物語にはこれより前も後も存在しませんので、安心してお読みください。
あとがきに書かれているパンフレット内インタビューについても同様です。
全て、ジョーク記事のようなものです。
劇場版サモサマン~溢れ出すスパイスの涙~
「サモサオルタマンー!」
マシュとマスター、サモサマンを庇って攻撃を受けたサモサオルタマンに急いで駆け寄る。
「先輩! 見て下さい、サモサオルタマンの顔が……」
サモサオルタマンのサモサの装甲が剥がれ……サモサマンと同じサモサが表出していた。
しかし、その顔は随分と年老いて見えた。
「どういうことなんだ……サモサオルタマン!」
動揺したサモサマンが倒れている彼に声をかけると、息も絶え絶えな状態でサモサオルタマンは話しだした。
「みんな……落ち着いて聞いて欲しい……私はね、君たちとは別の世界からやってきた……かつて、サモサマンと呼ばれた若者だった」
遠くの方で、サモサオルタマンに攻撃を加えたハイパービッグカリが暴れている音が聞こえる……。
「私のいた世界はハイパービッグカリによって滅び……私だけ取り残された。
そんな未来をたどるのをもう見たくなくて、この世界にやってきて……君たち三人を助けていた……お節介だったかな?」
「そんなことありません! サモサオルタマンは素敵な大人でした……!」
マシュが涙を流しながら言葉を返す。
「ハイパービッグカリの正体を……サモサマンは知っているのだろう?」
「ああ、ハイパービッグカリの正体は……世界全ての人々の悪意だ……!」
張りつめた表情でサモサマンは頷いた。
『じゃあ、ハイパービッグカリを倒すには……』
「君の考えているとおりだよマスター君。
世界中の人々の心を変える必要がある。けれど、そんなことは不可能だ……不可能、だった。だから私はこの世界にやってきたんだ」
サモサオルタマンは傷だらけの体で立ち上がったが、崩れ落ちそうになってしまった。その体をサモサマンが支える。
「私のオルタのマイナスの力と、サモサマンのプラスの力を合わせて、ハイパービッグカリを地球上から引き剥がす。
そして、二人で宇宙の果てまで連れて行くんだ」
「ですが! そんなことをしたら……! お二人が!」
涙を流し続けるマシュの頬に、サモサマンが手を添えてそれを拭った。
「サモサマンとして未熟だった自分がここまでこれたのは、マシュ君、マスター君の二人のおかげだ。ありがとう!」
『サモサマン……』
「マシュ君と末永く幸せに!」
『……はい』
傷だらけのヒーローとマスターは握手をして、それから力強く頷いた。
「さようなら、二人とも」
「さよならだ! 二人とも!」
サモサマンとサモサオルタマンは輝きながらハイパービッグカリへ向かって飛んでいく。その姿をひび割れたビルの屋上から見送った。
「サモサマン! 私に合わせてくれ!」
「ああ!」
たった今、巨大電波塔を倒し、瓦礫を粉砕したハイパービッグカリに二人のヒーローは立ち向かう。
サモサオルタマンからオルタな光が、サモサマンからは眩い虹の光が溢れ出す。
「本来交わらぬ平行世界の力が!」
「捻れ混ざり! 未知なる可能性をここに生み出す!」
「希望の光!」「明日への灯火!」「誰かの笑顔!」「守りたい……命!」
「「ダブルサモサライトソード……ロード!!!!」
白と黒に光る光の剣がハイパービッグカリへ迫り、叩き切るのではなく鞭のように全身を拘束した。
「「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!!」
サモサマンの背中から片翼の白の光翼、サモサオルタマンの背中から片翼の黒の光翼が生え、怪獣の巨体を引きずりながら空へ上昇していく。
それはまさしく……光の剣で出来た道(ライトソードロード)、だった。
「グォォォォォ!!!!」
町を破壊していた巨大カリの体が浮かび上がり、どんどんと小さくなり、やがて見えなくなった。
──宇宙。
冷たい黒の空間に、カリを宇宙の果てに連れて行くべく二人のサモサマンはいた。
「ありがとうサモサマン、君のおかげで世界を救うことができた」
「いや、お礼を言うのは私のほうさ! ありがとうサモサオルタマン……」
後ろを振り返れば、地球が小さくなっていくのが見えた。
「どうしたんだい?」
「マスターとマシュ君に……もう二度と会えないかと思うと、寂しくて」
「……そう、だな。寂しいな」
「でも二人は大丈夫! もちろん、地球のみんなもね!」
ヒーローらしからぬ不器用な笑みをサモサマンは浮かべる。
「えっ……?!」
突然サモサマンの体が光に包まれ、サモサオルタマンのそばから離れていく。
「これは……!」
「サモサマン、君は、君だけは地球に帰るんだ。そうしなくちゃいけない」
「なぜだ! そんなことしたらあなたは……ひとりぼっちじゃないか……!」
サモサマンは両手で必死に空をかく。
「サモサマン、平行世界から来た私はね、ずっと世界から仲間外れだった。
でも、君達は私を仲間だと……同じ世界で生きる命だと言ってくれた……。
それだけで……長い時間一人で生きてきた私には十分だったんだ」
二人のヒーローの間にはもう埋められないほどの距離が出来ていた。
「さようなら、サモサマン。
私と同じでありながら、私とは違う未来を歩く者」
「だめだ! 私は諦めないぞ! サモサオルタ……もう一人のサモサマン!」
サモサオルタマンはハイパービッグカリと共に、冷たい宇宙の彼方へと去っていく。
「世界の悪意は私が連れて行く。
どうか、君達の未来に幸福ばかりがありますように」
「嫌だ! 君も幸せにならないとダメなんだ!
サモサマン! サモサマーン!!!!」
……かつてヒーローだった老人、サモサオルタマンは、青い地球に背を向けて飛んでいく。
その孤独な背に、若いヒーローは声をかけ続けた。
場所は変わり、地球。
マスターとマシュはヒーローの飛び去った水色の空を見上げていた。
「マスター……あれは……」
ヒーローの残した光が虹の帯となって、雲一つ無い空をたなびいていた。
『オーロラだ……それに……』
雪のように降りてきたふわふわのかたまりを手の上に乗せる。
「「スパイス……」」
サモサのヒーローがまとっていた魅力的なスパイスが、空から降り注いでいた。
「先輩、涙が……」
マシュに指摘されたマスターは手の甲で涙を拭う。
『これはスパイスが目に染みただけ。
悲しくないよ。だって二人は絶対に帰ってくるから』
「そうですね……きっと、絶対に」
崩壊した町に、淡雪のようなスパイスが降り注ぐ。
それはまるで、涙のように。
『マシュ! あれは……!』
オーロラとスパイス混ざる空から、誰かが降りてくる。
あまりにもその姿は見覚えがあって……。
『迎えに行こう! マシュ!』
「はい! 先輩!」
二人は瓦礫の中を笑顔で駆け出す。
涙とスパイスと、希望を抱きながら。
劇場版サモサマン~溢れ出すスパイスの涙~
終わり
パンフレット内、監督インタビュー抜粋
【監督】
元々サモサオルタって原作ゲームだと中ボスなんですよ。
しかも大量生産品。それが子ども心にずーっと引っかかってて。
その気持ちを抱いたまま、リメイク版アニメ、映画に関われたのはすごく幸運だって思います。
今回の映画化にあたりゲーム版の資料をいただいて、よく読み込んでいたら、理由が分かったんですよ。
【記者】
その理由とは?
【監督】
ゲームだと本来はサモサオルタにもう少しストーリーがあったんですけど、それが発売日の関係でがっつり削られて、ほとんどボツになっちゃってるんですね。
そのストーリーが凄く感動的で、これ実装されてたらゲームジャンル変わっていたんじゃないかと思うほど。
なので今回の映画にはそのボツ要素も少し盛り込ませていただきました。
あの頃疑問を抱いていた自分に贈る……って言うとかっこよくなりすぎかな。
【記者】
サモサオルタマンへの思い入れが強いんですね。
【監督】
んー……ですね。やっぱり。
リメイク版でがらりとサモサオルタの立ち位置を変えたことで、オリジナル版を見ていた大人の方も「んん? 自分の知ってるお話と違うぞ?」と感じていただけたら、嬉しいですね。
【記者】
サモサオルタ役の方には全てを……?
【監督】
はい。複雑な背景のキャラクターなので、全てを。
劇場版はリメイク版と地続きなので、リメイク版の一話収録の前にはストーリーラインを含めてお話ししていました。
彼のおかげでサモサオルタに確かな命が宿った……と感じています。
いやぁ……すごかった、彼の穏やかな声に確かに込められた悲しみに、胸をうたれてしまいました。
サモサマン役の方には、全部内緒で。収録も別撮りで。
だからラストの台本の読み合わせの時に凄く動揺されてた。でもそれも飲み込んで全てエネルギーに変えていて……やっぱりプロって凄いですね。
だからサモサマンとサモサオルタが同じ部屋で音撮ったの今回の映画が初めてなんですよ。