「……入るか」
「……ええ」
俺と千景は多くの人が寝静まった深夜に家に入り、鍵を締める。
何故こんなスニーキングミッションみたいな事をしているかと言うと糞親父に見つかったら面倒な事になることが確約されているからだ。
「ぐがー……」
ふすまの奥で糞親父は空になった酒瓶を持ったまま熟睡していた。
この感じを見る限り糞親父は俺たちを探すような事をしていないようだ。一応、親権を持っている糞親父だが、それを精神的な面で完全に放棄しているな。
……そろそろ行政に頼ろうかな。俺は別にどうでもいいけど千景が今後どうなるか分からないからな。
「……なに、これ……」
「どうかしたの………何だこりゃ……」
テレビゲームでもしようとしたのかテレビを点けた千景は絶句し、俺もその状況を見て絶句する。
映し出されていたのは……『白い何か』が人を襲っている映像だった。
普通じゃない。普通じゃなさすぎる。フィクションだと思いたかった。けど……あまりにも凄惨すぎる死体が、真実だと訴えてくる。
「……取り敢えず、寝ましょう」
「……ああ。」
俺と千景はテレビを切り、布団を取り出して寝る。
……出来れば、夢であることを願って。
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ピンポーン
明朝、家の中にインターホンの音が鳴り響く。
家の中には俺と千景がしかいない。千景は今は眠っている。糞親父は……どっかいった。もう数日も帰って来てないから死んでいて貰いたい。
「……誰だ」
扉の前に耳を押し付けて外の音を聞く。
……これは、鈴の音か?しゃんしゃんと言う音が聞こえる。
「どなたでしょうか」
「ここが、郡千景さんのご自宅ですか?」
入ってきたのは神主の服装を着た奇妙な仮面をつけた男が複数人だった。
あの糞親父じゃないぶんまだましか……?いや、それでもこいつらは怪しすぎる。
「それで、あんたらは誰だ?一応この家の人間だし、聞く権利はあると思うのだが?」
「……では、お話ししましょう」
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その話を聞いたとき、理解できなかった。
あの白い何かは『バーテックス』と呼ばれる人類を滅ぼそうとしてくる『天の神』の尖兵で、人類を守ろうとする『神樹様』という神がここ、四国を中心に壁を作り、そのバーテックスを殺すために人類の中から『勇者』を作り出した。そして、その勇者の一人が千景だった。
そして、神主みたいな奴等が立ち上げた『大社』という組織が千景を本部がある香川の学校に転入させるらしい。糞親父もそれを了承している。
あの千景が勇者か……。俺としては疑いたいところだけど……まぁ、千景がこの蔑まれることしかされないここから抜けだせれるのなら問題ないか。
「……千景、起きてるよな」
「……ええ。話も聞いたわ」
布団から千景は起き、俺の方に近づいてくる。
聞いていたなら話は早そうだ。
「私は、香川に行くわ。けど、一つ条件を加えさせて」
「……叶えられる範囲なら」
「彼を……焔天理を一緒に連れて行けないかしら?」
……はい?
いや、俺なら問題ないから千景は直ぐにでも香川に行ってこればいいのに。
「……可能ですが……何故ですか?」
「彼は……私の友達だから。ここにいたら……多分、取り返しのつかない事になりかねないから」
「……分かりました。編入先と住まいは変わりますが……よろしいでしょうか?」
「あぁ。構わない」
「それでは、準備をしますので少々お待ち下さい」
大社の人たちが荷物をトラックの中に詰め込んで行っている間に黒塗りの車に乗り込む。
まさか……こんな事態になるなんて予想できなかったよ。
「ありがとう、千景。俺はお前のお陰で助かった」
「……別に、礼はいいわよ。私だって、何時もあなたに助けてもらっているから」
「では、出発します」
引っ越し準備を整えた大社の人が車に乗り込み、発進する。
さて、どんな生活が待っているのだろうか。