ガンダムSEED Destiny 白き流星の双子   作:紅乃 晴@小説アカ

76 / 79

お待たせしました。




第70話 ローエングリン砲を撃て! 2

 

 

「間も無くポイントBです!!」

 

「対モビルスーツ戦闘用意。ラミアス艦長、予定通りに。ミネルバはデズモンド、バグリィーの前に出る」

 

ガルナハン。

 

ラリーたち、メビウスライダー隊による敵の虚を突く突入作戦が進む中、ローエングリン砲を守護する敵の大部隊の目を惹きつけるため、マハムール基地から共同で作戦参加する陸上艦を引き連れたミネルバとアークエンジェルが前面からの攻撃を開始しようとしていた。

 

地球軍のローエングリン砲を守護するMS部隊と、化物のような6本足のMAもすでにザフト部隊を捕捉している。

 

「シウス、トリスタン、イゾルデ起動!ランチャーワン、セブン、1番から5番、全門パルジファル装填!」

 

「対モビルスーツ戦闘用意!イーゲルシュテルン起動!ミサイル信管、1番から18番へコリントス装填!ゴットフリート、起動!」

 

「敵はまだ遠いが、エリアに入ればあっという間に陽電子砲の射程圏内だと言うことを忘れるな!頼むわよ!」

 

各艦からもMS隊は出撃済みだった。残ったキラやリーク、そしてミネルバのハイネのセイバー、ムウのエイドストライクは地上戦を想定してフライトパックを装備している。

 

作戦の第一段階、目標は迫る敵部隊の数を少しでも減らすことだ。そこで、こちらの最大火力であるミネルバとアークエンジェルの出番となる。

 

「タンホイザー起動!照準の際には射線軸後方に留意。街を吹き飛ばさないでよ。モビルアーマーを前面に誘い出す!」

 

「ローエングリン照準、敵モビルスーツ群!フライマニ兵装バンク、コンタクト。出力定格、セーフティー解除!」

 

タリアとマリュー指揮のもと、二つの陽電子砲の標準が迫り来るウィンダムとダガーで構成された敵部隊へと狙いが定められた。

 

『敵戦艦二隻、陽電子砲発射態勢。モビルスーツ隊、ターゲットにされています!』

 

『リフレクター展開!前へ出ろ!弾き飛ばしてやる!!」』

 

「陽電子砲攻撃、てぇー!!」

 

臨界を迎えて打ち出された二つの青と赤の閃光はMS部隊へと伸びたが、その射線上にゲルズゲーが飛び込む。展開した強力なリフレクターは、理論的には陽電子砲を弾き返すのではなく、その力を分散し相殺することにある。二隻の陽電子砲を受け止めたと言うのに、ゲルズゲーの異様なシルエットが崩れることはなかった。

 

「くっそぉー!やっぱり敵の守備は硬いな!」

 

「キラくん!僕らの役目は陽電子砲を守る敵部隊を引きつけることだ。なるべく暴れて、目立って、今頃トンネルを突き進んでるラリーたちの活路を開くよ!」

 

「了解です!」

 

ハイネの悔しげな声が響く中、リークの的確な指示に従って二機の戦闘機形態のムラサメ・エクスカリバーが敵陣へと突入する。ゲルズゲーは出力を使い切ったのか、リフレクターの再チャージのためか、地上へと降下し後退気味だ。その後をハイネとムウが追いかけてゆく。

 

「リークもすっかり隊長が板についてきたんじゃないの?こりゃあ俺の後任も安泰だねぇ。こんな戦争、さっさと終わらせて引退したいもんさ!」

 

「まだ老け込むには早いですよ、ムウさん。これから子育てが忙しくなるんですから!」

 

「うわぁ、生意気!わーってるよ!」

 

リフレクターのチャージが終わっていないゲルズゲーの頭上に、ムウは降下しながらビームサーベルを投擲。ハイネと合わせて回転するビームサーベルへライフルを放った。ビームコンヒューズでリフレクターユニットへダメージを与える。太平洋で会敵したザムザザーに対してとった同じ戦法だ。

 

雨のように降り注ぐビームの雨にたじろぐゲルズゲーに、もう片方のビームサーベルを抜くエイドストライクと、両手にビームサーベルを構えたセイバーが懐へと潜り込む。

 

「ふん!自分等も陽電子砲を以て上空と地上から揺さ振ろうという腹か。狙いは悪くないがな。だが貴様には盾がない。ローエングリン照準!目標、上空敵戦艦!例の部隊も働かせろよ!」

 

「敵砲台、本艦に照準!」

 

「機関最大!降下!躱して!」

 

敵MS部隊を抑えてる最中、ローエングリン砲から感知された高エネルギー反応。足が速いミネルバとアークエンジェルは即座に射線から退避できたが、陸上艦は放たれたエネルギーの放流から逃げられず、その形を溶解させていった。

 

「ちぃい!相手は撃ち放題!こっちは敵を引きつけにゃならん!敵はとっ散らかってる!!」

 

「マリューさん!このままじゃダメです!」

 

「ゴットフリート照準!これ以上、あの厄介な砲台を使わせるわけにはいきません!」

 

「ランチャー1、パルシファル、てぇーっ!」

 

MS部隊を引きつけても、結局はローエングリン砲をどうにかしなければジリ貧になる。今は避けられたが、次、さらに次の照射となると、ミネルバもアークエンジェルも避けることは困難となっていくことになる。

 

背後から襲いかかってきたウィンダム数機を数秒で達磨にするキラだが、追加と言わんばかりに更にウィンダム部隊のビームが降り注ぐ。前に出ようにも敵の守りが手厚い。

 

「パワーの再チャージ急げ!ゲルズゲーを戻せ!ええい!たかが数機のMS部隊になにをやっている!!」

 

総崩れになったザフトの陸上艦。艦載機だったMS隊にウィンダムの編隊が襲いかかるのを見たキラが追撃のために機体を翻そうとしたとき、メビウスライダー隊のAWACSである「オービット」のオペレーター、ニックが声を上げた。

 

《不味い!オービットより各機に通達!新手だ!》

 

「キラくん!!」

 

リークの声にハッとキラが頭上を見上げると、ウィンダムやダガーと比べると、異質な形をしたMSのシルエットが空から降ってきた。

 

『見つけたぞ、流星部隊!』

 

 

 

 

////

 

 

 

 

激戦となっているローエングリン砲の麓での戦いの最中、真っ暗な廃坑の中を飛ぶラリーたちは出口である目標の目前まで迫っていた。

 

「各機!生きて付いてきてるな!?目標はすぐそこだぞ!」

 

「掠った!今何か掠った!」

 

ラリーの声と同時に、シンのエクスカリバーの翼端に甲高い金属音が響く。坑道は入り口よりも更に狭くなっているように思えた。暗闇で視界は最悪、頼りなるのは現地住人から渡されたデータと、ラリーの後部座席で吐きそうになりながらマッピングしているアスランからのデータだけだ。

 

「おう!元気そうだな!シン!!レイ!!」

 

ついにストレスと切れそうな集中力を維持するために叫び始めたシンに、トールは面白がって声をかけた。シンたちにとってはそれどころではない。崩れた岩盤を縫うように機体を振り回すが、一歩間違えれば墜落は免れない。

 

なんで先頭を飛ぶ二人はあんなに余裕なんだ!?通信機越しに昼飯の話とかしてるんですけど!?

 

「何をやってる!シン・アスカ!敵への攻撃はもう始まってるんだぞ!」

 

「わかってるよ、レイ!だから急いでるんだろ!?」

 

「ひょろひょろ飛んでると壁面とキスする羽目になるぞ!!しっかり付いてこい!!」

 

「 「やってますよ!!」 」

 

トールの尻を叩くような言葉に、シンとレイの声が重なる。工程はすでに90パーセントを超えている。もうゴールは目と鼻の先だ。ガルナハン基地の真下に位置する坑道には、頭上で繰り広げられるMS同士の戦闘音が響き、それはまるで地獄の叫び声のような音を奏でていた。

 

「上の音が大きくなってきたな!?アスラン!」

 

「話しかけないでくれ!他のことを意識すると計算が狂う!」

 

後部座席に座るアスランは、ラリーの意味不明な軌道と迫り来る障害物、それをギリギリのラインでクリアする飛行の全てをシャットアウトするかのように、マッピングとデータの計算をする機械へと様変わりしていた。瞳はハイライトを失っているが、SEEDを発現しているのか、単にハイライトが仕事をしていないのかは判断することができなかった。

 

「おう!すまんな!!」

 

「ゴールだ!距離は500!…前方に障害物!」

 

アスランの声と、渡されたデータが一致する。目の前には硬く閉ざされた坑道の出口があった。話では単に入口を閉められているだけらしいが、地球軍がコンクリート詰めにしている危険もある。

 

「ああ、だろうな!〝前にも〟経験済みだ!!通せんぼしている壁を、ミサイルでこじ開ける!」

 

それを加味して、ラリーのスピアヘッドMarkIIの翼に備わるミサイルは貫通力を備えたものが搭載されていた。高速で飛行する機体から打ち出されたミサイルは、閉ざされた坑道の入り口へと突き刺さる。一次炸裂から、内包されたタングステン弾頭による二重衝撃は、簡単に閉ざされていた扉をこじ開ける。

 

チリと残骸の埃が機体を細かく叩く。爆煙を突き抜けると、そこには岩肌と青空、そしてローエングリン砲の根元の施設が見えた。

 

「よぉし!抜けた!各機、散開!ここから先すぐに目標のローエングリン砲が…」

 

何もかも計画通りだ。ただ、相違点があったとしたら…。

 

 

 

『あはっ、ダーリン…みぃいつけた❤︎』

 

 

スラッグキャノンをこちらに構えたヴァルキュリアCと、不穏な声を吐く女性が響いていることだけだった。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。