ガンダムSEED Destiny 白き流星の双子   作:紅乃 晴@小説アカ

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書きたいことが多すぎてシナリオがぐだってるので、近々シナリオを大きくまとめてテンポをあげようと思ってますだから仕事を落ち着かせるんだよぉ!!!

みんな大好きトンネル回だよ!!ハートマーク


第69話 ローエングリン砲を撃て! 1

 

 

《全機、通信は聞こえてるな?高度制限。指定高度をそれぞれのHUDに表示している。その高度より上には行くなよ?敵のレーダーに捕まるからな》

 

ガルナハン。

 

東ユーラシア共和国コーカサス州の州都で、カスピ海に面した都市であるそこは切り立った渓谷を沿うような道筋の先に位置する天然の要塞であった。四方を渓谷に囲まれるその都市に、大規模な軍事拠点を展開した大西洋連邦。

 

複雑に入り組んだ渓谷内の谷間を、警戒線ギリギリを縫うように飛ぶ戦闘機の編隊がいた。

 

「突入口はあれか?狭ぇな畜生!」

 

《文句はあとでいくらでも聞いてやる、ライトニング1。君たちの任務は渓谷内の坑道に突入し、ガルナハン・ローエングリンゲートの裏側を取ることだ。少々狭い道だが、君たちには問題はあるまい》

 

バブルキャノピーを模した半天周囲モニターに目的の入り口を捕らえたラリーは息を飲む。明らかに旧世代の炭鉱へと至るための坑道は、打ちっぱなしの板でできた扉で塞がれていたようで、今は老朽化して扉も朽ち果てている。その瓦礫を抜きにしても、一眼見た入り口はあまりにも小さかった。

 

「言ってくれるな、ニック!帰ったら飯の一つでも奢れってんだ!」

 

《最高のディナーと勝利の美酒を用意しておこう。作戦エリアだ。無線封鎖!各員、次におしゃべりができるのはゲートを開いてからになる。健闘を祈るぞ》

 

「シン、レイ!聞いた通りだ!後ろから離れるなよ!トールと俺で道を切り開く!しっかりとついてこい!!」

 

先頭を飛ぶラリーのスピアヘッドに続き、トールのストライクワイバーン、そしてシンのエクスカリバーと続き、最後尾はレイのコアスプレンダーとインパルスの各ブロックが与えられたデータを元に追従している。歪な戦闘機編隊であるが、目的はハッキリとしている。まずは目の前の針の穴のような坑道へと飛び込む他ない。

 

「了解!」

 

「よっしゃあ!!しっかりナビゲーションしろよ、アスラン!!」

 

「りょ、了解した!!」

 

何故俺がラリーの後部座席に…。そんな嘆きの言葉を何度呟いたか分からないアスランは、右へ左へと旋回する戦闘機の中でグッと堪えながらモニター画面を見つめていた。アスランの役目はラリーが採取したデータを高速で処理し、後続するシンとレイへマッピングデータをリンクさせることだ。

 

トール?彼はラリーの後ろを付いていくから何も問題ない。

 

それより自分の心配だ。はたして自分の身体はラリーの全開機動に耐えれるのだろうか?前大戦から目にしていたトンデモ機動などされたらひとたまりもない。リークとトールは何事もないような顔をしてるし、真っ青な顔でキラに助けを求めたら死んだ目と張り付いた笑顔でサムズアップをしてきたし、カガリに至ってはハウメアの御守り追加配布があったほどだ。

 

ああ、もう目の前に真っ暗な穴が迫ってきている。アスランは心の中で「もし死んだら父に会えますように」と十字を切ってコクピットシートに身を委ねた。

 

「全機、突入!!突入!!」

 

ラリーは声一閃と共に、四機とフライヤー群が高速で坑道の中へと突入した。途端、内部を見たシンが悲鳴のような声を上げる。

 

「なんだよこりゃ!真っ暗ぁ!?くっそー!まじデータだけが頼りかよ!」

 

「よろよろ飛ぶなよ、シン!!気を抜いたら坑道の壁に引っかかって吹っ飛ばされるかな!!」

 

「簡単に言わないでください!!」

 

翼端が何かに引っかかって甲高い音を響かせる。その音にゾッと背筋を凍らせながらも、シンは先頭のラリー機から送られてくるマッピングデータを即座に確認しながら軌道を修正する。

 

「シン!レイ!機体を傾けろ!」

 

前方を飛ぶトールのストライクワイバーンが鋭く機体を傾ける。それに習ってすぐに機体をロールさせると、崩落した坑道の一部がすぐ脇を過ぎ去っていった。

 

(マジかよ!?あんなの見えてるのか!?ケーニッヒ教官は!?)

 

姿勢を変えなければ片翼が潰されていただろう。シンは小さく息を吐いて強張った体の緊張を外へと追い出した。

 

「とにかく落ち着いて飛べ!俺のなぞったラインを飛べばとりあえずは死なん!!」

 

「くっそー!!やってやるぜ畜生ーっ!!」

 

不穏なワードがコクピット内に響く。シンのヤケクソ地味た声が坑道の中にこだまし、その声に負けない速度でラリーたちは目的の場所へと飛行するのだった。

 

 

 

////

 

 

 

「アスランの機体がない?」

 

「そっ。エクスカリバーはあくまで試験機よ。そんな交換パーツがほいほいあるわけないじゃない。ビームライフルや武装ならまだしも、肩からすっぱり切られたら手の施しようがないわ」

 

ことの発端は出撃前の時間へと遡る。

 

喧騒と怒号、そしてメカニックチーフであるマードックとフレイの指示があたりにこだましているアークエンジェルの格納庫内で、ハリーは訪れたキラとアスランに簡潔に伝えた。

 

親指で後ろを差す先には、アストレイの予備機とスカイグラスパーの予備が転がっているだけで、ハリーが弄ってるのはオーブから持ち込んだ〝新型機〟の骨格フレームだ。

 

上手くいけばジブラルタルでこの骨格フレームの外側を搬入できる手筈になっているので、ハリーはメンテナンスチームから離れ、少数のスタッフと共にバラしていたこの機体の面倒を見ている最中だ。

 

つまり、アスランが乗れる機体を出すと言うなら奥にあるアストレイかスカイグラスパーしかないということになる。

 

「すまない、ハリー技師」

 

「隠し腕とはやられたわ。悔しさ半分、けど無事に戻ってこれるのがエースの仕事なのよ」

 

じゃ私は仕事あるから、そう言ってハリーは手動用クレーンのチェーンを引っ張り作業を再開する、クレーンの吊り上げ先を見ると、そこにはコクピットシートを含んだ制御ユニットが骨格フレームへと組み付けられようとしている最中だった。

 

「キラ、今回はハリー技師の正座説教はないんだな…?」

 

「あはは、あれはほら…無茶をしたりするとだから。アスランの操縦は丁寧だから、ね?」

 

さっきまでシンがフレイに、ラリーがハリーに正座説教を受ける様子を見ていたアスランも、同じようになると身構えていたが、フレイもハリーも特にアスランを責めることはなかった。無茶をしたことでカガリには心底怒られはしたが。

 

「無茶苦茶な操縦が普通だと思ってる段階で俺も相当感覚がぶっ壊れてるだろうな」

 

「それは弁明の言葉もないね」

 

乾いた笑いで返すキラを見て、アスランは自分の親友がもう手に負えないところまで毒されてる事実からそっと目を逸らした。

 

「けど、パイロットを余らせておく余裕がありますかね?ガルナハンに進撃も間近でしょ?」

 

そんな二人の様子を見ながら、作業着の袖を腕まくりをしたマードックが困ったような顔でいう。たしかにアークエンジェルも近々、大西洋連邦が陣取るガルナハンへの進撃作戦に加わるようオーダーがあったのだ。ハリネズミのような天然要塞を突破するために優秀なパイロットを遊ばせている余裕などコチラにはない。

 

そう言うマードックへ身の丈ほどある工具を肩に担ぐフレイが得意げな顔で答えた。

 

「だから、戦闘機の複座っていうもんがあるんでしょ?マードックさん」

 

「…はい?」

 

フレイの言葉に首を傾げるマードック。その先にあるアスランは背筋に悪寒を感じるのだった。

 

 

 

////

 

 

 

諸君、ミッションを説明しよう。

 

今回の作戦は、ガルナハンの火力プラントに展開する大西洋連邦軍の撃退だ。

 

大西洋連邦の思惑は、制圧したスエズを拠点に一気にこのマハムールとその先にあるジブラルタル基地を叩きたいはずだ。だが今はそれが思うように出来ない。理由は我々が今いる、このユーラシア西側にある。

 

インド洋、そしてジブラルタルがザフト軍の勢力圏である現在、大陸からスエズまで地域の防衛権の安定は、大西洋連邦にとっては絶対となる。この地域をザフトと大西洋連邦が取り合おうと睨み合ってるのが今の状況だ。

 

マハムール基地司令からの情報によれば、連中はガルナハンの火力プラントを中心に、かなり強引に一大橋頭堡を築いているらしい。

 

ザフトを牽制するついでにユーラシアの抵抗運動にも睨みを利かせて、かろうじてこのスエズまでのラインの確保を図っているという感じだ。

 

故に、ここを叩く。

 

おそらくガルナハン基地は、インド洋の前哨基地のようなものだ。規模は比べ物にならないが。となると、多くの民間人も徴用されていることになる。基地など施設への攻撃は原則禁止。我々の任務は対空武装、及び敵MSの撃破が優先だ。

 

それに大西洋連邦にいいように扱われているユーラシアも一枚岩ではない。懐柔された本部隊から離脱したハルバートン派の兵士たちで構成される抵抗勢力軍もある。だが、ユーラシア中央からの攻撃に曝され南下もままならずと、かなり悲惨な状況だ。

 

大西洋連邦の連中だって、ガルナハンの拠点を落とせば不味くなることを解っている。となれば、そう簡単にはやらせてはくれない。

 

ザフトの勢力圏からガルナハンへアプローチできるのは唯一この渓谷となるが、当然向こうもそれを見越しており、まるでハリネズミのような防衛網を築き上げている。

 

特にここ。

 

ぼた山から周囲を見渡せる箇所。そこにローエングリン砲を設置し、さらに周りに陽電子リフレクターを装備した化け物のようなモビルアーマーまで配置しているようだ。オーブ近海で君たちが撃破したアレだ。

 

マハムール基地が一個大隊を投入したようだが、成果は凄惨たるものだったようだ。

 

そこを突破しない限り、我々はすんなりジブラルタルへも行けはしないと言うことになる。

 

我々がガルナハンを落とせばスエズへのラインは分断でき、抵抗勢力軍の支援にもなって間接的にでも地球軍に打撃を与えることが出来るということだ。

 

抵抗勢力との合流もある。彼らを味方につければユーラシア首都の奪還にも力を貸してくれるはずだ。

 

まったく、俺たちにそんな道作りをさせようだなんて、一体どこの狸が考えた作戦だろうな。まぁ、こっちもそれが仕事と言えば仕事だ。

 

目下の問題となるのは、渓谷の攻略だが…ひとつ案があるようだ。

 

どうやら〝秘密の抜け穴〟というやつがあるようだ。現地協力者からの提供で得られたデータがこれだ。

 

要約すれば、この断崖の向こうに街があり、その更に奥に火力プラントがある。

 

こちら側からこの街にアプローチ可能なラインは、一本だけだ。敵の陽電子砲台はこの高台に設置されており、渓谷全体をカバーしていて何処へ行こうが敵射程内に入り、隠れられる場所はない。

 

超長距離射撃で敵の砲台、もしくはその下の壁面を狙おうとしても、ここにはモビルスーツの他にも陽電子リフレクターを装備したモビルアーマーが配備されており、有効打撃は望めない

 

そこで今回の作戦だが…

 

 

 

////

 

 

「ここに本当に地元の人もあまり知らない坑道がある。ちょうど砲台の下、すぐそばに抜けてて、今、出口は塞がっちゃっているけどちょっと爆破すれば抜けられる———って、あの嬢ちゃんは簡単に言ってたけどなぁ!!」

 

暗闇の中、寸分先すら見えない状況の中、ラリーは機体を反転させて障害物を避けては、更に姿勢をロールさせて狭い通路の隙間を飛ぶ。

 

「…っはぁ!!これはぁ、アルテミスの中より狭いぞ!!絶対に!!」

 

ライトで明かりは灯しているものの、手元にあるのは現地協力者と名乗った少女から渡された坑道データと、ほんの数十メートル先に写る景色だけだ。

 

坑道データも最新のものとは言えず、崩落した箇所や、老朽化して迫り出した鉄骨などもある。

 

その全てを先頭を飛ぶラリーが採取し、得られたデータを後部座席に乗るアスランが高速で処理し、後続のシンとレイへと伝達する。

 

まさに神業的な作戦だ。なんて無茶なことを、とアスランは作戦を聞かされた時は卒倒しそうになったが、ラリーの後ろに乗って改めて彼の異常さを目の当たりにした気分だった。

 

(こんな真っ暗な中を、ほんとにデータのみで飛んでいるのか!?それもこの速度で!?)

 

モニターに映るのは、旧坑道データから立体化されたデータ情報のみであり、少しでも違いを見落とせば鉄骨や崩落した岩に機体が激突しかなねない。今の巡航速度でぶつかればラリーも自分も死は免れないだろう。だが、そんな状況でもラリーの手が狂うことはなかった。

 

飛び込んでくる障害物を華麗な旋回と機動で避けて、避けて、避け続ける。まるで全てが見通せているような風に。突如とした回避挙動をとる暴れ馬とかした機体の中、アスランは奥歯を食いしばりながら吹き飛びそうな意識をなんとか食い止めていた。

 

ふと、後ろを見る。

 

データリンクしていないトールが背後にピッタリとくっ付いているのが見えて、アスランはこのとんでも挙動について深く考えることをやめた。

 

「アスラン!!ナビゲーションはできてるな!?」

 

「だ、大丈夫だ!!戦術データリンクには展開している!!」

 

「キラたちがうまくやってくれたらいいけどな!!しかし暗ぇな!!クソが!!」

 

翼端が何かに接触する音が聞こえ、気が遠くなるアスランを他所に機体は安定していた。縦横無尽に飛んでいることを除けばだが。

 

「レイ!!しっかりついてこい!!気を抜いたらマジで死ぬぞ!?」

 

「わかってる!!だから話しかけるな!!」

 

「うおおお!!出口まで飛べぇーー!!」

 

スロットルを開けるラリーのスピアヘッドに続くように、編隊は坑道の中を進む。HUDには、目標コースの三分の一がクリアされたと表記されており、アスランはただ得られたデータを最適化して伝える装置と化すのだった。

 

 

 

 

 

 

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