俺は海が嫌いだ。
別に海自体が嫌いなわけではない。
ただそこにいく生物、人間が嫌いだ。
それは、海軍そして今海を支配している「深海棲艦」こいつらは俺からなにもかも奪おうとしてくる。
少し俺の過去の話をしようと思う。
俺は海の近くの居酒屋に生まれ、そこでそこそこ裕福な家庭環境で中学まで過ごした。
俺が高校生になる時、世界に「深海棲艦」が現れた。
多くの国の船が無差別に攻撃を受け沈んだ、シーレーンは一か月もしないうちに遮断され物流も悪くなった。
その沈んだ船の中に海外へ行っていた俺の親父が乗った船もあった。
親父の死亡報告は役所からハガキで届いた。母は親父が死んだ事を聞かされた時、酷く落ち込んでいたが母は決して涙を見せなかった。
俺はこの時、母に楽をしてもらうために対深海棲艦用に新たに創設された「海軍」「陸軍」のどちらかに入隊する事を強く誓った。
このころに海軍は新たに「艦娘」という兵器を使い出した。
そして俺が高校を卒業し、海軍に入隊しようとしていた時期に事は起こった。
俺が住んでいる町に空襲警報が鳴り響いた。町は騒然となり俺は急いで身支度をし、母と一緒に逃げた。外では対空砲が必死に敵機を落とさんと火を吹いている。
防空壕まで後少しというところで、突然爆発が起こった。俺はその衝撃て倒れ頭を強く打ち気絶した。
目が覚めた時は病院のベッドの上だった。近くに母がいないので看護師に聞いてみた。そしたら
「貴方のお母様は爆発の時、破片が直撃して・・・」
正直信じたくなかった。後少しで親孝行ができたのに。だが母の死を聞いても不思議と涙は出てこなかった。同時にあの爆発は艦娘が放った砲弾によるものだと知った。
俺は艦娘を怨んだそして海軍も恨んだ。病院を退院してから俺は陸軍に志願した。
正直、陸軍はこの戦争の主役ではない。役割といっても治安維持や町の対空砲の操作などで後は海軍がほとんどを担っていた。
だが陸軍には「憲兵」という仕事がある。これになれば海軍のアホどもを捕まえる事ができるから俺はこれになると決意した。
それから陸軍学校に入学し、四年間必死に訓練などに励んだ。
そして本日卒業をし、無事憲兵になることができたのだが、、、
「本日から貴様を憲兵長に任命する」
「」
憲兵になりたての俺は新米だけで新たに作られた横須賀憲兵所に勤めることになった。まあ、國のためと思えば苦しくは無いと思う。
「ここか・・・」
俺は目の前にある白い建物を見て呟く。少人数の部隊のはずだが目の前の建物は軽く100人は入れるくらいの大きさだ。
「まあ、中に入るかな」
俺の部下となる人も後からくる予定だから先に見学をしようと思う。ちなみに俺は少尉らしい。
「・・・広い・・・」
広い。とにかく広い。全ての部屋を回るのにざっと30分は使ったぞ。
「・・さて、約束の時間になったわけだが・・」
部署の前には誰一人としていない。軍学校で教えられた時間厳守の精神は何処へ消えた。おい。
だいたい20人くらいの部隊と聞いていたが誰一人とこないのは異常事態だ。
上に電話をしてみる。
「・・私一人だけですか・・?」
どうやらくる予定だった20人は昨日、こことは別の場所へ配属されたそうだ。
どうやら町一つが深海棲艦によって破壊されたらしい、その為にくる予定だった者を治安維持および復興作業に向かわせたらしい。
つまりここは俺一人で切り盛りをせねばならないという事態になった。
「・・どうしてこうなった・・」
分からない、何もわからない。俺は配属一日もないひよっ子だ、ここには書類もないし、依頼されている要人護衛任務などもない。
とりあえず大本営に電話をかけてみる。
「憲兵の仕事のことなのですが、横須賀憲兵所に出されている仕事などはありますでしょうか?」
「私の手元には何もないな」
「そうですか、お忙しい中大変失礼しました。」
「ハッハッハッそう硬くなるな、君は一人でそこを切り盛りするみたいじゃないか。」
「私一人でも憲兵の名を汚さないようにしていく所存でございます。」
「うむ。いい意気込みだ。また、分からないことがあったら連絡を入れてくれ。」
「はっ、失礼します。」
初めて憲兵の上の人と話したけど凄く緊張したぞ。ヤバい「憲兵の名を汚さないよう」とか言ってしまった。どうしよう。
「・・・まだ3時か・・・」
今日は色々と疲れた。早めに寝るとするか?そのように考えているとチャイムが鳴った。
「・・来客か・・お茶とかまだ出せないけどどうしよう・・」
仕方ない自分用に持ってきた数十秒でお湯が沸くポットを使うか。
ガチャとドアを開けるとそこにはふてぶてしい白い制服を着た若そうな男が立っていた。コイツは提督というものなのだろう。
「何用でしょうか?提督殿」
「君がこの辺唯一の憲兵だね。」
「ごもっともですが」
「僕はこの近くにある横須賀鎮守府の提督だよ。階級は少尉だ、確か君も・・」
「私も少尉だ。」
なんだ?この海坊主は、俺と同じ階級?というか憲兵が少尉っておかしくないか?(知識不足)
「貴様の噂も色々と聞いている、確か横須賀の守護神だとか。」
「やめてよ、そう呼ぶ人もいるけど僕の功績は全部艦娘達がいたおかげだよ。」
「艦娘とはお前の後ろにいる小さい奴か。」
「そうそう、ほら朝潮この方に挨拶を」
朝潮と呼ばれた少女は提督の後ろから出て俺の右前に立った。
「朝潮型駆逐艦一番艦、朝潮です。」
こいつは駆逐艦?とやらなのか、まったくわからん。
あれか、軽戦車みたいな立ち位置なのか。
「いつからこの国は幼子を戦場に出すようになってしまったのか・・・」
「少なくとも僕は彼女達を死なせるようなことはしないよ。」
それはどうだか、人は守りたいもの程早く失うからな。俺もそうだ。
「朝潮といったか、貴様に問おう。」
「はい、何でしょうか。」
「貴様は守るべきものを殺したことはあるか?」
「?」
この反応・・朝潮は違うみたいだな、もし俺の母を殺した奴なら首を切り落としてやろうか。
「無いならそれでいい。」
「話は終わったかな?」
「すまない、少し時間を取ってしまって。」
「いや、いいよいいよ今日は暇だったから。」
海の奴らは「暇」があるのか、まあ俺も今は暇を持て余しているんだがな。
「守護神様にも暇な時があるんだな。」
「だから、守護神じゃないって...」
そのとき横須賀に警報音が鳴り響いた。
その音は聞いたことがある。
「空襲警報...!」
「おっとお話はここまでみたいだね。」
「そうだな」
「それじゃあまた来るね、行くよ朝潮」
「はい」
さて、あいつらは行ってしまったし、俺は憲兵として、住民の避難誘導でもしよう。
〜〜〜仕事中〜〜〜
「ハァ…!ハァ…!」
だいぶ走ったがこれで全員の避難が完了か?
さっきから空爆が止まない、対空砲もあんまり撃っていないってことは、何個か陣地がやられたな。
「・・クソッ!陸軍は何も出来ないのか!・・」
近くにいた兵士が叫んでいる、仕方ない、これが陸軍だ海軍のような華のある仕事じゃない。ただの汚れ仕事。無力で情けなく下から見ているだけだ。
嘆いている兵士を横目に俺は憲兵所へと足を運ぶ。あそこは海が近いから守護神様の指揮ぶりが見れるかもしれんな。
「・・よし・・ついた。」
海の方では、たまに光ったりしている。艦娘とやらが砲撃しているみたいだな。少し、砂浜の方へ行ってみるか・・
砂浜まで来たが・・一人の女性が倒れている。いや、女性というか、そもそも人間なのか・・?なんか、額から二本のツノ?が生えているんだが。
「カチャ」
とりあえず抜刀して近づいてみる。
「・・ウ・・うゥ・・」
見た目は酷く怪我をしているように思える。コイツは確か「戦艦棲鬼」とかいう、深海棲艦だよな。前に資料を見たことがある。こんだけボロボロってことは沖にいる艦娘にやられた後のようだ。
「・・ゴクッ・・!」
今こいつを殺せば、恐らく陸軍でもしかしたら海軍からも勲章が貰えるかもしれんが、こいつを殺して勲章を取るか?
「・・うゥ・・ア・・」
「チッ!!」
本来なら敵だが今は負傷兵、それに相手は女子だ、ここで救わば男が廃る。憲兵所なら部屋の空きがクソほどある、下手に見つかる事は無いだろう。
軍刀を納刀して、戦艦棲鬼を抱える、こいつは思っていたほど重くはなくどちらかといえば軽い方だった。
憲兵所との距離なさほど無いので誰かに見つかる心配はなかった。
「とりあえず運んだが・・」
深海棲艦って人間用の医療品で治るもんなのか?ここは憲兵所だから医療品は高級なやつだが…正直なところ身体の
造りが違うから効くかどうか分からんが…
「…ええい!南無三!!」
こうなるとヤケクソだ!これで死んだら海に返してやる!そして俺は腹を切る!
〜三時間後〜
「……よし……!」
最後の包帯を巻いたぞ、戦艦棲鬼の方は呼吸が整ってきたみたいだな。
「……さてと、寝ますかね……」
あまりにも疲れすぎた。初仕事が避難誘導と敵の治療、厳しい憲兵が聞いて呆れる。
「おやすみ」
一人きりの憲兵所だが、これからやっていけるのだろうか?こんな不安しか頭に無いが今日はベットで泥のように寝よう。