俺が金髪縦ロールと話をした少し後に始まった2時間目を含めた残りの授業が若干一名の犠牲を除けば無事に終わり、現在俺と一夏は人の減った放課後の教室で軽く話をしていた。
ちなみに、金髪縦ロールは途中の休み時間で一夏の方にも話しかけに行って何やら騒いでいたが、俺にはその後話しかけてくる事はなかった。
おそらく一夏との会話で俺の事なんてどうでも良くなったんだろう。
ちなみに、一夏と金髪縦ロールが話をしていた時、俺は自分の席で『篠ノ之箒』と『篠ノ之束』について調べていたので、その会話には参加しなかった。
「あ〜〜もうダメだ。俺、このまま3年も続けていける自信ない」
「まぁ、気持ちはわかるけど、そればっかりはどうしようもないだろうな」
「だよなー。あっ! そうだ。お前、なんで2時間目の時に手をあげてくれなかったんだよ!?」
ん? なんの事だ?
「2時間目って……あ〜他にわからない人はいないかって奴か?」
そう言いながら俺は、2時間目の時に授業内容を全く理解出来ていない一夏が、事前に配られていた参考書を捨てたと言って織斑先生に叩かれていた事を思い出す。
「そうだよ。お前だってほとんどわかって無いんだろ?」
「すまん一夏。俺、お前と違ってしっかり予習してたからの割と理解出来てた」
「はぁ、なんでだよ。というか、そんな事いつしてたんだよ!」
その一夏の問いに俺は淡々と応え始めた。
「俺さぁ、お前の家で厄介になってる間、基本ゴミ出しと風呂掃除くらいしかしてなかっただろ」
まぁ、偶に料理をやってたけど……
「あぁ、そうだったな」
「だからな、それ以外の時間が結構あったんだよ」
「まさか……その間に」
おっ! ようやく察したな。
「うん、予習してた」
「うわーマジかよ……ん? 待てよ。お前確かゴミ出し担当だったよな」
「ん? あぁ、そうだったよ。だから?」
なんなんだ?
「って事はだ。俺が参考書を捨てた事も知ってやがったな!」
あぁ、その事か。
「あぁ、知ってたよ。けどそれは、てっきりお前が、内容は完全に覚えたからもう要らねえよ。って事で捨てたんだと思ってそのまま捨てたんだよ」
「お前なぁ、そうゆう事は!!」
そう言って一夏がジワジワと近寄って来ようとした時、教室の扉が開きそこから山田先生が入って来た。
「あぁ、よかったお二人ともまだ帰って無かったんですね」
俺は山田先生に返事をすると、
「あぁ、山田先生。どうかなさったんですか? あと一夏、とりあえずその件は後回しだ」
と、一夏の前に左手を突き出した。
「あ、おう」
「実はですね、寮のお部屋が決まったのでそれをお知らせしようかと」
寮の部屋?
「あの、質問いいですか?」
「はい、なんですか? 織斑君」
「あの、俺達って1週間は自宅から通学するって話だったような……」
そう言って一夏は目で俺に、だよな。と聞いて来た。
俺は視線に気づくと、一夏に向かって軽く頷く。
すると山田先生は
「確かに、最初はその筈だったんですけど、お二人とも事情が事情ということで一時的な処置として、部屋割りを無理矢理変更したようです。……そのあたりの事政府から聞いてませんか?」
と最後だけ自信なさげに言って来た。
おい、政府仕事はしっかりしてくれ!
「……って事は、俺と蒼は同室って事で良いんですよね」
当たり前だろ。何言ってんだお前は……
「ええっと、実は織斑君と熊耳君の部屋は別々なんです」
すまん一夏。俺の方が間違っていたようだ。
その山田先生の言葉に一夏は食いついた。
「えっ、どうゆう事ですか!?」
「あわわぁ、す、すいません。実は、政府からの『貴重な男性操縦者を一塊にしてもしものことがあったらどうする』という一声で……」
成る程、もしもの場合に備えて、俺達を分けておけば1人に何かあってももう1人は助かるだろうって事か。
まぁ、仕事しない政府にしてはよく考えたな。
「わかりました。それで、まさかとは思いますが、俺達2人とも女子生徒と同じ部屋、なんて事は無いですよね」
そう質問する俺に対して、山田先生は申し訳なさそうに
「実はですねぇ……」
おいおい、まさか……
「すみません。お二人とも女子生徒と同じ部屋なんです」
と答えた。
マジかよ!? それは流石にどうかと思うぞ。
すると、それを聞いた一夏が驚きながら続けて質問する。
「えぇ!! もしかして、3年間ずっとですか!?」
「あっいえ、少なくとも今月末までには、お二人用の部屋が完成しますので、それまでですよ」
流石にそこまでわからない程のアホじゃ無いみたいだな。
「わかりました。それじゃ、俺達は今から家に戻って必要な物を持って来ます」
「その必要は無い」
その声と共に俺達の後ろからそこそこ膨らんだ鞄を2つ持って織斑先生が姿を表した。
織斑先生は俺達の近くまで来て立ち止まると、鞄を床に置いて、
「最低限の物として、着替えと携帯の充電器は入っている。他に必要な物は休日にでも取りに行け」
「あっ、はい千、織斑先生、わかりました」
「熊耳、お前の分はお前が使っていた部屋の中から適当に持って来たがそれで大丈夫か?」
「あぁ、はい。あの部屋にある着替えとかは全部俺のですから、それで大丈夫です」
とはいえ、休日には他に色々取りに行かないとな……
「そうか、ならいい」
織斑先生が頷くと、続けて山田先生が話し始めた。
「それでは、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は6時から7時の間に、一年制寮の食堂でとってください。ちなみに各部屋にシャワーが備え付けてあります。また、大浴場もありますが、各学年で使える時間が決まっていますので、今のところお二人が入る事は出来ません」
するとここで、隣のアホが
「えっ、なんでですか?」
アホな事を言い出しおった。
こいつ、少しは考えて発言してくれ。
「そうか、一夏。お前がそこまでオープンスケベだとは思っていなかったよ。そうかそうか、お前は女子と一緒に大浴場に入りたいのか」
ここで、ようやく自分の言った言葉の意味を理解した一夏が顔を赤くしながら
「あっ、いやそうゆう事じゃ無くてだな……」
と慌てだした。
さらに言えば、何故か山田先生も同じようになっていた。
「えぇ!? お、織斑君、女の子と一緒に入りたいんですか!! それは教師として流石に……」
「あっいえ、そんな事無いんです」
「えっ!? 女の子に興味が無いんですか!! それはそれで……」
「おいおい、マジかよ一夏。お前、そっちだったのか……」
そう言って俺が一夏から距離をとり始めると、
「あ、おい、待て蒼! 山田先生もさっきのはそうゆうのじゃ無くてですね……」
長引きそうだな。
俺はそのまま織斑先生に近いて
「織斑先生、そろそろ部屋に行きたいので、俺の部屋の鍵もらえますか?」
と声をかけた。
すると、織斑先生は俺の方をチラッと見てポケットから鍵を取り出して
「あぁ、間違えて別の部屋に入ったりするなよ。後が面倒だからな」
と言って俺に鍵を俺の手の平に落とした。
「わかってます。それじゃあ一夏、先に行ってるぞ」
「あっ、おい待てよ蒼」
後ろから聞こえるそんな声を無視して俺は自分の荷物を持って寮へと向かった。
あっ、そういえば一夏の部屋が何処か聞かの忘れてた。
まぁ、明日にでも聞けば良いか。
作者個人が友人から聞いた話なんですけど、年頃の男女の同室って、意外と大変なんですって。
それでは次も読んで頂けると嬉しいです。