「……夢か」
俺は大社に宛がわれた安い借家の中でベッドから起き、背を伸ばす。
……あれから、一年ほど経過した。
俺はあの日から千景とは会っていない。会おうとしても大社の奴等が妨害してくるからだ。
多分だけど、千景たちはあのバーテックスたちと闘うための訓練でもしているのだろう。勇者を除いてバーテックスに対抗できる武器を持っているのは……
「……ふぅ」
俺は手から火を出し、ベーコンを焼く。
こっちにきてから数日後、偶々足の小指がタンスの角にぶつかって腫れたときに腫れた部分から『火』がでてそれを癒したのだ。
その日から俺の体から『火』が、そして『炎』を生み出し、操ることが出来るようになったのだ。
「ま、今の使い方は料理くらいしかないけど」
結果として、ガス代が浮くため重宝している。
焼上がったベーコンを野菜と一緒に食パンに挟み、机の前にあるテレビを見ながら食べる。
……大社から情報操作されているせいか、勇者に対しては肯定的な内容ばかりだ。
勇者、といわれる前は極々普通の小学生だったんだぞ?こんなにも周りからのプレッシャーがあると……重圧から潰れる奴がいそうだ。
それに、多くの人が『勇者』と言う存在を知っていると言うことは勇者には完全に逃げ場は無いと言うことになる。前にはバーテックス……いや、『星屑』が。後ろには『一般市民』がいて押しても地獄、退いても地獄と言う有り様だ。
もし、勇者が誰かが死んだとき……こう言った奴等は飛んでもない速度で掌返しするんだろうな。こいつら、絶対に勇者に守ってもらうのは当たり前、何て考えが無意識にありそうだし。
「ちっ……」
朝からイライラするな……。
俺はテレビを切り、さっさと朝食を食べて中学に向かうことにした。
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「おっはよー!」
「おはよう、桐生。」
俺が中学で本を読んでいるとハイテンションな少女が入ってきた。
彼女の名前は
性格はとてもハイテンションで趣味は漫才を見ることという普通な女子……とは言えない趣味をしている。ファッションセンスは最悪で休日は基本的に『漫才王』という文字がでかでかと書かれたシャツを着用している。
俺自身はこいつをそこまで嫌ってはいないけどさ……うるさいからもう少し静かにして貰いたい。
「何読んでるん?」
「岩窟王」
「かー!まった難しい本を読んどんなー!」
俺が読んでいる本を見て内が面白いのか動は爆笑している。
ついでに言えば、こいつはエセ大阪弁を話している。何でも、漫才を見すぎて癖になってしまったらしい。
「てか、早く席に座れ。そろそろ授業だ」
「わかっとるっつーの」
頬を膨らませて座る動に呆れながら先生の話を聞く。
今日は……久々に外に出るか。
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「じゃあなー!」
「おう、またな」
俺と動は学校で別れ、俺は家に帰る。
時間的にも問題ないと思うけど……さっさと帰ろう。
「ふう……」
俺は家で動きやすいジャージに着替えると、海に出る。
海にはデカい白い壁が聳え立っている事がここからでも視認できる。何でも、神樹様が『バーテックス』が入らないように作ったものらしい。
「よっと」
近くの小舟に乗り込み、手から放出された炎で壁まで近づき、壁ギリギリのところで停泊させて空を飛んで壁の上にたつ。
俺が用があるのは……この向こうだ。