまだ何も対応出来ていないザフト軍のハンガーやコンテナ、起動前のモビルスーツを次々と穿ち、爆炎が辺りに広がった。

 

「新型!?何が起こっている!!」

 

建物の影から見える機体。無抵抗なザフトの基地をビームで好き放題破壊していく様子を見ながら、アレックスはカガリを抱きしめながら憤慨したように叫ぶ。

 

「強奪されたのか…!?ここはプラントなのに!!」

 

「まさか、ザラ派が!?」

 

キラとフレイも思考を巡らせるが、こうも混乱状態になると状況は不明瞭だ。あの機体に乗っているのが誰であれ、ここがいきなり一級危険地帯になったことに変わりはない。

 

《ええい!発進急げ!六番ハンガーの新型だ!何者かに強奪された!モビルスーツを出せ!取り押さえるんだ!》

 

その通信を聞いて、キラが身を乗り出した瞬間、すぐ目の前をカオスが過ぎ去っていく。モビルスーツの重量音が響き、キラは冷や汗を流しながら、空を見上げて呟いた。

 

「新型…あれは!ーーーガンダム!?」

 

驚きを隠せないキラたちへ、護衛を連れたデュランダルが歩み寄ってくる。

 

「お二人をシェルターへ!急がせろ!」

 

手早く指示を出すと、後ろに控えていた数名の士官たちがカガリやフレイの前へと出て、最寄りのシェルターへの道を進んでいく。

 

「こちらへ!」

 

「わかっている!!アレックス!緊急信号は!!」

 

ザフト兵の指示に従いながら、爆音と轟音が響く中でカガリはアレックスへ問いかけると、彼もわかっているように通信端末を片付けながら頷いた。

 

「出してる!三人も動いてるはずだ!」

 

「なんとしても抑えるんだ!ミネルバにも応援を頼め!」

 

目の前で軍関係者へ指示を出すデュランダルとすれ違う。その時に、カガリは声をつないだ。

 

「議長!13番港から出てくる機体は撃つなと伝えろ!いいな!!」

 

呆気に取られる議長の返事も聞かずに、カガリはアレックスやキラたちと共にシェルターへの道を急いだ。

 

「議長?」

 

「ーー司令部に連絡。13番港から発進した機体には進路を優先しろ。異論は認めん」

 

その議長の言葉に、士官は敬礼で答えて通信官と共に戦場と化した工場内へ駆け出していく。議長は幾人かの護衛に囲まれながら、小さく笑みを浮かべた。

 

「ーー彼らが来ているのか…そうか」

 

これもまた、運命なのかもしれんな。

 

 

////

 

 

「グラディス艦長!」

 

ミネルバのブリッジへ上がった女性艦長に、副官は頼りなさげな声で問いかける。彼女は間髪入れずに答えた。

 

「アーサー!緊急事態よ!インパルスを発進させて!」

 

インパルスーーそしてストライカー。

 

二人の運命もまた、大きく動き始めようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 


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