隻腕の師匠と捨て子の弟子   作:銀髪っ娘にTS転生したいおじさん

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UA650超えてる…ありがとうございますやでほんま

なんか思いついたから書いたけど着地点が吹き飛んで見えなくなった…



番外編 筋肉 前半

ーーーこのバルバレに、武器を持たないハンターが来るらしいーーー

 

「そんな噂が広まってるんですよねー。師匠は何か聞いてますか?あ、これ向こうの棚の上に置いておきます」

 

そう尋ねながら手際よく荷物を片付けるのは栗色の髪に眼をした小柄な少年、レオンである。

 

そして師匠と呼ばれた人物は…

 

「ああ、私も少し聞いたことがあるよ。でもまあ所詮は噂だろうさ。人間の殴打が効くほどモンスターはヤワじゃないしね。ちょっとした武勇伝に尾ひれがついたんだろうさ。あ、そこのビンを2つほど取ってくれ」

 

冷静に分析しつつその噂を否定する。その発言をしたのは絹のような白髪と深海を思わせる群青の瞳を持つ天人族、リーフィールであった。

 

「ですよねー、さすがにありえない。おとぎ話や物語って言われても仕方ない感じがしますよ」

 

レオンは最近大型モンスターの狩猟に慣れ始めたばかりであったが、それでもモンスター達の強さを知ってる。故に、これは真実ではないと断言した。しかしその直後に大声が響き渡る。

 

「号外ーーー!!!!このバルバレに噂のステゴロハンターさんが来たぞーーー!!!!」

 

まさかこのタイミングで来るとは。だがちょうどいいといえばその通り、という事でどんな人か興味本位で見に行ったわけだが…

 

「し、師匠…あれ…人間?」

 

「世の中にはまだまだ知らない事があるな…どちらかというとラージャンと人間のハーフって感じじゃないかい?」

 

ーーーその男は、筋肉だったーーー

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「がっはっは!お前らが我らの団のハンターか!?なんだ、眉毛が全然太くないではないか!がっはっは!」

 

大男は大きな声で叫びながらバシンバシンとレオンの背中を叩く大男ハンター。どうやらレオンと我らの団のハンターを勘違いしているようだ。それにしても…

「それは別のハンターじゃないかな。あとレオンが痛がっているからやめてやってほしい。しっかし君…本当にデカイな…3メートル近くあるんじゃないかい?」

 

デカイ、その一言に尽きる。人間とは思えない大きさである。

 

「おお!そうか!すまん!だがお前は筋肉が足りないな!もっと鍛えろ!ちなみに俺は人間だ!なぜここまでデカイのかは知らん!」

 

本人は全く気にしていない様子で笑う。

短く刈り上げた黒髪に紫の瞳を持ち、引き締まった肉体に豪快な性格、まさに快男児という言葉が似合いそうだ。体の大きさが普通であったらかなりモテていたのではないだろうか。

 

「ふん!女より筋肉!そんな事をする暇があるなら筋トレだ!」

 

訂正、そんな事はなさそうだ…

 

「いや筋金入りの筋肉愛好家だね…ところでつかぬ事をお伺いするが、君は武器と防具はどうしたんだい?というか、君はここまでどうやってきたんだい?」

 

その男は何も装備をしていなかった。バルバレに来るには広大な砂の海を船で渡らなければならない。それなりに時間がかかるので何かしらの装備は必須なのだが…

 

「俺の武器はこの鍛え抜いた肉体だ!後、どう来たかだと?そんなの、走ってきたに決まってるだろう」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

時間は少し経過して今は昼時。午前のやる事をやって、筋肉ハンターと飯を食べる約束をしたわけだが…

 

「いやーここの飯はうまいな!ついついたくさん食ってしまう!」

 

「食い過ぎだよ君…軽く奢るなんて言った私がバカだったよ…」

 

「はは…皿が積まれてる…」

 

話を聞かせてもらう側だし、相手は一応客人という事でリーフが奢ると言ったのだ。

 

「ハンターは体が資本だ。だからたくさん食わねばならん!」

 

「だからって20人前も平らげるかい!?しかも人の金で!」

 

「お前が好きなだけ食えと言ったんだろう?」

 

舐めていた。せいぜい3人前だろうとタカをくくっていたら痛い目にあった。主にリーフの財布が。

 

「師匠、時すでに遅しってやつです。というか話の続きを聞きたいです」

 

「ぐ…仕方ない。アレックス、続けてくれ」

 

アレックスと言われた男は頷いて話をする。

曰く、彼はモンスターが良く出る危険な山奥の村に住んでいて、身を守るためには素手で立ち向かわねばならなかった環境であったらしい。

そのために鍛え戦い抜いていた事、たまたま通りかかったハンターの目に留まり、推薦されたという事だった。

 

「なんというか…生まれつきの戦闘民族だね…」

 

強くなるのではなく、強くならないと生き残れないということか。凄まじい環境である。おまけに排斥思想が強くよそ者を入れないらしい。

 

「文字通り秘境に住む原始部族ということか…」

 

しかしそれが客観的にわかるこの男はかなりまともな部類なのだろうか。そんなとりとめもない事を考えているとーー

 

「さて、腹も膨れたし俺はこのあたりを散策してこよう。そして明日はクエストだ!」

 

男が立ち上がる。解散するようだ。

 

「まあ楽しい話が聞けたよ。君ならなんのクエストを受けても大丈夫だとは思うが、それでも気をつけたまえよ」

 

そう言って別れようとするとーー

 

「何を人ごとのように言ってるんだ?明日のクエはお前らも来るんだぞ!しっかり準備しておけよ!がっはっは!」

 

一緒に行く事は決定事項らしい…

リーフとレオンは顔を見合わせて呟く。

 

「「巻き込まれた…」」

 

明日は忙しくなりそうだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日の朝、リーフとレオンは一応ギルドカウンターの近くまで行く。するとそこには、既に筋肉ことアレックスが待っていた。

 

「おう!遅いぞお前ら!既に日が昇っている!ハンターたるもの起床は日の出前だ!」

 

「勘弁してくれ、それは君だけだ…」

 

朝から疲れた顔をして呟くリーフ。対照的に、レオンは意外とワクワクしているようだ。

 

「レオンと言ったか!お前はいい顔をしている!いいぞ!」

 

「は、はい。アレックスさんは噂になってますし、その噂の張本人の狩りが観れると思うとワクワクして…えへへ…」

 

なんだかんだで楽しみだったようだ。

 

「がはは!そうかそうか!では早速クエストを選ぼう!」

 

そう言って3人はクエストボードを見る。薬草の採集のような簡単なもの、ドスジャギィやテツカブラと言ったそこそこの大型モンスターの狩猟、ブラキディオスやリオレイスと言った危険なクエストまでなんでもある。一番乗りだったおかげか選り取り見取りだ。

 

「ふむ…これが良さそうだな…」

 

「おや?もう決まったのかい?言っておくがあまり強力な奴は却下だよ」

 

「大丈夫だ、これなら平気だろう」

 

そう言ってアレックスが一枚の紙を持ってくる。そこには…

 

ーーー「ラージャンの狩猟」ーーー

 

すぐさまリーフは紙をひったくりボードに戻した。

 

「何をするんだ!せっかくいいクエストがあったのに!」

 

「ばっかじゃないの!?やっぱり君は頭の中も戦闘民族だよ!いいかい!?このメンバーでラージャンなんて行ったら死んでしまう!ラージャンは上位だぞ!?君は無事がもしれないが私は片腕が無いしレオンはようやく慣れ始めた下位ハンターだ!」

 

「なら俺が一人で戦ってやる!」

 

「それこそバカの所業だ!なら一人で行けばいい!それに、いくら強くても素手でラージャンに挑むなど…!」

 

そこで男が今までと違う反応をした。

 

「ほう…貴様、俺の筋肉が信じられないと…?」

 

静かな、しかし怒気を孕む低い声だった。

 

「当たり前だ…ラージャンは殴打や体当たりが主な戦い方だ。君と同じ戦い方をするんだよ。戦い方が同じなら、あとは種族的な差が勝敗を決める。そうだろう?」

 

しかしここでではどうぞと譲るわけにはいかない。一触即発の空気が漂う。

しかしその均衡は、第三者の声によって破られた。

 

「ほっほっほ、お二方、あまりギルド内で騒がれるのは困るのう。そしてそこのステゴロハンター殿、あなたにとって筋肉とは何かね?」

 

試すような問い。しかしアレックスは即答した。

 

「全て」

 

その答えに対し、長い思案の末にーー

 

「リーフや、彼を信じてあげなさい。大丈夫だ、彼ならきっとラージャンにも楽勝じゃよ。ほっほっほ」

 

しかしリーフはなおも食い下がる。

 

「待ってくれマスター、仮にこの男の受注が認められてもレオンと私は安全上行けないだろう?」

 

「そうじゃのう…本来は行けんのう。だから、ギルドマスターの権限を使うとするかの」

 

「おいこら」

 

このジジイ、けっこう汚い。だが人を見る目があるのは確かだ。故にリーフは渋々認める。

 

「ふん、話はまとまったようだな!では行くぞ!お前らに筋肉の素晴らしさを魅せてやろうぞ!」

 

そうしてラージャンの狩猟が開始された。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一同は遺跡平原の中でもより建造物の跡が残っている中央エリアにてラージャンを発見した。

 

「ふむ、あれが金獅子か。確かに獅子ではあるが、あれは金というより黒獅子でないか…?」

 

そんな事をぼやくアレックスにリーフは絶句した。

 

「君、まさか見たことなかったのかい!?それなのにこのクエストに行こうって…!」

 

ついつい声を荒げてしまう。しかしそれが聞こえてしまったのかラージャンがこちらを向いた。

 

「っ!バレた!総員散開!」

 

弾けるように草むらから飛び出るリーフとレオン。しかしアレックスは逃げるどころか向かってくるラージャンに仁王立ちをしていた。

 

「!?な、何をやっているだ彼は!おい!逃げろ!轢かれるぞ!」

 

慌てて回避を促すリーフだが、アレックスはそれを無視し、逆に腰を落として受けの体制を取る。

 

「まさか…師匠!あいつラージャン受け止めるつもりですよ!」

 

なんとラージャンの突進を止めようとしているのだ。

 

「そんな事、見ればわかる!くそ!おい!本当に死ぬぞ!逃げろ!逃げてくれ!」

 

叫ぶリーフ。しかしもう間に合わない。

アレックスはラージャンの突進に真正面から衝突し、リーフのその声は虚しく空に木霊するだけ…のはずだった。

 

「…え?」

 

間抜けな声が聞こえた。リーフかレオンか、しかし今はそんなことはどうでもいい。それくらいの事が、目の前で起きているのだ。

 

「ふんぬぅぅぅぅぅぅ…いい筋肉だぁ…」

 

ラージャンが、仮にもただの人間であるはずのアレックスと掴みあっているのだ。

 

「ラージャンを…止め、た…?」

 

だが、驚きはそれで終わらない。アレックスは一層腰を落とし相手を掴むとーー

 

「ぬぅぅぅん…ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「ぶん投げやがった…」

 

そのまま持ち上げ、投げ飛ばしたのだ。しかしまだ攻撃は終わらない。

 

「ふっ!おぁぁ!」

 

横に投げ飛ばした後に即座に地を蹴り、ラージャンの着弾予測点に先回りしたのだ。そして反撃を許さぬと言わんばかりに背中を殴りつける。

 

「ガァァァ!」

 

混乱と痛みでのたうちまわるラージャン。しかし古龍にも匹敵すると言われた戦闘力は伊達ではなく、即座に体制を整えてアレックスを見据える。

その身体は、金の毛に覆われていた。

 

「ふむ、これが金獅子たる所以か。そしてアレを食らってなおピンピンしているとはな…周りの奴らとは一味、いや二味も違うという事か!!」

 

雄叫びを上げながら怒りでさらに肥大化した腕を殴りつけるラージャン。

それを真っ向から受け止め、ラージャンに勝るとも劣らない殴打を繰り出すアレックス。

 

ここに、筋肉と筋肉のぶつかり合いが始まった。




???「素手でwwwラージャンにwww挑むなどとwww」
上位者クリ=モト「素手でアルバを倒してしまい、さすがにおかしいなと(笑)」

何書いてんだろう(真顔)

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