「ふんふーん。」
俺はのんびりと鼻歌を歌いながら朝食を作る。
今日は土曜日。学校がないからこうやってのんびりと朝食を作ることが出来る。
ピンポーン
「開いてるので勝手に入ってください。」
「では、失礼します。」
俺の借家に人が入ってきたのを感じながら、俺は何時でも炎を出せるようにする。
敵だったら……燃やせばいいし。
「……誰?」
「申し遅れました。私は鷲尾雛。大社に勤める者であり、巫女です。」
黒い髪を流し、大社の服なのか白い神官服を着ている女性が礼をする。
大社の『巫女』か……。勇者とは違って戦闘にはでないけど、神樹様から神託を貰ったりして勇者のサポートをするのが役割だった筈だ。
そんな高位の人間が俺の家に来ているんだ?
「何のようだ?態々近くを通ったから、何てふざけた事は言わないだろ?」
「ええ。内密にお話したいことがありまして。」
「……話してくれ。」
俺はカリカリに焼いたベーコンとスクランブルエッグをパンに挟み、食べながら雛の話を聞く。
さて、何を言われるのやら。
「……貴方は、長野にある『諏訪』と呼ばれる場所がある事を知っていますか?」
「名前だけな。」
「そこでは勇者に加護してもらいながら少数の人が生活をしています。」
勇者……?つまり、千景たちと同じような存在か。
「貴方には、そこに行って諏訪の人たちをこちらに避難させてください。」
……そういうからくりか。神樹様、あんたの目的は――――
「おおよそ神樹様の神託か?」
「……?はい、そうですが……。」
「要するに、俺に
どうやら、神樹様はこの一年間俺が外での活動を知っていたようだ。そして、俺の能力……『炎』を知った。
そして、神樹様は自分が操作できない力を警戒し、俺を消そうと企んだ、そう言った筋書きなんだろ?
「どうして、それを……!」
「予想が出来るからだ。まぁ、俺は確かに神様の能力を取り込んだっぽいからな。」
そして、この話を聞いて確信した。
俺はどうやら
恐らく、あの日……俺がランプを落としてこの炎を手に入れた時から。そりゃそうだ。
人間から逸脱し、神に近い存在……『現人神』。それが俺なんだろう。
「ま、そんな事はどうでもいい。」
「えっ?」
「受けてやるよ、その依頼。まぁ、時間は掛かるだろうけど。」
あまりにもあっさりと引き受けた俺に雛は動揺する。
失敬な。俺は一度も依頼を受けないなんて言ってないからな?
「取り敢えず、今日からいくから学校にも伝えてくれ。……頼むが、内密にな。病気で入院した、とかでいいから。」
「わ、わかりました。」
俺はジャージに着替え、リュックを背負って外に出る。
この中には四日分の食料と水分が入っている。これがつきる前に、諏訪までたどり着けるか……まぁ、試すしかないよな。